発達障害の母親が育児で苦労する原因は?子どもに与える影響や周囲ができるサポートを紹介
更新日 2025年03月11日
児童精神科, 発達障害
発達障害のあるお母さんは、子育てにおいてさまざまな苦労や悩みを抱える傾向があります。
家事や育児を思うように行えないことで、ストレスが蓄積されたり母親失格だと心をすり減らしてしまったりするケースが多いです。
しかし、発達障害はその特性が子どもの成長に良い影響をもたらす場合もあるため、考え方を変えたり周囲のサポートを受けたりして、周りや自分と上手く付き合いながら子育てを行うことが大切です。
この記事では、発達障害があるお母さんの悩みの原因や、周囲・本人ができる工夫や対策について紹介します。
発達障害を持つ方やご家族の方は、ぜひ記事を参考にしてみてください。
発達障害がある母親の特徴

発達障害があるお母さんには以下の特徴があるため、本人や周囲の人が苦労するケースが多いです。
家事や育児が効率的に行えない
発達障害のお母さんは、家事や育児をするうえで段取りを立てたり、複数のことを同時に行ったりするのが難しいと感じやすい特徴があります。
子育て中はお世話と家事の同時進行を求められる場面が多いですが、発達障害の人は脳の機能に問題があるため、家事・育児の両立に困難が生じます。
例えば、子どもの相手をしながら料理をしたり、洗濯をしているあいだに買い物に行ったりなどの効率的な作業を苦手とするのが特徴です。
また発達障害では注意力の欠如や衝動性がみられるため、一つの作業中に他のことに気が散り、同時進行とは異なる形で、あちこちに手をつけてしまう傾向があります。
スケジュール管理に困難を感じる
発達障害では時間感覚が曖昧になる特徴があるため、スケジュール管理が難しく感じる可能性があります。
例えば、子どもの送迎の時間が毎日決まった時間であっても、今やっている家事があとどれくらいで終わるのか、お迎えの準備にどれくらいかかるのかなどを予測することに困難を感じます。
その結果、予定通りに行動するのが難しく時間に遅れてしまうことが多いです。
また、今取り組んでいることを中途半端にして次の作業に進むことに苦手意識を持つ場合があり、終わってから向かうことを選択した結果、時間に間に合わないケースがあります。
さらに、決まったスケジュールから逸れた突発的な出来事に対して柔軟に対応するのを苦手と感じ、頭が混乱してしまう場合もあります。
感情の起伏が激しい
発達障害には感情のコントロールが難しく、情緒不安定になりやすい特性があります。
不安やイライラを伴いやすく、感情的になることで、それを家族にぶつけてしまうケースが少なくありません。
感情のコントロールが苦手なことに加えて伝えることにも困難を感じたり、落ち着いて物事を思考することに困難を感じやすいことで、次に何をしたらいいのか分からなくなったりする場合があります。
部屋の片付け・整理整頓ができない
ADHDやASDの人には空間把握能力が低い特徴があるため、部屋の片づけが苦手な傾向があります。
また適切な取捨選択が難しく、不要なものがどんどん溜まりますが、来客の予定があると、部屋をきれいに見せたい欲求が高まることで物を押し入れに押し込んだりするなどの行動がみられます。
そのため、ぱっと見で片付いている印象があっても、家が不要なもので溢れているケースも少なくありません。
他人とコミュニケーションが上手くとれない
発達障害があるお母さんは、他人との交流に苦手意識を感じるケースが多いです。
特にASDの人は、人の感情を汲み取ったり周りの空気を読んだりすることが難しく、コミュニケーションが苦手な特徴があります。
そのため、地域の行事や保護者の集まりで他人と関わることに苦痛を感じやすく、いざその場にいくと会話の切り出し方やどんな話題を出せばいいのかが分からずに孤立する場合もあります。
他人だけではなく、子どもとのコミュニケーションにズレが生じるケースも少なくありません。
子どもの気持ちを上手く理解できなかったり、どう接していいのか分からなかったりすることで悩む方も多いです。
感覚過敏によるストレスを感じやすい
発達障害では感覚過敏を伴うケースが多いため、育児で発生するさまざまな刺激に対してストレスを感じやすいです。
子どもの声や泣き声、おむつのにおいなどは、感覚過敏がない人にとっても不快な場合があるため、感覚過敏がある発達障害のお母さんにとっては特に苦痛となります。
またテレビや電化製品の音を過敏に感じるため、他の家事や育児に集中できずに悩むケースも少なくありません。
複数のことを同時に行うのが困難な特性と嗅覚過敏の両方がある場合は、料理が苦手だったりほとんどしなくなったりするお母さんも多いです。
子どもの変化に対応できない
発達障害のお母さんは、子どもの成長による変化に悩みを抱える場合があります。
泣いたり上手く言葉を話せなかったりする乳児期の子どもがいると、発達障害があるお母さんはその意図や感情を読み取れずに苦労するケースが多いです。
子どもが言葉を話せるようになると基本的にはコミュニケーションへの苦手意識が軽減されますが、イヤイヤ期や反抗期などを迎えると、予想外の行動をとる子どもへの対応が困難になる可能性があります。
発達障害の母親が子どもに与える影響は?注意したいポイント

発達障害の特性が、お子さんにどんな影響を与えるか気になっている方も多いでしょう。
ここでは、考えられる影響や本人・周囲が注意したいポイントについて解説します。
感情的に当たる
発達障害のお母さんは、子どもに感情的な態度をとってしまうことがあります。
自分の感情次第で、過干渉になったり突き放したような態度になったりするなど、不安定な状態になります。
ストレスから怒りっぽくなるケースもあれば、子どもとの意思疎通が思うようにいかない場合は、自分は母親失格だとネガティブになってしまうケースもあります。
理不尽な干渉の仕方をする
発達障害のお母さんは、子どもに理不尽な干渉の仕方をしてしまうことがあります。
例えば「自分が決めた目標を達成することに強いこだわりがあり、完璧を求めようとするあまり、子どもの意見に耳を傾けない」などです。
その結果、子どもの意思や主張に寄り添わず、将来のことにのみ口を出したりコントロールしたりしようとするケースがあります。
子どもの問題行動に気が付けない可能性がある
発達障害のお母さんは、子どもの問題行動に気が付くのが難しいケースがあるため、周囲の人が気が付いて指摘してあげることも大切です。
例えば子どもが何も言わずに出かけてしまい、それが子どもが本来一人では行けないような遠方だったとしても平然としているのは、子どもの安全を守ることの具体的なイメージが難しい特性であるといえます。
また子どもの入浴に対して干渉せず、数日お風呂に入っていない状態でも気にしないなどの事例もみられます。
発達障害の母親が上手く育児を行うための工夫

発達障害のお母さんが上手く育児を行うためには、以下の対処や工夫を行いましょう。
自分の特性を受け入れる
自分の特性を理解して受け入れることで、生活における苦悩を軽減することにつながります。
できないことや苦手なことが多い現実に対して、自分は母親として失格だ、どうして上手くできないのだろうと悲観的にならずに、それでもできることがあると考えましょう。
例えば、こだわりの強さは子どもの生活リズムを整えるのに役立ちますし、感覚過敏には子どもの体調不良を素早く見抜ける利点があります。
また家事や育児の方法は一つではないため、自分に合った方法を模索することも大切です。
子どもの個性を尊重する
発達障害の場合は、自分の特性に加えて子どもの個性も尊重することが必要です。
子どもと母親の性格が正反対の場合はお互いに負担がかかる可能性が高まりますが、子どもを自分に合わせようとするのではなく、人間だから違いがあるのは当たり前と捉えましょう。
どうしてもお互いのペースが合わない場合は、適度に距離を置くことも大切です。
専門家によるアドバイスを受ける
発達障害の人が感じる特有の困難には、専門家によるサポートが効果的です。
発達障害者支援センターや精神保健福祉センターなどの相談先では、発達障害の専門家による相談しやすい環境が整えられています。
家事・育児の手際が悪いことで悩んでいる人や、時間の使い方や工夫方法を詳しく知りたい人は相談を検討しましょう。
ストレスへの対処法を身につける
発達障害の方はストレスを感じやすい特徴があるため、受けたストレスに対する対処法を身につけることが有効です。
例えば家事中の些細な音が気になる場合は、耳栓や防音のヘッドフォンを使用するのが推奨されます。
また衣類の素材や着心地が気になって家事・育児に集中できない場合は、不快感の少ない衣類を選ぶなどの工夫をしましょう。
特に育児は、発達障害がなくてもほとんどの人がストレスを感じるため、趣味の時間や一人の時間を設けることでリフレッシュすることが大切です。
発達障害者の周囲で起こる『カサンドラ症候群』とは?

カサンドラ症候群とは、自閉スペクトラム症(ASD)をもつ家族やパートナーとのコミュニケーションの難しさから生じる、心身の不調を指す言葉です。(医学的な診断名や診断基準はありません)
母親が発達障害の場合は、父親やその子どもがカサンドラ症候群として精神的なストレスや体調不良を伴う状態になりやすいとされています。
ASDは性格ではなく生まれつきの脳機能の障害によって引き起こされるものであるため、適切な対応や周囲の理解が重要になります。
カサンドラ症候群を解決するためには、症状に応じて認知行動療法や薬物療法が必要になる場合がありますが、ASDがある本人との関係やコミュニケーションの取り方を見直し、根本的に改善することも必要です。
発達障害がある母親と上手く付き合っていくためには

お母さんに発達障害がある場合は、以下の工夫をして上手く付き合っていくことが大切です。
発達障害についてよく理解する
お母さんに発達障害がある場合、本人だけではなく家族や周囲の人間も発達障害について理解を深めることが大切です。
発達障害の特性を理解することで、どんなことが負担になるのか、どんなサポートが効果的なのかに気が付きやすくなります。
しかし発達障害の症状や特徴は個人差が強いため、すべての人に同じ対応が適切なわけではないことも同時に把握しておきましょう。
相手に対して肯定・共感を示した態度を心掛ける
発達障害のお母さんは、自分が家事や育児を上手く行えないことに苦悩している可能性があるため、肯定的な態度や共感する姿勢を意識することが大切です。
夫婦では母親のすべての意見に同意することが難しいケースもあるため、その場合は話し合いをすることも必要になります。
また、ネガティブな出来事をすべて真に受けてしまうと心身の疲弊につながるため、ある程度のことは無視しない程度に受け流すことも大切です。
カサンドラ症候群を防ぐために、自身の心の健康を守ることも意識しましょう。
分かりやすく話す工夫をする
発達障害のお母さんと会話をする際は、相手がわかりやすいように話す工夫をしましょう。
例えば、「何時から誰が何をするよ」という情報を伝える際は、『何時』『誰』『何』を一つづつ説明することで理解がしやすくなります。
作業中に話しかけると内容が頭に入らない可能性があるため、聞く姿勢を整えてもらったうえで話すことが大切です。
生活上のルールを決める
発達障害のお母さんと家族が上手く関わっていくためには、生活するうえでのルールを決めることが推奨されます。
家庭内の決まり事や役割分担が事前に決まっていれば、発達障害を持つお母さんの混乱を防止し、精神的な負担を軽減することにつながります。
ルールを定める際は、そのルールの重要性を理解しながら話し合いをして、お互いが納得できる内容にすることが大切です。
なるべく・できるだけなどの曖昧な表現は使わず、具体的に設定するようにしましょう。
発達障害の特性を理解して、周りに頼った子育てを
発達障害のあるお母さんの特徴や、本人・家族ができる工夫・対処法を紹介しました。
発達障害があるからといって子育てに向いていないということはなく、発達障害の特性が子どもの成長や学習においてプラスに働くケースも多いです。
しかし、父親や子どもの精神的負担が増えたり、自身の心の健康にも影響が出たりする可能性があるため、対処法や考え方を模索することで上手く付き合っていくことが大切です。
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