投稿日 2025年03月18日
最終更新日 2026年09月03日
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最終更新日 2026年09月03日

ASD(自閉症スペクトラム症)は発達障害のひとつで、一般的には心理療法や薬物療法などによる治療が行われます。
ASDの中核症状に対するTMS治療も研究されていますが、現時点では有効性や標準的な治療プロトコルが確立しておらず、日本で承認された標準治療ではありません。
TMS治療は、一定の条件を満たす成人の治療抵抗性うつ病に対して、日本で保険適用されています。
また、米国では特定の機器とプロトコルが成人の強迫性障害などに対してFDAクリアランスを取得しています。
▶︎ 強迫性障害にTMS治療は効果がある?FDA承認プロトコル・治療回数・副作用を解説
この記事ではASDに対するTMS治療の効果について詳しく解説します。
効果的な症状や治療のメカニズム、TMS治療を行う際の注意点などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

ASDは発達障害の一つで、『自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder)』のことです。
発達障害は脳機能の発達に関係する障害のことで、他人との関係づくりやコミュニケーションを苦手とする傾向にあります。
ASDのほかにも、ADHDや学習障害などがあります。
ここではASDの主な症状や一般的な治療方法などについて見てみましょう。
ASDの主な症状としては、強いこだわりや社会性障害、コミュニケーション障害などが挙げられます。
対人関係が苦手だったり、強いこだわりを持っていたりするのがASDの主な特徴です。
上記のような特性を持つASDは周囲に理解をしてもらいにくく、対人関係でストレスをため込んでしまいやすい障害といえます。
そのため上記のような症状だけでなく、ストレスからくる身体症状(頭痛や食欲不振など)や精神症状(不安やうつなど)に悩まされることもあります。
ASDの一般的な治療方法としては、心理療法、環境調整、薬物療法が挙げられます。
心理療法やカウンセリングは、ASDの症状に効果的な治療方法です。
心理療法にはさまざまな種類がありますが、うつや不安障害といった二次障害を引き起こしている場合、認知行動療法が特に有効とされています。
認知行動療法は凝り固まってしまっている自分の考えや行動を解きほぐし、ストレスが溜まらないように改善していく治療方法です。
もともとはうつ病の治療のために開発された治療方法ですが、現在は幅広い精神疾患の治療に使われています。
このほかにも、ソーシャルスキルトレーニング(SST)という対人関係を円滑にするためのトレーニングを行う場合もあります。
ASDの患者さんは子どもから大人までいますが、どの世代にも共通して有効なのが環境調整です。
ASDの特性に合わせた環境に変えていくことで、日ごろのストレスを軽減し、さまざまな症状を緩和できます。
具体的な環境調整の方法としては、騒音が少ない環境にする、職場での働き方を整える、苦手な刺激を減らすといったものが挙げられます。
患者さん一人では環境調整が難しい場合もあるため、家族や職場の人たちに協力してもらうことが大切です。
ASDの症状に対する治療として、薬物療法を行う場合もあります。
ASDに伴う強い易刺激性、興奮、攻撃的行動、自傷行動などに対して、リスペリドンやアリピプラゾールが使用されることがあります。
また、併存する睡眠障害、てんかん、うつ病などに対して、それぞれの症状や疾患に応じた薬物療法を行う場合があります。
薬の種類 | 対象となる疾患・症状 |
|---|---|
睡眠薬(睡眠導入薬) | 睡眠障害 |
抗てんかん薬 | てんかん発作 |
非定型抗精神病薬 | 易刺激性、興奮、攻撃的行動 |
抗うつ薬 | うつ病、強迫性障害 |
薬物療法は薬による副作用のリスクがあるため、医師の指示をきちんと守って、正しい用法用量で服薬することが大切です。

ASDに対するTMS治療についても研究が行われていますが、現時点では研究数が少なく、結果にもばらつきがあります。
そのため、ASDの中核症状に対する標準治療としては確立していません。
ここではTMS治療の効果やメカニズムについて解説します。
TMSは経頭蓋磁気刺激法の総称です。
そのうち、磁気刺激を一定のパターンで繰り返す方法をrTMS(反復経頭蓋磁気刺激法)といいます。
ASDを対象とした研究では、低頻度rTMSやiTBSなど、さまざまな刺激方法が検討されています。
頭皮上に置いたコイルから磁気パルスを発生させ、大脳皮質に微弱な電流を誘導することで、神経活動や関連する神経ネットワークに影響を与える方法です。
刺激を与える部位や強さ、頻度などを調節することで、さまざまな症状に効果が期待できます。
日本では2019年に治療抵抗性うつ病に対する保険適用が認められたばかりで、まだ歴史の浅い治療方法と思われがちです。
しかし実はアメリカでは2008年には治療適応となっている治療方法で、精神疾患の治療に積極的に使われています。
さらにアメリカではうつ病だけでなく、強迫性障害なども適応疾患となっており、その他の精神疾患についてもさまざまな研究が行われています。
ASDに対するTMS治療は、ASDそのものの原因にアプローチするというよりは、ASDに伴ううつ症状の改善に効果が期待できるというものです。
ASDの特性自体を改善するのは難しいものの、二次症状を改善することで、それに影響する特性が落ち着く可能性があります。
TMSは、頭皮上に置いたコイルから磁気パルスを発生させ、大脳皮質の神経活動に影響を与える非侵襲的な刺激法です。
ASDでは、興奮性と抑制性のバランスや神経ネットワークの機能などとの関係が研究されていますが、TMSがASD症状に作用する仕組みはまだ十分に解明されていません。

ASDに対するTMS治療にはいくつかの研究データがあります。
まず2017年にブラジルのサンパウロ大学で9歳から17歳のASDの男性患者さんに対して行われた臨床研究です。
9~17歳の男性10人を対象とした小規模なオープンラベル試験では、右DLPFC(背外側前頭前野)へのiTBS(シータバースト刺激)後にASDの繰り返し行動や認知機能等の一部の評価項目で改善が報告されました。
ただし、偽刺激群のない探索的研究であり、自然経過や期待効果などの影響を除外できません。
この研究だけで有効性を判断することはできません。
参考:自閉症スペクトラム障害に対する間欠的シータバースト経頭蓋磁気刺激
ASDを含む発達障害に対するTMS治療の報告自体の少なさに加え、研究データの質の低さなども課題となっています。
ASDのある成人が、併存する中等症以上の単極性うつ病について一定の治療条件を満たす場合には、うつ病に対する治療としてrTMSが検討されることがあります。
単に抑うつ症状があることだけで、保険適用になるわけではありません。

まだ研究段階ではありますが、TMS治療で改善する可能性のあるASDの症状として、以下の3つが挙げられます。
ここでは上記3つの症状についてそれぞれ解説します。
TMS治療で改善される可能性のあるASDの症状として、社会的コミュニケーションが挙げられます。
この症状はASDの大きな特徴の一つでもあり、対人関係においてストレスの原因になりやすいものです。
具体的には相手の気持ちを理解するのが難しい、たとえ話や冗談が通じないといった症状が挙げられます。
TMS治療で前頭前野や側頭葉を刺激することで、相手の表情を理解したり言葉のニュアンスを汲み取ったりする力が向上する可能性があります。
反復行動や特定のこだわりなども、TMS治療で改善される可能性があるASDの症状の一つです。
ASD患者さんは自分の決めた順序に強いこだわりを持っていたり、気持ちの切り替えが苦手だったりする特徴があります。
また反復行動とは何度も同じ行動を繰り返すことで、具体的には体を前後に揺らす、同じ場所をうろうろするなどが挙げられます。
TMS治療で前頭前野を刺激することで、これらの反復行動や特定のこだわりなどが改善される可能性があるのです。
上記の症状が改善されると、日常生活の適応力向上も期待できます。
ASDでは音や光などの感覚に対し過敏になることがありますが、TMS治療で改善される可能性があります。
例えば特定の音に対する感覚が過敏になる『聴覚過敏』、肌の感覚が過敏になる『触覚過敏』、日差しに対する感覚が過敏になる『視覚過敏』などがあります。
これらの感覚過敏は日常生活に支障をきたす場合もあり、悩んでいる患者さんも少なくありません。
2026年に発表された無作為化試験では、5~10歳のASD児35人を実刺激群17人と待機リスト対照群18人に分け、低頻度rTMSを週2回、9週間実施しました。
その結果、感覚特性を評価する尺度などで実刺激群の改善が報告されました。
ただし、偽刺激を使用した二重盲検試験ではなく、対象者数も少ないため、感覚過敏に対する有効性が確立したとはいえません。
ASDの感覚過敏に対するTMSは、現在も探索的な研究段階といえるでしょう。

ASDをはじめとする発達障害の患者さんが、TMS治療を受ける際に押さえておきたい注意点は以下の3つです。
ここでは上記3つの注意点についてそれぞれ解説します。
TMS治療の効果はすべての患者さんに必ず現れるわけではないという点に注意が必要です。
あまり効果が感じられない場合もあるため、「TMS治療を受ければ絶対に治る!」と過度に期待しないようにしましょう。
特にTMS治療はまだ臨床効果の事例が少ない治療方法でもあるため、効果が現れない場合も十分に考えられます。
TMS治療を受けたい場合は、主治医とよく相談のうえで検討してみましょう。
小児に対するTMSの安全性研究は行われていますが、ASDに対する有効性や長期的な影響、適切な刺激条件については十分なデータがありません。
日本の保険診療におけるrTMSの対象は、一定の条件を満たす18歳以上の治療抵抗性うつ病です。
小児ASDに対するTMSは標準治療ではなく、臨床研究など慎重に管理された枠組みで検討される治療法です。
日本精神神経学会が公開している『反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)適正使用指針』には、安全かつ効果的にTMS治療を行うための指針が示されています。
ここに示されている年齢に関する指針は以下の通りです。
これは日本の保険診療におけるうつ病へのrTMSの適正使用条件であり、小児を対象としたすべてのTMS研究について危険性を断定したものではありません。
TMS治療を検討する際は、安全に治療を受けられる医療機関を選びましょう。
TMS治療は日本でも保険適用が可能な治療方法ですが、いくつか条件を満たす必要があります。
その条件は以下の通りです。
日本ではまだ治療抵抗性うつ病にしかTMS治療の保険適用が認められておらず、上記のような条件をすべて満たさなくてはいけません。
うつ病を併発していて、上記の条件をすべて満たしていれば保険適用で治療が受けられますが、実際のところはTMS治療の保険診療を提供している医療機関が多くないというのが現状です。
自由診療の場合、保険診療と異なる治療条件が設定されます。
ただその有効性と安全性が十分に確立しているとは限りません。
治療内容、根拠、費用、副作用、代替治療について説明を受けたうえで慎重に判断する必要があります。
ASDをはじめとする発達障害に対するTMS治療はまだ研究段階です。
現時点で有効性や標準的な刺激方法が確立していません。
一方、ASDのある成人が治療抵抗性うつ病を併存している場合には、うつ病を対象としてrTMSが検討されることがあります。
ただし、適応はASDの有無だけでは決まらず、医師による個別の評価が必要です。
『かもみーる』では、ASDに伴ううつ病に対してのTMS治療の相談を受け付けております。
医師監修のオンラインカウンセリングもあるため、ASDの症状にお悩みの方やTMS治療が気になるという方はぜひ当院までご相談ください。
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この記事の監修者
医療法人社団弘愛会理事長
赤堀 将太郎こんにちは、赤堀将太郎と申します。 心療内科のクリニックに受診するまでに心理的なハードルが大きいかと思います。 そういった場合、「かもみーる」で病院に行くべきかどうかなど気軽にご相談ください。 オンラインで御対応いたします。 また現在、どうしても仕事がつらくて休職したいと思っているが病院に行くのを迷っている方に対して、場合によっては診断書を発行することも可能です。(オンライン診察となります) そういった場合も遠慮なくお申し付けください。
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こんにちは。廣瀬と申します。 臨床精神医学を専門とし、患者様一人ひとりのお悩みや症状に寄り添った診療を心がけています。 特に、減薬をはじめとした治療に伴う副作用の軽減についてのご相談を得意としています。治療を進めるうえでは、患者様がご自身の
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こんにちは、大越と申します。 発達障害をはじめ、うつ病、双極性障害、適応障害、不安障害・パニック障害、睡眠障害など、さまざまなこころの不調について診療しています。 特に、休職に関するご相談や発達障害についてお話を伺う機会が多くあります。仕事
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