思い出して泣くのはうつ病?非定型うつ病との違いや涙が出る対処法を紹介

更新日 2025年12月13日

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仕事中やふとした時に、過去の嫌な出来事を思い出して涙が出てしまう「思い出し泣き」を経験したことがあるかもしれません。

特に、夕方や夜になると気分が沈み、思い出し泣きがひどくなる人もいます。

思い出して泣くという症状は、「もしかしてうつ病のサインかも」と思われることも多いです。

また、従来のうつ病のほか、非定型うつ病の可能性を考える人もいるでしょう。

精神科や心療内科の受診が必要な場合もあるため、詳細を知っておくと適切に選択しやすくなります。

この記事では、思い出し泣きとうつ病・非定型うつ病の関係や、夕方から夜につらくなる理由などを紹介します。

思い出して泣くことについて疑問や悩みのある人は、ぜひ参考にしてください。

うつ病と非定型うつ病の違い

最初に、うつ病と非定型うつ病の違いを見てみましょう。

非定型うつ病は、従来のうつ病(定型うつ病)とは異なる特徴を持ちます。

ここでは、うつ病と非定型うつ病の違いについて紹介します。

うつ病の特徴

うつ病(定型うつ病)の特徴として、1日中憂うつな気分が続き、楽しい出来事があっても気分が晴れない点が挙げられます。

主な症状は以下が代表的です。

  • 気分の落ち込み
  • 興味や喜びの喪失
  • 睡眠障害(早朝に目が覚めるなど)
  • 食欲低下
  • 疲労感
  • 集中力の低下
  • 自己評価の低さ など

また、朝方に症状がもっとも重く、夕方にかけて軽くなるといった様子も多いです。

このような症状が2週間以上続く場合は、早めに専門医へ相談することが重要です。

非定型うつ病の特徴

非定型うつ病は、従来型(定型)のうつ病とは異なるパターンを示すタイプのうつ病です

従来型ではよいことがあっても憂うつ状態が続くのに対し、非定型うつ病ではよいことや嬉しい出来事があると一瞬気分が明るくなることがあります。

また、非定型うつ病患者は、突然過去の辛い出来事を思い出して感情が制御できなくなる不安・抑うつ発作が現れやすい傾向です。

涙が溢れたりフラッシュバックに襲われたりするケースがあります。

こうした特徴以外では、悲しみや絶望感、強い倦怠感、イライラ感など基本的な抑うつ症状は定型うつ病と共通しています。

思い出して泣く原因とうつ病の関係

辛い記憶を思い出して突然涙が出てしまう現象は「思い出し泣き」と呼ばれることがあります。

ここでは、この思い出し泣きが具体的に何を指すのか、うつ病や非定型うつ病とどのような関係があるのかなどについて紹介します。

「思い出し泣き」とは何か

「思い出し泣き」とは、過去の出来事を思い出すと突然涙が出てきたり、理由もなく涙が溢れて感情をコントロールできなくなる状態を指します。

以前は涙を流さなかったような些細な出来事でも、涙が止まらなくなってしまうのが特徴です。

つまり感情の制御が効かなくなっている状態ですが、これは本人の性格の問題ではなく、うつ病によって脳内ホルモンバランスが乱れていることが一因です。

うつ病や非定型うつ病における思い出し泣きの違い

思い出し泣きはうつ病の症状のひとつとして現れることが多く、以前なら泣かなかったような場面でも涙がこぼれてしまうことがあります。

うつ病になると脳内の神経伝達物質が乱れやすくなります。

そのため、感情コントロールが難しくなり、涙が出るという仕組みです。

一方、非定型うつ病ではその仕組みに違う一面が見られます。

非定型うつ病の場合、対人関係の悩みや過去の後悔が引き金になり、突然涙が込み上げることが多いとされています。

つまり、「思い出して泣く」という症状は、それぞれ機序や特徴に違いはありますが、うつ病でも非定型うつ病でも見られるということです。

フラッシュバック・トラウマ反応と涙の関係

フラッシュバックとは、ふとした時に過去の嫌な記憶が突然蘇り、辛く苦しい気持ちになったり、悲しくて涙が出たりする現象です。

急性ストレス障害(ASD)や心的外傷後ストレス障害(PTSD)で多く見られます。

例えば、事故や災害など、特定の過去のトラウマ体験が突然鮮明によみがえり、強い恐怖や哀しみの感情反応を引き起こすといった例があります。

PTSDではフラッシュバックに伴って涙が出たり、動悸やパニック発作など激しい自律神経反応が生じ、うつ病とは異なった生理反応を伴うことが多いです。

もし特定の過去の出来事を思い出して急に涙が出る場合は、PTSDの可能性も考え、精神科や心療内科の受診を検討しましょう。

「嫌なことばかり思い出す」理由

嫌なことばかり思い出す状態の背景には、うつ病における反芻思考(はんすうしこう)という症状が関係しています。

反芻思考には以下のような特徴があります。

  • つらい過去の出来事や失敗を繰り返し思い出しす
  • そのたびに気分が落ち込む など

この反芻思考が起こる理由のひとつに、脳がブレーキをかけられなくなっていることが挙げられます。

嫌な記憶を呼び起こした際に、脳がブレーキをかけられなければ、それに没頭して繰り返し考えてしまうことでネガティブな感情が増幅します。

その結果、別の嫌な記憶まで呼び起こされてしまうことも少なくありません。

嫌な記憶をぐるぐると反復してしまうため、気持ちの落ち込みがいっそう深くなってしまうことも多いです。

こうした思考パターンは病気による認知の偏りが原因であり、本人の性格や努力不足が原因ではありません。

夜や夕方につらくなる理由

朝は比較的問題がなくても、夕方から夜になると急に気持ちが落ち込んだり涙が出たりする人もいます。

ここでは、夜や夕方に特に気分がつらくなる理由について紹介します。

夜・夕方にうつ症状が強くなる理由

うつ病は1日の中で症状が変動する(日内変動)ことがあります。

例えば、従来型のうつ病では朝に症状が重く、夕方には軽くなるケースが多い傾向です。

一方、非定型うつ病では、逆に夕方から夜にかけて症状が悪化しやすい人も多いです。

そのため、「夕方になるとつらい」「夜になるとネガティブになって泣いてしまう」と訴える人も少なくありません。

また、日中に受けたストレスや疲労が夜に積み重なり、気分の落ち込みを感じやすくなるという要因もあります。

これはうつ病に限らず誰にでも起こり得る現象です。

さらに、周囲が寝静まる夜の時間帯は考え事が増えやすく、昼間は平気だったことを思い返して落ち込んでしまうことも珍しくありません。

自律神経とホルモンバランスの変化

夜になると身体は休息モードに入り、副交感神経が優位になります。

副交感神経が優位であれば通常はリラックスできる状態ですが、周囲が静かになることでかえって思考が内向きになることも多いです。

昼間は気にならなかったことを思い出し、不安になる人もいます。

さらに、夜は気分を安定させる脳内物質のセロトニンの分泌が下がり、その代わりに睡眠を促すメラトニンが増える時間帯です。

このセロトニンの低下によって気持ちの落ち込みや漠然とした不安感が生じやすくなります。

特に、うつ傾向の人はもともとセロトニンの分泌が少なめであることも多いため、夜に情緒不安定になりやすいといえます。

日中のストレスの蓄積と疲労

日中に受けたストレスや心身の疲労が蓄積し、夜になる頃にどっと押し寄せることも、気分が落ち込む一因です。

例えば、日中は気にならなかった仕事での小さな失敗も、疲れが出る夜になると急に思い返してしまう人もいるでしょう。

そのように体力や気力が消耗した状態では、心の抵抗力も弱まり、うつのような状態になるケースもあります。

このような場合は「疲れているだけ」「休めば治る」と思う人も多いですが、ケアが遅れると本格的なうつ病に進む恐れもあるため、精神科や心療内科での受診も検討してください。

日常生活への影響と注意したいサイン

思い出し泣きや気分の落ち込みは日常生活にも影響を及ぼしますが、「性格の問題かな?」と捉えられて見逃されるサインも少なくありません。

ここでは、うつ状態がもたらす思考パターンの変化や、周囲が気づきにくいサインなどについて紹介します。

「嫌われている気がする」などの思考パターン

うつ状態の人には、「自分は周りから嫌われているのではないか」「どうせ自分なんて価値がない」といったネガティブな思考パターンが生じることも珍しくありません。

特に非定型うつ病の患者さんは、対人関係での拒絶への過敏さ(拒絶過敏性)が強く、自分へのちょっとした否定的反応を過度に深読みし、落ち込んでしまう傾向があります。

その結果、実際には周囲から何も言われていなくても「みんな自分のことが嫌いに違いない」と思い込んでしまい、孤立感を深める悪循環に陥りがちです。

しかし、このような思考は病気による認知の歪みであり、本人の性格や努力不足が原因ではありません。

思い出してイライラや突然涙が出る症状

うつ状態では悲しみだけではなく、イライラ感や怒りっぽさも生じることがあります。

例えば、昔の嫌な出来事を思い出して突然怒りが込み上げる(いわゆる「思い出しイライラ」)ことや、ちょっとしたことで急に涙がこぼれてしまうことなどです。

このような反応は精神状態の不調サインであり、健康な時であれば受け流せるようなことに過敏に反応してしまっている状態です。

特に非定型うつ病では感情の起伏が激しく、怒りの爆発や衝動的な行動(物に当たる、自傷するなど)につながるケースも報告されています。

また、PTSDにおいても、フラッシュバック時に強い怒りや恐怖でパニック状態になる場合があります。

このような症状が繰り返す時は、心身がSOSサインを出していると考え、できるだけ早く専門医に相談するべきでしょう。

「定期的に病む」と感じるときの注意点

定期的にメンタルが不調になると感じる場合、うつ症状が繰り返し現れている可能性があります。

特に非定型うつ病は慢性化・再発しやすい特性があり、一度よくなってもまた症状がぶり返すことも珍しくありません。

例えば「毎年冬になると憂うつになる」「月に一度決まって気分が落ち込む」など、分かりやすい一定のパターンがあるなら、季節性うつ病や月経前不快気分障害(PMDD)の可能性も考えられます。

いずれにせよ、調子が悪い時期を自己判断で放置せず、その周期に合わせて心療内科を受診したり生活リズムを調整したりすることが大切です。

気分の日記をつけておくと、自分の不調の周期やきっかけを把握しやすくなるため、生活に取り入れてみるのもおすすめです。

受診の目安とセルフケア・対処法

思い出し泣きや落ち込みの症状が続く時、いつ病院に行くべきか迷うのではないでしょうか。

また、日常で実践しやすいセルフケアを知りたいという人もいるでしょう。

ここでは、受診の目安や取り入れやすいセルフケアについて紹介します。

精神科や心療内科の受診のタイミング

うつ症状が2週間以上続いたり、日常生活に支障をきたしている場合は、できるだけ早めに精神科・心療内科の受診をおすすめします。

以下のような症状は、特に受診の目安になります。

  • 気分の落ち込み
  • 極度の疲労感
  • 不安や焦燥感
  • 睡眠や食欲の異常 など

また、「ストレスがないのにうつ病のような状態になる」と感じている場合も、隠れた原因や病気が隠れている可能性があるため、受診を検討してください。

セルフケアでできること

うつ症状のケアとして、生活習慣の見直しをはじめ、十分な休養が取れるような環境を整えましょう。

具体的には以下を意識してみてください。

  • 規則正しい睡眠(決まった時間に寝起きする)
  • 適度な運動(ウオーキングやストレッチなど)
  • 栄養バランスのよい食事

このほか、自分の気持ちやその日の出来事を、日記や気分記録として書き留めておくこともおすすめです。

日記をつけることで、調子の波や落ち込むきっかけが客観的に把握できるようになり、医師に相談する際にも役立ちます。

思い出して泣くのはうつ病かも?専門医の診断で早期の対応を

過去を思い出して泣いてしまう症状は、うつ病でよく見られる特徴であり、自分自身が弱いから起こるわけではありません。

夕方や夜につらくなることが多いのも同様で、自律神経やホルモンバランスの変化が関係しています。

思い出し泣きは本人にとってつらい症状ですが、放置せず、適切に対処すれば改善が期待できます。

症状が続く際には早めに精神科や心療内科を受診しましょう。

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