新たな環境の変化に対処する方法

更新日 2021年04月03日

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 桜も満開に近づき、まもなく4月がやってきます。 

4月と言えば、新しい年度が始まるわけですが、仕事先での異動や転勤、就職や転職、職場や学校での環境の変化など、色々な変化と出合うことの多い季節でもあります。 

この新たな状況というのは、考えようによっては、大きな期待や夢に繋がるものではありますが、やはり新しい環境に対しては、不安もつきものです。 

この新年度に限らず、皆さんは、新たな環境や状況に向き合う際に、どんな不安を感じていますか。期待と不安が入り混じりながら、ワクワクした気持ちで進んでいければ良いのですが、不安ばかりが大きくなると、どんどん辛くなってしまったり、胃が痛んだり寝られなくなったりと、色々な症状で苦しんでしまうこともありますね。 

そこで今回は、新年度に合わせて、環境の変化や新たな環境に向かうときの不安に対して、どのように対処していけばよいか、そのヒントをお話ししてみましょう。 

まず、一例として新年度の職場での異動を考えてみましょう。 

新しい部署への配属が決まったが、その部署は、いままで関わったことはあるけれど、今とは全く異なる仕事で、そこのメンバーも顔や名前は知っているが、さほど親しいわけではない。これから自分が担当していく仕事は初めてで、経験もない。 

こんな状況を考えてみると、新しい業務が自分に務まるかどうかも不安だし、周囲の人達とうまくやっていけるかも不安になってくるのではないでしょうか。もちろん、人によって不安の強さはまちまちだと思いますが、もともと少し気にするタイプだったり、几帳面でしっかりと仕事をやりきらなくてはという思いの強い人であれば、時には大きな不安に包まれてしまうと思います。 

こんな時、まず初めに、こんな状況で不安になってしまうのは、自分だけではないという事に気づいてみましょう。経験したことのない新たな環境、新たな仕事に向かっていくときに、不安を感じない人はいるでしょうか。ほとんどの人が、多かれ少なかれ何らかの不安を感じ、ちょっと躊躇してしまったり、悩んだりしているのだと思います。 

ただ、その不安や恐怖心に対して、そこだけに気持ちが集中してしまうか、または、その不安を感じながらも、色々と具体的に準備を進めたり、日々の目の前のことに向き合っているかが、大きな苦しみに陥っていくかどうかの分かれ目ではないかと思います。 

こんなことで不安になるのは自分だけに違いないと思い始めると、そこに注意が向きすぎて、どんどん不安が高まり、いずれは恐怖心にもなってしまい、苦しくて何も手に付かないということになってしまいます。 

こんな状況になってしまったら、もしかしたらこんな時は誰でも不安になるのかな、などと思ってみませんか。そうだとしたら、みんな同じで、自分だけが特別ではないという事に気づけるのではないでしょうか。 

誰もが感じる不安なら、あって当たりまえ。当たり前の不安は、意志の力で消したり、コントロールしたりすることなど、到底できるものではありません。また、無理やり気にしない様にとか、なんとかやりくりしてなくそうとすると余計大きくなって手が付けられなり、自分ではどうにもならなくなってしまうという事も、しっかりと知っておきましょう。これは、他のシーンでも、皆さん経験していることだと思います。 

さて、この誰でも感じる不安を、まあ仕方ないものだと受け止めたら、今度は少しずつその不安の正体を明らかにしていきましょう。 

多くの場合、予期的な事柄に対する不安は、最初は漠然としているものです。 

見えない敵はとても怖いものですが、ここで、見えないというのは、漠然として具体的には見えていないという事です。未知のイメージに対して、頭の中で漠然と「いったいどうなんだろう」と思っている限り、いつまで悩んでも事態は解消しては行きません。 

ですから、ここでは、見えないものを、可能な範囲で見えるようにしていってみましょう。実際には、なんとなく漠然としたイメージを、できるだけ具体的なシーンにばらばらにしていくのです。 

例えば、その職場ではこんな仕事があって、それはこんなシーンでこんな風にやっていくのだろう。そうすると、その時にはどんな場所で、どんな人たちと何をやっていくのだろうかなどと、具体的に、いわば分解していくのです。 

もちろん、未知の世界ですから、全てが具体的に見えてくることはないでしょう。でも、分かる範囲で、または想像できる範囲で分解していくことで、不安や恐怖も具体的な見えるものになっていくのです。 

不安が具体的になってくると、その問題はどうやって解決すればよいかとか、どんな工夫をしていけばよいか、また自分としてできる準備や工夫はないかなど、実際のこととして対処ができていくのです。 

得体のしれない大きなものが、目の前に立ちはだかっているような、こんな漠然と膨らんだ不安ではなく、具体的な課題に対する等身大の不安に戻していくと考えてください。 

例えば、新しい部署に行ったら、まず手始めにこれだけはすぐにでもやってみようとか、この部分から順に手を付けていこうなどと思うと、スッと不安が解消していくこともあります。 

でも、そうやって具体的にバラバラにしていっても、当然ですが、やはりよく分からないこととか、漠然としたまま残るものもあります。 

それは、言い換えれば今の状況ではどうにもできないとか、分からないという事で、そこに対する不安は、どうすることもできないものだと腹をくくって受け入れることです。 

この様に、可能なことに対しては最大限の準備や工夫をして、残る不可能なことに対しては、それをなんとかやりくりしようとせず、時間や成り行きに任せ、状況の変化に応じて、そのなかでも可能なものが見えてきたらその部分の対処を進めるということです。いわゆる、臨機応変な対処ですね。 

どんな場合でも、できないことを何とかしようとすることは、とてもむなしくなるし、辛い状況を作って、自分を追い詰めてしまいます。辛くて出口が見えなくなっている時には、できることとできないことをしっかりと見極めていくことが大切で、そのためには、ここでお伝えしたように、どんどん具体的にしていくことが有効なのです。 

ここまで、職場での異動を例にお話ししましたが、たとえば地域や学校などでの新しい役割に向かう場合でも同じように考えられます。また、なにかの資格を取ろうとして、これから集中して勉強に取り組んでいくときなどでも同じです。 

新しい行動、新しい環境に、不安はつきものです。 

そこで不安を感じる自分に対して、それは正当な不安だと、自分の感情をそのまま受け入れてあげて、無理やり不安をねじ伏せるよりも、バラバラにして、できるものには対処を、できないものは受け止めていく姿勢を持ってみましょう。 

新年度に関わらず、社会の中では次々と新たな未知の不安がやってきます。そんな時に、この様な向き合い方や進め方を身に付けておくと、日々のメンタルヘルスの維持にとても有効です。 

そして、更に皆さんに知っていただきたいことは、新たな環境に向かって不安や恐怖に包まれるというのは、自分が弱いせいでもなく、ダメな訳でもなく、その新たな環境や役割を、しっかりとやり遂げたいとか、せっかく依頼された期待になんとか応えたい、さすがだねと言われる自分でありたいとか、自分自身を高めたい気持ちの表われだという事です。そこまでいかなくても、例えば、失敗したくないとかの場合もありますが、これもより良い自分を求める姿勢ですよね。 

より良い自分でありたい、高い評価を得たいという向上心が強いからこそ、人一倍不安や恐怖も強いのだと思って下さい。 

自分の“弱さ”ではなく、自分が持っている“前向きな気持ち”のなせる業なのです。皆さんの中から湧きあがる、せっかくのこのエネルギーが空回りして、逆に大きな不安や恐怖の世界に陥らないよう、このヒントを意識してみて下さい。 

それによって、皆さんの個性がより発揮された、自分らしい適応ができていくことと思います。 

まもなくやってくる新たな年度のスタートに、不安と同居するワクワク感に乗って、ぜひ皆さんらしい毎日を送っていけることを願っています。