うつ病と仕事の関係|辞める・休む・続ける前に知っておきたいこと
更新日 2025年06月19日
うつ病
「仕事に行くのがつらい」
「毎朝、体が動かない」
「ミスが増えて叱られてばかり」
そんな日々が続く中で、「もしかして、うつ病かもしれない」と感じたことはありませんか?
うつ病になると、これまで当たり前にできた仕事だけではなく、日常生活を送ることすら難しくなることがあります。そして、仕事を辞めるべきか、続けるべきかと悩む方も少なくありません。
この記事では、うつ病と仕事の関係や仕事中に現れやすいサインについて解説し、うつ病を患っている状態で仕事を続けられるのかという疑問にお答えします。
また、うつ病の方に向いている仕事の特徴や、働き方の工夫についても紹介するため、「うつ病かも」と悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
うつ病と仕事の関係

うつ病の原因はさまざまですが、そのひとつに仕事が関係していることもあります。
ここでは、うつ病とはどのような病気か、そして仕事との関係について解説します。
うつ病とは
うつ病とは気分障害のひとつで、気分の落ち込みや意欲の低下、集中力の低下などが長期間続く状態を指します。
誰にでも起こり得る身近な病気であり、厚生労働省によると日本人の約15人に1人が一生のうちに一度はかかるといわれています。(参照:厚生労働省『うつ病|こころの病気について知る』)
無気力で憂うつな状態が続くため、怠けているように見えることもありますが、うつ病は「気持ちの持ちよう」で乗り越えられるものではありません。
仕事が原因で発症することもある
働きながらうつ病になる方は少なくなく、実際、職場での強いストレスが発症の引き金となるケースも多く見られます。
特に、以下のような職場環境や状況が複雑に重なったとき、心と身体のバランスが保てなくなり限界を超えてしまうことがあります。
職場環境
以下は、うつ病を発症しやすい職場環境の一例です。
- 長時間労働
- 業務内容が過酷
- ノルマや成果主義のプレッシャー
- パワハラなどの人間関係のトラブル
- 達成感を得にくい業務内容
このような状態が続くと、心身がすり減り、気がついたときはうつ病の症状が現れていることもあります。
うつ病になりやすい性格傾向
仕事でうつ病になる方の中には、性格的傾向が影響していることもあります。
以下のような特徴がある方は、無理をしやすいため注意が必要です。
- 真面目で責任感が強い
- 完璧主義
- 人に迷惑をかけたくない気持ちが強い
- 頼まれると断れない
- 自分に厳しい
- 自分の気持ちをうまく表現できない
このような性格の方は、多少つらくても「自分が頑張ればいい」と無理をしがちです。
また、「もっと頑張らなければ」と自分を追い詰めることで、心のバランスを崩してしまうことがあります。
仕事中に現れやすいうつ病のサイン

うつ病になると、無気力になったり、判断力が低下したりして、これまで難なくこなせていた仕事が急にできなくなることがあります。
症状の現れ方には個人差がありますが、仕事中に次のような変化が頻繁に見られる場合は、うつ病のサインかもしれません。
- 遅刻や当日欠勤が増える
- 集中力が続かず、ミスが増える
- 会話が極端に減る、あるいは増える
- 身だしなみに気を遣わなくなる
- 電話の受け答えが困難になる
- 些細なことでイライラする
- 日中に強い眠気を感じる
こうしたサインは、職場でのストレスや心の不調が背景にある場合も多く、自分でも気づかないうちに症状が進行していることもあります。
すべての項目に当てはまらなくても、いくつか思い当たる点がある場合は、一度立ち止まって心の状態を見つめ直してみましょう。
「うつ病かも」と思ったら、まずは受診しよう

うつ病の可能性があると感じたら、できるだけ早く専門の医療機関を受診しましょう。
責任感が強い方の中には、「仕事を休んでまで病院に行くのは申し訳ない」「自分が我慢すれば何とかなる」と考えてしまい、不調に気づいていても受診をためらうことがあります。
しかし、自己判断で無理を続けていると、うつ病が深刻化し、ある日突然「もう限界」と感じるほど悪化してしまうこともあります。
その結果、長期の休職や離職につながり、自分を責めることにもなりかねません。
逆に、いつもと何だか様子が違うと感じた段階で受診しておけば、早期に対処し、重症化を防ぐことができます。
早期治療によって、今の生活スタイルを大きく変えずに済む可能性も高くなるでしょう。
▶うつ病の診断基準とは?軽症・中等症・重症の分類や症状について解説
うつ病になっても仕事はできるのか?

うつ病を発症したとき、多くの人が不安に思うのは「このまま仕事を続けられるのだろうか?」ということではないでしょうか。
特に自分の代わりがいないと感じる職場や、仕事にやりがいを感じている場合は、休む決断が難しく感じられることもあります。
うつ病になっても仕事を続けることは可能
結論からいえば、うつ病になっても仕事を続けることは可能です。実際、医師のサポートを受けながら治療を続けつつ、業務を継続している方も少なくありません。
ただし、うつ病の症状の重さや現れ方、仕事内容、そして職場の理解やサポート体制によって状況は大きく異なります。
すべての人が同じように働き続けられるわけではないため、自分の状態を冷静に見極めることが大切です。
また、会社に相談して業務量を調整してもらったり、部署を異動したり、リモートワークに切り替えたりといった工夫をすることで、無理なく働き続けている方もいます。
無理せず「休職」という選択もある
一方で、うつ病の症状や今の仕事内容によっては、いったん仕事から離れる=休職という選択肢がベストなこともあります。
「もっと頑張らなきゃ」と自分を追い詰めてしまいやすい方や、以前の自分と比べて落ち込みやすい方にとっては、仕事を続けることが症状悪化の原因になることもあります。
また、これまで多忙で心身ともに疲弊していた方は、一度しっかりと休む時間をとることで回復のきっかけが得られるかもしれません。
無理をして症状が悪化すれば、復帰までにさらに時間がかかってしまうこともあります。
「今は休むことが最善」と受け入れることも、回復への第一歩です。
うつ病で仕事を辞める前に考えておきたいこと

うつ病になると、仕事を辞めたい気持ちが強くなることもあるかもしれません。
心や身体がつらいときは、辞める選択が最善に思えるのも自然なことです。
しかし、衝動的に辞めてしまうと、経済的な不安や将来への焦りがかえってストレスになる場合もあります。
退職を決断する前に、一度立ち止まって次の点を整理してみましょう。
まずは治療を優先する
うつ病を発症したら、「仕事を辞めなければならない」と考える方は少なくありませんが、まずは治療を優先し、仕事をどうするかは後回しです。
「仕事のせいでこうなった」「職場に迷惑をかける」といった考えが頭をめぐるのはしょうがないことですが、治療中はできる限りゆったりと休むことが重要です。
治療を続けるなかで、仕事のことを冷静に考えられるようになるまでは、自分自身の体調を整えるようにしましょう。
ストレスの原因と向き合う
冷静に仕事について考えられるようになったら、次にするべきことはストレスの原因を考えることです。
仕事はストレスの原因になりえますが、業務内容や働き方、人間関係など、さまざまな要因が重なり合ってストレスを引き起こしている可能性があります。
例えば、人間関係がストレスだった、業務内容がつらかったなど、原因によっては部署移動や働き方を変えれば問題なく働ける場合もあります。
仕事自体を辞める必要がないケースもあるため、医師や職場の上司、専門部署などと相談しながらサポートを受けましょう。
「休職」という選択肢も検討する
すぐに辞めるのではなく、一度休職して心身を回復させる選択肢もあります。
休職中は、健康保険による『傷病手当金』などの制度を利用できる場合もあり、経済面での不安を軽減しながら治療に専念できます。
また、少し距離を置いてみることで、「あのときすぐ辞めなくてよかった」と思えることもあるかもしれません。
うつ病の方が取り組みやすい仕事

うつ病でやむを得ず仕事を辞めたものの、「そろそろ働きたい」「治療を受けながらできる仕事を探したい」と考える方は多いです。
または、仕事を辞めるために次の仕事を見つけておきたいと考える方もいるでしょう。
うつ病の回復過程においては、自分の体調や心の状態に合わせて無理なく続けられる仕事を選ぶことが大切です。
ここでは、うつ病の方が取り組みやすい仕事の特徴と具体例を紹介します。
リモートワーク(在宅勤務)が可能な仕事
自宅で働ける仕事は、通勤のストレスや人間関係の負担を減らせるため、うつ病の方にとって取り組みやすい傾向があります。
例えば、以下のような仕事が挙げられます。
- データ入力
- ライティング(Web記事やブログ執筆など)
- Webデザイナー
- プログラマー
- オンラインカスタマーサポート
- 翻訳業務
自分のペースで働けるのが在宅ワークの魅力ですが、生活リズムが乱れやすい側面もあります。
そのため、「働く時間を決める」「休憩時間を確保する」など、規則正しい生活を意識することが重要です。
ノルマや締め切りに追われにくい仕事
うつ病の方にとって、厳しいノルマや評価制度は大きな負担になります。精神的なプレッシャーが少ない仕事を選ぶことで、安定して働き続けやすくなります。
例えば、以下のような仕事です。
- 一般事務
- 軽作業(検品・仕分けなど)
- 清掃業務
- 倉庫内作業
こうした仕事は単調に感じることもありますが、精神的な負荷が少なく取り組みやすい傾向があります。
一人で黙々と進められる仕事
人とのコミュニケーションに強いストレスを感じてしまう場合は、自分のペースで作業に集中できる仕事が向いています。
例えば、以下のような仕事です。
- 工場でのライン作業
- 品出し・陳列作業
- 電気・ガス検針員
- 農作業・園芸の補助
静かな環境で、一定のルールに沿って作業できる仕事は、心を落ち着けながら働くことができます。
マニュアルが整っていて手順が明確な仕事
仕事内容がマニュアル化されていると、判断力や集中力が低下しているときでも、負担なく仕事が進められます。
例えば以下のような仕事は、うつ病の方でも取り組みやすいでしょう。
- コンビニ・飲食店などの接客
- コールセンター
- 受付業務
事前に業務内容がはっきりしている職場を選ぶと、「何をすればいいのかわからない」というストレスを避けることができます。
うつ病の人が仕事を続けるための工夫

うつ病と診断されても、治療を続けながら仕事を続けている方は少なくありません。
ただし、無理をせず、自分のペースを大切にする工夫が必要です。
ここでは、うつ病の方が仕事と向き合うために意識したいポイントを紹介します。
生活リズムを整える
規則正しい生活は心の安定に大きく関わります。
特に睡眠・食事・活動のリズムを整えることは、うつ病の症状を和らげるためにも重要です。
うつ病の方は、不眠や昼夜逆転の生活になりやすい傾向がありますが、以下を意識しましょう。
- 毎朝同じ時間に起きて、朝日を浴びる
- 3食しっかり食べる
- 休日もできるだけ同じ時間に起きる
これらを習慣化することで、体内時計が整い、少しずつ心と体の調子が安定していく助けになります。
無理をしない
うつ病の症状は、ストレスや過労で悪化することがあります。
「周りに迷惑をかけたくない」「もっと頑張らないと」と無理をしてしまうと、かえって体調が悪化し、長期離脱につながるおそれもあります。
- 体調が悪い日は無理せず休む
- 仕事量を自分でコントロールする
- できないことは断ると決めておく
このように、自分を守るためのラインを引いておくことが大切です。
周囲のサポートを受ける
可能であれば、上司や同僚に自分の状態を伝え、理解を得ることも、仕事を続けるうえで大きな助けになります。
- 仕事量や締切を柔軟に調整してもらえる
- 調子が悪い日も、気軽に休みやすくなる
- 励ましや配慮を得られ、孤独感が軽減される
話すことに抵抗がある場合は、産業医や人事担当者を通して伝える方法もあります。
また、就労支援やカウンセリングなどの外部サービスを利用するのもひとつの手です。
うつ病を患っても仕事はできる!ただし無理は禁物
うつ病は誰にでも起こり得る身近な心の病気であり、とくに仕事のストレスが大きなきっかけとなることもあります。
「最近、仕事に行くのがつらい」「何をしても気分が晴れない」―そんなふうに感じているなら、それは心の不調のサインかもしれません。
症状や環境に応じて仕事を続けることはできますが、無理をせず、必要であれば休職や転職を検討することも大切です。
何よりも、自分の状態に気づき、早めにサポートを受けることが、回復への第一歩になります。
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