「最近、胃がキリキリ痛む」
「食事をすると胃が重たい」
そんな症状に悩まされ、病院で検査を受けても異常が見つからず、「ストレスが原因かもしれませんね」と告げられて戸惑う方も少なくありません。
実は、ストレスによって胃の働きが乱れ、痛みや不快感が起こるケースは意外と多くあります。
とはいえ、そのまま我慢を続けていると症状が悪化し、日常生活にも支障をきたす恐れがあるため注意が必要です。
この記事では、ストレスが原因で起こる胃痛のメカニズムや考えられる病気、効果的な対処法、そして受診すべき診療科について、わかりやすく解説します。
「もしかして胃が痛いのはストレスのせい?」と感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。
胃が痛い……主な原因はストレスや食生活

胃痛は多くの人が経験する身近な症状ですが、その背景にはストレスや食生活の乱れといった生活習慣が深く関わっています。
ストレスや暴飲暴食による胃酸分泌の過剰、そして胃粘膜を守る機能(防御機能)の低下は代表的です。
こうした要因が重なることで、胃の粘膜が傷つき、痛みや不快感を引き起こします。
場合によっては、単なる胃痛にとどまらず、胃炎や胃潰瘍といった疾患につながるケースもあります。
また、思わぬ病気が隠れていることもあるため、「よくあること」と放置せず、原因を正しく理解しておくことが大切です。
ストレスと胃痛の関係
仕事や人間関係などのストレスは、胃痛の主な原因の一つです。
胃の働きは、自律神経によってコントロールされています。
自律神経は、胃酸や胃粘液の分泌、胃の運動などを調整する重要な役割を担っていますが、ストレスの影響を強く受けやすいのが特徴です。
ストレスを受けると、自律神経のバランスが乱れ、以下のような影響が現れることがあります。
- 胃の異常収縮(けいれん)
- 胃酸の過剰分泌
- 胃粘液の分泌不足
その結果、胃粘膜を守る力が弱まり、胃酸によって粘膜が傷ついて胃痛が起こることがあるのです。
特に空腹時は胃の中に食べ物がないため、胃酸によるダメージを直接受けやすく、痛みが強く出ることがあります。
このような状態を放置してしまうと、慢性的な胃炎や胃潰瘍に進行する可能性もあるため、早めの対処が必要です。
食生活が胃痛の原因となることも
日々の食生活も、胃痛の原因になることがあります。
例えば、次のような習慣は胃に大きな負担をかけると考えられています。
- 辛い料理や脂質が多いものの摂り過ぎ
- アルコール・カフェインの過剰摂取
- 食べ過ぎ、早食い
- 喫煙
辛い食べ物、アルコール、カフェインなどの刺激物を摂り過ぎると、胃粘膜を直接刺激し、傷つけやすくします。
さらに、喫煙は胃の血流を悪化させ、防御機能の低下につながるため注意が必要です。
胃が痛いとき、ストレス以外に考えられる原因

胃が痛いとき「ストレスかな?」と思っても、その原因がストレス以外にあることもあります。
特に慢性的な痛みが続く場合や、症状が悪化しているように感じる場合は、ほかの病気の可能性も視野に入れておくことが大切です。
ピロリ菌の感染
胃痛の原因の一つとして知られているのが、ピロリ菌(正式名称:ヘリコバクター・ピロリ)への感染です。
ピロリ菌に感染すると、菌が作り出す毒素などによって胃粘膜に炎症が起きたり、胃粘液機能の低下を招いたりすることで、胃酸によるダメージを受けやすくなります。
感染していても症状が出ないこともありますが、放置していると以下のような病気のリスクが高まるため注意が必要です。
- 胃潰瘍
- 十二指腸潰瘍
- 胃がん
現在では、胃カメラ検査を受け、慢性胃炎と診断されるなどの条件を満たせば、ピロリ菌の検査と除菌治療が健康保険適用で受けられます。
慢性的な胃の痛みや不快感がある場合は、ピロリ菌の有無を一度確認しておくとよいでしょう。
何らかの病気
ストレスやピロリ菌以外にも、胃痛の背後にはなんらかの病気が潜んでいる可能性があります。
特に以下のような疾患は、初期症状として胃痛を伴うことがあります。
- 胃食道逆流症(GERD):胃酸が食道に逆流し、胸やけや胃の不快感を引き起こす
- 胃がん:早期には自覚症状が乏しいものの、進行に伴い胃痛や食欲不振などが現れる
これらの病気は、早期発見・早期治療が重要です。
痛みが長引いたり、食欲低下や体重減少、吐き気などの症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
ストレスによる胃痛から引き起こされやすい疾患

ストレスで胃が痛い場合、「我慢すれば何とかなる」と受診を控えてしまう方もいます。
しかし、ストレスによる胃痛が進行したり、慢性化したりすると疾患につながることもあるため、早めに受診するようおすすめします。
ストレスによる胃痛から引き起こされやすい疾患をみていきましょう。
機能性ディスペプシア(FD)
機能性ディスペプシアとは、胃の不快感やみぞおちの痛み、胸やけなどがあるにもかかわらず、検査では明確な異常が見つからない疾患です。
胃炎や潰瘍と似た症状を示しますが、内視鏡検査などで異常が確認されない点が特徴です。
また、ストレスや生活習慣の乱れが原因とされており、再発しやすい特徴もあります。
症状の背景に重大な病気が隠れている可能性もあるため、継続的に医療機関で経過観察を受けることが推奨されます。
胃・十二指腸潰瘍
胃・十二指腸潰瘍は、胃酸の過剰分泌と粘膜の防御機能低下によって、胃や腸の内壁が傷つき、えぐれるような状態になる病気です。
通常、胃の内側は粘液で守られていますが、ストレスやピロリ菌感染、薬の影響(NSAIDsなど)でそのバランスが崩れると、胃液によって組織が傷つき潰瘍ができてしまいます。
胃・十二指腸潰瘍の主な症状は以下のとおりです。
- 胃の痛みやみぞおちの違和感
- 胸やけ、胃もたれ
- 吐き気・嘔吐
- 黒色便(タール便)や吐血(出血を伴う場合)
黒い便が出た場合は、胃や十二指腸からの出血が疑われるため、すぐに医療機関を受診する必要があります。
過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群は、検査では異常が見つからないにもかかわらず、腹痛や便秘・下痢などの便通異常を繰り返す疾患です。
場合によっては、みぞおちのあたりに不快感や張りを感じ、「胃が重い」「胃が気持ち悪い」といった症状としてあらわれることもあります。
そのため、ストレスによる胃痛と混同されやすく、機能性ディスペプシアと併発するケースも少なくありません。
過敏性腸症候群になると、数週間〜数ヶ月にわたり以下のような症状がみられることが多いです。
- 腹痛や不快感がある
- 排便後に症状が軽減する
- 下痢と便秘を交互に繰り返す
- 便の形状に異常がある
- 残便感がある
- ストレスや緊張で症状が悪化する
特に仕事中や外出先など、すぐにトイレに行けない状況で強い不安を感じる方も多く、生活の質(QOL)を著しく低下させる疾患です。
ストレスで胃が痛いときは医療機関へ

一時的な胃痛であれば、市販薬などで症状が和らぐこともあります。
しかし、ストレスが原因の胃痛は、自律神経の乱れが関係していることが多く、放置すると症状が慢性化したり、生活に支障が出たりする可能性があります。
特に、以下のような症状が続く場合は、注意が必要です。
- 胃の痛みや不快感が1週間以上続く
- 食事をすると胃が重たく感じる
- 胃の痛みで眠れない、仕事に集中できない
- 市販の胃薬を飲んでも改善しない
- 吐き気や下痢、便秘などほかの消化器症状もある
これらの症状があったら、すぐに医療機関を受診しましょう。
まずは内科・消化器内科の受診
症状が続くときは、まずは内科や消化器内科で診察を受けるのが一般的です。
必要に応じて、胃カメラ(内視鏡検査)や血液検査、便検査などを行い、胃炎や胃潰瘍などの器質的疾患がないかを調べます。
診察時には、
- 症状の開始時期と持続期間
- 食事との関係
- 日常生活で感じているストレスや精神的負担
などをわかる範囲で具体的に伝えると、スムーズな診断・治療につながります。
事前にメモを用意しておくのも有効です。
異常がない場合はメンタルクリニックへ
検査で特に異常が見つからず、治療を続けても症状がなかなか改善しない場合は、ストレスや心の問題が関係している可能性があります。
近年では、消化器内科でも機能性ディスペプシアやストレス性の胃痛に対する治療が広く行われています。
ただし、以下のような症状がある場合には、心療内科やメンタルクリニックの受診も検討してみましょう。
- 強い不安感や落ち込みがある
- ストレスのコントロールが難しいと感じる
- 睡眠障害や意欲の低下がある
心と身体の両面からのアプローチが、症状の改善につながることもあります。
ストレスによる胃痛の治療法

ストレスが原因と考えられる胃痛では、医療機関において胃の状態を整える薬物療法とストレス対策の両面からのアプローチが行われます。
内服薬による治療
まずは、胃の痛みや不快感を和らげるための内服薬が処方されます。主な薬の種類とその効果は以下のとおりです。
薬の種類 | 主な効果 |
胃酸の分泌を抑える薬 | 胃酸の過剰分泌によって胃粘膜を刺激するのを防ぎ、痛みを軽減する |
胃粘膜を保護する薬 | 荒れた胃粘膜を修復し、症状の進行を防ぐ |
消化管の動きを整える薬 | 胃もたれや吐き気、膨満感などの症状を和らげる |
漢方薬 | ストレスによる自律神経の乱れや体質改善を目的に処方されることがある |
ストレスなど精神的な要因が強い場合は、抗うつ剤や抗不安薬(精神安定剤)が併用されることもあります。
必要に応じてカウンセリングや心理療法も
ストレスによる胃痛では、薬によって症状が一時的に改善しても、原因となるストレスそのものが解消されなければ再発するリスクがあります。
そのため、必要に応じて以下のような心理的アプローチが行われることもあります。
- カウンセリング:気持ちを整理し、ストレスの原因や対処法を明確にする
- 認知行動療法:ストレスの感じ方や思考パターンを見直し、心身の負担を軽減する
身体と心の両面から治療することで、再発の予防や生活の質の向上が期待できます。
胃が痛いとき、自分でできる対処法

医療機関での治療に加えて、日常生活の中でできるセルフケアも、ストレスによる胃痛の改善に役立ちます。
胃の調子を整え、再発を防ぐためにも、以下のポイントを意識してみましょう。
ストレスをためこまない
ストレスが原因で胃が痛くなる場合、日頃からストレスをこまめに発散することが大切です。
仕事や家庭、人間関係など、日常生活でストレスを完全になくすのは難しいものですが、ストレスを感じたときにどう対処するかが鍵となります。
例えば、以下の方法を試してみることができます。
- 趣味の時間を楽しむ
- 自然の中でリフレッシュする
- 信頼できる人に話を聞いてもらう
- ゆっくり湯船につかる
このような方法を生活の中に取り入れて、心の緊張をゆるめてあげましょう。
胃にやさしい食事を心がける
胃が痛いときは、刺激の少ない、消化に良い食事を選びましょう。
控えたい食品例は以下のとおりです。
- 唐辛子などの刺激物
- 揚げ物などの脂っこい食べ物
- コーヒー、緑茶などカフェインを含む飲み物
- アルコール類
- 甘いお菓子
- 酸味の強い果物
一方で、おかゆや雑炊、繊維の少ない野菜(じゃがいもなど)、白身魚など、消化が良く胃に負担をかけにくい食材を取り入れるのがおすすめです。
また、腹八分目を意識し、ゆっくり噛んで食べることも胃へのやさしさにつながります。
質の良い睡眠をとる
胃の働きは自律神経によって調整されており、睡眠不足や不規則な生活は胃の不調を招く大きな要因となります。
特に『交感神経(活動時)』と『副交感神経(リラックス時)』のバランスが崩れると、胃の運動や分泌機能にも影響が出やすくなります。
毎日決まった時間に寝起きし、6〜8時間の質の良い睡眠をとることを心がけましょう。
禁煙を検討する
喫煙は胃粘膜の血流を悪化させ、粘膜の防御力を低下させるといわれています。
その結果、胃酸によるダメージを受けやすくなり、胃痛や胃炎の原因になることもあります。
ストレス解消にはタバコが必要と感じている方もいるかもしれませんが、胃の健康を守るためには禁煙がおすすめです。
ストレスで胃が痛いときは我慢せずにまずは受診を
ストレスが原因の胃痛は単なる一時的な不調と捉えられがちですが、放置することで症状が悪化し、潰瘍や機能性ディスペプシアなどの疾患につながることもあります。
胃が痛い状態が続く場合は、まず内科や消化器内科を受診し、適切な検査を受けましょう。
異常が見つからない場合でも、ストレスが関係している可能性があるため、メンタル面からのアプローチで症状の改善が期待できます。
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