子どもの発達障害とは?早く気付くポイントやサポート方法について解説

更新日 2025年03月26日

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発達障害は脳機能の発達に関係する障害で、学習障害や注意欠陥多動性障害、自閉スペクトラム症などさまざまな種類があります。

発達障害を持つ子どもが自立するためには、周囲の適切な理解やサポートが必要不可欠です。

この記事では、子どもの発達障害について詳しく解説します。

子どもの発達障害に早く気付くポイントや症状ごとのサポート方法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

発達障害とは

発達障害のイメージ

発達障害とは、脳機能の発達に障害が生じることで行動や情緒にさまざまな特徴が現れる状態です。

発達障害には読む・書く・計算するなどを苦手とする『学習障害』や不注意・多動などが特徴の『注意欠陥多動性障害』、言葉の発達の遅れやコミュニケーションの障害がみられる『自閉症』など複数の特性があります。

いずれもコミュニケーションや対人関係が苦手で、周囲からは「変わった人」「自分勝手な人」と誤解されることがあります。

発達障害を持つ人が自分らしく生きていくためには、周囲の理解や適切なサポートが重要です。

発達障害の種類・症状

発達障害の種類のイメージ

発達障害には以下のような種類があります。

  • 自閉スペクトラム症(ASD)
  • 注意欠陥多動性障害(ADHD)
  • 学習障害(LD)
  • チック症(トゥレット症候群)
  • 吃音症

ここでは上記種類それぞれの症状について解説します。

自閉スペクトラム症(ASD)

自閉スペクトラム症(ASD)は、社会的なコミュニケーションや対人関係の困難、興味や行動の偏りが特徴的な発達障害です。

以前は『自閉症』『広汎性発達障害』『アスペルガー症候群』などさまざまな名称がありましたが、現在では『自閉スペクトラム症』として一つの枠組みで捉えられています。

自閉スペクトラム症の主な症状は以下の通りです。

  • 他人とのコミュニケーションが苦手
  • 同じ行動を繰り返す
  • 特定の音や光などの感覚刺激に対する偏った反応

自閉スペクトラム症の人は、相手の気持ちを読み取ることが苦手だったり、会話の意図を理解しにくかったりすることがあります。

また、特定の物事に強いこだわりを持ち、環境の変化を嫌う傾向があるのも特徴です。

このような症状から、なかなか友達を作れなかったり友人関係が一方的になったりといった悩みを抱えることがあります。

注意欠陥多動性障害(ADHD)

注意欠陥多動性障害は、『不注意』『多動性』 『衝動性』という3つの主な症状が現れる発達障害です。

それぞれの症状には以下のような特徴があります。

不注意• 物を忘れやすい
• 集中力が続かない
多動性• じっと座っていられない
• 落ち着きがない
衝動性• 順番を待つのが苦手
• 考える前に行動してしまう

上記のような症状から、周囲からは「注意が足りていない」「失敗しやすい」とみなされてしまうことがあります。

注意欠陥多動性障害の症状は幼少期から見られますが、成長とともに変化することもあり、大人になると主に不注意の症状が目立つ場合が少なくありません。

学習障害(LD)

学習障害(LD)は知的発達には問題がないにもかかわらず、『読む』『書く』 『計算する』といった特定の学習分野に困難を抱える発達障害です。

学習障害の症状は主に『読字障害』『書字障害』『算数障害』の3つに分類されます。

それぞれの症状の特徴は以下の通りです。

読字障害• ひらがなの音読が遅く、読み間違える
• 読んでいる文章の意味を理解するのが難しい
• 文章のあらすじをつかんだりまとめるのが難しい
書字障害• バランスの取れた文字を書くのが難しい
• 板書の速度が極端に遅い
• 考えた内容を書いて表現するのが難しい
算数障害• 数の概念が身につかない
• 計算を習得するのが難しい
• 文章題を解くのが難しい

上記のような症状があり、知的障害や視覚・聴覚障害、経済的・環境的な要因がなく、学習面のみで困難を感じる場合に学習障害と診断されます。

学習障害のある子どもは努力しても成績が伸びにくいため、自信を失いやすい傾向があります。

しかし適切な学習支援や環境調整を行うことで、得意分野を伸ばしながら学習の苦手を補うことが可能です。

チック症(トゥレット症候群)

チック症は突発的かつ無意識に体の一部を動かしたり(運動チック)、声を発したり(音声チック)してしまう障害です。

一時的に発症する『一過性チック』と1年以上続く 『慢性チック』があり、その中でも運動チックと音声チックの両方が1年以上持続するものが『トゥレット症候群』と診断されます。

運動チックと音声チックのそれぞれの症状は以下の通りです。

運動チック• まばたき
• 首を振る
• 肩をすくめる
など
音声チック• 咳払い
• 鼻を鳴らす
• 不適切な言葉を発する
• 大きな声を出す
など

チックはストレスによって悪化しやすく、意識すると余計に止めづらくなるため、無理に抑えようとするのではなく適切な環境づくりやストレス管理が重要です。

成長とともに症状が軽減することも多いですが、重度の場合は行動療法や薬物療法が必要になることもあります。

吃音症

吃音症は、話すときに言葉がスムーズに出てこない症状を指します。

『どもり』とも呼ばれ、発話の際に音を繰り返す(例:たたたたべる)、音が引き延ばされる(例:たーーべる)、音が詰まる(例:......たべる)などの特徴があります。

吃音は幼児期に発症することが多く、特に言語の発達が急速に進む3〜5歳頃に見られやすいですが、成長とともに改善することが多いです。

しかし一部の人は成人になっても症状が残り、会話への不安や対人関係の悩みを抱えることがあります。

子どもの発達障害に早く気付くためには?

発達障害に気付くためのポイントのイメージ

子どもが伸び伸びと自分らしく生きるためには、周囲の大人が早く気付き、適切なサポートをしてあげることが大切です。

ここでは発達障害に早く気付くためのポイントについて解説します。

発達障害に早く気付くためのポイント

子どもの発達障害に早く気付くためには、人との関わり方やコミュニケーションの取り方、行動などをよく観察することが大切です。

例えば発達障害には以下のような特徴があります。

人との関わり方の特徴• 一人遊びが多い
• 常に受動的でおとなしい
• 年上や年下のことは遊べるが、同級生とは遊べない
コミュニケーションの取り方の特徴• 一方的に話すことが多い
• 保育士や指導員の指示が伝わりにくい
• 席を離れてしまったり、話を聞いていなかったりすることが多い
注意・集中に関する特徴• 一つのことに集中していると話しかけても聞いていない
• 落ち着きがない
• いつもぼんやりとしている
• 忘れ物が多い
感覚に関する特徴• 雷や大きな音が苦手
• 同じ洋服しか着たがらない
• 靴下をすぐに脱いでしまう
• 極端に偏食
運動に関する特徴• 身体がクニャクニャとしていることが多い
• 極端に不器用
• 食べこぼしが多い
• 大きすぎる声を出すことが多い
学習に関する特徴• 話が流暢なのに作業が極端に遅い
• 簡単な文字が書けない
• 本を好んで読むが作文が苦手

上記を参考に子どもの言動に注目してみると、発達障害に早く気付くことができます。

発達障害の種類ごとのサイン

発達障害の種類ごとのサインを理解しておくと、さらに早く気付きやすくなります。

自閉スペクトラム症(ASD)• 言葉の発達に遅れがある
• こだわりが強い
• 笑い返さない
• 指さしをしない
• 目を合わせない
など
注意欠陥多動性障害(ADHD)• じっと座っていられない
• 落ち着きがない
• 授業中に席を離れる
• 順番を待てない
• 一方的にしゃべってしまう
など
学習障害(LD)• 文字の読み書きが難しい
• 板書が極端に遅い
• 簡単な計算ができない
など
チック症(トゥレット症候群)• 首を激しく振る
• 咳払いをする
• 急に大声を出す
• 不適切な言葉を言ってしまう
など
吃音症• 単語の一部を何度も繰り返す
• 言葉がつかえてしまう
• 始めの音を引き延ばす

上記のサインが見られたら、発達障害の疑いがあると考えられます。

子どもの発達障害に気づいたらどうしたら良い?

発達障害に気付いた後の対応のイメージ

子どもの発達障害に気づいたときにすべき行動は以下の通りです。

  • 身近な相談機関に相談する
  • 発達障害の検査・診断を受ける
  • 発達障害の支援・治療を受ける

ここでは上記3つについてそれぞれ解説します。

身近な相談機関に相談する

子どもの発達障害に気づいたら、まずは身近な相談機関に相談しましょう。

具体的な相談機関としては以下が挙げられます。

  • 地域の子育て支援センター
  • 家庭児童相談室
  • 児童相談所
  • 保健センター
  • 発達障害者支援センター
  • 療育センター

もしタイミングが合えば、1歳半検診や3歳児検診などで相談するのもおすすめです。

上記のような相談機関では、発達の特性や対応の仕方についてアドバイスを受けたり、必要に応じて専門機関を紹介してもらったりすることができます。

発達障害の検査・診断を受ける

子どもが発達障害かどうかを調べるためには、医療機関で検査・診断を受ける必要があります。

大学病院や総合病院、小児科、児童精神科、小児神経科などで検査・診断を受けられますが、すべての医療機関で対応しているわけではないため、あらかじめ確認しておきましょう。

発達障害は基本的に問診や心理検査などを行ったうえで、医学的な診断基準である『DSM-5』や『ICD-11』に適合しているか否かで診断されます。

発達障害の支援・治療を受ける

発達障害の子どもは、特性に合わせた支援や治療を受けることが重要です。

支援・治療方法には療育(発達支援)薬物療法などがあります。

療育は発達障害のそれぞれの特性や段階に合わせて、学習や対人関係スキルの指導などを行う支援方法です。

子どもに合った学習方法の指導や感情コントロール方法の取得などさまざまな指導があり、子どもに合わせたサポートが可能です。

療育は児童発達支援センターや児童発達支援事業所などで受けられます。

また症状によっては薬物療法が有効なこともあります。

薬の成分によって脳内の神経伝達物質のバランスを調整することで、症状をコントロールすることが可能です。

ただし薬物療法は症状を根本的に治すのではなく、症状の緩和を目的としていることを理解しておきましょう。

発達障害のある子どもへのサポート方法

発達障害のサポート方法のイメージ

発達障害のある子どもへのサポートを行う際は、それぞれの特性に合わせたアプローチをすることが大切です。

ここでは各特性に合ったサポート方法について解説します。

自閉スペクトラム症(ASD)へのサポート方法

自閉スペクトラム症の子どもは、周囲とのコミュニケーションや強いこだわり、感覚の過敏さなどに悩むことが多いです。

具体的なサポート方法としては以下が挙げられます。

  • 絵や文字で視覚的にスケジュールを表す
  • 曖昧な表現を避け、具体的にゆっくりと話す
  • 目標設定を小刻みにする
  • 静かな環境を作る
  • イヤーマフを活用する

上記のように、自閉スペクトラム症の子どもでも分かりやすい環境を整え、安心して生活できるようにすることが大切です。

注意欠陥多動性障害(ADHD)へのサポート方法

注意欠陥多動性障害の子どもは不注意、多動性、衝動性の特性を持ち、日常生活や学習に困難を感じることがあります。

具体的なサポート方法は以下の通りです。

  • 持ち物や時間割は親も一緒に確認する
  • 役割を伝えて動く時間を作る
  • 子どもが行動する前に気づきを促す声かけをする(「飛び出さないようにゆっくり歩こう」など)
  • 多動や多弁は優しく注意する

自分の状態に子どもが自ら気づけるよう、こまめに声掛けをすることが大切になります。

学習障害(LD)へのサポート方法

学習障害のサポートでは、子どもが苦手な部分を補いながら、得意な部分を伸ばすことが重要です。

  • 子どもに合った学び方を考える
  • 絵や文字を使って視覚的に伝える
  • 音声読み上げソフトやルビ付きの教材など特性に応じた教材を活用する

学習障害の子どもは「できない」と感じやすいため、努力や成長を認め、小さな成功体験を積み重ねることが大切です。

また学校での合理的配慮を受けるために、教育機関と連携して適切な支援を受けることも有効です。

特性が重なっている子どもに対するサポート方法

発達障害の特性は一つだけでなく、複数が重なっていることが少なくありません。

例えば自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠陥多動性障害(ADHD)が併存している場合、こだわりが強い一方で注意が散漫であったり、ミスが多くなりやすかったりといった特徴があります。

この場合は本人の学習ペースに合わせた工夫が大切です。

特性が重なっている場合は支援方法を一つに絞るのではなく、子ども一人ひとりの特性に合わせた柔軟な対応が求められます。

支援機関や医療機関の専門家と相談しながらサポートを行っていきましょう。

発達障害は特性に合ったサポートをすることが大切

発達障害は自閉スペクトラム症や注意欠陥多動性障害、学習障害などいくつかの種類があり、それぞれの特性に合わせたサポートが大切になります。

適切なサポートを行うためにも、まずは子どもの行動をよく観察したり子どもの悩みに耳を傾けたりすることが重要です。

子どもに発達障害の疑いがある場合は、早めに専門家に相談するのがおすすめです。

かもみーる』では、発達障害に対応したオンライン診療・オンラインカウンセリングサービスを提供しています。

発達障害の疑いがある場合や病院を受診すべきか悩んでいる場合は、ぜひ当院までご相談ください。

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