一人でいられないのは不安障害の症状?日常生活への影響や治療方法・対処法について解説

更新日 2025年07月14日

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「一人でいるのが怖い」「誰かがそばにいないと落ち着かない」といった感情が長く続く場合は、不安障害の疑いがあります。

不安障害は日常生活に支障をきたすほどの強い不安や恐怖を伴う精神疾患で、パニック障害や社交不安障害、分離不安症などさまざまなタイプが存在します。

自己判断で放置していると症状が悪化し、日常生活にさらに制限がかかってしまう恐れもあるため注意が必要です。

この記事では、「一人でいられない」と感じる原因について解説します。

不安障害の症状や治療方法、対処法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

一人でいられないのは不安障害の疑いあり

「一人でいると不安になる」「誰かと一緒にいないと落ち着かない」といった状態が続く場合は、不安障害の可能性があります。

不安障害とは、日常生活に支障をきたすほどの強い不安を感じる精神疾患で、『パニック障害』『社交不安障害』『限局性恐怖症』『分離不安症』などが含まれます。

これらの障害では、『予期不安』と呼ばれる、まだ起こっていないことに対する恐れが強く表れるのが特徴です。

例えば「また発作が起きたらどうしよう」「人に見られて笑われたらどうしよう」といった思考が離れず、次第に一人で行動することが困難になります。

ここでは不安障害のうちの上記4種類についてそれぞれ解説します。

パニック障害

パニック障害は、突然強い不安に襲われ、動悸や息切れ、めまい、発汗などのパニック発作が繰り返し起こる障害です。

発作そのものもつらいですが、「また発作が起きるのではないか」という予期不安がさらなる問題を引き起こします。

この予期不安から、過去に発作を経験した場所や状況を避けるようになり、一人で外出できなくなることもあります。

特に『広場恐怖症』と呼ばれる状態になると、人混みや乗り物、閉ざされた空間などで発作が起きることを恐れ、一人での行動が制限されるようになるのです。

結果として外出を控え、自宅に引きこもってしまうケースもあります。

こうした悪循環を断ち切るには、薬物療法や認知行動療法による早期治療が重要です。

社交不安障害

社交不安障害は、人前で話す、注目される、初対面の人と接するなど、対人場面において強い不安を感じる障害です。

「他人にどう思われるか」が気になって仕方がない点が特徴で、「恥ずかしい思いをしたくない」「失敗したらどうしよう」と考えることで、人と接する場面を避けるようになります。

中には人と関わることを極端に恐れて孤立してしまい、結果として一人で過ごすことが増える場合もありますが、「一人でいたくない」「孤独がつらい」と感じる矛盾した思いに悩むことも少なくありません。

限局性恐怖症

限局性恐怖症は、高所・閉所・虫・血液など、特定の対象や状況に対して強い恐怖を感じる障害です。

典型的なものでは、高所恐怖症や密閉空間恐怖症が挙げられます。

恐怖の対象が限定的であるため日常生活に大きな影響がないケースもありますが、例えば「一人でいること」に対して恐怖を感じるようになると、生活の質が大きく損なわれます。

特に夜間の一人時間や静寂が続く空間などが恐怖の対象になると、常に人と一緒にいようとする依存的な行動に至ることも珍しくありません。

分離不安症

分離不安症は、特定の人物や場所から離れることに対して強い不安を覚える障害です。

特に子どもに多く見られますが、大人にも起こることがあります。

成人の場合は配偶者や恋人、家族などに対して過度に依存し、一人になることを非常に怖がる傾向があります。

例えば愛着のある人がそばにいないと不安で落ち着かず、外出を避けたり一人での睡眠を拒否したりと、日常生活に支障をきたすこともある点が特徴です。

心理療法によって心の根本にある原因を探り、自立心を育てる支援が必要となります。

不安障害による日常生活への影響

不安障害は単なる心配性とは異なり、生活のあらゆる場面に影響を及ぼす精神疾患です。

代表的な症状であるパニック発作、予期不安、回避行動が日常生活の妨げになります。

ここではこれら3つの症状について解説します。

パニック発作

パニック発作は不安障害の中でも特に大きな症状の一つで、突然理由もなく強い恐怖や不安に襲われます。

発作中は心拍数の急上昇、息苦しさ、めまい、発汗、震え、胸の圧迫感など、さまざまな身体症状が一気に現れます。

「このまま死んでしまうのではないか」と感じるほどの恐怖を経験し、特に公共の場や一人のときに発症した場合は、その記憶が強く残ってしまう場合が多いです。

発作自体は10〜30分ほどで治まることが多いものの、再発の恐れから生活に支障が出るケースが少なくありません。

パニック発作が繰り返されると、「発作が起こりそうな場所を避けよう」という思考につながり、行動制限が始まります。

予期不安

予期不安とは、まだ発作が起きていないにもかかわらず、「また発作が起こるかもしれない」「発作が起きたら逃げられないのでは」といった恐怖や不安を抱き続ける状態です。

例えば「次の会議で倒れたらどうしよう」「電車に乗っている途中で具合が悪くなったら?」といった思考が離れず、日常の行動すべてに不安がつきまとうようになります。

特にパニック発作を起こした場所に行くと不安が強くなる傾向があります。

また予期不安の症状の重さには個人差があります。

軽度では何とか外出できる人でも、重度になると一人で外出できずに自宅に引きこもることもあるため、早めの対処が重要です。

回避行動

回避行動とは、不安や恐怖を感じる状況を避けるために、特定の場所や行動を控えるようになることです。

例えば以前に発作を起こした場所に再び行くことを避けたり、人が多い場所や閉鎖空間を避けたりする行動がこれにあたります。

こうした行動は一時的には安心感をもたらすかもしれませんが、長期的には不安の対象を「危険なもの」として脳に強く刷り込む結果となり、不安がますます強くなる可能性があります。

回避行動が広がると外出自体を避けるようになり、仕事や学校、人間関係にまで影響が及んでしまうため注意が必要です。

不安障害の治療においては、この回避行動を減らすことが重要で、認知行動療法などの心理的アプローチが有効とされています。

不安障害に対する治療方法

不安障害に対する治療方法は**『精神・心理療法』『薬物療法』**の2つがあります。

どちらが適しているかは症状の程度や患者さん本人の希望、生活環境によって異なるため、医師と相談しながら方針を決めることが大切です。

治療には時間がかかることもありますが、継続的に取り組むことで症状の改善が期待できます。

ここでは上記2つの治療方法についてそれぞれ解説します。

精神・心理療法

精神・心理療法は、不安障害の根本的な原因にアプローチする治療方法で、特に**『認知行動療法』**がよく用いられています。

これは不安を引き起こす思考のクセや行動パターンを見直し、現実的な考え方へと修正していく方法です。

例えば「発作が起きたらどうしよう」という過剰な心配に対して、「本当にその可能性は高いのか」といった現実的な視点を持てるよう導きます。

また不安を感じる状況にあえて身を置くことで、その恐怖を少しずつ和らげていく『曝露療法』も有効です。

こうした治療方法は症状に対処するのみでなく、再発予防や自信の回復にもつながります。

カウンセラーや臨床心理士のサポートのもとで進めることが多いですが、自習用のワークブックなどを活用したセルフケアも可能です。

薬物療法

薬物療法は、不安障害による強い症状を緩和するために効果的な治療方法の一つです。

主に使用される薬は、抗うつ薬の『SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)』や『SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)』、即効性のある**『抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)』**などです。

SSRIは不安の原因となる脳内物質セロトニンのバランスを整える作用があり、持続的に症状を和らげるのに適しています。

ただし効果が現れるまでに数週間かかり、副作用が出るリスクもあります。

一方、抗不安薬は即効性がありますが、依存性やふらつきといったリスクがあるため、長期使用には注意が必要です。

薬物療法は対症療法ではありますが、補助的な手段として有効活用できます。

不安障害で一人が怖いときの対処法

不安障害で一人が怖いときの対処法として、以下が挙げられます。

  • 不安を感じたら無理せず休む
  • 気分転換をする
  • 規則正しい生活習慣を身につける
  • 信頼できる人に相談する
  • 心療内科・精神科を受診する

ここでは上記5つの対処法についてそれぞれ解説します。

不安を感じたら無理せず休む

不安を強く感じたときは、まず無理をせずに心と体を休めることが大切です。

不安やストレスが蓄積すると、自律神経が乱れ、さらに不安症状が強まってしまいます。

そんなときは一度立ち止まり、深呼吸をしてみましょう。

静かな場所に座って、ゆっくりと息を吸って吐くことで、リラックス効果が期待できます。

また疲れが溜まっているときには、早めに布団に入り、質のよい睡眠をとるのも効果的です。

不安を感じると「頑張らなきゃ」と無理をしてしまいがちですが、休むことも大切な自己管理の一環です。

まずは自分の状態を受け入れ、安心できる時間を作るよう意識してみましょう。

気分転換をする

不安な気持ちで一杯になってしまったときは、意識的に気分転換を取り入れてみましょう。

人は同じ思考にとらわれ続けると、さらに不安が強くなってしまう傾向があります。

そのため気持ちを切り替えるために、好きな音楽を聴いたり、映画を観たり、本を読んだりといった気を紛らわせる行動を用意しておくと安心です。

大切なのは「不安をなくそう」と力むのではなく、「不安に支配されない時間」を意識的に作ることです。

自分が安心できる行動リストをスマホなどにメモしておくと、いざというときに役立ちます。

規則正しい生活習慣を身につける

心の不安は生活の乱れと深く関係しています。

睡眠時間が不規則だったり朝食を抜いたりすると、自律神経のバランスが崩れやすくなり、不安感が高まりやすくなります。

そのため、不安障害を抱えているときほど規則正しい生活を意識することが大切です。

具体的には以下のような生活習慣を意識するとよいでしょう。

  • 毎日同じ時間に起床・就寝する
  • 朝起きたら太陽の光を浴びる
  • 食事は1日3食決まった時間に摂る
  • 栄養バランスの整った食事を心がける

日々の生活習慣を整えることで身体のリズムが整い、心も次第に落ち着いていきます。

生活の基盤が安定すると、一人の時間に感じる不安も軽くなる可能性があります。

一度にすべて改善しようとするのではなく、まずは小さな習慣から始めてみましょう。

信頼できる人に相談する

不安を一人で抱えていると、どんどん思考がネガティブな方向に向かってしまいます。

そんなときは、信頼できる人に自分の気持ちを話してみましょう。

話すことで気持ちが整理され、不安が軽くなることがあります。

「こんなことを話してもいいのかな」「迷惑じゃないかな」と思う必要はありません。

また他人に話すことで客観的な視点が得られ、自分では気づかなかった考え方のクセに気づくこともあります。

もし身近に話せる人がいない場合は、電話相談やカウンセリングサービスを利用するのも一つの方法です。

心療内科・精神科を受診する

「一人でいるのが怖い」「不安が長く続いている」と感じる場合は、医療機関の受診を検討しましょう。

不安障害は専門的な治療によって改善が期待できる疾患です。

心療内科や精神科では、精神療法や薬物療法など患者さんの希望や症状に合わせた治療方針が立てられます。

つらい症状は一人で抱え込まず、早めに心療内科や精神科に相談しましょう。

一人が怖いのは不安障害の疑いがあるため早めに医療機関を受診しましょう

「一人でいられない」という不安は、単なる気の持ちようではなく、不安障害という精神疾患が関係していることがあります。

パニック発作や予期不安、回避行動が日常生活に影響を及ぼし、孤独への恐怖をさらに強めてしまうこともあります。

そんなときは無理をせずしっかりと休息をとり、気分転換や生活リズムの見直しを心がけてみましょう。

また必要に応じて、専門医に相談することも検討してみてください。

かもみーる心のクリニック仙台院は、心のさまざまな症状の診断・治療を行っています。

対面での心理カウンセリングも行っているため、不安障害に関するお悩みがある方はぜひ当院までご相談ください。

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