発達障害の子どもは勉強が苦手?種類ごとの学習困難の特徴や対策を紹介
更新日 2025年04月30日
児童精神科, 発達障害
発達障害の子どもでは、勉強に必要な一部の能力に困難が生じるケースがあり、勉強が苦手・嫌いというマイナス思考につながってしまう可能性があります。
また、お子さんが授業についていけないと親御さんが頭を悩ませるケースもありますが、発達障害の子どもでも工夫次第で勉強への問題が解決できます。
では実際、どのような工夫や対策の仕方があるのでしょうか。
この記事では、子どもの発達障害の種類とその特徴、勉強に関する苦手を克服するための方法を紹介します。
お子さんの成績が気になる方や、自分にできる支援方法を知りたい親御さんは参考にしてください。
発達障害の子どもは勉強が苦手?

発達障害がある=勉強が苦手ではありませんが、発達障害では脳機能に偏りがあることから、勉強の際に困難や苦手意識を伴うケースが多いです。
発達障害の勉強では、単純に内容が覚えられない、難しいと感じる以外にも、勉強に集中できなかったりコミュニケーションが上手く取れなかったりすることで、授業を受ける姿勢に問題が生じる可能性があります。
しかし、勉強が嫌いになるかというと一概にそうとは言い切れず、興味のある教科や特定の分野に対しては好成績を修めるケースも少なくありません。
実際に発達障害でも勉強ができて、大学進学・就職活動を成功させている人も多いです。
しかし子どもの場合は、勉強したくても上手くできなかったり、自分に合った勉強法を見出すことが難しかったりする場合があるため、保護者の方がサポートしてあげることが大切です。
とはいえ、保護者の方も発達障害や子どもの学習に対しての専門知識があるわけではないため、必要な場合は専門家への相談や、都道府県の教育センターや発達障害支援センター、発達障害のための学習塾などを活用しましょう。
子どもの発達障害の種類と勉強に及ぼす影響

子どもの発達障害では、種類によって苦手なことが異なります。
注意欠陥多動性障害(ADHD)
注意欠陥多動性障害(ADHD)は、不注意・多動性・衝動性の3つの症状がみられる先天性の発達障害で、自分を上手くコントロールできないのが特徴です。
そのため、ADHDの子どもでは以下の勉強の問題が発生する可能性があります。
注意力が続かない
ADHDでは、集中力を持続させることが難しい特徴があるため、勉強に集中するのが苦手な傾向があります。
机に向かってる間に他のことに気が散りやすく、長時間集中して勉強ができないケースが多いです。
また、目の前に勉強道具が広げられた状態でぼーっと自分の世界に入り込んでいる場合も、集中していない状態といえます。
落ち着きがない
ADHDの子どもには、大人しく座っていることができない特徴があります。
元気でエネルギーが溢れる前向きなイメージがありますが、椅子に座って静かに勉強ができないのが問題点です。
自宅学習だけではなく、学校での授業中も落ち着きなく身体を動かしてしまうため、話に集中できていないケースも多いです。
衝動的に動く
衝動性があるADHDでは、頭に浮かんだ思考や行動を抑えられず、衝動的に動いてしまうケースも見られます。
勉強を教えている人の話を遮ったり、考えるより先に身体が先走って動いたり、周囲からの指示を聞かずに思うがまま動いてしまうため、勉強に支障をきたします。
自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症(ASD)は、先天的な脳機能の偏りによって発症する発達障害で、こだわりの強さや社会性の欠如などの特徴があります。
そのため、ASDの子どもでは以下の勉強の問題が発生する可能性があります。
人間関係の構築に困難が生じる
ASDの子どもは、他人との社会的な関係を構築するのが難しいと感じる傾向があります。
人と目を合わせて表情を読み取ったり、他人の感情のニュアンスを汲み取ったりすることを苦手とします。
また、なにかを身振りや手振りで表現して伝えることに困難を感じるケースも多いです。
コミュニケーションを上手くとれない
ASDがあると、他人とのコミュニケーションが難しいと感じる可能性が高いです。
ASDでは、言葉選びが苦手だったり誤った表現をしてしまったりすることで会話やコミュニケーションが滞ってしまうケースがあります。
また相手の考えていることを上手く理解できず、会話の内容が自分が話したい話題に偏ってしまうため、交友関係を思うように広げられない苦悩を感じる場合もあります。
興味がない分野の成績が伸びない
ASDの子どもは、特定の物事に強い興味を持ちますが、そうではないことに対しては不得手になる特徴があります。
そのため、得意な教科と不得意な教科に大きな差が生まれたり、例えば数学の図形や面積の問題はできるのに暗算や九九などの計算ができないなどの部分的な苦手意識が生まれるケースがあります。
ASDで得意・不得意が出る教科は個人差によって異なり、得意な教科が多いと、「発達障害だけど勉強はできる」ように見えることも少なくありません。
学習障害(LD)
学習障害(LD)では、知能の発達に問題がないのに、学習に必要なさまざまな能力に問題が生じるのが特徴です。
LDの子どもでは、勉強するうえで以下の困難が生じる可能性があります。
字を読むことが苦手
字を読むことが苦手なLDの症状をディスレクシア(読字障害)といい、文字の読み方や形の認識が上手くできない特徴があります。
文章の意味を理解することが困難であるため、国語や算数の応用問題などの読解が必要な教科を苦手としやすいです。
また文章をスムーズに読み進められないため、内容を簡潔にまとめたりあらすじを理解したりすることを難しいと感じます。
字を書くことが苦手
字を書くことが苦手なLDの症状をディスグラフィア(書字障害)といい、文字の形を認識して同じように書くことを困難とする特徴があります。
見たものの情報をうまく処理できない特性があるため、文字のバランスが取れずに書くことに時間がかかる欠点があります。
また黒板をノートに写す作業に時間がかかったり、自分の考えを書いて表現することを苦手とするケースも多いです。
文章を作るうえでは、特に助詞の使い方に困難を示す子どもが多い傾向があります。
算数・計算が苦手
算数や計算が苦手なLDの症状をディスカリキュリア(算数障害)といい、その場にないものを推測することが難しいと感じるのが特徴です。
計算が苦手だったり、文章問題の読解が苦手だったりするケースもあれば、数列の理解や数の概念を身につけることに苦手意識を覚えるケースもあります。
また暗算ができずに単純な計算でも指折り数えないといけなかったり、暗記した九九を計算に応用できなかったりする子もいます。
ADHDの子どもに対する勉強の工夫

勉強が苦手なADHDの子どもには、以下の勉強の工夫や対策がおすすめです。
1回の勉強時間を短く設定する
集中力が続かないADHDの子どもには、短時間の集中を繰り返す勉強法が有効です。
30分の勉強でも長いと感じる場合は、5分ごとに区切ってその都度目標を設定することで課題を進めていきます。
時間のほか、問題数の目標を定めたり教科を変えたりしながら取り組むのも効果的です。
ゲーム形式で問題を解く
勉強にゲーム性を取り入れると、集中力が切れやすいADHDの子どもでも楽しく学習できます。
問題をクイズ形式にしたり、制限時間内にできるだけ多くの設問のクリアを目指したりするなどの方法にすれば、短時間の集中力とやる気の向上が可能です。
おやつやご褒美をゲームの景品にすることで、モチベーションの維持にもつながります。
動きながらできる勉強法を取り入れる
じっと座ってるのが難しいADHDの子どもには、動きながらでもできる勉強法を提案するのがおすすめです。
動きながら文字を書くことは難しいですが、文を読んだり単語を覚えたりするのは机に向かわなくてもできます。
衝動性によって落ち着きがない場合は、教科書や単語カードなどを手にもって、歩き回りながら読む・覚える方法を取り入れてみましょう。
ASDの子どもに対する勉強の工夫

勉強が苦手なASDの子どもには、以下の勉強の工夫や対策がおすすめです。
具体的な言葉で話す
ASDの子どもに勉強を教える際は、あいまいな表現を避けて具体的な言葉で話すことが大切です。
「もう少し頑張ろう」「早めに宿題を済ませてね」などの表現は具体性がなく、混乱させてしまう可能性があります。
そのため「あと5問頑張ろう」「10分後に宿題を始めてね」などの具体的な数字で示すとよいでしょう。
質問と応答の流れを練習する
子どもから質問されたことに対して応答する練習をすることで、なにか質問をした場合に相手の応答を待ってから聞く姿勢が養われて、コミュニケーションスキルの習得につながります。
これによって、学校で先生や友達に質問することへのトレーニングになります。
反対に、こちらが問いかけたことに対してどう思っているのかを確認しながらやり取りをする練習も効果的です。
イラストを取り入れて覚える
ASDの子どもの勉強では、イラストを取り入れる工夫が推奨されます。
例えば分数の問題では、ケーキ・ピザなどの日常で見るもののイラストを用いることでイメージしやすいです。
また、英単語を暗記する場合に絵と連想させて覚える方法もあります。
LDの子どもに対する勉強の工夫

勉強が苦手なLDの子どもには、以下の勉強の工夫や対策がおすすめです。
短い単語から徐々に長くして読む練習をする(読字障害)
読解障害がある子どもの勉強では、短い言葉から徐々に長くして読む練習をするのが効果的です。
一文字・単語・語句・文章の順番で少しずつ長い文章を読めるように練習することで、段階的に読解の能力を身につけられます。
保護者の人ができる工夫としては、読み方を実際に聞かせて意味の理解を促すことや、例文を作成してもらうことによって語彙力を養う手伝いをするなどが挙げられます。
読み上げ機能を利用した勉強法を取り入れる(読字障害)
読み上げ機能のあるコンピューターや教材を取り入れることで、発音と文字を連想させて学習できます。
LDがない人は、無意識に目で見た文章を頭の中で発音できるように変換しますが、LDの子どもは脳の発達に偏りがあるため、この働きが上手く機能しません。
読み上げ機能があるコンピューターや教材があれば、文字と音声を連動させて理解できるため、親御さんが忙しくて勉強につきっきりになれない場合にも便利です。
なぞり書きによって形を覚える(書字障害)
書式障害で文字の形を認識することが困難な子どもの場合は、なぞり書きをすることで形を覚える方法が有効です。
まずは直線や曲線などの簡単ななぞり書きを練習したあとに画数の少ない文字のなぞり書きを行い、少しずつ視写ができるレベルに近づけていきます。
単調ななぞり書きに飽きてしまう場合は、好きな色のペンを選んで書いたり、小さなホワイトボードを使用したりするなど楽しみながら練習できる工夫がおすすめです。
一つの文字をパーツごとに分けて覚える(書字障害)
文字を書くことが苦手な書字障害の子どもの漢字の学習には、一つの文字を分解して覚える工夫がおすすめです。
例えば、【花】という漢字はカタカナのサ・イ・ヒの組み合わせに見立てたり、【青】という漢字は、三・月と書いて縦棒を足したりするなどの覚え方があります。
漢字を覚える場合は、漢字の意味を理解する・読めるようにする・書けるようにするの順で練習するのが効果的です。
実体験に結びつけて数字を理解する(算数障害)
LDの子どもは、単純な足し算や引き算が難しいと感じるケースがあるため、日常の出来事と連想させた考え方を学ぶのが推奨されます。
例えば買い物で使った金額の計算をしてみたり、運動部の活動をしている子であれば、試合の得点を数えてみたりすることで感覚的に理解できます。
日常で計算の練習になることがあれば、お子さんにクイズ形式で問題を出すのもおすすめです。
自分なりの覚え方を考える(算数障害)
計算問題を解く際は、自分なりの考え方や計算の仕方を覚えておくことで混乱を軽減できます。
例えば、3+5の計算をする場合は黒丸を3個、白丸を5個書いて合計の数を数えたり、5-3の計算をする場合は、一度丸を5個書いてから3個消したりすることで、計算の仕組みを理解することにもつながります。
筆算の組み立てが難しい場合は、自分で分かりやすくマスを作って当てはめるなどの工夫をすることで、繰り上がりの計算を忘れる場合などにも対処が可能です。
発達障害の勉強は、楽しめる・覚えやすい工夫をしよう
発達障害の子どもの特徴と、勉強法の工夫について紹介しました。
発達障害があることで必ず勉強を苦手だと感じるわけではありませんが、これによって得意・不得意な分野に大きな差が生まれる可能性があります。
子どもの発達障害では、親御さんがお子さんと一緒に楽しく学べるように工夫することが大切です。
医師監修のオンライン診療・オンラインカウンセリングサービス『かもみーる』では、児童精神科や発達障害に特化した医師・カウンセラーが発達障害のお子さんを持つ方の悩みや相談に真摯に向き合います。
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