更年期障害は何歳から始まる?具体的な期間や主な症状について解説
更新日 2025年07月10日
更年期障害
更年期障害は、日常生活に支障をきたすイメージがあることから、更年期と呼ばれる年齢に差し掛かる女性は不安を感じることも少なくありません。
また、すでに更年期に差し掛かり、更年期障害の症状を感じている方は、自分に生じている症状が更年期によるものなのか、気になるところです。
一般的には閉経前後の45歳〜55歳頃までの約10年間を『更年期』と呼びます。
しかし、実際には30代後半からホルモンバランスの変化による不調を感じる方も少なくありません。
この記事では、更年期障害が始まる時期について詳しく解説します。
更年期障害の主な症状や治療方法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
更年期障害とは?

更年期障害は、閉経前後に女性ホルモンの分泌が急激に減少することで、心身にさまざまな不調が現れる状態です。
一般的に閉経を挟んだ前後約10年間(45〜55歳)を『更年期』と呼び、この時期に起こる不調を『更年期症状』といいます。
その中でも、症状が重くなり日常生活に支障をきたす場合は『更年期障害』として治療が必要になることがあります。
この障害はホルモンバランスの乱れだけでなく、加齢による体の変化、心理的ストレス、社会的環境など複数の要因が複雑に絡み合って起こるものです。
例えば家庭での役割の変化、子どもの独立、職場での立場の変化などがストレスとなり、症状を悪化させるケースもあります。
具体的な症状には、ほてりや発汗、動悸、疲れやすさ、イライラ、不眠、うつ症状などがあり、個人差が大きいのが特徴です。
軽い違和感程度で済む方がいる一方で、寝込むほど重い症状に悩まされることもあります。
早めに自身の体の変化に気づき、必要に応じて医療機関で相談することが大切です。
更年期障害は何歳から何歳まで?

更年期は一般的に閉経の前後5年間、『45歳頃から55歳頃まで』の約10年間の期間を指します。
しかし実際には女性ホルモンの分泌が徐々に変化し始める時期や、体調への影響が現れる時期には個人差があります。
ここでは更年期障害が起こる時期について解説しましょう。
更年期は45歳頃から始まる
更年期は一般的に45歳前後から始まるとされています。
この頃から卵巣の機能が徐々に低下し、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が不安定になります。
その結果、月経周期が乱れたり、ほてり、発汗、イライラ、不安感などの更年期症状が現れるようになるのです。
全ての人に同じ症状が出るわけではなく、軽く済む人もいれば、日常生活に支障をきたすほど重症化する人もいます。
症状がつらい場合には、医療機関の受診を検討しましょう。
更年期が終わるのは55歳頃
更年期が終わるのは、閉経後の5年間を目安とした55歳前後とされています。
閉経とは、1年間月経が来ないことで診断されるもので、日本人女性の平均的な閉経年齢は約50歳です。
閉経後も体はすぐには安定せず、数年間にわたりホルモンの変化による影響が続きます。
この期間を通して、次第にホルモンの変動が落ち着き、心身ともに安定を取り戻していくことが多いです。
35歳~45歳頃はプレ更年期
プレ更年期は、まだ閉経には達していないものの、体内で女性ホルモンの分泌が減り始める35歳〜45歳頃の時期を指します。
この時期から少しずつ月経の変化や軽い疲労感、イライラ、睡眠の質の低下などが現れることがあります。
日々の忙しさや加齢による変化と重なり、不調を見過ごしてしまうことも少なくありません。
55歳以降はアフター更年期
更年期が終わる55歳以降は『アフター更年期』または『ポスト更年期』と呼ばれる時期に入ります。
この時期には、女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)の分泌がほとんどなくなり、更年期に起こっていたような急激な心身の変化は次第に落ち着いていきます。
しかしホルモンの低下により生活習慣病や骨粗しょう症、糖尿病、子宮体がんといった病気の発症リスクが高まる時期でもあるため注意が必要です。
更年期障害の主な症状

更年期障害の主な症状として、以下の6つが挙げられます。
- 月経異常
- ほてりや動悸など循環器系の症状
- イライラや不安などの精神神経症状
- 肩こりや腰痛などの運動器系の症状
- 嘔吐や腹痛などの胃腸系の症状
- 泌尿器系の症状
ここでは上記6つの症状についてそれぞれ解説します。
月経異常
更年期のはじまりを知らせるサインのひとつが、月経の変化です。
卵巣の機能が徐々に衰えることで、月経の周期や量に異常が見られるようになります。
月経異常の主な症状は以下の通りです。
- 月経周期が不規則になる
- 月経量が極端に増えるまたは減る
- 月経期間が長引く
- 無月経(3か月以上月経がない)
- 月経痛が強くなる
これらの症状はホルモンバランスの乱れによるもので、閉経に向けての自然な変化といえます。
しかし子宮筋腫や子宮内膜症などの病気が隠れていることもあるため、出血量の異常や痛みが強い場合は婦人科を受診しましょう。
ほてりや動悸など循環器系の症状
更年期に特に多く見られるのが、血管運動神経症状とも呼ばれる循環器系の不調です。
これは自律神経の乱れやエストロゲンの急激な減少が原因とされています。
循環器系の主な症状は以下の通りです。
- 顔や上半身が急に熱くなる(ホットフラッシュ)
- 大量の発汗
- 動悸
- 寒気や冷え
- 息切れや息苦しさ
- めまいやふらつき
これらの症状は緊張していない場面でも突然あらわれることがあり、日常生活に支障をきたすこともあります。
特にホットフラッシュや動悸は、更年期の典型的な症状としてよく知られています。
自律神経のバランスを整えることが症状の緩和につながるため、リラックス法や生活習慣の見直しが効果的です。
イライラや不安などの精神神経症状
心に不調が現れるのも更年期障害の大きな特徴です。
女性ホルモンの急激な減少により、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、感情のコントロールが難しくなります。
精神神経系の主な症状は以下の通りです。
- イライラしやすくなる
- 怒りっぽくなる
- 気分が落ち込む
- 不安感が強まる
- やる気が出ない、無気力
- 集中力の低下
- 物忘れ
- 不眠
- 涙もろくなる
これらの症状は、自分自身でも理由がわからずつらく感じることが多いのが特徴です。
さらに周囲からの理解が得られにくく、孤独感やストレスを抱えてしまう人も少なくありません。
特に不眠や物忘れ、仕事への意欲低下などが重なると、生活全体の質が落ちてしまうことがあります。
肩こりや腰痛などの運動器系の症状
更年期に多くの女性が訴えるのが、肩や腰を中心とした運動器系の不調です。
これらは年齢による筋力の低下や姿勢の変化だけでなく、女性ホルモンの減少により筋肉や関節の柔軟性が低下することも関係しています。
運動器系の主な症状は以下の通りです。
- 慢性的な肩こり
- 首や背中の張り
- 腰痛
- 関節痛
- 手指のこわばり
- 身体のしびれやむくみ
これらの症状は更年期の女性に特に多く見られ、場合によってはリウマチなどの疾患と間違われることもあります。
朝起きたときに手指がこわばる、長時間同じ姿勢でいると腰が痛くなる、といった日常的な困りごとが増えるのもこの時期の特徴です。
ストレッチや適度な運動、バランスの取れた食事で筋肉量を保つことが症状の緩和につながります。
嘔吐や腹痛などの胃腸系の症状
更年期には、自律神経のバランスが乱れることで消化器系にも影響が及びます。
特に胃腸に不調を感じる女性が多く、以前はなんともなかった食事で胃もたれを起こしたり、急に吐き気を感じたりすることがあります。
胃腸系の主な症状は以下の通りです。
- 吐き気や嘔吐
- 腹痛
- 下痢や便秘の繰り返し
- 食欲不振
- 胃のむかつき、胃もたれ
- お腹の張り
これらの症状はストレスや食生活の乱れと混同されがちですが、ホルモンバランスの変化による消化機能の低下が関与している場合もあります。
症状が続くと体重減少や栄養不足にもつながるため、我慢せず医療機関を受診することが大切です。
泌尿器系の症状
更年期になると、泌尿器系のトラブルも目立ち始めます。
これは女性ホルモンの減少によって膀胱や尿道周辺の粘膜が萎縮しやすくなるためです。
また、筋力の低下によって排尿に関するコントロールが難しくなることも関係しています。
泌尿器系の主な症状は以下の通りです。
- 頻尿
- 残尿感
- 尿漏れ
- 排尿時の痛みや不快感
これらの症状は膀胱炎や過活動膀胱などの泌尿器疾患とも似ているため、違和感を覚えた場合は婦人科や泌尿器科の受診を検討しましょう。
特に尿漏れは外出をためらうきっかけになったり、自信を失わせたりと、精神面にも影響を与えやすい症状です。
軽い段階であれば、骨盤底筋群を鍛える体操や膀胱トレーニングで改善が期待できます。
更年期障害の対処法・治療方法

更年期障害の対処法・治療方法として、以下が挙げられます。
- ホルモン補充療法
- 漢方薬
- 向精神薬
- 運動療法
- カウンセリング
ここでは上記5つの対処法・治療方法について解説します。
ホルモン補充療法
ホルモン補充療法は、更年期障害の根本原因である女性ホルモンの減少を補うことで、症状を改善する治療法です。
特にほてりや発汗、動悸といった自律神経系の症状に対して高い効果があるとされています。
ホルモン補充療法にはエストロゲン単独療法と、エストロゲン・黄体ホルモン併用療法の2種類あります。
黄体ホルモンを組み合わせる理由としては、エストロゲン投与による子宮内膜増殖症や子宮内膜がんのリスクを減らすためです。
基本的には以下のように治療方法を使い分けます。
- エストロゲン単独療法:手術で子宮を摘出した方に行う
- エストロゲン・黄体ホルモン併用療法:子宮が健康的で病気のリスクを抑える必要がある場合に行う
この治療方法で用いられるホルモン剤は、飲み薬や張り薬、塗り薬、腟錠などの種類があります。
一時期、ホルモン補充療法の副作用として乳がんリスクが懸念されたこともありますが、現在は医師の指導のもとで行えば適切な治療が可能です。
漢方薬
漢方薬は体全体のバランスを整えることで症状を和らげる治療法で、特に更年期障害のように心身にさまざまな症状が現れる場合に有効です。
西洋医学が『症状そのもの』に対処するのに対し、漢方は『体質や体全体の状態』に焦点を当て、自然治癒力を高めることを目的としています。
代表的な処方として、以下が挙げられます。
- 当帰芍薬散:冷えや貧血、疲れやすさなど
- 加味逍遥散:イライラや不眠など
- 桂枝茯苓丸:のぼせや下腹部の違和感など
体質や症状に応じて処方が変わるため、専門の医師に相談することが大切です。
漢方薬は副作用が比較的少なく、長期的に使用できる魅力もあります。
向精神薬
更年期障害で気分の落ち込みやイライラ、不安感、不眠などが強く現れる場合には、向精神薬による治療が有効です。
向精神薬には抗うつ薬や抗不安薬、睡眠導入剤などが含まれ、症状の程度に応じて適切な薬が処方されます。
近年はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が使われることが多いです。
これらの薬は副作用が少なく、身体的な症状(ほてり・発汗など)にも効果があることが報告されています。
精神的な不調は外からは見えにくく我慢しがちですが、放置すると社会生活や家庭生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。
つらいと感じたときには無理をせず、早めに専門医へ相談し、適切な治療を受けることが大切です。
運動療法
更年期障害の症状を緩和するための有効なセルフケアの一つとして、運動療法が挙げられます。
特に更年期はエストロゲンの減少により骨密度が低下しやすくなるため、筋力や骨を強化するために適度に運動することが大切です。
さらに適度な運動は自律神経の安定にも効果があり、ほてりや不眠、気分の落ち込みといった症状の改善にも役立ちます。
運動を行うことで血流が良くなり、肩こりや腰痛、冷えの緩和にもつながります。
有酸素運動やストレッチ、ヨガ、ピラティスなどの運動を無理のない範囲で取り入れてみましょう。
カウンセリング
更年期においては、身体だけでなく心のケアも非常に重要です。
特に家庭や職場での人間関係、将来への不安、孤独感などが心身の不調を悪化させる要因になることがあります。
こうした背景にアプローチする手段として、カウンセリングが有効です。
臨床心理士やカウンセラーとの対話を通じて、今抱えている悩みを言葉にすることで、気持ちが楽になることがあります。
必要に応じて、医師と連携しながら治療計画を立てるケースもあります。
誰かに話すことで前向きになれたり、問題の捉え方が変わったりすることもあるため、更年期の不調がつらいときにはカウンセリングを受けることも検討してみましょう。
45歳頃から体調が変化したら更年期障害を疑いましょう
更年期障害は多くの女性に訪れる自然な変化のひとつで、主に45〜55歳の間に現れますが、人によってはその前後にも症状が出ることがあります。
プレ更年期やアフター更年期といった時期も含め、自身の体調の変化に気づきやすくなることが大切です。
不調を感じたら、我慢せず早めに医療機関を受診しましょう。
かもみーる心のクリニック仙台院では、精神的に疲弊した方が、可能な限り当日に受診できるように努力しています。
更年期の症状にお悩みの方は、ぜひ気軽にご相談ください。