発達障害のある方がつらいと感じる原因は?つらさを和らげる工夫も紹介
更新日 2025年06月04日
発達障害
発達障害のある方は、日常生活での困りごとが多く、つらいと感じることが多いといわれています。
これは発達障害の特性によるものであり、本人が気をつけていても対人関係、学校や仕事上のトラブルに発展しやすく、ストレスを感じてしまいがちです。
つらい状況が続くと、「なぜいつも自分だけうまくいかないんだろう」と自己否定感を覚えてしまうかもしれませんが、少しの工夫で解決できる可能性があることを知っておきましょう。
この記事では、発達障害のある方がつらいと感じる原因や、つらさを和らげる工夫などを詳しく解説します。
発達障害の子どもを持つ家族のつらさについても紹介しているため、ぜひ参考にしてみてください。
発達障害とは

発達障害とは、生まれつきみられる脳の発達の違いによるもので、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などの種類があります。
ここでは、発達障害について詳しく紹介します。
発達障害は生まれつきの脳の個性・特性
発達障害は生まれつきみられる脳の働き方の違いによるものです。
糖尿病やがんなどの疾患と同じだと思われがちですが、発達障害は脳機能の偏りを持つ状態を示す総称であり、脳の個性・特性です。
支援や治療が必要な場合もありますが、個性として受け止めることも大切です。
発達障害による個性・特性は人によってさまざまです。
例えば、人とのコミュニケーションが苦手だったり、好きな物事に対するこだわりが強かったりなど、生まれつきの脳機能の発達の状態で特性の現れ方が異なります。
特性の現れ方によっては、日常生活や社会生活がつらいと感じる場合もあるため、つらさや生きづらさを感じるようであれば、自分が過ごしやすい環境を整えることが大切です。
代表的な発達障害
上述の通り、発達障害とは脳機能の偏りを持つ状態を示す総称です。
色が青や赤、黄色などにわかれているように、発達障害の中にもさまざまな種類があり、それぞれ特性が異なります。
代表的な発達障害には、主に以下の3つの種類があります。
- 自閉スペクトラム症(ASD)
- 注意欠如多動性障害(ADHD)
- 学習障害(LD)
上記の他に、チック症や吃音なども発達障害の一種に数えられることもあります。
発達障害は種類によってそれぞれ特性が異なりますが、複数の特性が重なって現れるケースも多く、強弱も人によってさまざまです。
発達障害のある方がつらいと感じる原因

発達障害は病気ではなく、脳の個性ともいえるものですが、脳機能の偏りによって行動や思考のパターンに独特の特徴を持っているため、生活する中でつらいと感じることもあります。
ここでは、発達障害のある方がつらいと感じる原因について詳しく紹介します。
対人関係によるストレス
発達障害のある方がつらいと感じる原因のひとつに、対人関係によるストレスがあります。
発達障害のある方は、空気を読むのが苦手です。
相手の話に興味を持てなかったり、身振りや手振り、表情から相手の気持ちを読み取ったりするのが難しく、周囲の人に合わせようと頭をフル回転させた結果、疲れてしまいます。
また、力加減の調整やスムーズな行動、周囲の行動に合わせることが難しい場合も多いです。
ひとりなら自分のペースで物事を進められますが、複数人と作業をしなければならない状況では、周囲の人に合わせるために我慢したり常に注意したりするため、つらいと感じることがあります。
他には、相手に心理的・物理的に距離を詰められるのが苦手です。
強い言葉や感情で迫られると、定型発達(身体的・知的・社会的・情緒的な発達が平均的な範囲に収まる状態)の方と比べて疲れやすく、ストレスを感じやすいでしょう。
環境の変化によるストレス
発達障害のある方は、環境の変化に敏感で不安定になりやすいのが特徴です。
例えば子どもの場合だと、進級やクラス替えなどがあると、それまでのルーティーンが狂ってしまい、うまく切り替えられずに怒りっぽくなったり、いつもは気にしないようなことにこだわり始めたりすることがあります。
大人の場合も、仕事で突然の予定変更に臨機応変に対応できず怒られてしまったり、席替えで隣の人が変わるだけで集中できなかったりすることもあるでしょう。
特に自閉スペクトラム症(ASD)のある方は、こだわりが強く融通が利かないといった特性があります。
少しの変化でも苦痛に感じやすいため、環境の変化がストレスとなってつらいと感じるかもしれません。
感覚過敏によるストレス
発達障害のある方は、感覚の問題が深刻です。
五感で感じる刺激にとても敏感(感覚過敏)なことで、日常生活を送る中でつらいと感じることが多く、大きなストレスになってしまいます。
以下は、感覚過敏の代表的な症状です。
- まぶしい光や大きな音、周囲のザワザワした音が苦手
- 嫌いなにおいや味、触感に耐えられない など
国立障害者リハビリテーションセンターが行った、「発達障害のある人の感覚の問題」に関する調査でも、発達障害のある方が最もつらいと感じるのは聴覚過敏であることがわかっています。
他には、視覚や触覚、嗅覚の問題がつらいという回答が多くされていました。
また、感覚過敏によるつらさは、発達障害の種類によって異なります。
上記の調査でも、自閉スペクトラム症(ASD)のある方は触覚の問題が最もつらいという回答が多く、学習障害(LD)の方は視覚の問題が最もつらいという回答が多い結果になりました。
年齢によっても感覚過敏によるつらさは異なり、未成年者では味覚の問題をつらいと答えた方の割合が他の年代に比べて高くなっています。
生活リズムの乱れ
発達障害のある方は、睡眠・覚醒障害を併存している可能性があるとされていて、生活リズムの乱れに悩んでいる人が多いです。
睡眠・覚醒障害とは、不眠症や過眠症、睡眠リズム障害などの睡眠に関連するさまざまな疾患の総称です。
例えば、不眠症では以下のような症状があります。
- 寝つきが悪い
- 眠りが浅い
- 睡眠中に目が覚める
- 早朝に目が覚める など
これらの症状により不眠の状態が続くことで、日中に眠気や疲れが現れます。
例えば、自閉スペクトラム症(ASD)のある方は、睡眠・覚醒障害が併存していると、好きなことに没頭する・強くこだわるといった特性から食事や睡眠時間を削ってしまい、生活リズムが乱れることが多いです。
ひとつのことに集中できる特性は決して悪いものではありませんが、心身に大きな負担がかかりやすく、つらいと感じることもあるでしょう。
注意欠如多動性障害(ADHD)のある方の場合は、興味のあることややってみたいことに何でも飛びついてしまい、気づいたら食事や睡眠時間を削らなければならないほど忙しくなっていることがあります。
いわゆるキャパオーバーの状態になり、つらいと感じることがあるでしょう。
自己否定感の高さ
発達障害のある方は、学校や仕事で集中力を保つことが難しく、ケアレスミスを連発したり締切に間に合わなかったりすることが多く、人間関係や仕事のトラブルに発展したり、先生や上司に怒られたりすることがあります。
また、自分がやりたいこと以外にはまったく興味がなく、やりたくないことは絶対にやらないといった特性から学校や職場で孤立してしまい、どこにも自分の居場所がないように感じることもあるでしょう。
「なぜ自分は何をやってもうまくいかないのだろう」「自分には何の価値もない」「なぜみんなと同じようにできないのだろう」など、自己否定感を覚えてつらいと感じ、人と関わることがしんどくなってしまいます。
発達障害の子どもを持つ家族のつらさとは?

発達障害で一番つらい思いをしているのは本人ですが、家族も同じように大きなストレスを感じる場面があります。
特に、発達障害のある子どもを持つ保護者は、育児や日常生活の中で予測できない出来事や感情の起伏に対応しなければならないため、つらいと感じることが多いのではないでしょうか。
発達障害は外見ではわかりにくく、周囲の理解を得られないこともあります。
友達とトラブルになって説明を求められるときや、どうしてダメなのか子どもの特性に合わせながら説明するときの心労も大きいものです。
買い物に行ったり公園で遊んだりする際も常に周りに気を配る必要があり、心が折れてしまいそうになる保護者もいるでしょう。
発達障害の子どもと保護者がうまく向き合うには、子どもの特性を理解し、冷静に対応することが大切です。
その際、発達障害に詳しい専門家のサポートを受けることも有効です。
完璧を目指しすぎず、余裕を持って接することで、よりよい関係を築いていきましょう。
発達障害のつらさを和らげる工夫

発達障害のつらさを解消するためには、原因となる特性を把握し、家族や周囲の人に理解を求めたり感覚過敏の対策をしたり、自分の特性に合った仕事を選んだりといった工夫をすることが重要です。
それと同時に専門機関に相談して適切なサポートを受け、つらい気持ちが生じにくい環境を整えるようにしましょう。
ここでは、発達障害のつらさを和らげる工夫を紹介します。
自分の特性をきちんと知る
発達障害のつらさを和らげるには、まずは自分の特性をきちんと知ることから始めましょう。
社会性・コミュニケーション・想像力の3つの能力に特徴がみられる場合が多いですが、感覚過敏や不注意、衝動性、多動性、運動、読み書き、計算が苦手といった特性がある可能性もあります。
特性の現れ方は一人ひとり異なるため、自分はどのようなことが苦手なのか、反対に何が得意なのかを考えてみましょう。
特性を理解できれば、自分に合った生活上の工夫が見つかるだけでなく、事前につらいと感じる状況を避け落ち着いて対処したり、必要であれば周囲に助けを求めたりできるようになります。
家族や周囲の人に発達障害への理解を求める
発達障害は、本人だけでなく家族や周囲の人の理解を深めることが非常に大切です。
最近はSNSやメディアで発達障害という言葉をよく見聞きするようになりましたが、まだなんとなく知っているだけで理解が深いとはいえません。
家族や周囲の人に発達障害のことを理解してもらうには、きちんと相手に伝わるような環境を整えることが大切です。
相手に理解してもらいたい情報を自分自身がきちんと理解したうえで、他者にわかりやすく説明できるようにしておきましょう。
複数の人に自分の特性を伝えたい場合は、自分自身の「取り扱い説明書」を作っておくと、説明がしやすくなります。
感覚過敏の対策をする
大きな音やガヤガヤした音が嫌い、まぶしい光が苦手など、感覚過敏がある場合は、一つひとつの症状に対策を行いましょう。
感覚過敏の対策には、以下のようなグッズが有効です。
- 音への対策:イヤーマフ、ノイズキャンセリングのイヤフォン
- 光への対策:サングラス、パーテーション
感覚過敏に役立つグッズは数多くあるため、自分に適したものを見つけ、心地よく過ごせるように対策するのがおすすめです。
自分の特性に合った仕事を選ぶ
発達障害があると、苦手な業務に対応できなかったりミスをしてしまったりと、仕事に関するお悩みを抱えることがよくあります。
発達障害がない場合も同じではありますが、自分の得意なこと・不得意なことから、仕事の向き不向きを考えれば、自分に合った仕事を選びやすくなるでしょう。
例えば、注意欠如多動性障害(ADHD)のある方は、興味のあることに高い集中力を発揮でき、豊富なアイデアを出せる一方で、マルチタスクが苦手で複数の作業を同時に行うのが難しい傾向があります。
そのため、自分が興味や関心のあることで専門的な知識や技術を必要とする仕事や、アイデアを自由な発想で形にできる仕事などを選ぶとよいでしょう。
専門機関のサポートを受ける
発達障害でつらいのに相談する相手がいない、家族や友人に相談しても解決できなかった場合は、必要に応じて専門機関のサポートを検討してみるのがおすすめです。
例えば、カウンセリングでは普段学校や職場では言えない気持ちを安心して話せるだけでなく、専門家からの適切なアドバイスが受けられます。
子どもの発達障害についての相談ができるのは、以下のような専門機関です。
- 発達障害者支援センター
- 児童発達支援センター
- 精神保健福祉センター
- 保健所・保健センター
- 子育て支援センター
- 児童相談所 など
大人の発達障害も、精神科や心療内科などの医療機関、発達障害者支援センターで相談できます。また、発達障害ナビポータルでは、発達障害全般に関する情報収集も可能です。
医療機関で検査を受け、発達障害の診断がついた場合は、さまざまな行政サービスや支援を受けやすくなります。
診断を受けるか悩んだ場合は、医師や臨床心理士のような専門家にオンラインで相談できるサービスを利用してみるのもおすすめです。
発達障害のつらさは特性を理解することが解決の一歩
発達障害は生まれつきみられる脳の発達の違いによって起こっているため、やみくもに努力をしても解決できず、より一層つらくなってしまう可能性があります。
対人関係や環境の変化、感覚過敏によるストレス、生活リズムの乱れ、自己否定感の高さなど、発達障害のつらさは一人ひとり異なります。
十人十色のつらさを解消するためには、自分の特性についてきちんと知り、家族や周囲の人に理解してもらえるように働きかけることも重要です。
それに加え、感覚過敏の対策や自分の特性に合った仕事選び、専門機関のサポートなど、日常生活や社会生活をスムーズに送るために必要な工夫をするようにしましょう。
『かもみーる』では、医師監修のオンライン診療・オンラインカウンセリングサービスを提供しています。
医師のほか、臨床心理士や公認心理師を中心とした有資格者が、発達障害に関する相談も受け付けています。
発達障害によるつらさを感じている方、子どもの発達障害でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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