自閉症はどの程度目が合わない?判断基準や他の原因について解説

子供と目が合わないと、「もしかして自閉症では?」と不安になる保護者は少なくありません。
特に他の子と比べて視線を合わせる回数が少なかったり、呼びかけに反応しなかったりすると、心配の気持ちが強くなるものです。
しかし、「目が合わない=自閉症(自閉スペクトラム症/ASD)」とは限らず、その原因や程度はさまざまです。
この記事では、目をそらしてしまう子供の心理について詳しく解説します。
自閉症の子供の特性や似た症状がみられる目の病気などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
目が合わないのは自閉症?目をそらす子供の心理

目を合わせないからといって、必ずしも自閉症とは限りません。
目をそらす子供の心理として、以下の4つが挙げられます。
- 注意が別のものに集中している
- 目を見るべきだと知らない
- 話を聞いていない
- 嫌がっている
ここでは上記4つの心理についてそれぞれ解説します。
注意が別のものに集中している
子供が目をそらす理由として多いのが「他のことに集中している」状態です。
お気に入りのおもちゃに夢中になっていると、保護者が目の前にいても気づかないまま遊び続けることもあります。
また、発達障害の傾向がある子供は、一つの対象に強く集中する「過集中」の傾向があるため、大人の呼びかけや視線には気づかないことがあります。
目を見るべきだと知らない
「話す時は相手の目を見る」という行動は、実は自然に身につくわけではありません。
特に自閉症の子供は視線の意味や使い方がわからず、どこを見てよいのか迷ってしまうことがあります。
結果として、視線がさまよったり、そらしたりしてしまうのです。
この場合は「目を見なさい」と注意するのではなく、視線を合わせることの意味を少しずつ教えることが大切です。
話を聞いていない
顔は保護者の方を向いていても目だけが違う方向を見ている場合、実は話の内容が理解できていないということがあります。
発達障害のある子供は、簡単な言葉でも意味を捉えるのが難しいことがあるため、言われた内容に困惑して視線を外すことがあります。
また、聞いているふりをすることで、その場をやり過ごそうとすることも少なくありません。
視線の動きだけで判断するのではなく、実際に理解できているかどうかを丁寧に確認する姿勢が大切です。
嫌がっている
子供が目をそらすのは、嫌なことから逃れたい気持ちの表れであることもあります。
例えば叱られているときや無理に何かをやらされそうになったときなど、「見たくない」「関わりたくない」という意思表示として視線を外すのです。
これは自閉症の有無にかかわらず、幼児期の子供に多く見られる行動です。
このような場面では無理に目を合わせようとせず、まずは子供の気持ちに寄り添い、安心できる環境を整えることが重要になります。
どの程度目が合わないと自閉症の可能性が高い?

自閉症のある子供は生後半年〜1年頃から、目を合わせる頻度が少ない、保護者の視線の先に興味を示さない、自分が見られていることに反応しないといった傾向がみられる場合があります。
しかし、「目が合わない=自閉症」とは限りません。
視線が合いにくいことは、個人の性格や発達のペースの違いによる場合もあります。
定型発達(年齢に応じた発達が順調に進んでいる状態)の子供でも気分やタイミング、興味の対象によって目を合わせないことも多く、一つの行動だけで判断するのは適切ではないでしょう。
一方で、目が合いにくい行動が繰り返し見られ、次のような特徴も複数当てはまる場合は注意が必要です。
- 名前を呼んでも振り向かず、反応がない
- 保護者や周囲の人と関わろうとしない
- 一緒に遊ぶことに興味を示さない
- アイコンタクトを強く避ける
- 表情が乏しく感情が伝わりにくい
こうした様子が続く場合、まずはかかりつけの小児科や保健センターなどで専門家に相談するとよいでしょう。
自閉症の診断は専門家の判断が必要ですが、家庭でできるチェックもあります。
例えば名前を呼んで反応を見る、ものを渡して保護者の顔を見るか確認する、遊びの中で目が合うタイミングを観察するなどです。
また視線が合わないことに加えて、日常生活やコミュニケーションに不安を感じる場面が増えてきた場合には、早めに相談するとよいでしょう。
なるべく早く支援を受けることで、子供の発達に合った関わり方や接し方を知ることができます。
自閉症の子供の特性

自閉症の子供の特性として、以下の4つが挙げられます。
- 対人関係を調整するのが苦手
- 特定の物事に対するこだわりが強い
- 感覚が敏感・鈍感すぎる
- 体を動かすのが不器用
ここでは上記4つの特性についてそれぞれ解説します。
対人関係を調整するのが苦手
自閉症の子供は、人との関わり方において難しさを感じることが多いです。
他人に対する関心が薄かったり、相手の気持ちや表情を読み取るのが苦手だったりするため、会話や遊びの場面でも自然なやり取りが難しくなることがあります。
例えば「話しかけるタイミングがわからない」「相手の反応に気づかずに一方的に話してしまう」「距離感がわからず近づきすぎてしまう」といったことが起こりやすいです。
その結果、集団生活で孤立しやすくなったり、誤解を招くこともあります。
しかしこれは決して悪意ではなく、相手の気持ちを読み取ることや空気を察することが難しいという特性に起因するものです。
適切な支援や周囲の理解によって、少しずつ社会的なスキルを身につけていくことができます。
特定の物事に対するこだわりが強い
自閉症の子供は、ある特定の物事に対して非常に強いこだわりを示す傾向があります。
例えばおもちゃの並べ方に決まりがあったり、毎日同じ順番で行動しないと不安になったり、新しいことへの適応に時間がかかったりなどです。
また特定のジャンルへの関心が極端に深く、電車や恐竜、地図、数字などに強い興味を持つことも少なくありません。
こだわりによって生活や集団活動に支障をきたす場合には、徐々に他の選択肢を受け入れる練習をしていくことが大切です。
一方で、こだわりの対象が学びや将来の仕事に結びつくこともあり、その子の強みとして活かされる可能性もあります。
感覚が敏感・鈍感すぎる
自閉症の子供には、感覚の過敏さや鈍感さが見られることが多いです。
例えば音に非常に敏感でちょっとした物音でも驚いてしまったり、特定の服の素材や肌ざわりを嫌がったりするケースがあります。
反対に、痛みに鈍感でケガをしても平気そうにしていたり、寒いのに薄着をしていても気にしないこともあるのです。
さらに味覚や嗅覚に偏りがあり、特定の食べ物しか受けつけない『偏食』が見られる場合もあります。
偏食は感覚過敏のみでなく、食べ物に対するこだわりの強さから起こる場合も珍しくありません。
子供の感覚が敏感・鈍感すぎる場合には、無理のない範囲で環境を調整することが、安心して過ごすために重要です。
体を動かすのが不器用
自閉症の子供は体の使い方がぎこちなく、不器用な動きをすることがあります。
例えばジャンプやボール投げといった運動が苦手だったり、ボタンをかける、箸を使うなどの細かい作業に時間がかかったりするケースがよく見られます。
また体の動きに自信がないために、運動そのものに苦手意識を持つことも少なくありません。
運動がうまくできないことを理由に周囲と距離ができてしまうこともあるため、無理なく楽しめる運動や個々に合わせた支援が大切です。
例えば体操や水泳など、比較的一人で取り組める活動から始めると自信につながります。
不器用さもその子の個性として受け止め、成功体験を積み重ねていくことが成長への第一歩となるでしょう。
子供と目が合わない場合に考えられる病気

子供と目が合わない場合、自閉症ではなくほかの病気の可能性も考えられます。
- 斜視
- 弱視
- 眼振
- 白内障
- 緑内障
- 網膜芽細胞腫
ここでは上記6つの病気についてそれぞれ解説します。
斜視
斜視は両目が同じ方向を向かず、片目は正面を見ていてももう片方の目が内側や外側、上下にずれている状態です。
斜視は子供の約2%に見られる小児眼科の代表的な病気でもあります。
乳幼児では見た目だけでは判断が難しいこともあり、『偽斜視』といって実際には斜視でないケースもあります。
斜視があると使われていない目の視力が育たず、弱視につながることがあるため注意が必要です。
片方だけ目があうのに、もう片方の目が違う方向を向いている場合には、斜視の可能性があるため眼科専門医に相談しましょう。
弱視
弱視とは、視力が発達する乳幼児期に視力が十分育たなかった状態をいいます。
斜視や強い遠視・乱視、先天性の白内障などがあり、片目または両目に影響する場合に弱視が起こりやすいとされています。
弱視は眼鏡で矯正しても十分な視力が得られにくいのが特徴ですが、早期に治療を始めれば視力が回復する可能性があります。
定期健診などでの視力チェックは、弱視の早期発見のために非常に重要です。
日常で目を細めて物を見る、目が合いにくいといった様子があれば、早めに眼科を受診しましょう。
眼振
眼振とは、目が自分の意志とは関係なく左右や上下、回転方向に小刻みに動く症状のことです。
視線が定まらず、常に目が揺れているように見えるため、目が合いにくいと感じることが多くなります。
原因はさまざまで、先天性の視力障害によって起こることもあれば、脳の異常や中枢神経の腫瘍が影響している場合もあります。
眼振が見られた場合は、早めに眼科を受診しましょう。
白内障
白内障は一般的に高齢者の病気というイメージがありますが、乳幼児でも先天性や突発性の白内障を発症することがあります。
白内障があると目の焦点が合わないため、目が合いにくい、目を細めて物を見るといったサインが見られることがあります。
治療としては手術がありますが、術後には視力矯正や視能訓練が必要になるため、早期発見が非常に重要です。
日常の中で目の違和感や目線のずれを感じたら、早めに眼科で相談しましょう。
緑内障
緑内障は、黒目と白目の境目にある隅角という部分に異常が生じることで、視野が狭くなる病気です。
子供で発症する緑内障には『原発先天緑内障(出産後すぐに発症する緑内障)』、『若年開放隅角緑内障(軽度の隅角の異常による緑内障)』、『続発小児緑内障(全身疾患や目の形成異常に関連して起こる緑内障)』などの種類があります。
乳幼児期に発症する場合、黒目が大きくなったり、光をまぶしがったり、涙が多くなったりするのが特徴です。
視覚の異常から視線が合いにくくなることもあります。
進行すると視力が失われる恐れがあるため、早急な対応が必要です。
視覚の発達段階にある子供にとっては非常に影響が大きいため、異常に気づいたら早めに眼科を受診しましょう。
網膜芽細胞腫
網膜芽細胞腫は乳幼児に発症する目の悪性腫瘍で、1万7千人に1人の割合で発症するとされる病気です。
瞳孔に光を当てたときに白く光る現象で気づかれることが多く、目が合わない、視線が定まらないといった行動が初期のサインとなる場合もあります。
片目だけに現れることが多いですが、両目に生じるケースもあります。
早期に発見し治療を始めれば治る可能性がありますが、進行すると眼球摘出が必要になることもあるため注意が必要です。
違和感を覚えたらすぐに眼科を受診し、専門的な検査を受けることが大切です。
子供と目が合わず自閉症が疑われるときの相談先

子供と目が合わず、自閉症が疑われるときの相談先として、以下の5つが挙げられます。
- 発達障害者支援センター
- 児童発達支援センター
- 保健所・保健センター
- 児童相談所
- 自治体の乳幼児健診
ここでは上記5つの相談先についてそれぞれ解説します。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害に関する幅広い相談を受け付けている専門機関です。
子供の発達に不安を感じたとき、まず相談先として検討したい場所の一つです。
臨床心理士や作業療法士など、専門知識を持つスタッフが在籍しており、状況に応じた助言や支援の方法を提案してくれます。
必要に応じて、他の医療機関や福祉サービスへの橋渡しも行ってくれるため、初めての相談でも安心です。
児童発達支援センター
児童発達支援センターは、発達に不安のある未就学児を対象にした療育支援施設です。
日常生活の中で見られる困りごとや発達の課題について、専門のスタッフが継続的に支援してくれます。
視線が合いにくい、コミュニケーションが取りづらいといった悩みに対しても、遊びや運動、言語訓練などを通じて子供の発達をサポートします。
地域によっては送迎サービスを行っているところもあり、通いやすさも魅力の一つです。
保健所・保健センター
保健所や保健センターは、地域の子育て支援の窓口として身近に利用できる相談先です。
保健師や臨床心理士、保育士などが常駐しており、発達の不安や視線が合わないといった悩みについても相談を受け付けています。
また必要に応じて専門機関への紹介や発達検査の案内を行ってくれるため、「どこに相談すればよいかわからない」という場合の最初のステップとしておすすめです。
児童相談所
児童相談所は、18歳未満の子供に関するさまざまな問題を扱う公的機関で、発達の遅れや行動の心配ごとも相談対象となります。
発達障害が疑われる場合には、子供の様子を観察したうえで、他機関との連携や必要な支援サービスの紹介を行ってくれる場合があります。
また家庭環境や育児の悩みに関するサポートも行っており、包括的な支援が受けられるのが特徴です。
自治体の乳幼児健診
各自治体が実施している乳幼児健診は、子供の発達状況を把握する貴重な機会です。
健診では視線の合い方や反応の様子、発語の有無などがチェックされ、気になる点がある場合にはその場で保健師や医師に相談できます。
普段の育児では気づかない課題も見つけやすく、早期発見につながる場でもあります。
目が合わない状態が続く場合は適切な機関に相談しましょう
子供と目が合わないと感じたとき、自閉症の可能性を考えるのは自然なことです。
斜視や弱視などの眼の病気が原因となっていることもあるため、まずは専門機関での相談が大切です。
また対人関係での困難や特定の物事に対するこだわりといった自閉症の特性がみられる場合には、今回紹介した相談機関や医療機関の受診を検討してみてください。
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