TMS治療は頭痛に効果がある?治療の特徴や副作用について解説

更新日 2025年03月11日

TMS治療
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TMS治療は繰り返し脳に磁気刺激を与えることで、脳の働きを正常化させる治療方法です。

TMS治療の適応疾患はうつ病や強迫性障害などですが、実は群発頭痛や片頭痛の軽減も可能です。

この記事では、TMS治療の頭痛に対する効果について詳しく解説します。

TMS治療のメカニズムや主な効果、メリット、デメリット、副作用などもまとめているため、TMS治療が気になっている方はぜひ参考にしてみてください。

TMS治療による群発頭痛や片頭痛の軽減が可能

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TMS治療では群発頭痛や片頭痛の軽減が可能です。

群発頭痛に対するTMS治療の効果として、群発期の短縮や1日当たりの頭痛発作の減少などが報告されています。

群発頭痛にはさまざまな治療方法があるため、TMS治療単体で行うことは少ないですが、薬になるべく頼らない治療方法を探している方にはおすすめできるでしょう。

群発頭痛とは

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群発頭痛は一次性頭痛の一種で、尿路結石や心筋梗塞と並ぶ非常に激しい痛みを伴う病気として知られています。

目をえぐられるような激しい痛みが生じ、あまりの痛みから壁や床に頭を打ち付けてしまう人もいます。

ここではそんな激しい痛みが特徴の群発頭痛の症状や原因、片頭痛・緊張型頭痛との違い、主な治療方法などについて解説します。

群発頭痛の症状

群発頭痛の主な症状は周期的に訪れる激しい頭痛です。

毎日ほぼ同じ時間帯に起こるのが特徴で、眠っている間に起こることも少なくありません。

目をえぐられるような耐えがたい激しい痛みが生じるため、発作が出ている間はあまりの痛みに人格が変わってしまう人もいます。

痛みが出る範囲は主に片目の奥ですが、目の周囲や前頭部、側頭部まで痛みが出る場合もあります。

また群発頭痛は頻度や重さによって『反復性群発頭痛』と『慢性群発頭痛』の2つに分けられ、それぞれの特徴は以下の通りです。

反復性群発頭痛慢性群発頭痛
・季節の変わり目やある期間に集中して起こりやすい
・15分~3時間程度の発作が1日に数回、数日~数か月程度続く
・発作の時期が過ぎると全く発作のない時期が続き、またある時期から発作が現れる
・1年以上発作を繰り返す
・発作のない時期がほとんどない

片頭痛や緊張型頭痛との違い

群発頭痛は片頭痛や緊張型頭痛とは異なる頭痛です。

これら3つの頭痛の違いをまとめると以下の通りとなります。

片頭痛緊張型頭痛群発頭痛
痛みの特徴ズキンズキンと脈打つような痛み締め付けられるような痛み目がえぐられるような痛み
痛む部位頭の片側もしくは両側頭の両側、頭全体片目の奥
持続時間4~72時間さまざま15~180分程度
誘因寝不足、寝すぎ、ストレス、空腹、気候の変化、飲食物長時間のデスクワークやパソコン操作、精神的ストレス、運動不足飲酒、喫煙、気圧の変化、生活リズムの乱れ

片頭痛は脳の血管が急激に拡張して炎症を起こすことで生じる頭痛です。

体を動かすと痛みが悪化するため、安静にして過ごすのが望ましいでしょう。

緊張型頭痛は首や肩の筋肉のコリが原因で血行不良を起こし、頭痛を引き起こすものです。

長時間のデスクワークやパソコン操作などを行っていると発症しやすいため、仕事柄デスクワークが多い方は注意が必要となります。

群発頭痛の原因

群発頭痛のはっきりとした原因はわかっていませんが、目の後ろを通る内頚動脈が何らかの原因によって拡張し炎症が起こることで、痛みが発生するとされています。

炎症が発生する原因としては、男性ホルモンの過多、睡眠に関する遺伝子の異常などが考えられています。

これもまだ研究が続いている段階で、はっきりとしたことはわかっていません。

また群発頭痛の症状を引き起こす可能性がある原因としては、以下のようなものが挙げられます。

- アルコールの過剰摂取
- 喫煙
- 気圧の急激な変化
- 生活リズムの乱れ

上記のような原因を排除することで、群発頭痛の予防につながる可能性があります。

群発頭痛の主な治療方法

群発頭痛の主な治療方法は、痛みを和らげる治療方法と発作を予防する治療方法の2種類に分けられます。

ここではそれぞれの治療方法について解説します。

痛みを和らげる治療方法

発作時の痛みを和らげる治療方法としては、トリプタン系薬剤の皮下注射や点鼻薬などが挙げられます。

群発頭痛は激しい痛みが発生する病気のため、一般的な鎮痛剤やトリプタン系内服薬ではあまり効果が期待できません。

さらにほぼ毎日頭痛が発生するため、通院して注射を打ってもらうというのは現実的でなく、患者さんに自己注射をしてもらうことが多いです。

急性発作時は高濃度酸素吸入も有効で、高流量の酸素を使用すると痛みが和らぐ場合があります。

発作を予防する治療方法

群発頭痛の発作を予防する治療方法としては、以下が挙げられます。

- エルゴタミン製剤
- ステロイド薬
- カルシウム拮抗薬
- 炭酸リチウム
- TMS治療

上記の治療を行うことで、ある程度症状を緩和することができます。

また群発頭痛はアルコールやたばこ、睡眠リズムなどが原因で発作が起こる可能性があるため、生活習慣の改善も重要なポイントです。

強い匂いや刺激物も発作を引き起こす原因になることがあるため、なるべく避けて生活しましょう。

TMS治療とは

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TMS治療は経頭蓋磁気刺激療法のことで、脳に繰り返し磁気刺激を与えることにより、脳の働きを正常化させる治療方法です。

薬物療法などと比べると副作用が少なく、安全性の高い治療方法といえます。

ここではTMS治療のメカニズムや主な効果、メリット・デメリットについて解説します。

TMS治療のメカニズム

TMS治療のメカニズムを解説するためには、まず人間の脳の仕組みについて理解する必要があります。

人間の脳の中心的な役割を果たすのがニューロンと呼ばれる神経細胞です。

このニューロンは、脳全体で1,000億から2,000億個存在していると考えられています。

これらのニューロンは直接的に繋がっているわけではなく、シナプスと呼ばれる微小な隙間を介して情報をやり取りします。

このシナプスの働きが、脳の情報処理において非常に重要です。

シナプスにおける情報交換の際には、ニューロンの表面にあるスパインと呼ばれる突起が重要な役割を担います。

スパインには神経伝達物質を受け取るための受容体が存在し、これが情報の伝達を可能にしているのです。

人間の健康な脳では、このスパインの数を調整する能力、いわゆる神経可塑性によって、不要なスパインが適切に除去され、脳の効率的な機能が維持されています。

しかしうつ病を抱える人々の場合、この神経可塑性が低下しており、スパインの数を適切に調整できません。

その結果として、脳内での情報処理が不十分になり、多様な症状が現れることになります。

ここで注目されるのが、TMS治療です。

この治療法では脳に対して磁気刺激を繰り返し与え、ニューロンの電流が流れやすい状態を作り出します。

これにより神経可塑性の改善が促進され、脳の機能が正常な状態へと修正されていくのです。

TMS治療の主な効果

TMS治療には主に以下の3つの効果があります。

- うつ症状の軽減
- 強迫症状の軽減
- 認知機能の維持

ここでは上記3つの効果について解説します。

うつ症状の軽減

TMS治療を受けることで、うつ症状が軽減される効果が期待できます。

医学的な研究によると、うつ症状を抱える患者さんの3〜4割がTMS治療による症状の改善と軽減を実感しており、さらに再発の頻度が顕著に低下したという報告がなされています。

TMS治療は脳に直接作用する非侵襲的な神経刺激法であり、特定の脳領域に磁気刺激を与えることで神経回路の活性を変える作用があるのです。

この治療法により、脳の中の神経活動が活性化され、これがうつ症状の改善へとつながり、さらには再発の予防にも寄与していると考えられています。

またうつ病の中には薬があまり効かない『治療抵抗性うつ病』と呼ばれるものがあります。

この治療抵抗性うつ病の治療に適しているのが、TMS治療です。

薬による治療と少なくとも同等の効果が得られるとされており、治療抵抗性うつ病でも治療効果が期待できます。

薬物療法で効果がみられない患者さんにも、おすすめできる治療方法といえるでしょう。

強迫症状の軽減

TMS治療は、強迫症状の緩和にも効果をもたらす可能性があります。

強迫症は不合理な恐怖や強迫的な思考と行動が特徴となる状態で、これが日常生活に障害をもたらす疾患です。

TMS治療を行うことでこれらの強迫症状が和らぎ、患者さんの生活の質が向上することが数々の研究で示されています。

またTMS治療は従来の治療法、特に薬物療法と比べると副作用が少ないため、強迫症状を抱える患者にとっても安心して選択できる有望な治療法といえるでしょう。

認知機能の維持

TMS治療がもたらす効果の一つに、認知機能の維持があります。

認知機能は記憶や集中力、情報処理といった脳の働きを示すもので、この機能は加齢や慢性的なストレスなどが原因で低下することがあります。

TMS治療では作動記憶や実行機能に関係する前頭前野に対して電気刺激を与えられるため、認知機能の改善・維持効果が期待できるのです。

TMS治療のメリット

TMS治療の主なメリットとして、以下が挙げられます。

- 副作用が少ない
- 治療にかかる期間が比較的短い
- 再発率が低い

TMS治療は脳の特定の箇所に対して直接作用する治療方法のため、全身に作用する薬物療法と比べると副作用が少ないメリットがあります。

さらに治療にかかる期間も数週間〜半年程度で、ほかの治療方法と比べて短い特徴があります。

短期間で治療したい方や副作用の少ない治療方法を探している方に特におすすめです。

TMS治療のデメリット

TMS治療には以下のようなデメリットがあります。

- 治療費が高額
- 日本ではまだあまり普及していない

TMS治療は保険適用される場合もありますが、その条件が厳しいため、多くの医療機関では自由診療となっています。

保険が適用されない分、治療費が高額になりやすい点が主なデメリットといえるでしょう。

TMS治療の副作用

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TMS治療の主な副作用として以下が挙げられます。

- 頭痛
- 顔の痙攣・不快感
- めまい・聴力低下
- 精神症状の変化
- 失神・全身けいれん

ここでは上記5つの副作用についてそれぞれ解説します。

頭痛

TMS治療の副作用の一つに頭痛が挙げられます。

刺激を与えるたびに頭部の筋肉が収縮し、それに伴って頭皮や頭蓋に痛みが生じることがあるのです。

慣れるまでは刺激時の痛みを感じやすい傾向がありますが、この痛みは治療中にのみ現れるもので、治療期間中ずっと苦しむようなものではありません。

また治療を重ねるごとに徐々に刺激にも慣れてくるため、少しずつ痛みや違和感は少なくなっていきます。

顔の痙攣・不快感

TMS治療の副作用として、顔の痙攣や不快感が挙げられます。

これも頭痛と同様、頭部の筋肉が収縮することによって生じるものです。

万が一治療中の顔の痙攣や不快感が強く、苦痛に感じる場合には、コイル位置を調整して症状を和らげることもできます。

副作用が現れたときの対処方法は医療機関によって異なるため、不安な方は医師に相談してみるとよいでしょう。

めまい・聴力低下

TMS治療中にめまいを感じることがあり、ごくまれに聴力低下につながる場合があります。

TMS治療では磁気刺激のノック音が頭に響くような感覚がありますが、中にはめまいを起こしてしまう方もいます。

めまいを起こしやすい方は、耳栓をつけるのも一つの方法です。

精神症状の変化

TMS治療の副作用として、精神状態の変化が現れることがあります。

極まれにイライラが増したり、不眠が強まることがあるため、双極性障害の患者さんは注意が必要です。

万が一このような症状が現れた場合には、刺激方法を切り替えることで対処する場合が多いです。

失神・全身けいれん

TMS治療の重篤な副作用として、失神や全身けいれんが起こることがあります。

この症状が起こる患者さんは、薬物やアルコールなどの深刻な問題により、脳が委縮してしまっているケースが多くみられます。

寝不足や低血糖、過度なアルコール摂取などもリスクを高めるため、該当する方は注意が必要です。

TMS治療で頭痛軽減

TMS治療は主にうつ病や強迫性障害に適応した治療方法ですが、群発頭痛の発作を和らげる効果も期待できます。

TMS治療は副作用が少ないメリットがあるため、薬になるべく頼らない治療方法を探している方には特におすすめです。

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TMS治療に興味がある方は、ぜひ一度ご連絡ください。

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