TMS治療は保険適用される?自由診療との違いや費用について解説
更新日 2025年03月11日
TMS治療
TMS治療は経頭蓋磁気刺激療法のことで、主にうつ病や強迫性障害を適応疾患とする治療方法です。
治療を受けるうえで、「保険が適用されるのか?」「どのくらいの費用がかかるのか?」といった点が気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、TMS治療の保険適用の条件や自由診療との違いなどについて解説します。
TMS治療の特徴や自由診療の特徴、保険診療が普及していない理由などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
TMS治療とは

TMS治療は『repetitive Transcranial Magnetic Stimulation』のことで、日本語に訳すと反復経頭蓋磁気刺激療法といいます。
脳に繰り返し磁気による刺激を与えることで、脳の働きを制御する治療方法です。
ここではTMS治療の仕組みや適応疾患について解説します。
TMS治療の仕組み
人間の脳には神経細胞であるニューロンが情報伝達を行っています。
このニューロンは脳に1,000〜2,000億個程存在するとされていますが、すべてが線で繋がっているわけでなく、シナプスという隙間があります。
ニューロン間に生じるシナプスで情報の受け渡しを行う際には、スパインというこぶが重要な役割を果たしているのがポイントです。
このスパインには神経伝達物質の受容体があり、情報の受け渡しを行う役割を担っています。
正常な人間の脳の場合、このスパインの数を調整する能力(神経可塑性)によって、必要のないスパインを適宜外すようになっています。
しかしうつ病を発症している方の場合、この神経可塑性が低いためにスパインの数をうまくコントロールできなくなり、さまざまな症状を発症してしまうのです。
TMS治療によって脳に繰り返し磁気刺激を与えると、神経細胞の電流が流れやすくなり、神経可塑性が正常な状態へと修正されていくといった仕組みになっています。
TMS治療の適応疾患
TMS治療の適応疾患は主にうつ病と強迫性障害の2つです。
正確にはほかの疾患についても研究が進められていますが、エビデンスがしっかり蓄積されているのがこの2つの疾患となります。
ここでは上記2つの疾患についてそれぞれ解説します。
うつ病
TMS治療の適応疾患の一つとして、うつ病が挙げられます。
うつ病は気分が落ち込み、さまざまなことに対する興味が持てなくなる疾患です。
うつ病に対するTMS治療は2008年にはFDA(アメリカ食品医薬品局)に認可されており、欧米ではうつ病に対するTMS治療効果は確かなものになっています。
また日本でも2019年6月に厚生労働省による保険認可が下り、注目を集めている治療方法といえるでしょう。
うつ病に対する具体的な治療効果については、TMS治療を受けた患者さんのうち3〜5割が寛解(本来の体調に戻ること)、6〜7割が治療反応を実感できたというデータがあります。
さらに治療抵抗性という薬が効きにくいうつ病に対しても、効果がみられる点も大きな特徴です。
薬の治療を試しても効果が得られなかった場合は、TMS治療が有効な選択肢となるでしょう。
強迫性障害
TMS治療のもう一つの適応疾患が強迫性障害です。
強迫性障害は強迫観念や強迫行為が主な症状で、気になってしまったことが頭から離れない状態が続き、精神的に疲弊してしまう疾患です。
TMS治療にはうつ症状を改善する効果があり、それに伴って強迫症状も良くなることが多いです。
また強迫性障害自体の症状を減らすためには、特殊TMS治療である『deepTMS』が使われます。
これは前帯状皮質と背内側前頭前野を刺激する方法で、通常のTMS治療よりも深い刺激となるのが特徴です。
TMS治療を受けた強迫性障害の患者さんのうち、およそ3~4割に目標達成が認められています。
TMS治療を保険適用で受けるためには

TMS治療を保険適用で受けるためには、いくつかの条件を満たしている必要があります。
ここではTMS治療の保険適用の条件や費用について解説します。
TMS治療の保険適用の条件
TMS治療の保険適用の条件は以下の通りです。
・成人である
・うつ病と診断されている
・過去に抗うつ剤の薬物治療を受けている
・薬物治療で効果が得られなかった
・中等度うつ病である
・2か月の入院が可能である
・決められた機器とプロトコルで行うことに同意する
上記の条件を満たしている場合のみ、保険適用でのTMS治療が可能です。
TMS治療を保険適用で受けた場合の費用
TMS治療を保険適用で受けた場合にかかる費用項目は主に3つあります。
それが治療費、入院費、日常生活費です。
TMS治療は6週間に30回の治療を行う必要があるため自己負担額が高くなりやすいですが、高額療養費制度を利用することである程度費用を抑えることが可能です。
高額療養費制度は、医療機関で支払う医療費が1か月で上限額を超えた場合、その超えた額に対する支給を行う制度です。
上限額は年齢や所得に応じて定められます。
日本人の平均年収である436万円の場合、高額療養費制度の上限は約16万円となります。
そうすると1回の自己負担額は約5,300円です。
もちろん高額療養費制度の上限は年齢や所得によって変動するため、個人差があります。
正確な治療費が知りたい場合は、実際に保険診療によるTMS治療を提供している医療機関に確認してみるとよいでしょう。
TMS治療を受ける方法は4つある

TMS治療を受ける方法は4つあります。
・保険診療
・自由診療
・先進医療B
・臨床研究・治験
ここでは上記4つの方法についてそれぞれ解説します。
保険診療
TMS治療は保険診療にも対応しています。
ただし保険診療には適用条件が設けられており、その条件を満たさなければ保険適用となりません。
特にTMS治療は保険適用となる要件が厳しく、現状では保険診療でのTMS治療を行っている医療機関はかなり限られています。
自由診療
保険適用の条件が厳しいため、現在の日本では、保険診療よりも自由診療でのTMS治療を行っている医療機関のほうが多いです。
自由診療は各医療機関ごとに自由に費用を設定でき、治療スタンスもクリニックによってさまざまです。
治療費や治療内容が自由に設定できる分、ほかの医療機関との差も生まれやすいため、クリニックを選ぶ際は十分に比較検討する必要があります。
信頼できる医療機関を選びましょう。
先進医療B
先進医療Bは双極性障害の患者さんを対象とした方法で、一部の医療機関でのみ実施されています。
先進医療とは、治療効果に対する科学的な証拠の少ない『不確実な医療』であり、健康保険の対象外となるものです。
しかし将来的には健康保険の対象となる可能性があるため、保険診療と併用した混合治療を受けられる特徴があります。
先進医療にはAとBがあり、保険診療に移行する可能性が高いものが『先進医療A』、それよりも科学的証拠が乏しいものが『先進医療B』に分類されます。
双極性障害の患者さんを対象としたTMS治療は先進医療Bに分類されており、自己負担額は少ないものの、治療を受けるにあたって厳密な条件が定められているのが特徴です。
希望したすべての人がこの治療を受けられるわけではない点には注意が必要となります。
臨床研究・治験
臨床試験や治験でTMS治療を受ける方法もあります。
研究に協力する形となるため自己負担額はありませんが、正確な研究結果が求められるため、条件が細かく設定されています。
こちらも先進医療Bと同様、条件をクリアした人のみが治療を受けることが可能です。
TMS治療の自由診療とは

保険適用の条件が厳しい現状では、自由診療でのTMS治療を提供している医療機関のほうが多いです。
ここではTMS治療の自由診療の保険診療との違いやおすすめの人、クリニックの選び方などについて解説します。
保険診療との違い
TMS治療の自由診療と保険診療の違いを簡単にまとめると以下の通りです。
【自由診療】
・最新のプロトコルが使用可能
・短期集中治療が可能
・保険適用なし
・クリニックによって差が生まれやすい
【保険診療】
・rTMS37.5分のみ
・週5回×6週の入院治療
・保険適用あり
・厚労省が定める条件を満たした医療機関のため安心
保険診療は使用する機器や治療期間に制限があるため、「最新の治療器を使用したい」「短期間で治療したい」という方にはあまり向きません。
自由診療なら最新のプロトコルによる治療が受けられ、場合によっては短期集中治療も可能です。
自由診療がおすすめの人
TMS治療の自由診療は以下のような人におすすめです。
・軽度のうつ病
・入院治療が困難である
・短期間で治療したい
・すぐに治療を始めたい
・抗うつ剤による薬物治療を受けたことがない
上記に当てはまる人は、ぜひ自由診療を検討してみてください。
保険適用のように入院治療が必ずしも必要ではないため、入院治療が困難な人にも適しています。
自由診療は信頼できるクリニックを選ぶことが大切
自由診療は医療機関によって費用や治療スタンスが異なるため、信頼できるクリニック選びが重要になります。
信頼できるクリニックを選ぶためのポイントは以下の通りです。
・複数のクリニックの治療費を比較する
・診察する医師の経験をチェックする
・自宅から通いやすいクリニックを選ぶ
・自分に合った治療方法を提示してくれるクリニックを選ぶ
一番重要となるのは、やはり治療費です。
クリニックによって費用が大きく異なる場合があるため、気になる複数のクリニックをピックアップし、飛びぬけて費用が高いところは避けた方が良いでしょう。
また患者さんの症状によって適切な治療方法は異なります。
TMS治療に固執するのではなく、自分に合った治療方法を提示してくれるクリニックを選ぶのが大切です。
上記のポイントを押さえて、自分に合ったクリニックを選んでみてください。
TMS治療は医療費控除が可能

TMS治療は条件を満たせば医療費控除が可能です。
医療費控除は1月〜12月までの間に本人または家族が支払った医療費が基準額を超えたとき、確定申告をすることで税金の還付が受けられる制度です。
TMS治療も検査費や診察料、治療費が医療費控除の対象となるため、忘れずに確定申告を行いましょう。
TMS治療の保険診療が普及していない理由

TMS治療の保険診療が普及していない理由として、以下の3つが挙げられます。
・認知行動療法を熟知した医師が必要なため
・保険適用となるTMS治療機器が高額なため
・1回の治療に時間がかかるため
ここでは上記3つの理由についてそれぞれ解説します。
認知行動療法を熟知した医師が必要なため
保険診療でTMS治療を行うためには、認知行動療法を熟知した医師が必要となります。
認知行動療法の研修を受けた医師が在籍している場合でのみ保険診療が行えるため、この人材確保がハードルとなっているのです。
保険適用となるTMS治療機器が高額なため
TMS治療の保険診療が普及していない理由として、保険適用となるTMS治療機器が高額なことも挙げられます。
現在保険適用となるTMS治療機器はニューロスターのみに限られており、高額な費用がかかります。
さらに消耗品にかかる費用も高額なことも理由の一つです。
1回の治療に時間がかかるため
TMS治療の保険診療が普及していない理由として、1回の治療に時間がかかることが挙げられます。
保険診療の対象となっているTMS治療は37.5分のrTMS治療のみです。
さらに週5回の治療を計20〜30回行わなくてはいけなく、治療にかかる時間の長さがハードルとなっています。
TMS治療は適切な判断でクリニック選びを
TMS治療は脳に繰り返し磁気による刺激を与えることで、脳の働きを制御する治療方法で、うつ病や強迫性障害に効果があります。
保険適用可能な治療ではあるものの、現在の日本では自由診療でTMS治療を行っている医療機関のほうが多いです。
保険適用は条件が厳しく、治療機器や治療期間の制限があるため、患者さんの負担も大きくなりがちです。
その点自由診療なら、短期集中治療や最新のプロトコルを使用したTMS治療を受けることが可能となります。
医師監修オンラインカウンセリングサービスの『かもみーる』では、経験豊富な医師やカウンセラーが適切な治療やアドバイスを提供しています。
港区にある『かもみーる心のクリニック』でも、主にうつ病の患者様を対象にTMS治療を受けていただけますので、まずは『かもみーる』のオンライン診療やオンラインカウンセリングで相談してみてください。
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