HSPは正式な精神疾患名ではなく、感覚過敏や繊細さをもって生まれた人の特性を表す言葉で、全人口の約5人に1人の割合で存在するとされています。
HSPには個性があり、特徴や種類が人によって異なるため、自己理解を深めて向き合っていくことが大切です。
この記事では、HSPの特徴・種類やよくある悩み、生きづらさを軽減する向き合い方などを紹介します。
考えすぎることに悩んでいる人、人との関わりが負担に感じる人は参考にしてみてください。
HSPとは

HSPは、非常に繊細な人を意味する『Highly Sensitive Person(ハイリ―・センシティブ・パーソン)』の略称です。
HSPは正式な精神疾患名ではなく、あくまで学説の一つです。アメリカの臨床研究心理学者のエレイン・アーロン博士が提唱しました。
極めて高い感受性と繊細な神経を持って生まれた人を指し、全人口の約5人に1人はHSPだと考えられています。
そのため身近な人がHSPである可能性も十分にあり得ますが、反対に約8割の人は非HSPであることから、共感を得られずに困難を感じるケースも多い特性です。
HSPの人が生きづらさを軽減するためには、自己分析を行い特性を活かした方法を模索することが大切ですが、周囲の人間がHSPへの理解を深めサポートすることも同じくらい大切です。
HSPの4つの種類

HSPは、大きく以下の4種類に分類されます。
種類 | 特徴 |
|---|---|
HSP (刺激を求めない+内向的) | 共感力が高く、人の感情に敏感 他人がネガティブだと、自分のことのように落ち込む 空気を読みすぎて、自分より他人を優先する傾向がある |
HSE (刺激を求めない+外向的) | 社交性があり、人と関わるのが好き 新しい経験を求めるが、刺激に対して敏感 知らないものに対して強い興味を示す |
HSS型HSP (刺激を求める+内向的) | 未知の経験や刺激が好きで、リスクを気にしない 常に何かに挑戦したいと考え、退屈を嫌う 刺激を求めて行動するが、人混みや騒音などの刺激が苦手 |
HSS型HSE (刺激を求める+外向的) | 人と深く関わり、絆を結ぶことを好む 鋭い洞察力や信念の強さからリーダーを任されやすい 人と何かをすることで体力が癒される |
繊細で感受性が高いHSPに加え、社交的だが刺激に対して敏感なHSE、冒険心はあるが内向的なHSS型HSP、強い刺激や人との関わりを求めるHSS型HSEの4つのタイプがあります。
HSSとは、『High Sensation Seeking(ハイ・センセーション・シーキング)』の略で、刺激探求型と呼ばれる特性です。
HSPの人は基本的に繊細で刺激に敏感な特徴があり、そのうえでその刺激を求めるタイプと避けたいタイプに分類されますが、いずれも刺激によって精神的な負担がかかるため適度な休息が必要になります。
HSPの4つの特徴

HSPには、DOES(ダズ)と呼ばれる以下の4つの特徴があります。
特徴 | 具体例 |
|---|---|
D:思考が深く、物事を複雑に処理する (Depth of processing) | 一つの事柄からさまざまな想像をし、複雑に思考する 時間をかけて検討するため、決断に時間がかかる 些細な一言に込められた意味をずっと考える |
O:刺激に対して敏感、過剰に反応する (Overstimulation) | ネガティブな話題を聞いただけで疲弊する 些細なことに過剰に驚いたり、衝撃を受けたりする 人といると気を遣い、楽しい反面あとから疲れが押し寄せる |
E:共感力が高く、感情の反応が強い (Emotional reactivity and Empathy) | 人の表情や言動から機嫌や考えを読み取れる 他人が怒られたり、落ち込んでたりすると自分も萎縮する 感動作品の主人公に共感し、周囲が驚くほど泣くことがある |
S:五感が鋭い (Sensitivity to Subtleties) | 大きな音や眩しい光などに過剰に反応する 小さな音や明かりがあると眠れない 家電のわずかな音が気になって他のことに集中できない |
HSPの人には、物事を深く思考する、他人に強く感情移入し雰囲気を読み取る、あらゆる刺激に敏感に反応するなどの特徴があります。
HSPの繊細さは私生活のさまざまな場面に影響し、生きづらさを感じることもあるでしょう。
しかしその一方で、人に寄り添えることや、感覚が研ぎ澄まされていることは、強みとして仕事に活かせるケースもあります。
周囲に細かいことに気が回ったり、他の人にはないような着眼点を持ったりした人がいる場合は、その人はもしかしたらHSPかもしれません。
HSPの人が抱える悩み

HSPの人は思いやりがある優しい心を持っていますが、その特性から以下のような悩みを抱えやすいとされています。
- 周囲から「細かい」「気にしすぎ」と言われることが多い
- 日常の小さな変化にうまく対応できず動揺してしまう
- 作業中に他のことを依頼されると混乱する
- 些細なことを考えすぎて気疲れする
- 涙もろく、感情のコントロールができない
- 他人の感情に左右されることに疲弊する
- 質問やメールへの返事に時間がかかる
- 食べ物の好き嫌いが多い
- 自己肯定感が低くネガティブ思考になりやすい
HSPの悩みは、無意識のうちに人の感情やその場の空気に敏感になったり、物事を深く考えすぎたりすることで発生します。
改善のためには、悩みの原因となる環境や人間環境から距離を置いたり、刺激を和らげたりする工夫が必要です。
ただし、HSEやHSS型HSEなど外向的な人の場合は、人と関わる機会を減らすことがストレスになる可能性もあります。
その場合は、自己分析によって自分の特性を理解し、刺激への対処法や考え方などを模索するとよいでしょう。
どうしても悩みが解消されない、自分がわからないと感じる場合は、専門家への相談をおすすめします。
HSPにはなぜなる?原因は?

HSPの原因には、おもに遺伝的要因と環境要因の2つが考えられます。
遺伝的要因
HSPの特性を形成する大きな原因のひとつが、遺伝的要因です。
HSP特有の神経過敏は親から受け継いでいる可能性があり、特性を形成する一つの要因と考えられます。
ただし、親からの遺伝のみで子がHSPになるとは限らず、遺伝的要因と環境要因の2つが特性に関わっていると考えられます。
環境要因
環境は、HSPの繊細さや感受性の高さなど、神経の敏感さ以外の特性に影響を与えるとされる要因です。
特に、生まれ育った環境や幼い頃の逆境体験は感受性を強め、繊細さが顕著にみられる原因になる可能性があります。
HSPの遺伝子を受け継いでいる場合でも、周囲の人との関わり方や暮らし方によってはHSPと相反する性格になるケースも少なくありません。
HSPの簡単セルフチェックシート

HSPかも?と感じたら、以下のチェックシートを用いて自分がHSPの特徴にどれくらい当てはまるのか確認してみましょう。
- マルチタスクが苦手で、多くのことに同時に手を付けると混乱する
- なにかを決断して取り掛かるまでに時間がかかる
- 環境の些細な変化に気づくことが多い
- 他人の感情や気分に左右され、些細な一言がずっと気になる
- 相手の表情や口調が気になって会話の内容に集中できない
- 忙しいと静かで刺激がない場所に一人でこもりたくなる
- 眩しい光・他人のにおい・衣類の肌触り・騒音や大きい音が不快に感じる
- わずかな音や光が気になって眠れないことがある
- 想像力が豊かで、考え込むことがよくある
- 人の緊張や悲しみを自分のことのように感じる
- 映画やドラマを見て、異様なほど号泣する
- 他人に「考えすぎ」「細かすぎ」と言われることがある
- ネガティブなニュースやSNSの投稿で精神的な疲れを感じる
- 迷惑行為を見かけると、自分に関係なくても憤りを感じる
- 薬が効きすぎる、または副作用が強く出て合わないことが多い
紹介した項目は一例ですが、多く当てはまるほどHSPの特性が強いと考えられています。
また当てはまる項目が少数の場合でも、その特徴が極端に顕著な場合はHSPの気質が高いと考えられるでしょう。
HSPは精神疾患ではないため明確な診断基準はなく、その人の特性や気質ととらえられています。
しかし、HSPを背景としたストレスや疲労により、二次的に病気を引き起こしてしまうケースもあるため、注意が必要です。
HSPと他の精神疾患・障害との関係

HSPはその人が生まれ持った特性ですが、二次障害で精神疾患を引き起こしたり、HSPだと思っていたら他の精神疾患や障害が潜んでいたりする可能性があります。
- うつ病
- 不安障害
- 適応障害
- 発達障害
ここでは、3つの精神疾患とHSPの関係について紹介します。
うつ病
HSPの特性によってストレスにさらされる状態が続くと、うつ病につながるリスクが高まるとされています。
うつ病とHSPは自分に自信がない、疲れやすいという点で似ていますが、HSPは先天的な特性であるのに対し、うつ病は医学的に診断基準が定められている後天的な精神疾患です。
特に、不安感や過敏性などの症状が目立つうつ病の場合は、HSPが疑われるケースがありますが、その場合は過去と現在で異なっている(子どもの頃はなかったのに大人になってから現れた)ことや、うつ症状がより目立っていることなどで区別します。
HSPは、自己肯定感が低かったり他人の機嫌やその場の空気を読むために常に気を遣ったりするため、疲労やストレスを蓄積しやすく、二次障害でうつ病を発症するケースは少なくありません。
うつ病の回復には早期発見と適切な治療が重要であるため、うつ症状がみられた場合は早めに専門家に相談しましょう。
不安障害
不安障害とHSPは異なる特性ですが極めて似ており、生活するうえで困難を感じるほどの不安や神経質さがある場合、HSPではなく不安障害である可能性があります。
特に、どんな工夫をしても生きづらさが軽減されない場合や、どうしても社会生活や対人関係が上手くいかず、強い落ち込みや不安、体調不良などを伴っている場合は、精神科や心療内科の受診が必要です。
また、HSPの人には頑張りすぎたり自分を責めすぎたりする傾向があり、この状況が長引くことで自律神経が乱れると、不安障害を発症する可能性があります。
場合によっては、考えすぎに対する対策や刺激を減らすための環境調整、他社との距離を確保する練習などが必要になる場合もあるでしょう。
適応障害
HSPがうつ病のリスク要因であるのと同じように、HSPが適応障害の引き金になるケースがあります。
適応障害は生活の大きな変化やストレスの蓄積が原因で引き起こされる精神疾患で、HSPではこれらに対する刺激を過剰に受ける特徴があるため、互いに関わりがあるケースは少なくありません。
HSPの特性は先天的なものであり、生涯にわたって続くのに対して、適応障害は環境や人間関係に対する一時的な反応であり、ストレス要因が取り除かれることで改善が見込めます。
またHSPが適応障害に発展し、そこからうつ病や不安障害に進展する可能性も考えられるため、早期の対処が重要です。
発達障害
HSPと発達障害は、人の言動に敏感でストレスが溜まりやすい点や感覚過敏がある点で共通しています。
HSPは性格や気質によるものに対して、発達障害は脳機能の発達に偏りがあることで生じるのが特徴です。
HSPを疑って医療機関を受診した際にADHDやASDといった発達障害が発覚するケースもあるため、感覚や感情による生きづらさ・疲れやすさを感じやすい人は一度専門家に相談することをおすすめします。
HSPとの向き合い方

HSPの生きづらさを軽減するためには、自分の特性を理解して対処することが大切です。
ここからは、HSPの人が生きやすくなるための特性への向き合い方を3つ紹介します。
刺激を受ける原因を理解し、適度に距離を置く
自分が影響を受ける環境や人間関係を理解し、時には刺激から距離を置くことが大切です。
疲れる・つらい・気になるなど、刺激を受ける要因を把握し、どんな環境なら自分がストレスを受けないのかを客観的に見つめ直すことで、繊細な部分をカバーする工夫をしましょう。
なかにはHSS型HSPやHSS型HSEのように刺激を求める特性の人もいると思いますが、精神的な負担を軽くするためにも、適度に刺激から距離を置いたり、休みたいと感じたら無理をせずに休んだりすることを優先しましょう。
自分の考えを大事にし、受け入れる
HSPでは自分の決断に自信が持てなかったり、言動に後悔をしたりするケースがありますが、自分で考えたことを大事にして受け入れることが大切です。
周囲の意見に流されやすいHSPの人は、自分が間違っていると責めてしまう傾向があり、さらに自分を責めることをつらく感じてしまうケースが多いです。
まずは、周囲の意見に流されない、自分で状況判断をすることを心に決めて行動してみましょう。
また自分が人よりも気にしすぎることに対しては、「こう考えるのが自分なんだ」と受け入れる意識を持ちましょう。
つらい時は専門家に相談する
一概にHSPといっても、その特性は人によって異なるため、具体的に自分はどうするべきなのかがわからない場合は無理をせず専門家に相談しましょう。
HSPで生きづらい状態を我慢していると、心身の健康を損なうだけではなく、精神疾患を併発する可能性があります。
また、そもそもつらい症状はHSPによるものではなく、うつ病や適応障害によって起こっているかもしれません。
HSPに詳しい専門家は、一人ひとりの特徴に合わせたアドバイスや支援を行うことに長けています。
つらい時は一人で抱え込まず、専門家に相談することで、より効果的な改善策や対策ができるようになるでしょう。
面と向かって話すことに抵抗がある場合は、オンライン診療を活用するのがおすすめです。
HSPでつらいならカウンセリングで相談するのも選択肢
HSPは、生まれながらに備わっている繊細さや共感性の強さなどの特性で、生きづらさを感じるケースもあると思いますが、長所として受け入れることで自分の強みにできます。
自己理解を深め、上手く付き合っていきましょう。
しかし、HSPの裏にうつ病や適応障害、発達障害などが隠れている場合もあります。
どうしてもつらい・苦しい場合や対処法にお悩みの方は、一度専門家にご相談ください。
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