投稿日 2026年09月13日
CY-BOCS(サイボックス)は、子ども・思春期の強迫性障害(OCD)の重症度を、医療者が面接によって評価する代表的な尺度です。
強迫観念と強迫行為による苦痛や生活への支障を0~40点で表します。
ただし、点数だけで診断を確定する検査ではありません。
本記事では、CY-BOCSの評価内容、点数の見方、本人と保護者への聞き取りが必要な理由、治療前後での使い方を解説します。
CY-BOCSとは

CY-BOCSは「Children’s Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale」の略称で、成人に用いられるY-BOCSをもとに、小児・思春期の強迫症状を評価できるよう作られた尺度です。
1997年にScahillらが信頼性と妥当性を報告し、現在も診療や研究で広く用いられています。
比較項目 | Y-BOCS | CY-BOCS |
|---|---|---|
主な対象 | 成人 | 子ども・思春期 |
情報収集 | 主に本人への面接 | 本人と保護者への面接 |
重視する場面 | 仕事・家庭・社会生活 | 家庭・学校・友人関係 |
評価上の配慮 | 症状の隠蔽や回避 | 発達段階と言語化の難しさ |
Y-BOCSとCY-BOCSは、いずれも強迫観念と強迫行為の重症度を評価する尺度です。
ただし、CY-BOCSでは子どもの発達段階を考慮し、本人だけでなく保護者からも情報を集めます。
家庭だけでなく、学校生活や友人関係への影響を確認する点も重要です。
成人に用いられる尺度については「Y-BOCSとは」の記事で詳しく解説しています。
▶︎ Y-BOCSとは?強迫性障害の重症度評価と点数の見方を解説
CY-BOCSで評価する内容
まず、現在または過去にみられた強迫観念と強迫行為を症状チェックリストで確認します。
そのうえで、通常は直近1週間の主な症状について、10項目を各0~4点で評価します。
区分 | 評価する主な側面 | 配点 |
強迫観念 | 費やす時間、生活への支障、苦痛、抵抗、コントロール | 5項目 各0~4点 |
強迫行為 | 費やす時間、生活への支障、苦痛、抵抗、コントロール | 5項目 各0~4点 |
合計 | 強迫観念と強迫行為による総合的な重症度 | 0~40点 |
強迫観念は、本人が望んでいないのに繰り返し浮かぶ考え、イメージ、衝動などです。
強迫行為は、不安を和らげたり、悪い出来事を防いだりするために繰り返す行動や、頭の中だけで行う儀式を指します。
子どもの強迫症状の例

症状の現れ方 | 家庭や学校でみられる例 |
汚れへの恐怖と洗浄 | 何度も手を洗う、物に触れない、入浴や着替えに長時間かかる |
確認 | 宿題や持ち物を繰り返し確認する、保護者に何度も安心を求める |
加害への恐れ | 誰かを傷つけたのではないかと心配し、繰り返し尋ねる |
対称性や正確さ | 文字を書き直す、物の位置を揃える、納得できるまでやり直す |
縁起や頭の中の儀式 | 特定の回数を繰り返す、心の中で言葉を唱えて打ち消す |
子ども本人が「やめたいのにやめられない」と自覚しているとは限りません。幼い子どもでは、行為の理由を説明できなかったり、「こうしないといけない」とだけ感じたりすることもあります。
子供の強迫性障害の原因と特徴については下記の記事で解説しています。
▶︎ 子供の強迫性障害の原因と特徴|家族の接し方と早期発見が鍵
CY-BOCSの点数の見方
合計点は0~40点で、高いほど強迫症状による苦痛や生活上の支障が大きいことを示します。
臨床で用いられることのある一般的な目安は次のとおりです。
合計点 | 重症度の目安 | 注意点 |
0~7点 | 症状なし~ごく軽度 | 回避によって症状が表面化していない場合もある |
8~15点 | 軽度 | 苦痛や時間の消費がみられる |
16~23点 | 中等度 | 家庭・学校生活への影響が明確になりやすい |
24~31点 | 重度 | 症状が生活の多くを占めやすい |
32~40点 | 極度 | 生活機能が著しく損なわれている可能性がある |
この区分は目安であり、点数だけで強迫性障害の有無や治療の必要性を判断するものではありません。
年齢、発達段階、症状の経過、回避、併存症、学校や家庭での支障を含めて評価します。
本人と保護者の評価が違うこともある
CY-BOCSでは、本人と保護者からそれぞれ話を聞くことが重要です。
保護者は、手洗い、確認、着替えのやり直しなど外から見える行動を把握しやすい一方、本人の頭の中で行われる数え直しや打ち消し、不快な侵入思考までは分からない場合があります。
反対に、子ども自身は家族がどの程度生活を合わせているかに気づいていないことがあります。
回答が食い違っても、どちらかが間違っているとは限りません。
家庭、学校、外出先など場面ごとに症状の出方が違う可能性を考え、医療者が具体的な状況を確認します。
評価では家族の巻き込みも確認する
子どものOCDでは、家族が不安を下げるために安心を保証する、代わりに確認する、汚れを避ける、家庭の予定を儀式に合わせるといった「家族の巻き込み」が起こりやすくなります。
これは子どもを助けようとする自然な対応ですが、長期的には強迫症状を維持することがあります。
CY-BOCSの点数だけでなく、家族が症状に合わせている場面も治療計画に関わります。
学校での影響も重要
- 登校準備に時間がかかり、遅刻や欠席が増える
- 文字や計算を何度もやり直し、課題が終わらない
- 汚れや間違いを恐れて給食、体育、トイレなどを避ける
- 授業中も頭の中の確認に注意を取られる
- 友人に触れられることや物の貸し借りを避ける
家庭では症状が目立たなくても、学校で大きな負担が生じている場合があります。
必要に応じて、本人と保護者の同意のもとで学校から情報を得ることもあります。
CY-BOCSは診断テストではない
CY-BOCSは強迫症状の重症度を測る尺度であり、単独で診断を確定する検査ではありません。
発達特性に伴うこだわり、チック、全般的な不安、うつ症状、摂食障害に伴う儀式、精神病症状などが強迫症状に似て見えることがあります。
行為をする目的、本人がどう感じているか、止めたときの反応、経過などを確認して鑑別します。
治療前後では点数の変化を見る
CY-BOCSは、認知行動療法、とくに曝露反応妨害法(ERP)や薬物療法の前後で症状の変化を追うためにも用います。
開始時の点数が異なるため、何点下がったかだけでなく、何%低下したか、学校や家庭でできることが増えたかも確認します。
研究では治療反応や寛解について複数の基準が検討されています。
現在は、CY-BOCSの低下率だけでなく、全般的な改善度や診断基準、生活機能を組み合わせる考え方が重視されています。
数字だけを目標にするのではなく、登校、宿題、外出、家族との生活など、本人にとって重要な変化を併せて評価します。
まとめ
CY-BOCSは、子ども・思春期の強迫観念と強迫行為による苦痛や生活への支障を0~40点で評価する尺度です。
本人と保護者の双方から情報を集め、家庭、学校、友人関係、回避、家族の巻き込みまで含めて判断します。
診断を確定するセルフチェックではないため、点数だけで結論を出さず、生活に支障がある場合は児童精神科や精神科へ相談してください。





