脳波の種類とは?発生原理や正常・異常脳波の違いについて解説

更新日 2025年01月01日

blog_image

脳波は周波数によってα(アルファ)波、β(ベータ)波、θ(シータ)波、δ(デルタ)波、γ(ガンマ)波の5つに分類されます。

これらの周波数はそれぞれ異なる特徴を持つため、精神状態や身体の状態を確認するのに役立ちます。

この記事では、脳波の種類とその特徴について解説します。
脳波の発生原理や正常・異常脳波の違い、脳波と睡眠の関係性などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

脳波とは

脳波とは

脳波とは、脳の活動にともなう電気的な変化を示す波形を指します。

脳の神経細胞が活動する際には微細な電気信号が発生し、その結果として脳波が形作られます。
脳波のパターンを分析することで、特定の脳の状態や異常を診断することが可能です。

脳波の発生原理

脳波は主に脳内の神経細胞であるニューロンの活動によって生じるものです。

ニューロンは人間の脳に1,000〜2,000億個存在するといわれ、それぞれがつながって神経細胞ネットワークを形成しています。

これらのニューロンは情報を伝達する際に微小な電気的変化を伴い、集合的に測定可能な電場を生成します。

この電気活動が脳波として観測されるのです。
α(アルファ)波やβ(ベータ)波、θ(シータ)波、δ(デルタ)波など、異なる周波数帯の脳波が存在し、これらはそれぞれ異なる脳の状態を示しています。

特定の周波数の強さやパターンの変化は、睡眠、覚醒、集中、リラックスなど、さまざまな精神状態や認識状態と関連づけられます。

脳波の計測方法

脳波は通常、電極を頭皮に取り付けて計測されます
これを脳波計といい、最も一般的な方法としてEEG(Electroencephalography)が用いられます。

頭皮の表面に複数の電極を設置し、それぞれの電極が脳活動に伴う電位差を測定する方法です。
非侵襲的な方法としては特に有用で、患者の意識状態や睡眠などの研究に頻繁に活用されています。

また脳波計測は比較的簡易に行えるため、幅広い分野で活用されています。

脳波の活用分野

脳波は多岐にわたる分野で活用されています。

医療の分野では、てんかんの診断や脳機能の評価に役立てられています。

精神科や神経内科では、意識障害や認知症の認識にも使用されることがあり、特に治療の経過をモニタリングする際に有効です。

脳波には5つの種類がある

脳波には5つの種類がある

脳波は周波数に基づいて5つの種類に分類され、それぞれが特定の脳の状態を反映しています。

  • α(アルファ)波
  • β(ベータ)波
  • θ(シータ)波
  • δ(デルタ)波
  • γ(ガンマ)波

ここでは上記5つの脳波の種類についてそれぞれ解説します。

α(アルファ)波

α波は周波数が8Hz〜13Hzの範囲にあり、リラックスした状態でよく見られます。

例えば目を閉じている時や深くリラックスしている際に、この波が優勢になります。

α波が多く出ていると、ストレスが少なく心が静かで落ち着いていることが示されるため、リラクゼーションや瞑想時によく観察されるのが特徴です。

日常生活の中で意識的にリラックスする時間を持つことで、α波を増やすことができるとされています。

β(ベータ)波

β波は14Hz〜30Hzの周波数帯に位置し、覚醒し集中している状態にあるときに出現します。

過度なβ波の活性化はストレスや不安を引き起こすことがあるため、適切なバランスが重要です。

β波は特に現代社会において、仕事や学習など高度な集中力を要する活動の際に不可欠な脳波です。
適度な運動や休息を取り入れることで、バランスを保つことができます。

θ(シータ)波

θ波は周波数が4Hz〜7Hzの範囲にあり、浅い睡眠や深い瞑想状態でよく観察されます。

また精神的に集中していて効率の良い作業をしているときにも現れるのが特徴です。

学習や記憶の過程にも影響を与えると考えられ、特に新しい情報を取り入れる際の記憶形成に寄与します。

δ(デルタ)波

δ波は4Hz以下の最も低い周波数帯にあり、深い睡眠状態(ノンレム睡眠)に最も多く見られます。

δ波は体の回復を促し、細胞修復や免疫機能の強化に寄与する重要な脳波とされています。

この波がうまく機能している場合、質の高い睡眠が得られ、起きた時により良い心身の健康が期待できます。

しかしδ波が過度に少ない場合は、睡眠の質が低下し疲労感が残ることがあるため、良質な睡眠環境を整えることが大切です。

またδ波は幼児によくみられます。

γ(ガンマ)波

γ波は30Hz以上の高周波域にあり、緊張しているときやイライラしているときによく見られます。

さらに高度な認知機能を必要とする時にも活動的になります。

特に高い集中力や意識的な注意を必要とする状況で出現しやすく、知識の統合や学習過程において重要な役割を担っています。

また世界的な学術誌では、40Hz周期の音刺激で認知機能が改善されたという研究結果も報告されています。

脳波と睡眠の関係性

脳波と睡眠の関係性

脳波は人間の心理状態や睡眠状態と深く結びついています

特に睡眠時の脳波は重要な指標となり、睡眠の質や深さを示します。

睡眠は基本的にノンレム睡眠とレム睡眠に分かれますが、これらの段階で観測される脳波がどのように変化するかが、正常な睡眠サイクルを維持するためのポイントとなります。

睡眠に関係する脳波はα波・θ波・δ波の3つ

睡眠に深く関わる脳波として、α波、θ波、δ波があります。

α波はリラックスした状態や安静時に出現する脳波で、就寝前はリラックスしているのが理想のためα波が主体となる状態が良いといえます。

θ波は軽い眠りの段階で現れる脳波で、レム睡眠中に主体として観察されます。

最も深いノンレム睡眠ではδ波が現れ、この状態は身体の回復や免疫機能の向上に寄与します。

これらの波の出現パターンは、健康的な睡眠サイクルを示す重要な要素です。

日中にδ波が活性化するのは病気の可能性がある

通常、δ波は深い睡眠中に優位となり、日中にδ波が活性化するのは健康的な状態ではありません

これは脳機能が何らかの異常をきたしている可能性を示します。
てんかんや意識障害、認知症など病気が考えられるため、注意が必要です。

なるべく早めに適切な医療機関を受診することが大切です。

質の高い睡眠をとるためには睡眠前にα波を発生させる

質の高い睡眠を得るには、就寝前にリラックスした状態を作り出す、つまりα波を発生させることが大切です。

α波を意識的に発生させるには、穏やかな音楽を聴いたり、深呼吸や瞑想を行ったりするのが効果的です。

就寝前はスマートフォンやパソコンなどの電子機器を使用しないことも心掛けましょう。
これにより睡眠の質が高まり、朝の目覚めも快適になります。

脳波の正常・異常の判定方法

脳波の正常・異常の判定方法

脳波は脳の電気活動を記録したものであり、医療現場では特に脳の状態を評価するために重要なものです。
正常な脳波と異常な脳波を判定することで、人間の健康状態を把握できます。

通常、脳波は周波数や振幅、パターンに基づいて分析されます。
健康的な成人の脳波を調べると、安静・覚醒・閉眼状態でのα波が後頭部を中心に見られます。

正常な脳波の特徴

脳波を安静、覚醒、閉眼状態で記録すると、周波数が10Hz前後のα波が50μVほど振幅し、後頭部付近を中心に左右対称に連続して出現するのが正常な状態です。

日常生活で特に問題がなく健康な場合、このパターンが観察されることが多いでしょう。

異常な脳波の特徴

異常な脳波とは、通常のパターンとは異なる波形や活動を示すものです。

例えば、てんかんの発作中には異常に高い振幅や特定の棘波(波形がほかの部分よりも際立って尖鋭なもの)が観察されます。

以下のような異常パターンが診断材料になる例があります。

  • 脳炎:徐波(α波より周波数が低い波)が急性期に現れて徐々に改善する
  • 器質性脳障害(脳血管障害や脳腫瘍など):脳波異常が徐波となって現れる
  • 意識障害:障害の程度に応じて徐波が増えてくる
  • 脳死:脳波が平坦化し、電気活動がほとんど見られない

このように異常な脳波は診断や治療方針を決定するうえで重要な指標となります。

脳波からわかること

脳波からわかること

脳波はさまざまな健康状態を把握するために利用され、特に精神状態や神経疾患の診断に役立ちます

脳波のパターンは個人によって異なりますが、精神状態や疾患ごとに脳波の特徴があるため、これを分析することで健康状態を把握できるのです。

脳波からわかることとして、具体的には以下が挙げられます。

  • 年齢相応か
  • 睡眠リズム・睡眠障害
  • てんかん
  • 意識障害
  • 局所性脳障害
  • 脳死判定

年齢相応か

脳波は年齢に応じて特徴的なパターンを示します。
例えば小児の脳波と高齢者の脳波には大きな違いがあります。

小児の脳波高齢者の脳波
脳波の基本活動の変化・発達中のため、年齢によって少しずつ変化していく
・低い周波数が中心で、年齢とともに少しずつ高くなっていく
・α波の出現部位は中心・頭頂優位から後頭部優位へと変化
・前頭~中心部のθ波が増加する
・α波の周波数は老化に伴い低下
・β波が増加し、80歳を過ぎると減少し始める
脳波の反応性の変化振幅増大が正常状態でも強くみられる眼を開いている状態での反応性が低下する
振幅増大の出現が弱くなる

幼児期には低い周波数成分が中心となり、1歳は5Hz、3歳は6Hzといったように年齢とともに少しずつ高くなっていきます。

上記のように年齢ごとに脳波の違いがあるため、脳波検査を受けることで、年齢相応の脳波をしているかを確認することが可能です。

脳波に遅延や異常がある場合、発達障害や認知機能低下などが疑われることがあります。

睡眠リズム・睡眠障害

睡眠中の脳波は、睡眠ステージの状態を明確に示します。
ノンレム睡眠中にはδ波が多く現れ、レム睡眠中には活発な脳波がみられます。

睡眠中の脳波に異常がある場合、睡眠障害の診断につながります。

てんかん

てんかんは、脳波検査によって特定の脳波パターンを確認することで診断されることが多いです。

発作の有無や頻度、タイプに応じて異なる波形が現れ、特に棘波や尖波などが特徴的です。

てんかんの診断においては、これらの異常波形の有無や発作のときの脳波を確認することが重要となります。

また発作の原因や影響を考慮し、適切な治療方針を決定するためにも脳波データは使用されます。

意識障害

意識障害の評価にも脳波は有用です。

昏睡や無意識状態では脳波の活動が明らかに抑制されることがあります。

これは意識障害によって脳幹網様体賦活系と大脳との相互作用が低下することで、α波が減少するためです。

意識障害が進行すると、深い睡眠時に現れるδ波や異常脳波が増えてきます。

局所性脳障害

局所性脳障害があると、脳波の異常な活動が特定の脳の部位に集中することが確認できます。

例えば特定の脳領域に由来する局所的な異常波が観察されることがあるのです。

これにより脳梗塞や脳損傷などの原因を特定し、具体的な部位と関連づけることが可能です。

脳死判定

脳死状態の特徴として、脳波活動の完全な消失、つまりフラットな波形がみられることがあります。

脳死判定にはさまざまな項目がありますが、脳波の状態を確認するために脳波検査が必要不可欠です。

脳死判定では通常の脳波検査よりも脳波の感度を増幅して判定し、法的脳死判定では6時間おいて2回の判定が必要となります。

発達障害の診断補助

脳波検査は発達障害の診断補助にも活用できます。

脳波検査のみで発達障害の確定診断はできませんが、脳波異常がみられない疾患との鑑別を行えるのです。

例えばうつ病や躁うつ病、統合失調症といった病気は脳波異常がみられない特徴があります。

一見うつ病に見えるような症状でも、脳波検査で異常がみられた場合、それはうつ病ではなく実は発達障害の可能性があるという鑑別ができます。

このように発達障害の診断補助として脳波検査を行うことで、より正確な診断ができるのです。

まとめ

脳波にはα(アルファ)波、β(ベータ)波、θ(シータ)波、δ(デルタ)波、γ(ガンマ)波があり、それぞれ特定の脳の状態を反映します。

例えばα波はリラックスした状態、θ波は浅い睡眠や瞑想状態、δ波は深い睡眠状態に現れるのが特徴です。

このように種類ごとに特徴があるため、脳波検査により脳波の状態を確認することで、精神状態を確認できるのです。

脳波に異常がみられる場合は、神経疾患や脳障害が隠れている可能性があります。

神谷町駅から徒歩1分のかもみーる心のクリニック東京院 では、発達障害の診断補助として脳波検査(QEEG検査)を実施しています。

心理検査との併用により発達障害の程度を可視化し、今後の治療方針をより明確に決めていくことができるため、発達障害の疑いがある方はぜひ当院までご相談ください。

かもみーる心のクリニック東京院 はこちら
脳波検査(QEEG検査) についてはこちら