適応障害で疲れやすいのはなぜ?原因・対処法・治療方法について解説
更新日 2025年07月12日
適応障害
「なんとなく疲れが取れない」「以前よりも疲れやすくなった」という悩みを抱える方は少なくありません。
その疲労感は適応障害が関係している可能性があります。
適応障害は、強いストレスにさらされることで心身に不調が現れる精神疾患の一つです。
気分の落ち込みや不安に加え、倦怠感や不眠といった症状が出ることもあります。
この記事では、適応障害で現れる疲労感の症状について解説します。
疲労感がつらい場合の対処法や医療機関での治療方法もまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
適応障害はストレスが原因で起こる精神疾患

適応障害は、日常生活で受ける強いストレスによって心身に不調が現れる精神疾患です。
きっかけは人それぞれですが、就職や転職、引っ越し、結婚、出産、職場での人間関係のトラブルなどが原因となるケースが多く見られます。
またストレスそのものだけでなく、ストレスに対する個人の感じ方や反応の仕方も大きく影響します。
例えば責任感が強く完璧主義な人や他人の評価に敏感な人は、周囲からの期待やプレッシャーに過剰に反応してしまい、適応障害を発症しやすいとされるため注意が必要です。
適応障害は明確なストレス要因があることが大きな特徴で、他の精神疾患との鑑別においても重要なポイントです。
まずそのストレスの原因を突き止め、環境調整や精神療法などで対応していくのが治療の基本となります。
適応障害の主な症状

適応障害の主な症状は身体面・精神面・行動の3つの面に現れます。
それぞれに現れる代表的な症状は以下の通りです。
身体面に起こる症状 | 不眠、食欲不振、めまい、動悸、吐き気、頭痛、肩こり、腰痛、疲労感、倦怠感など |
精神面に起こる症状 | 抑うつ、不安症状、喪失感、絶望感、意欲の低下、焦り、緊張、神経過敏、涙もろくなるなど |
行動の変化 | 些細なミスが増える、落ち着きがなくなる、反社会的な行動がみられる、暴飲・暴食など |
ここではそれぞれの症状について解説します。
身体面に起こる症状
適応障害では、精神的なストレスが原因で体にさまざまな不調が現れます。
代表的な症状は以下の通りです。
- 不眠
- 食欲不振
- めまい
- 動悸
- 吐き気
- 頭痛
- 肩こり
- 腰痛
- 疲労感
- 倦怠感
こうした身体症状はストレスを受けた直後に一時的に強く現れる場合もあれば、慢性的に続くこともあります。
また胸が締めつけられるような感覚や動悸、息苦しさ、発汗など、自律神経の乱れによる症状が起こることもあります。
これらの不調は内科的な病気と勘違いされることも多く、最初は内科を受診する人も少なくありません。
検査をしても明らかな異常が見つからない場合は、適応障害の可能性が考えられます。
体の症状が日常生活に影響を及ぼしていると感じたら、早めに医療機関で相談しましょう。
精神面に起こる症状
精神面に起こる代表的な症状は以下の通りです。
- 抑うつ
- 不安症状
- 喪失感
- 絶望感
- 意欲の低下
- 焦り
- 緊張
- 神経過敏
- 涙もろくなるなど
特に抑うつ的な傾向が強く出ることが多く、何をしても楽しいと感じられなかったり、やる気が出なかったりといった状態に陥ることがあります。
またストレスを感じる場面を想像しただけで緊張や不安が高まり、涙が出てしまうケースも少なくありません。
判断力や集中力の低下、思考がまとまらないといった症状もあり、仕事や学業においてミスが増えるなどの支障が出ることもあります。
これらの精神症状はうつ病とよく似ているため、専門医による鑑別診断が重要になります。
適応障害の場合は、明確なストレス要因が存在し、そのストレス源から離れると症状が軽減する点が特徴です。
心の不調がある場合は放置せず、早めに医療機関を受診しましょう。
行動の変化
適応障害では、心や体の不調に加えて、行動面にも大きな変化が現れることがあります。
例えばこれまで遅刻や欠勤とは無縁だった人が、突然会社や学校を休みがちになる、無断で欠勤するなどの行動が増えることがあります。
他に現れる行動の変化の例は以下の通りです。
- 些細なミスが増える
- 落ち着きがなくなる
- 反社会的な行動がみられる
- 暴飲・暴食など
まじめで責任感の強い人ほど、自分の変化に気づきにくく無理をしてしまいがちですが、行動パターンが大きく変わっている場合は注意が必要です。
適応障害で疲れやすいのはなぜ?

適応障害で疲れやすいと感じる原因は主に3つあります。
- 不安や緊張が強くなるため
- 生活リズムによる影響
- 薬の影響
ここでは上記3つの原因についてそれぞれ解説します。
不安や緊張が強くなるため
適応障害の人は、日常のちょっとした出来事にも強い不安や緊張を感じやすくなっています。
このような精神的な負荷が持続すると、常に体のあちこちに力が入り、エネルギーを大量に消費します。
例えば職場や学校での人間関係が原因で緊張状態が続いていると、肩や首まわりがこわばったり、眠っても疲れがとれなかったりすることがあるのもこのためです。
不安が強まると自律神経が過剰に働き、心拍数や呼吸が速くなるなど、体のさまざまな機能が過剰に働くようになります。
この状態が長引くと心身のバランスが崩れ、疲れを感じやすくなるのです。
また、人間が感じる疲れは末梢性疲労(筋肉から生じる疲労)と中枢性疲労(脳から生じる疲労)の2つに大別されますが、後者は脳内の神経伝達物質(セロトニンなど)も関係しているとされています。
適応障害をはじめとした精神疾患は、脳内の神経伝達物質のバランスが乱れやすいため、疲労感を感じやすくなるのもこの理由からと考えられます。
生活リズムによる影響
生活リズムの乱れは、疲労を感じやすくする大きな要因の一つです。
適応障害になると、夜に寝つけなかったり日中に眠気が続いたりするなど、睡眠の質やタイミングが大きく崩れがちになります。
不規則な生活を続けていると体内時計のリズムが乱れ、日中に十分なパフォーマンスを発揮できなくなるのです。
また、長時間の昼寝もかえって夜の睡眠に悪影響を及ぼすため注意が必要です。
毎日同じ時間に起床・就寝し、生活のリズムを整えることが疲れにくい体づくりの基本となります。
薬の影響
適応障害の治療に使われる抗うつ薬や抗不安薬などの薬には気分を安定させる効果がありますが、副作用として認知機能の低下や眠気、だるさなどが現れることがあります。
これにより日常の些細な作業にも時間がかかり、結果的に疲労感が増すという悪循環に陥ることも珍しくありません。
特に集中力や判断力が低下すると、いつもならスムーズにできる作業もミスが増え、何度もやり直すことになり、精神的にも消耗してしまいます。
薬の種類や量によっては疲れがさらに強まることもあるため、日常生活に支障を感じた場合には医師と相談することが大切です。
適応障害で疲れやすい場合の対処法

適応障害で疲れやすい場合の対処法として、以下の5つが挙げられます。
- 質の高い睡眠をとる
- バランスの整った食事を心がける
- 適度に運動する
- ストレスをため込まない
- つらいときは無理せず休む
ここでは上記5つの対処法についてそれぞれ解説します。
質の高い睡眠をとる
疲れやすさを改善するためには、質の高い睡眠をとることが大切です。
睡眠は心身の回復に欠かせないもので、適応障害の回復においても非常に重要な要素です。
寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚めるといった状態が続くと、翌日に疲労が残ってしまいます。
そのような疲労感を軽減するためには、以下のような対策を取り入れるとよいでしょう。
- 寝る前にスマホやパソコンの画面を見ない
- 睡眠環境を整える(室温・照明・騒音・寝具など)
- 毎晩同じ時間に布団に入る
- 寝る2時間前までにぬるめのお風呂に入る
- 軽くストレッチを行う
睡眠の質が高まると、日中の集中力や体力も自然と回復しやすくなります。
バランスの整った食事を心がける
適応障害の疲れやすさを改善するためには、栄養バランスの整った食事を心がけることが大切です。
栄養が偏った食事は、体のエネルギー不足や免疫力の低下を引き起こし、疲れやすさを助長する原因になるため注意しましょう。
特にビタミンB群や鉄分、たんぱく質を含む食品を積極的に取り入れることをおすすめします。
玄米、納豆、魚介類、卵、乳製品、緑黄色野菜などを日々の食事に取り入れましょう。
食事からしっかりと栄養を摂ることで、症状の改善につながります。
また水分不足も疲労の一因となるため、意識的にこまめに水分補給を行うのも大切です。
適度に運動する
適度な運動は心身の回復に非常に効果的です。
体を少しずつ動かすことで血流が促進され、気分がリフレッシュされやすくなります。
特に頭を使う作業が続いた場合には、アクティブレストとして軽いウォーキングやストレッチを行うと、心身の疲れを効率よく軽減できます。
激しい運動をする必要はなく、自分のペースで取り組むことが大切です。
散歩やストレッチ、ヨガなどの軽い運動を日常に取り入れてみましょう。
動くこと自体に抵抗があるときは、室内でのストレッチや呼吸を整える程度でも構いません。
日常生活の中で、少しずつ体を動かす時間を確保するようにしてみてください。
ストレスをため込まない
疲れやすさを改善するためには、日々のストレスをなるべくため込まないことが大切です。
適応障害では、緊張や不安が強くなると心身の疲労感が増しやすくなります。
そのため、普段からストレスと上手に向き合い、早めに対処することが大切です。
日常生活では仕事や家庭環境、人間関係など避けられないストレス要因も多く存在しますが、それらと距離を取る工夫をしたり生活環境を整えたりすることで、ストレスによる影響を抑えられます。
日記を書く、趣味に没頭する、瞑想をするなど、自分に合ったストレス解消法を見つけてみてください。
つらいときは無理せず休む
適応障害による疲れを感じたときには、無理をせず休むことが大切です。
つらい状態のまま我慢して行動を続けると、かえって症状が悪化してしまう恐れがあります。
休むときはリラックスできる環境を整え、安心して心を落ち着かせられるようにしましょう。
適応障害の治療方法

適応障害の治療方法は主に3つ挙げられます。
- 休養・環境調整
- 精神療法
- 薬物療法
ここでは上記3つの治療方法についてそれぞれ解説します。
休養・環境調整
適応障害の治療で基本となるのが休養と環境調整です。
まずはストレスの原因となっている状況から距離を置き、心と体をしっかりと休ませなくてはいけません。
そのためには現在の生活のどこにストレス源があるのかを把握し、適切な対処を行う必要があります。
例えば職場が原因であれば、休職や異動、転職といった選択肢が考えられます。
家事や育児が負担になっているなら、家族や外部サービスに頼ることも視野に入れましょう。
人間関係に起因するストレスに対しては、関係を見直すまたは距離を取ることで対策できます。
自分に合った形でストレスから離れることで、より効果的に治療が進められます。
精神療法
環境の調整だけでは不十分な場合には、精神療法によるサポートが行われます。
代表的な方法としては『認知行動療法』と『問題解決療法』が挙げられます。
認知行動療法は物事の捉え方や行動パターンを見直すことで、ストレスへの対処力を高める治療方法です。
例えば悲観的になりやすい思考や自分を責めすぎる考え方に気づき、それをより柔軟な思考へと変えていくように働きかけます。
また問題解決療法では、現在抱えている問題に対してどのように対処すればよいかを、医師やカウンセラーと一緒に整理しながら進めていきます。
いずれの方法も、医師や臨床心理士などの指導を受けながら進めていくのが基本です。
これらの方法によってストレスに対する適応能力を向上させることで、適応障害の再発防止にもつながります。
薬物療法
適応障害は基本的に薬を使わずに治療を行うことが可能です。
ただし不眠や強い不安、抑うつ状態などの症状が続いて日常生活に支障が出ている場合には、薬物療法が補助的に用いられることもあります。
代表的な薬には、不安を和らげる抗不安薬や、不眠を改善する睡眠薬、気分の落ち込みが強いときに使われる抗うつ薬などがあります。
とはいえ薬は一時的に症状を軽減するものであり、根本的な解決策ではありません。
薬に抵抗がある場合や副作用が心配な場合は、医師に相談しましょう。
医師と相談しながら、自分に合った治療方法を見つけていくことが大切です。
適応障害で疲れやすい場合は生活習慣の見直しや医師への相談が有効
適応障害による疲れやすさは、精神的なストレスや生活リズムの乱れなどが影響しています。
まずは無理をせず休養をとり、睡眠や食事など生活習慣を整えることが大切です。
治療は環境の調整やカウンセリングが基本となり、必要に応じて薬を使う場合もあります。
薬に抵抗がある場合は、医師と相談しながら治療方針を決めていきましょう。
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