うつ病の診断基準とは？軽症・中等症・重症の分類や症状について解説

うつ病は気分が落ち込んだり憂うつな気分になったりする状態が長期間続き、日常生活に支障がでる病気です。

気分が落ち込むことは誰しもあるものですが、具体的にどのような症状がうつ病にあたるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、うつ病の診断基準について解説します。

診断方法や軽症・中等症・重症の分類、古典的分類、診断基準に関するよくある質問などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

うつ病の主な症状

うつ病には精神的症状と身体的症状があります。

ここではそれぞれの具体的な症状について見てみましょう。

精神的症状

うつ病の精神的症状として、具体的に以下のようなものがあります。

• 持続的な抑うつ気分
• 興味の喪失
• 集中力の低下
• 絶望感
• 自己評価の低下
• 希死念慮

うつ病では憂うつな気分になったり気分が落ち込んだりするほか、集中力や自己評価が低下したりすることがあります。

また症状が悪化してくると「消えてしまいたい」「死にたい」といった希死念慮が出てくることもあり、入院が必要になるケースもあります。

身体的症状

うつ病の身体的症状として、具体的に以下のようなものが挙げられます。

• 慢性的な疲労感
• 睡眠障害
• 食欲の変化による体重増減
• 筋肉の緊張・痛み

疲れやすくなったり急に食欲が低下したりする場合、うつ病の可能性が高いです。

上記のほか、頭痛や肩こり、動悸、めまいといった症状が現れる場合もあります。

ただしこれらの症状はうつ病でなくほかの病気でも現れるため、鑑別の必要があります。

うつ病の診断方法

うつ病の診断方法は以下の通りです。

• 問診
• 採血検査
• 画像検査（CT検査やMRI検査）
• 光トポグラフィー検査
• 心理検査

ここでは上記5つの診断方法についてそれぞれ解説します。

問診

うつ病の診断でもっとも重要となるのが、医師による問診です。

30分〜1時間ほどじっくりと時間をかけて問診を行い、患者さんの症状や生活状況などを詳しく聞き取ります。

問診で医師から聞かれる質問内容としては、以下のようなものが挙げられます。

• 気になる症状
• いつ頃から症状に悩んでいるか
• 原因として思い当たることはあるか
• 生い立ちや家族構成
• 過去の受診歴など

人間関係やストレス要因などについて聞かれる場合もあります。

もし上手く話す自信がない場合は、紙やスマートフォンなどのメモにまとめておくとスムーズに話しやすくなるためおすすめです。

採血検査

うつ病の診断で採血検査を行う理由として、以下の3つが挙げられます。

• うつ病が心身に与える影響を確認するため
• 血中濃度を確認するため
• 患者さんに適した治療を行うため

採血検査では甲状腺の機能やPEA濃度（うつ病の補助診断として期待されている物質。うつ病の方はPEA濃度が低い）などを調べることができ、うつ病の正確な判断の助けとなります。

またうつ病以外の病気の発症で抑うつ症状が現れる場合があるため、そうした病気を発見するためにも血液検査は重要な役割を果たします。

画像検査（CT検査やMRI検査）

うつ病の診断では、CT検査やMRI検査などの画像検査を行う場合があります。

CT検査やMRI検査などから直接うつ病を診断することはできませんが、ほかの病気の影響で抑うつ症状が現れている場合には有効な検査方法となります。

例えば甲状腺機能低下症や糖尿病、肝臓の病気、がんなどの病気では、うつ状態になることがあるのです。

採血検査や画像検査を行うことで、このような病気を発見して適切な治療を行うことができます。

光トポグラフィー検査

光トポグラフィー検査は、脳の血流量の変化を測定してうつ病の診断を行う検査です。

うつ病に似た病気として双極性障害や統合失調症などの精神疾患がありますが、これらの疾患は初期にうつ症状が現れることがあります。

以前までは問診により鑑別する必要がありましたが、実はこれらの脳の病気は数値での診断が可能なことが近年明らかになってきているのです。

光トポグラフィー検査は脳の血流の変化を測定して数値をグラフ化することで、それぞれの病気のパターンに当てはめて判別できます。

問診と組み合わせて診断の正確性を高めるために役立つ検査方法です。

心理検査

うつ病の診断では、患者さんの性格の傾向や知的機能などを客観的に測定するために心理検査が行われることがあります。

うつ病の心理検査には以下のような種類があります。

• CES-D：自己評価型の質問紙検査
• BDI-2：抑うつ症状の有無・重症度を評価する検査
• HAM-D：うつ症状の程度を調べる質問形式の検査
• MMSE：認知機能を簡易的に評価する質問形式の検査
• TEG：性格傾向や行動パターンを把握する検査

検査の結果によってうつ病の重症度や性格傾向などを把握することができます。

うつ病の診断基準

うつ病を診断するうえで大切になるのが、症状の重さ、期間の長さ、社会的問題が伴うかどうかなどです。

2週間以上にわたって症状が続き、日常生活にも支障をきたす場合はうつ病と診断されます。

うつ病の診断基準はアメリカの精神医学会が作成した『DSM』と、WHO（世界保健機関）が作成した『ICD』の2種類があります。

ここではそれぞれの診断基準について見てみましょう。

DSM-V

アメリカの診断基準であるDSMの診断項目は以下の9つです。

1. 自分の言葉か、まわりから観察されるほとんど毎日の抑うつ気分
2. ほとんど毎日の喜びの著しい減退
3. 著しい体重の減少、あるいは体重増加、ほとんど毎日の食欲の減退または増加
4. ほとんど毎日の不眠または過眠
5. ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止（他者によって観察可能）
6. ほとんど毎日の易疲労性、または気力の減退
7. ほとんど毎日の無価値観、または過剰であるか不適切な罪責感
8. 思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日
9. 死についての反復思考、反復的な自殺念慮、または自殺企図

上記のうちいくつ当てはまるかによって、抑うつ症状の有無や重症度などを診断可能です。

基本的に上記のうち5つの症状が2週間以上続く場合、うつ病と診断されます。

ICD-10

WHO（世界保健機関）が作成したICDの診断基準項目は以下の7つです。

1. 集中力と注意力の減退
2. 自己評価と自信の低下
3. 罪責感と無価値感
4. 将来に対する希望のない悲観的な見方
5. 自傷あるいは自殺の観念や行為
6. 睡眠障害
7. 食欲不振

抑うつ気分・興味と喜びの喪失・疲労感の増大のうち2つ以上の症状があり、かつ上記の症状の2つ以上が2週間続く場合にうつ病と診断されます。

ICD-10によるうつ病エピソードの軽症・中等症・重症の分類

うつ病エピソードとは、抑うつ気分・興味と喜びの喪失・疲労感の増大などの症状のことで、診断基準にどの程度症状が当てはまるかによって軽症・中等症・重症の分類がされます。

ここではうつ病エピソードの軽症・中等症・重症のそれぞれの症状の違いについて解説します。

軽症うつ病

軽症うつ病は、典型的な症状（抑うつ気分・興味と喜びの喪失・疲労感の増大）のうち少なくとも2つ、さらにICD-10の診断基準に記載の症状のうち2つ以上が当てはまるものです。

抑うつ症状に悩まされているものの、学校や仕事といった社会生活が完全に機能できなくなるほどではない状態です。

中等症うつ病

中等症うつ病は、典型的な症状（抑うつ気分・興味と喜びの喪失・疲労感の増大）のうち少なくとも2つ、さらにICD-10の診断基準に記載の症状のうち3つ以上が当てはまるものです。

社会的・家庭的な活動がかなり困難になる状態です。

精神病症状を伴わない重症うつ病

精神病症状を伴わない重症うつ病は、典型的な症状（抑うつ気分・興味と喜びの喪失・疲労感の増大）のすべて、さらにICD-10の診断基準に記載の症状のうち４つ以上が当てはまるものです。

そして重症うつ病ではいくつかの症状が重症となります。

うつ病の診断基準では2週間以上上記の症状が続くことが条件となりますが、症状が極めて重く急激な発症の場合、2週間未満でもうつ病と診断されることがあります。

社会的・家庭的な活動をほとんど続けられなくなる状態です。

精神症状を伴う重症うつ病

精神症状を伴う重症うつ病はすべての症状を満たすもので、妄想や幻覚、うつ病性昏迷などの症状が現れます。

中傷や非難の声が幻聴として聞こえたり、腐った汚物や腐敗した肉の臭いのような幻臭を感じることがあります。

うつ病の古典的分類

現在のうつ病診断では『DSM-V』や『ICD-10』が採用されるケースが多いですが、以前まではうつ病を以下の3種類に分類する診断がされていました。

• 心因性うつ病
• 内因性うつ病
• 外因性うつ病

上記のような分類がされていた理由は、うつ病がどの原因によって生じているかによって、適切な治療方法が異なるためです。

ここでは上記3つの古典的分類についてそれぞれ解説します。

心因性うつ病

心因性うつ病は、心理的なきっかけにより発症するうつ病のタイプです。

ストレスや心の負担などが原因となるもので、具体的な原因としては以下のようなものが挙げられます。

• 人間関係のトラブル
• 家族問題
• 恋愛問題
• ライフスタイルの変化（結婚や引っ越しなど）

上記のようなわかりやすいきっかけがなくても、自己否定感や劣等感の強さが原因でストレスが積み重なり、うつ病を発症するケースもあります。

内因性うつ病

内因性うつ病は、体の内部要因がきっかけで発症するうつ病のタイプです。

具体的な原因としては以下のようなものが挙げられます。

• 遺伝的要素
• 体質
• 脳内のホルモンバランスの乱れ

うつ病は遺伝的な影響もあるとされる病気で、家族にうつ病の人がいる場合、うつ病を発症しやすい可能性があります。

外因性うつ病

外因性うつ病は、体の外部からの影響によって発症するうつ病のタイプです。

具体的な原因としては以下のようなものが挙げられます。

• 病気
• 薬物
• アルコール

アルコールや薬物の過剰摂取によってうつ病が引き起こされる場合があります。

また服用する薬の副作用によってうつ症状が現れる場合もあるため、薬を服用する際は副作用とその対処法についてきちんと理解しておくことが大切です。

うつ病に関するよくある質問

うつ病に関するよくある質問をまとめました。

• うつ病はどの診療科を受診すれば良い？
• うつ病と抑うつ状態の違いは？
• うつ病と適応障害の違いは？

ここでは上記3つの質問についてそれぞれ解説します。

うつ病はどの診療科を受診すれば良い？

うつ病は精神科や心療内科などを受診しましょう。受診の手順は基本的に内科などと変わりません。

ただし予約制のクリニックも多いため、公式ホームページや電話、お問合せなどで確認してみましょう。

また初診時は問診票の記入があるため、予約時間に少し余裕をもって来院することをおすすめします。

うつ病と抑うつ状態の違いは？

うつ状態・抑うつ状態は落ち込みがひどい状態のことで、診断基準を満たしていればうつ病と診断されます。

しかし医師がうつ病と明言せずにうつ状態・抑うつ状態と診断するのには、以下のような理由があります。

• 本質的な原因がほかにある場合
• うつ病と断定するのが難しい場合
• 従来のうつ病とは異なる場合

うつ状態・抑うつ状態はうつ病だけでなく、ほかの病気でも現れることがあります。

病気などの本質的な原因がほかにある場合は、あえてうつ病と診断せず、うつ状態・抑うつ状態と診断することがあるのです。

また近年は従来のうつ病とは異なるタイプのうつ病である『非定型・新型うつ病』などもあり、これらに当てはまる場合はうつ病と診断されない場合があります。

▶うつ病とうつ状態(抑うつ状態)の違いとは？症状や治療法、受診した方がいいケース

うつ病と適応障害の違いは？

適応障害はストレス要因をきっかけにして、気分の落ち込みや不安などの症状が現れるものです。

うつ病ほど症状が重くなくても診断されますが、社会的・家庭的な活動に支障が生じていることが条件となります。

うつ病は四六時中症状が消えませんが、適応障害は原因がはっきりとしているため、ストレス要因から離れることで改善することがほとんどです。

▶適応障害とは？再発率や兆候・繰り返さないための対策・復職時の注意点を解説

うつ病は一人で悩まず医師やカウンセラーに相談しましょう

うつ病の診断基準には、アメリカの精神医学会が作成した『DSM』と、WHO（世界保健機関）が作成した『ICD』の2種類があります。

診断基準にどの程度症状が当てはまるかによって、軽症・中等症・重症などの重症度が診断されます。

うつ病は軽症の場合は休息によって自然と回復することもありますが、症状が重くなるにつれ、それだけでは回復が難しくなる場合が多いです。

うつ病の疑いがある場合は、なるべく早めに医療機関を受診することをおすすめします。

かもみーるでは、自宅から受診できるオンライン診療に対応しています。

うつ病の症状にお悩みの方や病院を受診すべきか悩んでいる方は、ぜひ当院までご相談ください。

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