うつ病は治らない?発症段階や長引く理由・新しい治療の選択肢を紹介
更新日 2025年01月01日
うつ病
うつ病の治療中の人は、長引く治療期間や社会復帰などのことを考えると不安でいっぱいな気持ちになるでしょう。
また、今現在過酷な環境に置かれている人の中にも、自身の精神面がおぼつかなくなって「これってもしかしてうつ病では?」と心配している人もいるかもしれません。
この記事では、うつ病が治らないと思われている理由や、どのようにしてうつ病は悪化していくのか、治療が長引く理由、そして新しいうつ病治療の選択肢などについて紹介します。
ゆっくりと向き合って日常生活を取り戻すための参考にしてください。
うつ病は治らないのか?

うつ病は、適切な治療を行うことで治る病気ですが、治療に時間がかかるうえ、再発率が高い病気のため、治らないと思われがちです。
しかも思った以上に長引いたり合併症があったりと、回復するどころかさらにつらい思いをすることも少なくありません。
しかしうつ病にはさまざまな治療のアプローチ法があり、その人にあった治療を適切に行い、また周囲の理解や支援を受けることで回復が期待できます。
うつ病はなぜ長引くのか

うつ病は本来半年から1年程度で回復を見せる病気ですが、「治らない」といわれるほど長引くことがあり、中には10年・20年と治療をしている人がいるほどです。
同じ治療をしていても全体の20~30%は長期化してしまうといわれています。
うつ病が長引く理由について紹介します。
十分に休養がとれていない
うつ病の治療において休養がとれていないことは、うつ病の長期化を招きます。
休養をとるということは、ストレスを遠ざけてゆっくりと落ち着いた時間をすごすということです。
また、焦りのため回復しないうちに仕事復帰してしまうとせっかくの治療が無駄になってしまうため、復帰のタイミングは主治医と必ず相談して慎重に決めましょう。
主治医との相性
主治医との相性がよくないと信頼関係が築けず、適切な治療を受けられずに症状が長引くことがあります。
上手くコミュニケーションがとれないまま治療を受けるため、不信感から途中で通院をやめてしまうことになり、治療が止まってしまいます。
うつ病の患者さんにとって安心できる場所での治療は大切な条件であるため、他のクリニックを探すことを検討するのも方法の一つです。
自己判断で薬をやめてしまう
自己判断で薬をやめてしまうと、治療が中断することになるため、結果的に回復まで長引いてしまいます。
患者さんの中には、薬が効いて気分が回復したり、逆に効果が感じられなかったりすることで、途中で薬をやめてしまう人が多くいます。
一般的に処方される抗うつ薬は効果が出るまで2週間程度かかったり、薬を急にやめると吐き気などの副作用が出たりするなど、治療が成り立ちません。
治療を長引かせないためには、主治医の指示に従って適切な服薬を続けましょう。
うつ病ではない可能性
うつ病だと診断が出ても、実際は別の病気だったというケースも見られます。
治療を始めてしばらく経っても症状が改善しない場合、主治医に気が付いたことや疑問を相談することで、追加の検査を受けるきっかけになるでしょう。
他の病気と見分けづらい多種多様な症状がみられ、症状がつらい病気であるため、早々に治療を始め症状の緩和に努めながら、関連する病気を発見できるケースといえるでしょう。
うつ病とは

うつ病は平成8年から平成20年までの12年間で2.4倍に増え、その後も増加傾向にある、ストレスの多い時代を反映した病気といえるでしょう。
そもそもうつ病はどのような病気なのか、詳しく紹介します。
うつ病の原因
うつ病の原因はいまだはっきりしたことが分かっていませんが、以下のように発症しやすい原因はいくつか考えられています。
- 何かを喪失したとき・つらいことや悲しいことがあったとき
- 遺伝(近親者にうつ病患者がいる場合は高い頻度で発症する)
- 女性(ホルモン分泌量の変化などによるとされる)
- 特定の病気
- 特定の薬の副作用
他の病気が、直接的にも間接的にもきっかけになって発症する場合もあります。
ホルモン量が増えても減ってもうつ症状がみられる甲状腺の病気や、痛みが日常生活の支障となって抑うつ状態を引き起こす関節リウマチ、不眠症や精神疾患などがあります。
うつ病のしくみ
うつ病の原因は、脳内で感情をコントロールしている脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、心身のエネルギーが低下した状態になるためと考えられています。
神経伝達物質とは、神経回路を形成しているニューロン同士の間で外からの情報を伝える電気信号になるもので、セロトニンやドーパミン・ノルアドレナリンなどがあります。
それぞれの働きは以下の通りです。
- ドーパミン
……やる気・多幸感・意欲などポジティブな感情 - ノルアドレナリン
……恐怖・驚きなどのストレスやネガティブな感情。ドーパミンの代謝産物 - セロトニン
……他の神経伝達物質の情報をコントロールし精神を安定させる
これらが適切な量や働きを守ることで精神が安定しますが、ストレスを抱えたり心身が疲れたりすることでバランスが崩れてしまい、感情がうまく制御できなくなります。
特にセロトニンやノルアドレナリンが欠乏して十分な機能を果たせなくなると、うつ状態になるといわれています。
うつ病の特徴
うつ病はうつ病そのものの症状の他にも特徴がいくつかある病気です。
感情的な苦痛をきっかけとして発症することが多いため、気分の落ち込みや意欲低下など、精神面での症状が注目されがちです。
しかし病状が進行していくと、頭痛や不眠・身体の痛みやしびれ・耳鳴りなど、身体的な症状が目立ってくる場合もあります。
そして治療の成果で回復してもそのあと再発する可能性が高く、発症を繰り返す病気としても知られています。
うつ病の合併症
うつ病はうつ独特の症状の他に、合併症を引き起こすことが多い病気です。
以下は、うつ病の合併症として考えられる病気の一例です。
- 不眠症
- 不安症(パニック障害・全般性不安障害など)
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)
- 強迫症
- パーソナリティー障害
特に不眠症はうつ病との関連性が非常に大きい危険因子といわれています。
他にも、心筋梗塞や妊娠・高齢などはそれが原因でうつ病を発症するなど、ライフイベントや年齢に伴う疾患などと合併することも少なくありません。
このようにうつ病単体ではないケースが多いため、治療が遅れると重症化しやすくなります。
合併症に応じてアプローチも異なるため、医師による早めの診断が重要です。
うつ病になりやすい人
うつ病になりやすい人には特徴があります。
- 責任感が強く真面目
- 自分に厳しく完璧主義
- 気遣いしすぎる
以上のような人は、周りに細やかに気を使い、人に頼らず、周りに迷惑をかけないようひとりで頑張ってしまう傾向があります。
取り巻く環境や社会的立場、起こった出来事などが絡むため、その人の特徴だけがうつ病の引き金ではありません。
ストレス解消は重要ですが、真面目な性格の人は適切な解消方法を見つけるのが難しい場合があります。
うつ病の発症段階

うつ病がどのように発症して重症化していくのか、発症段階を紹介します。
うつ症状が出ているかもしれないと考えている人は、受診の目安として参考にしてください。
軽度のうつ病
日常のことは何とかこなせますが、何となくだるかったり、何事に対してもやる気が起きなかったりするなど、漠然とした不調を感じます。
具体的な症状は以下の通りです。
- 口数が少なくなる
- 体調が悪い気がする
- 集中力が落ちて作業の効率が悪く感じる
- ささいなことで不安や焦りを感じる
- 身だしなみを気にしなくなる
- ネガティブ思考になる
違和感がありながらもコミュニケーションが可能で普段の生活に支障がみられないため、周りの人も気付きにくいでしょう。
中等度のうつ病
中等度のうつ病はあらゆる場面で気力が出なくなり、睡眠障害も生じてきます。
具体的な症状は以下の通りです。
- 頭や身体が重い・上手く働かない
- 下痢や便秘など内臓の不調を感じる
- 好きだったこと・趣味などに関心がなくなる
- 外出したくない・人に会いたくない
- 遅刻や欠勤などが増える
- 食欲の低下・異常な増進がみられる
- 体重の急激な変化
仕事や日常生活に支障が出始めるため、周りの人が察知して発覚する場合があります。
反面、本人にはまだ頑張ろうとする気持ちがあるため、周りにパフォーマンスの低下を責められるケースもあります。
重度のうつ病
コミュニケーションが困難になり、仕事や勉強に明らかな支障が出るほど悪化し、希死念慮が強くなって入院が必要となる場合があります。
具体的な症状の例は以下です。
- 動きがゆっくりになる
- 自殺願望や常識外れなことを考える
- 生きる希望を感じなくなる
- 消えてしまいたくなる
- 孤独感が強い
- ひきこもる
食事や水分を摂らなくなったり、受診をすすめても拒否するなど、この状態になると日常生活も困難になります。
うつ病の治療方法

うつ病治療は3本柱といって『休養』『薬物療法』『精神療法』がありますが、今では他にも重要視されている治療法や、新しい治療法が効果を期待されています。
うつ病の治療方法を紹介します。
休養
うつ病の治療では、医師の診断と指示のもと、十分な休養を取ることが重要とされています。
うつ病の大きな症状に倦怠感や疲労感があるため、無理をせず横になって過ごすのがよいでしょう。
そして無理のない程度に太陽を浴びて、軽くで良いため身体を動かし、1日3食をしっかり摂る、ストレスの少ない生活を送ります。
「早く治さなきゃ」「迷惑をかけている」などと考えず、病気を治すことに専念し、あせらずゆっくり過ごすことが大切です。
環境調整
しっかりと休養を取るためには、ストレスを感じさせない環境づくりが重要です。うつ病発症の原因となったものを遠ざけ、安心できる場所へと調整します。
家庭自体がストレスの場合は、医療機関に相談して入院ができる所を探すのもおすすめです。
一緒に暮らしている人の理解も必要です。いつもと変わらない態度でありながら、「頑張れ」や負担につながる言葉などはかけないよう、配慮してもらいましょう。
薬物療法
うつ病の薬物療法は抗うつ剤の処方が一般的です。以下のような薬があります。
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬
- セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
- ノルアドレナリン作動性・特異性セロトニン作動性抗うつ薬
神経間のシナプスで働くセロトニンやノルアドレナリンに働きかける薬剤で、情報が伝達しやすくなる効果を期待して処方されます。
この他にも抗不安薬や気分安定薬・睡眠導入薬・非定型抗精神病薬などが症状に合わせて処方される場合もあります。
即効性があるわけではなく、効果や副作用の様子を見ながら継続的に服用する必要があります。副作用の可能性もあるため、医師の指示に従って服用し、自己判断で突然中止しないことが重要です。
精神療法
うつ病の精神療法では、カウンセリングを行うことで発症の原因となった心の問題を解決する作業を行います。
初期のうつ病の場合、精神療法のみで薬物療法と同等の効果が得られる場合があります。
習慣や考え方を変える認知行動療法、ストレスの原因に多い人間関係を改善する対人関係療法、過去の行動を振り返り対処法を考えて社会適応力を高めるなど、方法はさまざまです。
通常は他の治療法と並行して効果を上げます。
通電療法
うつ病には通電療法が効果があるとされています。以下の治療法が取り入れられています。
- ECT(修正型電気けいれん療法)
こめかみから脳に数秒間、電気を流す
全身麻酔・入院が必要
10人に1人くらいの確率で記憶障害の副作用がある
重いうつ病に効果がある - TMS(経頭蓋磁気刺激治療)
磁場による磁気刺激で間接的に脳を刺激する
通院で受けられる
侵襲性がなく安全性が高い
副作用がほとんどない
ECTは重度のうつ病の他に躁病や統合失調症などの精神疾患を対象とし、薬物療法で効果が得にくい人や薬の副作用が出やすい人にすすめられます。
TMSは比較的新しい治療法で、脳の特定の部位にピンポイントで電気刺激を与え神経伝達物質のバランスを整える治療です。
うつ病治療の経過

うつ病治療は『急性期→回復期→再発予防期』の大きな3段階の過程を経て治療が進んでいきます。
急性期 | 回復期 | 再発予防期 |
---|---|---|
診断~3ヶ月頃まで 抗うつ剤を開始して身体を少しずつ慣れさせる ストレスの対象から離れる | 急性期の後4~6ヶ月頃 調子のいい時と悪い時が交互に訪れる 自己判断で薬をやめたり社会復帰したりしがち | 服用開始から1~2年 仕事に復帰している人もいる 服薬を続けながら様子を見て過ごす |
うつ病は順調に進むと半年~1年で回復する人が多いため、再発予防期に辿り着くまでにかかる期間の目安にしてください。
うつ病は適切な治療で治ります
うつ病は主治医の指示を守り、休養を十分にとり、適切な治療を受けることで治せる病気です。
しかし長期化しやすく再発もしやすいため、治療を始めた人や治療中の人は「このまま治らないの?」と不安に思うこともあるでしょう。
『かもみーる』は、臨床心理士・公認心理師を中心とする、有資格者のみが在籍している医師監修のオンラインカウンセリングサービスです。
出かけたり対面したりする必要がなく相談までのハードルが低いため、今まで踏み出せなかった一歩が気軽に踏み出せるでしょう。
治療が長引いている人、薬物治療で結果がなかなか出ない人など、うつ病にまつわる悩みを『かもみーる』がお伺いします。
▶︎ カウンセラー(医師・心理士)一覧 はこちら
▶︎ 新規会員登録 はこちら