適応障害の人への対応方法は?付き合い方やしてはいけない声掛けなども解説

更新日 2025年07月10日

適応障害
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適応障害は、強いストレスが原因で心や体に不調が現れる病気です。

本人にとってはつらい状況が続くため、周囲の理解と適切な対応が大切です。

しかし周囲の何気ない言葉や行動が、かえって本人を追い詰めてしまうこともあります。

この記事では、適応障害の人に対する周囲の適切な対応について解説します。

適応障害の人にしてはいけない声掛けや具体的なサポート方法もまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

適応障害とは

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適応障害とは、ある特定のストレス要因によって心身にさまざまな不調が現れる病気です。

発症のきっかけは、仕事の異動や職場の人間関係、転校、離婚、家庭内トラブルなど、日常生活における出来事が多く見られます。

うつ病との違いは、原因が明確である点と、原因が取り除かれれば回復することが多い点です。

しかし放置すると症状が悪化したり、うつ病に進行することもあるため注意が必要です。

ここでは適応障害の主な症状について解説します。

▶適応障害とカウンセリングによる治療の有効性について

適応障害の身体的な症状

適応障害では、精神的なストレスが身体の不調として現れることが多いです。

代表的な症状としては以下が挙げられます。

  • 頭痛
  • 便秘・下痢
  • 腹痛
  • 疲労感
  • めまい
  • 吐き気
  • 動悸
  • 肩こり
  • 睡眠障害

これらの症状は原因となっているストレスの状況に左右されやすく、仕事がない日など、ストレスから解放されると改善するケースもあります。

適応障害の精神的な症状

適応障害の精神的な症状には以下のようなものがあります。

  • 不安感
  • 気分の落ち込み
  • 焦燥感
  • 怒りっぽくなる
  • 意欲低下
  • 集中力の低下

明るく活発だった人が突然無表情になったり、涙もろくなったりすることもあります。

さらに趣味や好きだったことにも興味を示さなくなるなど、「何も楽しめない」といった感覚に陥るケースもあります。

生活や仕事にまで支障をきたす場合には治療が必要です。

なるべく早めに精神科や心療内科を受診しましょう。

適応障害の行動面の変化

適応障害では精神的・身体的な症状に加えて、行動面にも明らかな変化が現れることがあります。

具体的には以下のようなものです。

  • 急に遅刻や欠勤が増える
  • 仕事や家事の効率が著しく低下する
  • 一人でいることを好むようになる

また感情のコントロールがうまくできず、家族や同僚とのトラブルが増える、口論が増えるといった傾向もあります。

さらに喪失感や無力感からアルコールの摂取量が増える、自暴自棄になって身だしなみに気を配らなくなるなどの行動も注意が必要です。

こうした行動面の変化は本人が気づかないこともあるため、周囲のサポートが重要になります。

適応障害の人への対応のポイント

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適応障害の人への対応のポイントとして、以下の5つが挙げられます。

  • 干渉しすぎない
  • 無理強いをしない
  • 否定せずに理解する姿勢を示す
  • 肯定的な言葉をかける
  • 専門家への相談を促す

ここでは上記5つのポイントについてそれぞれ解説します。

干渉しすぎない

適応障害の人と接するときは、親しい関係であっても干渉しすぎないように注意しましょう。

本人の力になりたいという思いから、頻繁に連絡を取ったり、あれこれとアドバイスをしたくなるかもしれません。

しかし過剰な気遣いや詮索は、かえって相手にプレッシャーや疲労感を与えてしまう可能性があります。

また心配しすぎるあまり、自分自身が疲れてしまうケースも見られます。

相手のペースを尊重し、必要なときにはいつでも支えられるという安心感を与えることが大切です。

「何かあったら話を聞くよ」「連絡はいつでも待っているよ」といった声掛けをすることで、本人と適度な距離を保ちながら支えることができます。

無理強いをしない

適応障害の人は、心や体のエネルギーが著しく低下していることが多く、普段できていたことでも困難に感じてしまいます。

そんな状態の中で「気晴らしに出かけたら?」「もう元気になったでしょ?」といった提案や行動を強要すると、相手にとっては大きな負担になってしまうのです。

たとえそれが善意からの言葉であっても、今の自分には応えられないと感じてしまい、自己否定感が強まることもあります。

適応障害の人に対しては、本人の回復ペースを尊重して無理のない範囲でできることから始められるようサポートすることが大切です。

例えば「今日は何か手伝えることがある?」といった声掛けや、「しんどかったら休んでいていいよ」といった配慮をすることで、本人の心を軽くできます。

回復を急かさず、見守ることが大切です。

否定せずに理解する姿勢を示す

適応障害の人と接する際は、相手の話に耳を傾け、どんな内容であっても否定せずに受け止める姿勢を示すことが大切です。

本人は不安や混乱、焦燥感に苛まれ、言葉にすることさえ難しい場合もあります。

そのような状況で「そんなことで落ち込むの?」「もっと前向きに考えなよ」といった否定的な反応を受けると、自分は理解されないと感じ、さらに心を閉ざしてしまう可能性があります。

「うんうん」「そう思ったんだね」と相槌を打ちながら聞くことで、安心感を与えられるでしょう。

また決して意見を押し付けず、「あなたの気持ちがわかるように努力するよ」というスタンスでいることも大切です。

共感の姿勢を大切にし、相手の思いを尊重することで、本人の支えになります。

肯定的な言葉をかける

適応障害の人は、自己評価が下がっていたり、自分に自信を持てなくなっていたりする状態にあります。

そのようなときには、前向きな言葉や励ましの声掛けをしてあげることで、心の支えになれます。

ただし根拠のない励ましや過剰なポジティブさは、かえってプレッシャーになることもあるため注意が必要です。

「今日はよく頑張ったね」「少し元気そうに見えるよ」など、相手の小さな変化や努力を肯定的に伝えることで、自分の回復を実感しやすくなるでしょう。

専門家への相談を促す

適応障害は適切な治療を受けることで症状が改善されます。

適応障害とみられる症状に悩んでいる人がいたら、専門家への相談を促してみましょう。

精神科や心療内科では、医師やカウンセラーが症状に合わせた治療やアドバイスを提供してくれます。

しかし、本人が受診に対して抵抗感を持っていることも少なくありません。

そのようなときは適応障害やうつ病などの言葉は使わず、「ずっと元気がなさそうで心配だから、一度専門家に話を聞いてもらうのもいいかもしれないね」など、優しく気持ちを伝える形で勧めてみてください。

病院名を一緒に調べてあげたり、付き添いを申し出たりするのも良いでしょう。

心の不調は恥ずかしいことではなく、適切な治療で改善が期待できる病気であることを伝えることで、本人の不安を和らげられます。

適応障害の人にしてはいけない声掛け

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適応障害の人に対して声掛けをする際は、本人の状況や気持ちを尊重し、十分に配慮する必要があります。

良かれと思って言った言葉がかえって相手の心を傷つけたり、症状を悪化させたりする場合もあるため、注意しなくてはいけません。

具体的には以下のような声掛けは避けるべきです。

  • 他の人と比較する言葉
  • 甘え・気持ちの問題と決めつける言葉
  • 回復を急かす言葉
  • 未来の話

ここでは上記4つの声掛けについてそれぞれ解説します。

他の人と比較する言葉

「もっと大変な人もいる」「あの人はもっと頑張っているのに」など、他の人と比較する言葉は適応障害に苦しむ人にかけてはいけません。

他人と比較したところで、何の意味もありません。

それどころか、自分の状態が大したことないと責めてしまったり、「自分はダメな人間なんだ」と否定的な感情が増してしまう恐れがあります。

適応障害はストレスの感じ方や耐性の違いによって症状の重さが異なるため、他人と比べることに意味はなく、むしろ逆効果です。

他者と比較するのではなく、本人の感情に寄り添うことが何よりも重要です。

甘え・気持ちの問題と決めつける言葉

「甘えているだけじゃないの?」「気の持ちようだよ」といった言葉は、相手の状態を軽視し、本人をさらに追い込んでしまう危険な表現です。

適応障害はれっきとした精神疾患であり、本人の意志や気分のコントロールではどうにもならない心身の不調です。

そのため「自分の努力が足りないせい」と責めてしまっている人にこうした言葉をかけると、さらに自己否定を強めてしまいます。

さらに適応障害に対する理解の浅い言葉は、信頼関係を損なう原因にもなりかねません。

相手のつらさを正面から受け止め、「苦しいときは誰にでもある」「あなたのつらさはあなたにしかわからない」と認める姿勢が大切です。

言葉ひとつで救われることもあれば、傷つくこともあるということを意識しましょう。

回復を急かす言葉

「元気出して」「頑張って」といった励ましの言葉は、意図せず相手を追い詰めてしまうことがあります。

適応障害の人はすでに限界まで努力し、自分を保つのに必死な状態です。

そこにさらに「もっと頑張れ」というメッセージが加わると、「頑張れていない自分はダメなんだ」と自己否定に陥ってしまうこともあります。

また「いつ元気になるの?」「もうそろそろ復帰できるんじゃない?」といった回復を急かすような言葉も、相手にとってはプレッシャーとなり、逆に症状を悪化させる原因になります。

大切なのは、無理をさせないこと、そして本人のペースを尊重することです。

「無理しなくていいよ」「今はゆっくり休もう」といった言葉の方が、安心感を与えられます。

未来の話

「これからどうするの?」「いつまで休むの?」といった将来についての質問は、相手に負担をかける可能性があります。

適応障害の人は目の前のことで精一杯であり、先のことを考える余裕すらない状態にあることが多いため、未来に関する話題は焦りや不安を強める要因となります。

「早く社会復帰しないと」「いつまで今の状態でいるの?」という言葉は、善意であっても回復の妨げになることを理解しておきましょう。

無理に未来について考えさせるのではなく、今この瞬間に寄り添い、「そばにいるよ」と伝えることが大切です。

適応障害の人に対する周りの対応・サポート方法

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適応障害の人を支えるためには、周囲のサポートが欠かせません。

ここでは家庭・職場・友人や恋人のサポート方法についてそれぞれ解説します。

家庭でのサポート方法

家庭では、適応障害の人が安心して休める空間を整えることが大切です。

家庭は本人にとって身近な場所であるからこそ、リラックスして過ごせる環境が心の安定につながります。

例えば好きな音楽をかける、アロマを焚く、落ち着いた照明に変えるなど、ちょっとした工夫を取り入れるだけでも気持ちを落ち着かせられます。

さらに家事など日常生活の負担を軽減する配慮も効果的です。

「今日は調子どう?」「できるときで大丈夫だよ」といったように、本人のペースに合わせた優しい声掛けをするのも良いでしょう。

また無理に話を聞き出すのではなく、必要なときに相談できるような距離感を大切にしましょう。

職場でのサポート方法

職場では、適応障害の人の負担を減らすために、業務量や業務内容の調整を行うことが重要です。

例えば納期の猶予を設ける、業務の一部を他の人と分担する、在宅勤務や短時間勤務など柔軟な働き方を導入するといった工夫を取り入れるとよいでしょう。

こうした対応により、無理なく働ける環境を整えられます。

また、職場内で相談しやすい窓口を用意することも早期対応につながります。

産業医や社内カウンセラーとの面談機会を設け、心の悩みを共有できる仕組みを整えると安心です。

上司や同僚も「調子が悪い時は遠慮なく言ってください」「一緒に進めていきましょう」といった前向きな声掛けを意識しましょう。

本人の負担を軽減しながら、無理のない範囲で社会とのつながりを保てるようサポートすることが大切です。

友人や恋人のサポート方法

友人や恋人は精神的なよりどころとして大きな存在であり、身近な人からの共感や理解は心の支えになります。

「話したくなったらいつでも聞くよ」「そばにいるから安心して」といった言葉は、強い安心感を与えられます。

特に恋人や親しい友人の場合は相手の小さな変化にも気づきやすいため、様子が普段と違うと感じたときには優しく声をかけ、無理に聞き出さず見守る姿勢をとることが大切です。

また会話をするときは「頑張って」などの励ましではなく、「無理しないでね」「ゆっくり休んでね」といった優しく寄り添う表現を意識しましょう。

必要に応じて医療機関や相談窓口の情報を伝えるのもよいですが、無理に勧めず、本人のタイミングを尊重することが大切です。

適応障害の人にはそっと寄り添う姿勢でサポートすることが大切

適応障害の人を支えるためには、本人の気持ちを尊重して寄り添う姿勢が大切です。

過度な干渉や無理強い、否定的な言葉、他の人と比較する言葉は控え、そっと寄り添うようにサポートしましょう。

周囲に適応障害の症状で悩んでいる人がいる場合は、病名は出さずに、医療機関への相談を勧めてみてください。

かもみーる心のクリニック仙台院は、適応障害に関するお悩み相談にも対応しています。

可能な限り当日に受診できるよう努力しているため、お悩みの方はぜひ当院までご相談ください。

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