発達障害のある方の中には、「不安が人より強い気がする」「些細なことで気持ちが落ち着かなくなる」といった悩みを抱える場合が少なくありません。
これらの不安は性格の問題ではなく、脳の特性が関係している可能性があります。
予定外の出来事や人間関係、仕事上の小さな変化が重なることで、不安が強まりやすくなるケースも少なくありません。
この記事では、大人の発達障害で不安が強くなる理由について解説します。
不安が強まりやすい場面や不安を和らげる対処法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
大人の発達障害で不安が強くなる理由

大人の発達障害では、脳の働き方の特性によって不安を感じやすくなることがあります。
不安が強まる主な理由は以下の通りです。
- 予想外の変化に混乱してしまうため
- 強い思い込みがあるため
- 思考パターンに歪みがあるため
- ストレスをため込みやすいため
- ネガティブなことを考え込んでしまうため
- 周囲に対して過剰に気配りしてしまうため
ここでは上記6つの理由についてそれぞれ解説します。
予想外の変化に混乱してしまうため
大人の発達障害のある方は、予定や流れが急に変わると強い不安を覚えやすい傾向があります。
脳の特性として先の見通しを立てることが苦手なため、少しの変更でも「どうすればいいのか分からない」と混乱してしまうことがあるのです。
例えば、仕事の手順が急に変わったり、電車の遅延で予定がずれたりすると、頭の中が整理できなくなることがあります。
周囲の人にとっては些細な変化でも、本人にとっては重大な変化として受け止められやすい点が特徴です。
特に現代の生活は変化が多いため、こうした場面が繰り返されることで常に緊張した状態になり、不安が積み重なっていきます。
その結果、「また何か起こるのではないか」と先回りして心配するようになり、不安が強まりやすくなるのです。
強い思い込みがあるため
発達障害の特性の一つとして、「失敗してはいけない」「全員に好かれなければならない」といった強い思い込み(強迫観念)を持ちやすい点が挙げられます。
少し注意を受けただけでも「自分は否定された」と感じたり、一度の失敗で「もう取り返しがつかない」と思い込んだりすることがあります。
このような思い込みがあると、常に緊張した状態で過ごすことになり、心が休まりません。
思い込みが強すぎると、必要以上に不安を感じてしまう状態につながります。
思考パターンに歪みがあるため
大人の発達障害では、思考パターンに歪みが生じることがあります。
例えば、良かった点よりも悪かった点ばかりに目が向いたり、最悪の結果ばかりを想像したりする傾向があるのです。
「一つミスをした=全部ダメだった」と考えてしまうことも少なくありません。
このような考え方が続くと、現実以上に状況を悪く捉えてしまい、不安が強くなります。
また、自分の感じているつらさを周囲のせいだと考えてしまう場合もあり、人間関係に対する不安につながることがあります。
思考の歪みは無意識に起こるため、自分では気づきにくい点も特徴です。
ストレスをため込みやすいため
発達障害のある方は、日常生活の中でストレスを感じやすい傾向があります。
光や音に敏感だったり、こだわりが強かったりすると、周囲と同じ環境にいるだけでも疲れてしまうことがあります。
例えば、職場の騒音や照明が気になったり、決まった手順が守られないと落ち着かなくなったりすることがあるのです。
また、読み書きが苦手なLD(学習障害)の方の場合、仕事の資料を読む、報告書を書くといった業務がストレスになることもあります。
こうした小さなストレスが毎日積み重なると、心に余裕がなくなり、不安が表に出やすくなります。
ネガティブなことを考え込んでしまうため
大人の発達障害では、過去の失敗や嫌な出来事を何度も思い返してしまうことがあります。
いわゆる反すう思考と呼ばれるもので、頭の中で同じ内容を繰り返してしまうのが特徴です。
「あのとき別の言い方をすれば良かった」「また同じ失敗をするかもしれない」と考え続けると、不安な気持ちがどんどん強まります。
ネガティブな考え自体は誰にでもありますが、発達障害の場合は強迫観念や思考パターンの歪みの影響で、反すう思考に陥りやすくなる傾向があります。
周囲に対して過剰に気配りしてしまうため
発達障害、特にASD(自閉スペクトラム症)の傾向がある方は、周囲に合わせようとして必要以上に気配りしてしまうことがあります。
特性上、相手の気持ちを正確に読み取ることが難しいため、意図が読めているようにカモフラージュする傾向があるのです。
「機嫌を損ねていないだろうか」「変に思われていないだろうか」と考え続けると、不安が強くなります。
実際には問題がない場面でも、自分の中で心配が膨らみ、常に緊張した状態になるのです。
このような過剰な気配りは心の負担になりやすく、不安を感じやすい状態を長引かせてしまいます。
周囲に合わせようとする気持ち自体は大切ですが、無理が続くと不安が強まる原因になります。
大人の発達障害で不安を感じやすい場面

大人の発達障害では、特性によって不安を感じやすい場面が異なります。
ここではASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)の場合に分けて、不安を感じやすい場面について解説します。
ASD(自閉スペクトラム症)の場合
ASDのある方は、予想外の変化が起きたときに強い不安を感じやすい傾向があります。
例えば、毎日使っている物がいつもと違う場所に置かれていたり、電車が遅れたりすると、それだけで落ち着かなくなることがあります。
自分の中で決まった流れやルーティンがあることで安心しているため、その流れが崩れると「どう行動すればいいのか分からない」と混乱してしまうのです。
また、特定の店でいつも同じメニューを選んでいる場合、それが選べないだけで大きなストレスになることもあります。
見通しが立たない状況や急な予定変更に直面すると、「何か失敗してしまうのではないか」と先のことを心配し、不安な気持ちが強まりやすくなります。
ADHD(注意欠如・多動症)の場合
ADHDのある方は、「やりたいのにできない」「思うように進まない」と感じる場面で不安を覚えやすい傾向があります。
具体的には、人前で話す必要があるときや、会議などで長時間じっとしていなければならない場面が挙げられるでしょう。
また、欲しい物がすぐに手に入らなかったり、物事がスムーズに進まなかったりすると、イライラと不安が同時に強くなる場合もあります。
さらに、頭の中で多くのことを同時に考えやすいため、休日であっても仕事の失敗を思い出し、「あの対応で大丈夫だっただろうか」と考え続けてしまうことがあります。
その結果、不安な考えが止まらず、寝不足に陥ってしまうことも少なくありません。
大人の発達障害の不安への対処法

大人の発達障害で見られる不安は、考え方や行動を少し工夫することで、和らげられる場合があります。
具体的な対処法は以下の通りです。
- 不安を書き出す
- 不安への対処法を書き出す
- 小さな成功体験を積み重ねる
- 悩みごとに優先順位をつける
- 起こっていないことは考えない
- 周囲の人に相談する
- ヨガや呼吸法で体をリラックスさせる
- リラクゼーションを取り入れる
- 認知行動療法を受ける
ここでは上記9つの対処法についてそれぞれ解説します。
不安を書き出す
不安を感じたときは、頭の中だけで考え続けるのではなく、紙やメモに書き出してみることが大切です。
書き出すことで不安の正体がはっきりし、「何がつらいのか」「どの場面が苦手なのか」を整理しやすくなります。
例えば「電車が遅れたらどうしよう」「上司の指示が分からない」といった気持ちも、文字にすることで一つずつ切り分けられます。
また、不安を書き出すことで感情が少し落ち着き、冷静に考えやすくなる点も大きなメリットです。
綺麗にまとめる必要はないため、思いついたまま書き出してみましょう。
不安への対処法を書き出す
不安を書き出したあとは、それぞれに対して「どう対処するか」を考え、あわせて書き出してみましょう。
不安な気持ちは、どうすればいいか分からないときに強くなりやすいため、行動の選択肢を用意しておくことがポイントです。
例えば、「会議で何を話せばいいか不安」という場合は、「事前に話す内容をメモする」「分からない点は質問する」など、具体的な行動に落とし込みます。
対処法を書き出しておくと、予想外の出来事が起きても、「これをすればいい」と立て直しやすくなるでしょう。
いくつか選択肢を用意しておくだけで、不安は和らぎやすくなります。
小さな成功体験を積み重ねる
不安が強い背景には、「また失敗するかもしれない」という気持ちが隠れていることがあります。
そのため、小さな成功体験を積み重ねることが不安への有効な対処法となります。
成功体験は「今日は一つタスクを終わらせた」「メモを見ながら説明できた」といった小さなことで十分です。
やるべきことを細かく分け、終わったらチェックを入れるだけでも、「できた」という実感を得られます。
成功体験が増えると、「自分はちゃんと対応できる」という自信が付き、不安を感じにくくなります。
うまくいかなかった日があっても、過去にできたことを振り返ることで、自信を取り戻しやすくなるでしょう。
悩みごとに優先順位をつける
あれこれ同時に考えると不安が強くなるため、悩みごとに優先順位をつけることが大切です。
すべてを一度に解決しようとすると、気持ちが追いつかず、不安が膨らみやすくなります。
自分に関係のあることを最優先にして、自分だけでは対処できないものや他人の問題については悩まないようにしましょう。
優先順位をつけることで、「今はこれだけやればいい」と気持ちが落ち着きやすくなります。
起こっていないことは考えない
不安が強くなる大きな原因の一つに、まだ起きていない未来の出来事を考え続けてしまうことが挙げられます。
「もし失敗したらどうしよう」「嫌なことが起きたら耐えられないかもしれない」と想像を広げるほど、不安は膨らみやすくなります。
そこでおすすめなのが、「起こっていないことは今は考えない」という自分なりのルールを決めることです。
もちろん、起きたときの対処をあらかじめ考えておくこと自体は役立ちますが、起きるかどうか分からないことを延々と考え続ける必要はありません。
不安な考えが浮かんだら、「これはまだ起きていない」と意識して、今やるべきことに注意を向けるようにしましょう。
周囲の人に相談する
不安を一人で抱え込むと、考えが偏りやすくなり、気持ちが重くなりがちです。
そんなときは、信頼できる家族や友人、職場の人に相談してみましょう。
話すことで自分の考えを整理できるだけでなく、「そんなふうに考えなくても大丈夫だよ」と別の見方を教えてもらえることもあります。
相談する前は言葉にできなかった不安も、話しているうちに形になり、気持ちが落ち着く場合があります。
身近な人に話しにくい場合は、医師やカウンセラー、支援スタッフなど、専門家に相談するのもおすすめです。
ヨガや呼吸法で体をリラックスさせる
ヨガや呼吸法で体をリラックスさせることで、不安を落ち着かせる効果が期待できます。
鼻から息を吸い、口から時間をかけて吐くことを意識すると、体の緊張が和らぎやすくなります。
また、肩や背中に力を入れてから一気に抜くなど、筋肉をゆるめる動き(筋弛緩法)も効果的です。
椅子に座ったままでもできるため、不安が強くなったときにぜひ試してみてください。
リラクゼーションを取り入れる
意識的にリラックスできる時間を作ることも、不安対策として有効です。
音楽を聴く、温かいお茶を飲む、少し外に出て空気を吸うなど、手軽にできるリラックス方法を探してみましょう。
大切なのは、「これをすると落ち着く」という自分なりの方法をいくつか持っておくことです。
不安が出てから慌てて探すのではなく、普段からリラクゼーションを習慣にしておくと、気持ちの波を小さくしやすくなります。
認知行動療法を受ける
不安が強く、日常生活に支障が出ている場合は、認知行動療法を検討してみましょう。
認知行動療法は、物事の受け取り方や考え方の偏りに気づき、少しずつ見直していく心理療法の一種です。
物事の極端な捉え方を見直すことで、そこから生まれる不安を和らげる効果が期待できます。
認知行動療法は、医師やカウンセラーのもとで行われることが多いため、対応している精神科や心療内科などで相談してみましょう。
発達障害で強い不安に悩んでいる場合は専門家に相談を
大人の発達障害では、特性の影響によって不安が強くなる場合があります。
不安を和らげるためには、不安を書き出して整理する、起こっていないことは考えすぎない、周囲に相談するなどの方法が効果的です。
今回紹介した方法でも不安が和らがない場合には、自分一人で抱え込まず、必要に応じて専門家のサポートを受けましょう。
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