投稿日 2026年10月11日
「負けた分を取り返そうとして、また賭けてしまう」「やめると決めても、気づけばギャンブルをしている」。
このような状態が続き、生活や人間関係に支障が出ている場合、ギャンブル依存症が関係していることがあります。
ギャンブル行動を調整する脳の働きや心理的・環境的な要因が関係しており、治療と周囲の支援によって回復を目指せる精神疾患です。
この記事では、症状や診断、治療法、ご家族の対応を整理します。
投稿日 2026年10月11日

「負けた分を取り返そうとして、また賭けてしまう」「やめると決めても、気づけばギャンブルをしている」。
このような状態が続き、生活や人間関係に支障が出ている場合、ギャンブル依存症が関係していることがあります。
ギャンブル行動を調整する脳の働きや心理的・環境的な要因が関係しており、治療と周囲の支援によって回復を目指せる精神疾患です。
この記事では、症状や診断、治療法、ご家族の対応を整理します。

ギャンブル依存症は、ギャンブル行動をコントロールすることが難しくなり、仕事、家庭、学業、経済状況などに深刻な影響が出ても続けてしまう状態です。
ICD-11では「ギャンブル行動症」として分類されています。
パチンコ・パチスロ、競馬・競輪・競艇、スポーツ賭博、オンラインでの賭けなど、形態を問わず問題が生じ得ます。
ギャンブル行動症では、楽しみとしてのギャンブルから、行動を調整しにくくなり生活に支障をきたす状態へと変化します。
金額や頻度だけでなく、制御の難しさ、優先順位の変化、悪影響があっても継続すること、生活機能への支障が重要です。

「今日は少額だけ」「週末だけ」と決めても、賭ける時間や金額が予定を超え、何度も中断・制限を試みてもうまくいかないことがあります。
賭ける行動を自分で調整できないことは、ギャンブル行動症の中核的な特徴の一つです。
診察では、頻度や金額とともに、生活への影響や行動を調整する難しさを評価します。
損失を取り返すために再び賭ける「負けの追いかけ(chasing)」がみられることがあります。
「次こそ当たる」「ここまで負けたのだから引き返せない」と考え、賭け金を増やしたり、借金をして続けたりする場合があります。
短期的な勝ちを経験すると、この行動がさらに強まることもあります。
賭け事の結果、次に賭ける方法、資金の調達などが頭から離れず、仕事や学業への集中が難しくなることがあります。
家族との約束や趣味、睡眠よりもギャンブルを優先するようになり、生活の中で占める割合が徐々に大きくなることがあります。
ギャンブルを控えたり、やめようとしたりすると、落ち着かない、いら立つ、強く賭けたくなるといった反応がみられる場合があります。
こうした反応は、ギャンブルを控えたときに生じる心理的な苦痛として評価されます。
使った金額や借入れを家族に隠す、生活費を賭け金に回す、返済のために別の借入れをするなどの問題が生じることがあります。
金銭問題だけでなく、遅刻・欠勤、対人関係の悪化、強い罪悪感や抑うつにつながる場合もあります。
重症度は、借金の状況に加えて、行動の制御や生活機能への影響を総合して評価します。
経済的損失や家族との衝突などの不利益を経験してもギャンブルを続けることがあります。
一時的にやめられても、ストレスや賭け事に触れる機会をきっかけに再開する場合があります。
これらのサインが続く場合は、専門家に相談し、生活への影響や治療の必要性を確認することが大切です。
症状が進行すると、借入れを重ねて返済が難しくなる、家族との信頼関係が損なわれる、仕事や学業を続けにくくなるといった問題が重なる場合があります。
診察では、ギャンブル行動の制御の難しさと生活機能への影響、併存する抑うつや自殺念慮などを個別に評価します。
借金の額や外見だけで状態を推測するよりも、本人の行動と日常生活の変化を確認することが早期支援につながります。

ギャンブル依存症の発症には、報酬を期待する学習の仕組み、物事の捉え方、衝動性や感情調整の特徴、生活上のストレス、ギャンブルに接する環境などが複合的に関係します。
幼少期からの経験も、こうしたリスク要因を理解するうえで重要な視点です。
ギャンブルでは、いつ報酬が得られるか予測しにくい仕組みが行動の反復を促すことがあります。
勝った経験だけでなく、「もう少しで当たりそうだった」という経験や結果への期待も、次の賭けを促すきっかけになります。
この過程には、ドーパミンを含む神経伝達系や、報酬の予測・学習・意思決定に関わる脳のネットワークが関係すると考えられています。
偶然の結果を自分の技術で左右できると考える「制御の錯覚」、過去の負けが次の勝ちを近づけると感じる「ギャンブラーの誤謬」などが、賭けを続ける判断に影響する場合があります。
損失を取り返したい気持ちが強いと、さらに危険な賭けを選びやすくなることがあります。
これらの認知の特徴は認知行動療法でも治療の対象として扱われます。
不安、孤独感、抑うつ、仕事や家庭のストレスなどから一時的に離れるために賭ける人もいます。
ギャンブルによって一時的に気分が変わると、その行動が繰り返されやすくなります。
一方、損失や隠し事が新たなストレスとなり、さらに賭けたくなる悪循環につながることがあります。
衝動性や刺激を求めやすい傾向、家族歴などはリスクに関係する可能性があります。
また、うつ病、不安症、ADHD、アルコール使用障害などが併存することがあります。
双極性障害の躁状態で賭け行動が増える場合には、ギャンブル行動症との鑑別が必要です。
併存疾患があれば、ギャンブル行動と併せて評価・治療します。
スマートフォンからの利用、短時間で繰り返せる賭け、広告や通知、決済の容易さなどは、ギャンブルに接する機会を増やします。
こうした環境要因は個人のリスクと組み合わさって問題を強める可能性があります。
治療では、通知の制限や利用環境の見直しなど、本人が実行しやすい対策を一緒に検討します。
子どもの頃に家庭内でギャンブルに接する機会が多かった経験や、家庭内の葛藤、虐待・ネグレクトなどの逆境体験は、成人後の問題あるギャンブル行動との関連が研究されています。
身近な大人の行動から賭け事への考え方を学ぶこと、慢性的なストレスが感情調整や対処行動に影響することなどが、考えられる経路です。
研究で示されるのは主に集団レベルでの関連であり、幼少期の経験だけから将来の発症を予測することはできません。
診察では、本人が話せる範囲で生育歴、家族のギャンブル歴、ストレスへの対処、ギャンブルを始めた時期を確認し、現在の問題を維持する要因と合わせて理解します。
NICE「Gambling-related harms: identification, assessment and management」
参考:ギャンブル障害のリスク要因に関するシステマティックレビュー / NICE ギャンブル関連の害に関する診療ガイドライン

ギャンブル依存症(ギャンブル行動症)の診断では、賭ける頻度や金額だけでなく、行動を制御できるか、ギャンブルを生活のほかの活動より優先しているか、不利益が生じても続けているかを確認します。
具体的には、競馬・競輪・パチンコ・オンライン賭博などの種類、使用金額、借金、隠し事、仕事・学業・家族関係への影響、これまでの中断の試みと経過を聞き取ります。
本人が話しにくい場合には、同意を得て家族からの情報も参考にします。
DSM-5-TRのギャンブル障害では、過去12か月間に、臨床的に意味のある苦痛または機能障害を伴う持続的・反復的な問題あるギャンブル行動があり、9項目中4項目以上に該当することが診断の目安です。
9項目には、①賭け金の増加、②やめようとすると落ち着かない・いら立つ、③制限・中止の失敗、④ギャンブルへのとらわれ、⑤苦痛時のギャンブル、⑥損失を取り戻そうとする行動、⑦周囲へのうそ、⑧重要な人間関係・仕事・学業上の機会の危機、⑨金銭的危機を他者に頼って切り抜けること、が含まれます。
症状数により軽度(4~5項目)、中等度(6~7項目)、重度(8~9項目)と分類します。
ただし、躁病エピソードによってのみ説明されるギャンブル行動は、この診断から除外します。
WHOのICD-11では「ギャンブル行動症(gambling disorder)」として、①ギャンブル行動の制御障害、②ほかの関心や日常活動よりギャンブルを優先すること、③悪影響があっても継続・増悪することを中核とします。
個人・家庭・社会・学業・職業などに著しい機能障害を生じ、通常は少なくとも12か月続くことが想定されますが、症状が重く診断要件を満たす場合は期間が短くても診断され得ます。
DSM-5-TRとICD-11は基準が完全に同一ではないため、医師が経過を含めて総合的に判断します。
「やめようとしても繰り返す」「負けを取り戻すために賭ける」「ギャンブルについてうそをつく」「生活費・借金・仕事や家族関係に影響している」といった項目は、相談を考えるサインになります。
PGSI(Problem Gambling Severity Index)などの質問票は問題のあるギャンブル行動のリスクを把握する補助として用いられますが、診断には、質問票の結果と診察で得られた情報を組み合わせます。
尺度の日本語版やカットオフ値は、利用目的・対象集団・検証状況を確認して使用する必要があります。
診察では、うつ病、不安症、ADHD、双極性障害、アルコール使用障害などの併存、睡眠状態、衝動性を評価します。
特に気分が異常に高揚して睡眠が少なくても活動的な時期に賭博が増える場合は、躁状態との関連を確認します。
借金や対人関係の問題から強い絶望感や自殺念慮が生じることもあるため、安全性の確認が重要です。自殺を考えている、切迫した危険がある場合には、予約を待たず救急医療や地域の緊急相談窓口に連絡してください。
参考資料:WHO ICD-11/NICE NG248/DSM-5-TR(米国精神医学会・診断基準) WHO ICD-11 / NICE NG248

ギャンブル依存症では、賭ける行動の制御が難しくなるにつれ、経済状況、仕事、睡眠、精神的な健康、家族関係などに影響が及ぶことがあります。
損失を取り返そうと賭け続けることで、問題が連鎖的に深刻化する場合があります。
生活費や貯蓄を賭け金に充て、返済のために新たな借入れを重ねることがあります。
ギャンブルの結果や資金調達が気になり、仕事・学業への集中力が低下したり、遅刻・欠勤、睡眠不足が増えたりする場合もあります。
経済的な問題が深刻なときは、医療機関での治療と並行して多重債務相談や法律相談を利用することが役立ちます。
損失や借金への心配、隠し事による心理的負担から、抑うつ、不安、いら立ち、不眠などが生じることがあります。
一方、もともとの抑うつや不安を紛らわせる目的でギャンブルを始める場合もあり、精神症状とギャンブル行動が相互に影響することがあります。
うつ病、双極性障害、ADHD、アルコール使用障害などの併存についても確認し、必要に応じて並行して治療します。
借金や対人関係の問題が重なると、強い絶望感や自殺念慮が生じることがあります。
使った金額や借入れを隠す、家計に必要なお金が不足する、約束を守れなくなるといった問題が続くと、家族間の信頼関係が揺らぐことがあります。
配偶者や子どもが経済的・心理的な負担を抱えることもあります。
本人の治療に加え、家族自身が相談先を持ち、生活費や安全を守る支援を受けることも大切です。
参考:WHO Gambling / NICE NG248

治療の中心は、ギャンブルに向かう状況や考え方を把握し、行動を変える心理社会的な支援です。
認知行動療法では「負けを取り戻せる」「今回だけなら大丈夫」といった考えを整理し、賭けたい気持ちへの対処、再発しやすい状況の回避、生活の立て直しを検討します。
治療への迷いが強い場合には、本人の目標や動機を丁寧に話し合います。
ギャンブル関連アプリの削除、通知や広告の制限、現金や決済手段の管理方法の見直し、家計と借金の整理などを、本人の同意と安全に配慮しながら進めます。
制度上利用できる入場制限・アクセス制限等についても、必要に応じて相談先で確認します。
借金問題は法律相談や多重債務相談と連携することがあります。
日本では、ギャンブル依存症に対する治療の中心は認知行動療法などの心理社会的支援です。
薬物療法を検討する場合も、根拠や適応を慎重に判断します。
うつ病や不安症、ADHDなどが併存する場合には、それぞれの状態に応じた治療を行います。
同じ問題を経験した人たちと回復の過程を共有する自助グループや家族会が支えになることがあります。
回復には波があり、再びギャンブルをしてしまった場合も、早めに治療者と状況を振り返り、対処方法を調整することが大切です。
回復に向けては、まずギャンブルの頻度・金額・きっかけを記録し、賭けたくなる場面を把握します。
次に、賭博サイトや店舗へのアクセスを減らす、利用できるお金を管理する、飲酒やストレスなど再開の引き金を整理するといった具体策を組み合わせます。
行動が安定してきた段階では、睡眠、仕事、家族との関係や趣味を立て直し、再び賭けたい気持ちが強くなった際の相談先をあらかじめ決めておきます。
『克服』は、賭けたい気持ちが完全に消えることだけを指すものではありません。
衝動への対処方法を身につけ、ギャンブルによる生活上の損失を減らし、安定した生活を継続していくことも回復の重要な側面です。
再び賭けた場合には、その前後の状況を治療者と振り返り、対策を調整します。
参考:依存症対策全国センター
ご家族は、借金を肩代わりする前に金銭状況を整理し、生活を守るための境界線や相談先を検討することが大切です。
まずは事実を整理し、本人の安全と家族自身の生活を守りながら、専門機関に相談しましょう。
金銭的な境界線を設けること、家族が一人で抱え込まないことが重要です。
本人が受診を拒んでいても、家族だけで保健所や精神保健福祉センターに相談できます。
家族が本人に関わる際は、ギャンブルをしていない落ち着いた時間に、責める言葉よりも具体的な事実と心配を伝える方法が役立ちます。
例えば『今月の生活費が不足していることが心配』『一緒に相談先を探したい』と伝え、受診や相談につながる選択肢を示します。
配偶者や親など関係性によって負担は異なりますが、家族が本人の行動を一人で管理しようとせず、支援機関と役割を分担することが重要です。
借金への対応では、家計・本人名義の債務・家族名義の債務を分けて確認し、家族の生活費や住居費を優先して守ります。
繰り返しの肩代わりはギャンブル継続の資金源となる場合があるため、返済を急いで引き受ける前に多重債務相談や法律相談を利用しましょう。
『突き放すべきか』と悩む場合も、支援を打ち切るかどうかの二択ではなく、金銭的な境界線を保ちながら治療・相談へのつながりを支える方法を検討できます。
参考:厚生労働省「依存症対策」
ギャンブルをやめられない、借金が増えている、仕事や家庭に影響が出ている場合は、依存症に対応する精神科医療機関や相談窓口への相談をおすすめします。
精神保健福祉センター、保健所、依存症専門医療機関、自助グループなどが相談先になります。
受診時にはギャンブルの種類、頻度、金額、借金の状況、困っていることを整理しておくと役立ちます。
相談先:依存症対策全国センター
ギャンブル依存症からの回復は、ギャンブルをしない時間を増やすだけでなく、経済状況、人間関係、睡眠、仕事などを整える過程でもあります。
「やめたいのにやめられない」と感じた段階で相談することが、回復への第一歩になります。
仙台で受診を検討されている方は、かもみーる心のクリニック仙台院の診療案内をご確認ください。
ギャンブル依存症の初期には、決めた金額や時間を超えて賭ける、負けた分を取り戻そうとしてギャンブルを繰り返す、ギャンブルのことが頭から離れなくなるといった変化がみられます。また、使った金額を家族に隠したり、ギャンブルを控えようとしても続けてしまったりすることがあります。こうした行動が繰り返され、生活に影響が出ている場合には、早めに専門の医療機関へ相談することが大切です。
ギャンブル依存症は、認知行動療法などの心理社会的治療や継続的な支援によって、ギャンブル行動を改善し、安定した生活を取り戻すことができる病気です。治療では、ギャンブルへの欲求への対処法を身につけ、金銭管理や生活環境を整えていきます。回復の途中で再びギャンブルをしてしまった場合も、きっかけを振り返り、治療や支援を調整することで回復を目指せます。
家族がギャンブル依存症の場合は、本人を一方的に責めるよりも、ギャンブルによって生じている問題を具体的に伝え、専門機関への相談を勧めることが大切です。また、借金を無条件に肩代わりする対応は慎重に考え、家族自身の生活や経済的な安全を守ることも重要です。本人が受診を希望していない場合でも、精神保健福祉センターや保健所などで家族だけの相談を受けることができます。
この記事の監修者
医療法人社団弘愛会理事長
赤堀 将太郎こんにちは、赤堀将太郎と申します。 心療内科のクリニックに受診するまでに心理的なハードルが大きいかと思います。 そういった場合、「かもみーる」で病院に行くべきかどうかなど気軽にご相談ください。 オンラインで御対応いたします。 また現在、どうしても仕事がつらくて休職したいと思っているが病院に行くのを迷っている方に対して、場合によっては診断書を発行することも可能です。(オンライン診察となります) そういった場合も遠慮なくお申し付けください。
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