適応障害・パニック障害で起こる発作とは?対処法も解説

適応障害は職場や学校、家庭などの環境による強いストレスが引き金となって、心身にさまざまな不調が現れる精神疾患です。
突然動悸が激しくなったり、めまいや息苦しさを感じたりする発作のような症状に悩まされる方も少なくありません。
この記事では、適応障害・パニック障害で起こる発作について詳しく解説します。
発作が起きたときの対処法や医療機関で行う治療方法、よくある質問などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
適応障害・パニック障害とは

適応障害とパニック障害は、どちらも不安や精神的ストレスによって日常生活に支障をきたす精神疾患です。
しかしそれぞれの発症原因や症状、対応の仕方には明確な違いがあります。
適応障害は職場の人間関係や生活環境など、特定のストレス要因に反応して心身の不調が現れる精神疾患です。
一方、パニック障害は、特に明確なきっかけがないにもかかわらず、突然強い不安に襲われるパニック発作が繰り返される精神疾患です。
ここでは適応障害とパニック障害の違いについて解説します。
適応障害とは
適応障害とは、ある特定のストレスに対して強い精神的・身体的症状が現れ、日常生活に影響を及ぼす精神疾患です。
例えば職場でのプレッシャーや人間関係のトラブル、引っ越しや進学など生活環境の変化が原因になることがあります。
症状としては抑うつ気分や不安感、イライラ、集中力の低下、不眠、食欲不振などがあり、動悸や息苦しさといった身体症状を伴うこともあります。
適応障害の特徴は、ストレス要因が明確であることと、ストレスから離れることで比較的早く症状が改善する傾向がある点です。
治療は休養・環境調整やストレス対策、心理療法が中心となり、必要に応じて薬物療法が補助的に用いられることもあります。
パニック障害とは
パニック障害は、突然強い不安や恐怖に襲われる『パニック発作』を繰り返す精神疾患です。
発作時には心拍数の急上昇や過呼吸、めまい、吐き気、発汗、手足の震えなどの身体症状が現れます。
発作は数分で治まることが多いものの、その体験が強い恐怖として記憶され、「また起きるのではないか」という予期不安が日常生活に支障をきたす点が特徴です。
発作のきっかけがない場合もあり、突然電車の中や職場、外出先で起こることもあります。
重症化すると外出を避けるようになり、広場恐怖など他の不安障害を伴うこともあります。
治療は抗不安薬や抗うつ薬などの薬物療法に加え、認知行動療法が有効です。
適応障害とパニック障害の違い
適応障害とパニック障害は、いずれも不安や身体症状を伴う精神疾患ですが、原因や症状の現れ方には大きな違いがあります。
適応障害は明確なストレス要因(職場、家庭、進学など)に対して反応し、抑うつや不安、不眠、集中力の低下などが起こるのが特徴です。
ストレス因子がなくなると症状が和らぐことが多く、休養と環境調整が治療のカギとなります。
一方、パニック障害は突発的な不安発作が主な特徴で、特に明確な原因がなくても発作が起こる精神疾患です。
症状も心拍数の増加や息切れ、めまいなどの激しい身体反応を伴います。
両者ともに不安や動悸などの共通点がありますが、病態や対処方法は異なります。
この両方が併発するケースもあるため、医師の診断を受けて正確な治療を行うことが大切です。
適応障害・パニック障害の発作の症状

適応障害やパニック障害の発作では、心身にさまざまな症状が現れ、日常生活に大きな影響を与えることがあります。
パニック障害では、突然強い不安や恐怖に襲われ、心拍数の上昇、過呼吸、手足の震え、発汗、胸の圧迫感や痛み、ふらつき、吐き気などの身体的症状が短時間で一気に出現します。
発作のピークは数分から十数分で、少しずつ落ち着いていく場合が多いです。
ただし、その恐怖体験が記憶に残り、次の発作を常に心配する『予期不安』に苦しむ人も少なくありません。
適応障害の発作時にも、強いストレスへの反応として似たような症状が現れることがあります。
動悸、息苦しさ、胃腸の不快感、めまいなどの症状が多く、不安感や抑うつ感、集中力の低下などの精神症状も見られます。
これらは原因となるストレスが解消されない限り、慢性的に続く傾向があり、日常生活の質を低下させる要因になるため注意が必要です。
これらの症状は閉鎖的な空間や混雑した場所などで出やすく、発作への恐れから外出を避けるようになってしまうこともあります。
適応障害・パニック障害の発作が起きたときの対処法

適応障害・パニック障害の発作が起きたときの対処法として、以下の7つが挙げられます。
- 深呼吸をする
- 意識を別のところに向ける
- 54321法を試してみる
- 乗り物・部屋では出口に近い位置にいる
- 刺激の少ない場所に移動する
- 親しい人の声を聴く
- 頓服薬を服用する
ここでは上記7つの対処法についてそれぞれ解説します。
深呼吸をする
発作が起きたときは意識的に深呼吸をしてみましょう。
パニック発作や強い不安状態では、呼吸が浅く速くなり、過呼吸に陥ることがあります。
この状態が続くと息苦しさやめまい、手足のしびれといった症状が強まるため、まずは呼吸をゆっくり整えることが大切です。
具体的には、4秒かけて鼻から息を吸い、6秒かけて口からゆっくり吐き出す方法などがあります。
呼吸のペースを意識的に整えることで、自律神経の過剰な興奮が抑えられ、心拍も次第に落ち着いていきます。
意識を別のところに向ける
発作が起きたときは、意識を別のところに向けましょう。
発作時に不安が増幅してしまう原因として、自分の症状や体の変化に強く意識を向けすぎてしまうことが挙げられます。
動悸や息苦しさに集中し続けることで、「このまま倒れてしまうのでは」といった恐怖感が強まり、症状がさらに悪化してしまうケースも少なくありません。
そうしたときは、意識を不安の対象から別のものへと向けることが大切です。
具体的には以下のような方法があります。
- 飴を口に含んでその味に集中する
- 時計の秒針を見てカウントする
- 頭の中で好きな歌を思い浮かべる
- 暗算を繰り返す
飴を舐める方法は、味覚への意識の集中と過呼吸の抑制が同時にできる点で特に効果的です。
自分に合った気をそらす手段をあらかじめ見つけておくと、発作の不安をコントロールしやすくなります。
54321法を試してみる
54321法は、不安やパニックに襲われた際に意識を現在の感覚に引き戻すための方法です。
パニック発作中は頭の中が混乱し、「どうしよう」「このままおかしくなるのでは」といった思考にとらわれやすくなります。
そうしたときに、この方法を用いて五感を頼りに目の前の状況に注意を向けることで、気持ちを落ち着かせる効果が期待できるのです。
具体的には、以下のように段階的に五感に集中していきます。
- 5つのものを視界で探す(机やいすなど)
- 4つの音に意識を向ける(足音や咳払いなど)
- 3つのものに触れてその感覚に意識を向ける(つり革や自分の服など)
- 2つの匂いを嗅ぐ(その空間の香りや服の香りなど)
- 1つの味を味わう(飴や飲み物など)
これにより頭の中の不安を外に追いやり、自分の感覚に集中することができます。
乗り物・部屋では出口に近い位置にいる
パニック発作が起こりやすい環境では、あらかじめ安心できる場所を選んでおくことも重要な対策の一つです。
例えば電車やバスに乗る際にはドアの近くに立ったり、座席でも出入り口に近い位置を選んだりすることで、「何かあってもすぐに降りられる」という安心感が得られます。
この安心感が不安感を軽減させ、発作の予防につながることがあります。
発作はコントロールできない状況に対する恐怖が原因になることも多いため、事前に安心できる位置にいる工夫をしておくことで、発作予防にもつながるでしょう。
刺激の少ない場所に移動する
発作が起きたときは刺激の少ない場所に移動しましょう。
パニック発作は、周囲の環境刺激によって不安感がさらに強まることがあります。
例えば大きな音や人混み、強い光、暑さや寒さなどは、すでに過敏になっている自律神経を刺激し、症状を悪化させる要因となります。
そのため、安心できる静かなスペースや人目を避けられる場所を探して、そこへ移動することが大切です。
屋外であれば日陰やベンチ、建物の中であればトイレや休憩スペースなどでも構いません。
周囲の視線から解放されるだけでも、安心感が増し、発作が徐々におさまっていくことがあります。
こうした安心できる場所をあらかじめいくつかイメージしておくと、いざというときの心の支えになります。
親しい人の声を聴く
発作時に強い不安や恐怖を感じたときは、信頼できる親しい人の声を聴くのが効果的です。
家族や友人、恋人など、親しい人との会話を通じて安心感を得られると、症状が和らぎやすくなります。
発作が頻繁にある人は、あらかじめ身近な人に自分の状態や対処法について共有しておくのがおすすめです。
相手が事情を理解していれば、いざというときに落ち着いた対応をしてもらえるため、より安心して連絡を取ることができます。
頓服薬を服用する
医師から処方された頓服薬は、パニック発作が起きた際に非常に有効です。
ロラゼパム(ワイパックス®)やアルプラゾラム(コンスタン®)などの抗不安薬は、発作時の強い不安感や緊張を鎮める効果があります。
症状が重くなる前に早めに服用することで、発作の悪化を防げるでしょう。
外出時や人の多い場所に行く際には、財布やポーチなどに数錠忍ばせておくと安心です。
ただし、薬はあくまで一時的に症状を和らげるための手段であり、根本的な治療とは異なります。
医師の指示に従い、用量・用法を守って服用しましょう。
適応障害・パニック障害の治療方法

適応障害・パニック障害の主な治療方法は、薬物療法と認知行動療法の2つです。
適応障害の場合、薬物療法は必ずしも必要なものではありません。
症状が重い場合など、必要に応じて併用されることがあります。
薬物療法
薬物療法は、適応障害やパニック障害の発作・予期不安を軽減するための治療方法です。
代表的な薬として、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やベンゾジアゼピン系抗不安薬があります。
SSRIは脳内のセロトニン量を安定させ、長期的に不安感を抑える効果が期待できますが、副作用として吐き気や眠気が出る場合もあります。
ベンゾジアゼピン系は即効性があり、発作時の頓服薬として用いられますが、依存性のリスクがあるため長期使用は避けるべきです。
必ず医師の指示に従って服用しましょう。
認知行動療法
認知行動療法は、不安や恐怖に向き合いながら自分の思考と行動を修正していく心理療法です。
パニック障害では「このまま死んでしまうのでは」といった極端な思考が発作を引き起こす要因になるため、こうした思い込みに気づき、現実的な捉え方に変えていく訓練を行います。
また苦手な場面や状況に段階的に慣れていく『段階的曝露療法』も効果的な治療の一つです。
例えば電車に乗るのが怖い場合は、まず駅の近くに行くことから始め、徐々に乗車までのステップを進めていきます。
このように少しずつ不安に慣れることで、発作への恐怖心を和らげ、再発を防ぐことが可能になります。
適応障害・パニック障害に関するよくある質問

適応障害・パニック障害に関するよくある質問をまとめました。
- 適応障害になりやすい人の特徴は?
- パニック障害になりやすい人の特徴は?
- パニック発作を起こす他の疾患はある?
ここでは上記3つの質問についてそれぞれ解説します。
適応障害になりやすい人の特徴は?
適応障害になりやすい人の特徴は以下の通りです。
- 責任感が強く完璧主義な人
- 自己肯定感が低く自信がない人
- 繊細で些細なことを受け流せない人
これらの性格は決して悪いわけではなく、人との向き合い方や考え方を変えることで精神的な負担を減らせます。
パニック障害になりやすい人の特徴は?
パニック障害になりやすい人の特徴は以下の通りです。
- 精神的に追い詰められている人
- 真面目で完璧主義な人
- こだわりが強い人
- 人間関係のストレスを抱えている人
- 感受性が高い人
- 過去にうつ病などになったことがある人
パニック障害はある日突然発症することもあるため、ストレスや疲労を溜め込まないことが大切です。
パニック発作を起こす他の疾患はある?
パニック発作を起こす他の疾患として、以下が挙げられます。
- 社会不安障害
- 限局性恐怖症
- 分離不安障害
- 適応障害
- うつ病
上記の疾患はストレスや不安が深く関係しており、正確な診断と適切な治療が必要です。
発作が頻発する場合は、早めに医師に相談しましょう。
適応障害・パニック障害の発作が頻発する場合は医師のもとで治療を受けましょう
適応障害やパニック障害の発作に悩んでいる方は、深呼吸や意識の切り替えといった対処法を身につけるとよいでしょう。
今回解説した対処法はすぐその場で実践できるものばかりのため、ぜひ試してみてください。
発作がつらい場合は早めに専門医に相談し、適切な治療を受けることが大切です。
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