人の気持ちがわからない、自分勝手な言動をする人を見て、「どうしてあの人はあんなに自己中なの?」と感じたことはありませんか?
また、逆に自分が相手の気持ちがわからなくて人をイライラさせてしまった経験を持つ方もいるかもしれません。
こうした「人の気持ちを考えられない」「相手の立場に立てない」といった特徴は、単なる性格ではなく、発達障害などの特性や心の病気が関係している場合もあります。
この記事では、「人の気持ちがわからない」「自己中心的すぎるのでは」と感じる人の背景にある可能性や考えられる病気について解説します。
また、そのような人への対処法や、自分自身が十分に人の気持ちを考えられない場合の対処法についても解説するので、参考にしてみてください。
人の気持ちがわからない自己中なのは『性格』ではなく病気の可能性も

自己中心的で、相手の気持ちを考えずに思ったことをそのまま口にする人、自分のやりたいことや欲求ことばかりを優先してしまう人ーそんな人が身近にいると、周囲は疲れてしまうものです。
「なんてわがままなのだろう」「もう少し人の気持ちを考えてほしい」と感じることもあるかもしれません。
しかし、実はこうした言動の背景には、心の病気や発達障害などの特性が関係していることがあります。
特に、
- 何度注意されても変わらない
- 本人も努力しているのに改善できない
といった場合には、本人の意志や性格だけではどうにもできない問題が隠れている可能性もあるのです。
人の気持ちがわからないー「病気?」と感じたら発達障害の可能性も

人の気持ちがわからない、人の気持ちが考えられない場合、背景に発達障害が関係している可能性があります。
発達障害とは、脳機能の発達に偏りがあり、その影響で日常生活や対人関係に困難が生じる障害の総称です。
発達障害がある人は、コミュニケーションや対人関係の構築が苦手な傾向があり、その特性から「自己中心的」「変わった人」「人の気持ちがわからない人」とみられてしまうことがあります。
ただし、発達障害は病気ではないため治療で治すものではなく、特性への理解や支援によってより生活しやすくなることがあります。
発達障害にはいくつかの種類がありますが、その中でも特に自己中心的な印象を持たれやすいものとして、以下の2つが挙げられます。
- ADHD(注意欠如他動性障害)
- ASD(自閉スペクトラム症)
それぞれの特性について詳しくみていきましょう。
ADHD(注意欠如他動性障害):自己中に思われがち
ADHDの特性としては、集中力の欠如や多動性、衝動性などが挙げられます。
会話中に相手の話を最後まで聞かずに遮ってしまったり、自分の話にすり替えてしまったりすることがあります。
また、衝動的な傾向があり、相手の予定や気持ちを考えずに行動してしまう場面も見られます。
忘れ物が多い、物をなくしやすいといった特性もあり、大切な約束をうっかり忘れてしまったり、人から借りた物を紛失したりすることもあります。
このような特性から、ADHDの人は周囲から「自己中心的」と受け取られてしまうことが少なくありません。
ADHDの症状は子ども時代に目立ちやすいですが、大人になっても不注意や衝動性が残ることがあります。
また、「子どものころは問題なかったのに、職場で失敗が続いてADHDに気づいた」というケースもあります。
ASD(自閉スペクトラム症):人の気持ちがわからない
ASDの人は、相手の気持ちや意図を読み取ったり、共感したりすることが苦手な傾向があります。
これは『心の理論』と呼ばれる能力の発達に偏りがあることが関係しています。
相手の立場に立って考えることが難しいため、人への配慮が足りず、無意識に相手を不快にさせてしまうことも少なくありません。
言葉だけでなく、視線や表情、身振りなどの非言語的なコミュニケーションも苦手で、自分の気持ちをうまく伝えたり、相手の感情を読み取るのが難しいのが特徴です。
また、特定のものごとに強いこだわりを持ち、行動がパターン化しやすい傾向もあります。
なお、以前は『アスペルガー症候群』と呼ばれていた診断名も、現在はASDに統合されています。
アスペルガー症候群という名前に聞き覚えのある方もいるかもしれませんが、基本的には同じ自閉スペクトラムの一部として扱われています。
発達障害については、こちらの記事でも解説しているのであわせてご覧ください。
人の気持ちがわからないー「病気?」感じる場合はパーソナリティ障害の可能性も

人の気持ちがわからない、自分勝手な言動が目立つーそうした特徴は、発達障害だけでなくパーソナリティ障害が背景にある場合もあります。
パーソナリティ障害とは、ものの感じ方や考え方、人との関わり方などに強い偏りがあり、そのために社会生活や人間関係に支障が出てしまう精神疾患です。
本人にとっては普通に振る舞っているつもりでも、周囲からは「自己中心的」「感情の起伏が激しい」「人の気持ちを考えられない」などの印象を持たれやすい傾向があります。
特に以下のようなタイプのパーソナリティ障害は、自己中な言動や共感の乏しさという特徴と関係しています。
境界性パーソナリティ障害
境界性パーソナリティ障害のある人は、感情のコントロールが苦手で、人間関係が不安定に
なりやすい傾向があります。
一方、相手の気持ちに非常に敏感で、思いやりのある行動ができる一面もこの障害の特徴です。
しかし、「相手に捨てられるのでは?」という不安を常に抱えており、そうした状況を避けようとしてなりふり構わない行動を取ってしまうことがあります。
また、些細なことで強く怒ったり、相手を理想化したかと思えば急に拒絶したりと、極端な思考や感情の起伏がみられることもあります。
その結果、「なぜ、そんなことを言うの?」「そこまで怒る理由がわからない」と周囲を困惑させ、人の気持ちがわからない人と受け取られてしまうことも少なくありません。
自己愛性パーソナリティ障害
自己愛性パーソナリティ障害の人は、周囲から見ると「自分が大好きな自己中な人」という印象を持たれがちです。
しかし実際には、ありのままの自分を受け入れて愛することが難しく、心の奥では強い不安や脆さを抱えていることも少なくありません。
そのため、自分を過剰によく見せようとしがちで、自分への特別意識や過剰な自信、他者への共感の乏しさといったかたちで特性が現れることがあります。
また、他人の意見に耳を貸さず、自分の考えを一方的に押しつけたり、相手を思い通りに動かそうとしたりするなど、対人関係において強引なふるまいが目立つこともしばしばです。
このような言動から、「自己中心的な人」「人の気持ちを考えられない人」とみなされがちですが、本人も人づきあいの中で孤立感や生きづらさを感じている場合があります。
人の気持ちがわからない理由が病気の可能性がある場合は?

「どうしてあの人は人の気持ちがわからないのだろう」「注意しても全然変わらない」
―そう感じる相手がいると、つい性格の問題だと決めつけてしまいがちです。
一方で注意しているつもりでも、自分自身が「人の気持ちがわからない人」と周りからみなされ、そのことで悩んでいる方もいるかもしれません。
しかし、ここまでお話してきたように、そのような言動には本人の意思や努力ではコントロールできない病気や障害が背景にある可能性もあります。
その場合、叱責や無理な改善要求は、かえって状況を悪化させることがあります。まずは医療機関や支援機関に相談することが大切です。
まずは医療機関や支援機関に相談することが大切です。
次のような傾向があるときは、専門的な支援が必要なサインかもしれません。
- 人の気持ちを理解しようとしても難しい
- 何度注意されても対人トラブルを繰り返してしまう
- 自分では直したいと思っているのにうまくいかない
- 気を付けているつもりなのに忘れ物が多く、物をなくしやすい
- 職場など人が集まる場所で孤立してしまう
- 生きづらさを感じているものの原因が分からない
このような場合は、医療機関や地域の支援機関に相談することで、特性に合った対応方法がみつかることがあります。
まずは医療機関に相談を
「もしかしたら、人の気持ちがわからないのは病気のせいかもしれない」と感じたときは、まず精神科や心療内科を受診するのがおすすめです。
医療機関では、発達障害やパーソナリティ障害などの可能性も含めて、専門の医師が症状をもとに診断してくれます。
診断の結果、治療が必要ないとわかれば安心できますし、もし病気が関係していた場合でも、適切な治療や支援につながる第一歩となります。
相談先として頼れる支援機関
発達障害などが原因で、人との関わりや仕事に悩みを抱えている場合は、以下のような支援機関に相談することもできます。
地域若者サポートステーション(サポステ)
15歳〜49歳の「働きたいけれど不安がある」「コミュニケーションに自信がない」などの悩みを抱える若者を対象に、就労に向けた支援を行う機関です。
厚生労働省の委託を受けた民間団体などが運営しており、全国に設置されています。キャリア相談や就労準備の支援、コミュニケーショントレーニングなどを受けられます。
障害者就労・生活支援センター
障害のある人が自立した生活を送れるよう、就労面と生活面の両方を支援する機関です。
「働きたいけど体調が安定しない」「生活リズムを整えたい」といった日常的な悩みも含めて幅広く相談できます。
医療機関や行政と連携しながら、必要に応じて多方面の支援につなげてもらえるのが特徴です。
就労移行支援事業所
障害福祉サービスのひとつで、18歳〜64歳の障害や難病のある方を対象に、就職や復職をサポートする事業所です。
ビジネスマナーやPCスキルなどの職業訓練、職場実習、面接対策など、就職に向けた幅広い支援を受けられます。
また、就職後も長く働き続けられるよう、健康管理や生活リズムの改善サポートも行われています。
事業所によっては、ITや事務、デザインなど特定分野に特化したプログラムを提供している場合もあるため、事前に内容を確認しておくとよいでしょう。
発達障害者支援センター
発達障害のある方やその可能性がある方を対象に、日常生活や就労、福祉制度の利用などを支援する公的機関です。
診断の有無に関わらず利用可能で、本人だけでなく家族や関係者からの相談にも対応しています。
地域ごとに設置されており、必要に応じて医療や他の支援機関とつなげてくれる役割も果たしています。
自己中で人の気持ちがわからない人への対処法

自分自身が人の気持ちがわからないと感じる場合は、医療機関や支援機関などで専門的なサポートを受けることで改善や対処が可能です。
しかし、相手がそうした特性を持っている場合は、自分が関わり方を工夫することが必要になります。
無理に理解を求めようとすると、かえって関係がこじれたり、ストレスや疲れを感じたりすることもあるからです。
ここでは、心をすり減らさずに付き合うための対処法を紹介します。
相手の言動をそのまま受け止めない
人の気持ちを考えられない言動の背景には、発達障害やパーソナリティ障害などが関わっていることがあります。
こうした特性がある人は、感情のコントロールが苦手で、相手の気持ちに寄り添った言動が難しいこともあり、衝動的に発言・行動してしまうことも少なくありません。
そのため、相手の発言や行動をすべて真に受けて反応してしまうと、こちらが必要以上に振り回されてしまいます。
「悪意があっての言動ではない」と意識し、必要以上に気にしないことも自分を守るひとつの方法です。
無理にわかってもらおうとしない
相手に「わかってほしい」「共感してほしい」と強く望むと、期待が裏切られたときに深く傷つく原因になります。
人はそれぞれ、感じ方や考え方が違います。反応が思っていたのと違っても、「この人はこういう考え方なんだな」と受け流すことが大切です。
相手に理解を求めすぎず、自分の気持ちを整えることに意識を向けてみましょう。
距離感を意識する
相手にいつも振り回されてしまうようであれば、物理的にも心理的にも適度な距離をとることを意識してみてください。
例えば、会話の頻度を減らしたり、必要以上に関わらないよう心がけたりするだけでも、気持ちがぐっと楽になることがあります。
職場や家庭など関係を完全に断つことが難しい場合でも、関わる範囲や内容をコントロールすることで、ストレスを最小限に抑えることができます。
第三者に相談する
どう接したらいいか迷ったときや、相手との関係に疲れを感じたときは、信頼できる人に相談することも大切です。
カウンセラーや支援機関、または家族や友人、職場の上司など、第三者の客観的な意見を聞くことで、冷静に状況を見つめ直すことができます。
一人で抱え込まず、必要なときは周囲の力を借りることも、健やかに過ごすために欠かせない手段です。
「人の気持ちがわからない。病気かも」と感じるなら、まずは専門家に相談を
「人の気持ちがわからない」「自己中だと思われてしまう」といった悩みは、性格の問題ではなく、心の病気や発達障害などの特性が関係しているケースもあります。
これは自分自身のことだけでなく、身近な人にも当てはまるかもしれません。
改善しようとしてもなかなかうまくいかない、周囲との関係がうまく築けない、生きづらさを感じているーそんなときは一人で抱え込まず、専門家に相談することが大切です。
病院に行くのはハードルが高いと感じている場合は、オンラインで受けられるカウンセリングサービスを利用することもできます。
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