強迫性障害はなぜなる?主な原因や代表的な症状を解説

更新日 2025年03月11日

強迫性障害
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強迫性障害とは、自分の意思に反して不快な考えが繰り返し浮かんだり(強迫観念)、それを打ち消すために同じ行動を繰り返したりする(強迫行為)精神疾患です。

この疾患の主な発症要因として性格やストレス、脳の機能異常・感染症、遺伝的要因などが挙げられます。

この記事では、強迫性障害はなぜなるのか、その原因について詳しく解説します。

強迫性障害の原因になりやすい疾患や代表的な症状、気にしないための方法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

強迫性障害とは

強迫性障害とは

強迫性障害とは、自分の意思に反して考えが頭に浮かんで離れなくなる『強迫観念』や、それによって生まれた不安を取り払うために同じ行動を何度も繰り返す『強迫行為』がみられる精神疾患です。

例えば強迫観念によって何度も手を洗ったり、鍵をかけたか何度も確認したりといった行動を起こすもので、日常生活に支障をきたす状態になります。

強迫性障害特有の原因はまだはっきりとわかっていないものの、性格やストレス、脳の機能異常、感染症などが関係していると考えられています。

強迫性障害が悪化すると日常生活や仕事、人間関係などに悪影響を及ぼすだけでなく、慢性的な不安によってうつ病やほかの精神疾患を引き起こす恐れがあるため注意が必要です。

強迫性障害はなぜなる?主な要因は4つ

強迫性障害の主な要因

強迫性障害の主な要因として、以下の4つが挙げられます。

  • ・性格
  • ・ストレス
  • ・脳の機能異常・感染症
  • ・遺伝的要因

ここでは上記4つの要因についてそれぞれ解説します。

性格

強迫性障害になる要因の1つとして、生まれながらに持つ性格が挙げられます。

特に以下のような性格の人は強迫性障害になりやすい可能性があります。

  • ・使命感が強い人
  • ・こだわりが強い人
  • ・心配性の人

それぞれの性格の特徴についてみてみましょう。

使命感が強い人

使命感が強い人は、目標達成に向けて努力するために、責任や義務を感じてしまいやすい傾向にあります。

使命感を持つこと自体は悪いことではありませんが、あまりにその気持ちが強くなりすぎると、完璧主義やコントロール欲求につながる恐れがあるため注意が必要です。

すべて完璧にこなしたいという思いから、強迫観念や強迫行為を引き起こし、強迫性障害になることがあるのです。

こだわりが強い人

こだわりが強く周りに流されない性格の人も、強迫性障害につながりやすい傾向にあります。

自分の中に確固たる信念や価値観を持ち、周りの意見や評価に左右されないというのは強みにもなりますが、その特性が強まりすぎると注意が必要です。

自分の中で決めたルールや規則を守らなければ気が済まないようになり、不安や不快感が生まれる原因となり得るのです。

心配性の人

心配性の人は日常生活の些細なことに対しても不安を抱えやすい傾向にあるため、強迫性障害になりやすい性格といえます。

例えば鍵をかけたか不安になって何度も確認してしまう、雑菌が付いていないか心配になり何度も手洗いをするなどの行動が挙げられるでしょう。

これらの行動は不安感から生じるもので、さらにその気持ちが強まると日常生活に支障をきたすようになる恐れがあります。

ストレス

強迫性障害を引き起こす要因として、ストレスが挙げられます。

  • ・身体的・精神的ストレス
  • ・ライフイベントに伴う精神的不安
  • ・生活環境の変化による精神的負担

上記のようなストレスによって身体的・精神的に負担がかかると、強迫性障害につながる恐れがあるでしょう。

ここでは上記3つのストレスについてそれぞれ解説します。

身体的・精神的ストレス

強迫性障害の要因となる身体的・精神的ストレスとして、以下のようなものがあります。

  • ・職場の人とのコミュニケーション
  • ・職場での長時間労働
  • ・多忙な業務で休憩時間が確保できない
  • ・仕事量が多く、常に課題に追われている状態
  • ・過度な期待や要求に応えるために努力しすぎてしまう

上記のような状況は過労によって身体的ストレスが溜まるだけでなく、精神的ストレスにも繋がります。

このようなストレスは強迫性障害の要因となる恐れがあるため注意が必要です。

ライフイベントに伴う精神的不安

強迫性障害を引き起こす要因となるものとして、ライフイベントに伴う精神的不安が挙げられます。

女性であれば妊娠や出産などが挙げられるでしょう。

特に妊娠や出産は体の変化が大きく、身体的にも精神的にも不調をきたしやすくなります。

また赤ちゃんの将来について考えすぎてしまったり、出産に対する漠然とした不安を感じたり、妊娠中の体重管理に過度にこだわりすぎてしまったりすることもあります。

こうしたこだわりによってストレスを抱えたり不安が大きくなったりすると、強迫性障害につながる恐れがあるのです。

生活環境の変化による精神的負担

生活環境の変化による精神的負担も強迫性障害の要因となります。

具体的には以下のようなものが挙げられます。

  • ・引越しで新しい住居に慣れない
  • ・転勤や転職、転校などで不安を感じる
  • ・離婚や再婚などによる家族構成の変化

上記のような生活環境の変化により不安やストレスを感じると、強迫観念や強迫行為につながる恐れがあります。

脳の機能異常・感染症

強迫性障害を引き起こす要因として、脳の機能異常や感染症が挙げられます。

脳内にはセロトニンという神経伝達物質がありますが、脳の機能異常や感染症の影響を受けて問題が生じることがあるのです。

セロトニンは喜びや快楽などを制御する『ドパミン』、恐怖や驚きなどを制御する『ノルアドレナリン』などの情報をコントロールする働きを持っています。

脳の機能異常や感染症の影響によってセロトニンが低下してしまうと、ドパミンやノルアドレナリンなど他の神経伝達物質とのバランスが崩れ、強迫性障害を引き起こすことがあります。

遺伝的要因

強迫性障害は遺伝的要因によって引き起こされる場合もあります。

両親のいずれかが強迫性障害である場合、その子どもの発症リスクは一般の人と比べて約4倍になるという研究報告があるのです。

参考:不安障害の遺伝研究

ただし両親が強迫性障害だからといって必ずしも子どもも発症するというわけではなく、あくまでも発症しやすい傾向にあるというものです。

強迫性障害は遺伝的要因だけでなく、生活習慣や考え方などさまざまな要因が重なって発症すると考えられています。

強迫性障害の原因になり得る精神疾患

強迫性障害の原因になり得る精神疾患

強迫性障害の原因になり得る精神疾患として、以下の2つが挙げられます。

  • ・発達障害
  • ・チック障害

ここでは上記2つの精神疾患についてそれぞれ解説します。

発達障害

強迫性障害の原因になり得る精神疾患として、発達障害が挙げられます。

発達障害の大きな特徴でもある強いこだわりによって、強迫性障害を引き起こすことがあるのです。

発達障害は脳機能の発達に関係する障害のことで、特性によって『注意欠陥多動性障害』『広汎性発達障害』『学習障害』などに分類されるものです。

強迫性障害の患者さんの中には発達障害の患者さんが3〜7%ほどいるとされており、一般人口での発達障害の割合と比べて高い比率になります。

参考:自閉スペクトラム症における強迫関連現象の一考察

チック障害

強迫性障害につながりやすい精神疾患として、チック障害が挙げられます。

チック障害は、突発的に身体が動いてしまったり声を出してしまったりする精神疾患です。

まばたきや咳払いなどの『運動チック』、鼻すすりや咳払いなどの『音声チック』が主な症状で、これらが強まると日常生活に支障をきたすようになります。

チック障害は行動を起こさないとムズムズするような感覚になることがあり、これが強迫性障害の強迫観念や強迫行為につながることがあるのです。

強迫性障害の代表的な症状

強迫性障害の代表的な症状

強迫性障害の代表的な症状として、以下が挙げられます。

  • ・不潔恐怖・洗浄
  • ・確認行為
  • ・加害恐怖
  • ・数字へのこだわり
  • ・物の配置へのこだわり
  • ・物事の手順へのこだわり

ここでは上記6つの代表的な症状についてそれぞれ解説します。

不潔恐怖・洗浄

強迫性障害の代表的な症状として、不潔恐怖・洗浄が挙げられます。

これは汚れや細菌汚染に対する恐怖や不安から、何度も手を洗ったり、入浴や洗濯を繰り返したり、ドアノブや手すりなどが不潔に感じて触れなくなったりする症状です。

これらの行動で心身ともに疲弊しやすくなるのはもちろんのこと、周囲の人にアルコール消毒を強要するなど対人関係にも悪影響を及ぼす場合があります。

確認行為

強迫性障害の代表的な症状の一つとして、確認行為が挙げられます。

確認行為は戸締りやガス栓、電気器具のスイッチを何度も確認してしまう症状です。

例えば外出する際に戸締りが不安になり、何度も引き返して確認していると、その確認に時間を取られてしまいます。

この確認行為が原因で約束に遅れてしまったり、周囲の人に何度も確認したりすると、自分一人の問題ではなく周りの人も巻き込み、人間関係がうまくいかなくなることがあります。

加害恐怖

加害恐怖は強迫性障害の症状の一つで、自分が誰かに危害を加えているのではないかという不安が離れなくなるものです。

実際に危害を加えていなくても、新聞やテレビをチェックして事故や事件として自分の名前が出ていないか確認することがあります。

数字へのこだわり

強迫性障害の症状の中には、数字へのこだわりもあります。

不吉な数字や幸運な数字などに強いこだわりを持ち、縁起を担ぐレベルを超えてしまうものです。

例えば特定の数字ではないと不快や不安を感じたり、特定の数字に対して不吉なことを連想してしまったりします。

物の配置へのこだわり

強迫性障害では物の配置に対しても強いこだわりを持つことがあります。

例えば家具の位置やテレビのリモコンの位置など、ほんの小さなものに対しても特定の位置でないと不安になってしまうのです。

このこだわりによって頻繁に物の配置を確認してしまうことがあります。

物事の手順へのこだわり

強迫性障害では物事の手順に対しても強いこだわりを持つことがあります。

自分の決めた手順で物事を進行しないと恐ろしいことが起こるといった不安を感じ、仕事や家事などどんなときも同じ手順・方法で行うことにこだわります。

強迫性障害を気にしない方法

強迫性障害を気にしない方法

強迫性障害の症状を気にしないことは、心身に蓄積する疲労感を軽減するためにも大切です。

症状を気にしない方法としては、具体的には以下のようなものが挙げられます。

  • ・不安な気持ちが高まったら深呼吸をする
  • ・丁寧に確認作業を行う
  • ・自分の考えや思考回路を理解する
  • ・十分な睡眠と適度な運動で脳をリフレッシュさせる
  • ・趣味や娯楽を楽しむ

ここでは上記5つの方法についてそれぞれ解説します。

不安な気持ちが高まったら深呼吸をする

強迫性障害の症状である不安な気持ちが高まってきたら、深呼吸をしましょう。

深呼吸にはストレスを軽減する効果があり、心と体をリラックスさせられます。

効果的な深呼吸のポイントはゆっくり、大きく呼吸をすることです。

  1. ・ピンと背筋を伸ばす
  2. ・両手をおへその下あたりに当てて、口から息を吐き切る
  3. ・下腹部を膨らませるイメージで鼻からゆっくりと息を吸い込む
  4. ・2倍の時間をかけて口からゆっくりと息を吐きだす
  5. ・5回ほど繰り返す

上記のようにゆっくりと時間をかけて大きく深呼吸することで、精神を落ち着かせられるでしょう。

不安感があるときだけでなく、日常的に意識することをおすすめします。

丁寧に確認作業を行う

強迫性障害では何度も確認作業をしてしまう症状がありますが、この行動の対策として、丁寧に確認作業を行うことが挙げられます。

1回の確認を丁寧に行うことで、不安感を和らげることができるでしょう。

具体的には声に出して確認する、ゆっくり確認する、一つずつ順番に確認するなどを意識してみてください。

自分の考えや思考回路を理解する

強迫性障害は不安や恐怖からさまざまな繰り返し行動をしてしまう精神疾患です。

自分がどのようなタイミングで不安や恐怖を感じるのか、自分の考えや思考回路を理解しておくことで、症状が出た場合に冷静に行動できるようになります。

また「不安は必ずしも取り除かなければいけないものではない」ということを理解しておくことも大切です。

例えば不潔恐怖から手を何度も洗ってしまう場合も、「完全に汚れを落とせていなくても大丈夫」という考え方ができるようになれば、繰り返し行動が軽減されます。

十分な睡眠と適度な運動で脳をリフレッシュさせる

強迫性障害は、強迫観念や強迫行為によって心身ともにストレスや疲労が溜まりやすい精神疾患です。

そのため十分な睡眠と適度な運動で脳をリフレッシュさせることが大切です。

十分な睡眠時間を確保する、散歩やストレッチを毎日行うなどを習慣づけることで、身体的・精神的ストレスを緩和できます。

趣味や娯楽を楽しむ

強迫性障害を気にしないためには、趣味や娯楽を楽しむことも大切です。

趣味や娯楽を楽しむことで脳をリラックスさせられ、不安な気持ちから解放されます。

  • ・音楽を聴く
  • ・映画を見る
  • ・料理をする
  • ・絵を描く
  • ・本を読む
  • ・スポーツをする

自分の好きなものなら何でもよいですが、趣味がないと悩む方は上記をぜひ試してみてください。

強迫性障害はさまざまな原因によって生じる

強迫性障害の明確な原因は明らかになっていませんが、発症要因となるものとして、性格やストレス、脳の機能異常・感染症、遺伝的要因などが挙げられます。

これらのさまざまな要因が重なることで、強迫観念や強迫行為などの症状が現れることがあります。

性格やストレスなど当てはまるものがある方は注意が必要です。

かもみーるでは、臨床心理士や公認心理士などの有資格者によるオンラインカウンセリングを行っています。

「強迫性障害なのではないか」「心療内科を受診すべきか悩んでいる」といったお悩みを持つ方は、ぜひ当院までご相談ください。

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