悲しいわけでもないのに涙があふれると「自分は大丈夫だろうか……」と不安になる方も少なくありません。
涙は悲しみだけでなく、疲れやストレス、身体の変化など、さまざまな理由であふれてくることがあります。
この記事では、涙が出てくるメカニズムと考えられる原因を解説し、具体的なセルフケアや受診すべき判断基準についてもご紹介します。
「なぜ涙が出るのか」を理解することで、自分自身の状態に気づき、心を軽くするヒントになるはずです。
自分を責めずに少しだけ立ち止まって、自分の心と身体にやさしく目を向けてみましょう。
涙が出てくるときに自分でできる5つの対処法

涙が出てくるときは、心や身体が疲れているサインかもしれません。
ここでは、日常生活の中で無理なく取り入れられる、5つの対処法をご紹介します。
- 睡眠と休息をしっかりとる
- 気持ちを紙に書き出してみる
- 軽く身体を動かして気分転換する
- 信頼できる人に話してみる
- ストレスをなるべく減らす
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
1. 睡眠と休息をしっかりとる
涙が出てくる原因のひとつに、心や身体の疲労が蓄積している可能性があります。
特に睡眠不足が続くと、自律神経のバランスが乱れ、感情をうまくコントロールできなくなり、涙が出やすくなることがあります。
まずは睡眠時間をしっかり確保し、心と身体を休ませることが大切です。
毎日同じ時間に寝起きする生活リズムを意識すると、心身の安定につながります。
また、以下のように睡眠の質を高めることも有効です。
・就寝前にスマートフォンやパソコンは控える
・寝る1~2時間前にぬるめのお風呂に入る
・カフェインやアルコールは夕方以降控える
・寝室は暗く静かで快適な温度に保つ
・寝る前にリラックスできる習慣を持つ
・朝の光を浴びる習慣をつける
さらに、短時間の昼寝を取り入れるのもおすすめです。
「どうして泣いてしまうのだろう」と自分を責める前に、まずはしっかり休むことを優先して、心の回復を図っていきましょう。
2. 気持ちを紙に書き出してみる
気持ちを紙に書き出すことは、感情を整理するのにとても有効な方法です。
涙が出てくるとき、言葉にできない不安やモヤモヤが心の中にたまっていることがあります。
それらを無理に抑え込まず、紙に今の気持ちや「なぜ泣いてしまったのか」を自由に書き出してみましょう。
文字にすることで、自分でも気づいていなかった感情や考えが明確になり、気持ちが少しずつ落ち着いてくることがあります。
誰にも見せる必要はないので、きれいに書こうとせず思うままに書き出しましょう。
書くことで涙の原因が整理され、次第に心が軽くなる人も少なくありません。
3. 軽く身体を動かして気分転換する
涙が出てくるときは、気持ちが内側にこもりすぎている状態かもしれません。
そんなときは、深く考える前に少し身体を動かしてみましょう。
軽いストレッチや散歩でも十分です。身体を動かすことで「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンの分泌が促され、脳がリラックスしやすくなります。
セロトニンは感情を安定させたり、思考を前向きに切り替える働きもあるため、涙が自然と落ち着いてくるとされます。
運動が苦手な方は、軽く身体を伸ばすストレッチやウォーキングをするなど、自分に合った方法で取り組むだけでも効果が期待できます。
考えすぎて苦しいときこそ、まずは身体からケアしてあげることが大切です。
4. 信頼できる人に話してみる
信頼できる人に気持ちを話すことは、涙が出てくる状態を和らげる有効な方法です。
言葉にすることで、自分でも気づいていなかった感情に気づけたり、モヤモヤしていた思考が整理されたりします。
誰かに受け止めてもらえるという安心感は、心の負担を軽くしてくれます。
話す相手は、家族や友人、同僚などあなたが安心して本音を伝えられる人であれば十分です。
身近にいない場合は、カウンセラーや電話相談、オンラインサービスなどを活用するのも1つの手段です。
「話す=弱さ」ではありません。言葉にして話すことで、心の中にたまっていた感情が整理され、気持ちが少しずつ軽くなっていきます。
5. ストレスをなるべく減らす
ストレスは、涙が出てくる原因のひとつとして大きく関係しています。
まずは、自分がどんなときにストレスを感じやすいのかを知り、できるだけ抱えこまないことが大切です。
ストレスによる変化には、自分で気づきやすいものと、まわりの人が先に気づくようなものがあります。
例えば、気分の落ち込みや疲れが取れにくいといった心身の不調は、自分自身で感じ取りやすいサインです。
一方で、家に引きこもりがちになったり、お酒の量が増えるなどの行動変化は、他人のほうが先に気づくこともあります。
大きな出来事が短期間で重なったときなどは、無意識のうちにストレスがたまっていることもあるため、日々の生活を振り返る時間を持つことが大切です。
がんばりすぎていないか、ときどき立ち止まり、無理せずストレスを発散する工夫を取り入れましょう。
涙が出てくる身体的な原因とは?

涙が出てくる原因には、心だけでなく身体の変化も関係していることがあります。
ここでは、自律神経の乱れやホルモンバランスの変化と涙の関係について解説します。
自律神経の乱れ
涙が出てくる原因のひとつに、自律神経の乱れが関係していることがあります。
自律神経は、私たちの身体の機能を24時間休まず調整している神経で、ストレスや疲労、生活習慣の乱れなどによってバランスが崩れやすくなります。
特に、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなると、情緒が不安定になり、涙もろくなったり、突然涙が出てくるといった症状が現れることがあります。
眠りが浅い、息苦しさを感じる、動悸がするなどの身体的な不調を伴う場合は、自律神経の不調を疑ってみてもよいかもしれません。
生活リズムを整え、適度な運動やリラックスできる時間を取り入れることで、自律神経のバランスが回復し、涙のコントロールも改善されていく可能性があります。
ホルモンバランスの変化
涙が出てくる原因として、ホルモンバランスの変化も大きく関係しています。
特に女性は月経前や更年期、産後など、ホルモンの分泌が大きく変動する時期に感情が不安定になりやすく、些細なことで涙が出ることがあります。
エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンは、脳内の神経伝達物質にも影響を与えます。
そのため、ホルモンのバランスが崩れると気分が落ち込みやすくなり、涙もろさにつながるのです。
また、男性でも加齢や強いストレスによりホルモンバランスが乱れることがあります。
涙が出やすいと感じたときは、身体のリズムや生活環境を振り返り、ホルモンの影響を受けていないか考えてみることが大切です。
必要に応じて婦人科や内科などで相談するのもよいでしょう。
涙が出てくる背景にある心の病気

涙が出てくる背景には、心の不調が隠れていることもあります。
ここでは、うつ病や不安障害など、涙と深く関係する代表的な心の病気について解説します。
うつ病
うつ病は、「自然に涙が出てくる」「理由もなく涙が勝手に出る」といった症状が現れることのある代表的な心の病気です。
気分の落ち込みだけでなく、感情をうまくコントロールできなくなり、些細なきっかけで涙があふれることがあります。
特に、朝目覚めたときやふとした瞬間に涙が出てくる場合、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れている可能性があります。
何もしたくない、眠れない、食欲が落ちたなど、日常生活に支障が出ていると感じたら、早めに心療内科や精神科に相談しましょう。
正しい診断と治療によって、回復に向かうことができます。
適応障害
適応障害は、環境の変化や強いストレスにうまく対応できず、心や身体に不調が現れる病気です。
職場や家庭での人間関係のトラブル、引っ越しや転職など、生活上の変化がきっかけになることが多く、「自然に涙が出てくる」「ちょっとしたことで涙が出る」といった症状が見られることもあります。
涙が出る理由が自分でもよく分からず、「涙が勝手に出るのは病気では?」と不安になる方も少なくありません。
気分の落ち込みや不眠、食欲不振などが続く場合には、適応障害が関係している可能性も考えられます。
早めに医療機関を受診し、専門家に相談することで、環境調整やカウンセリング、薬物療法など適切な支援を受けることができます。
我慢しすぎず、心の声に耳を傾けることが大切です。
不安障害
不安障害は、日常的に強い不安や緊張が続き、それが心身にさまざまな影響を与える病気です。
不安が高まると、自律神経のバランスが乱れ、自然に涙が出てくる、あるいは涙が勝手に出るといった症状が現れることがあります。
特に、悲しいわけでもないのに涙が出る理由がわからず戸惑う場合、不安が身体に現れているサインかもしれません。
例えば、人前に出ることへの強い恐怖や、動悸・息苦しさなどが起こる「社会不安障害」や、日常のささいなことに過度な不安を感じる「全般性不安障害」などがあります。
こうした症状は、自分の気のせいではなく、心と身体の両方に影響を与える病気です。
早めに専門の医療機関で相談すれば、心も身体も少しずつ落ち着き、涙のコントロールがしやすくなる可能性があります。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、強いショックや恐怖を伴う出来事を経験したあとに心に深い傷を負い、その影響が長く続く病気です。
過去の体験がふとした瞬間によみがえり、自然に涙が出てくる、あるいは涙が勝手に出るといった症状が現れることがあります。
これらは、涙が出る理由が自分でもはっきりわからない場合が多く、「勝手に涙が出る病気なのでは?」と不安になる人も少なくありません。
PTSDでは、フラッシュバック、不眠、過覚醒(常に警戒している状態)なども見られ、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
自然に涙が出る状態が続いたり感情が不安定になる場合は、無理をせず、専門の医療機関に相談することも検討してみましょう。
適切な治療を受けることで、少しずつ心の安全を取り戻すことができます。
パニック障害
パニック障害は、突然強い不安や恐怖に襲われ、動悸・息苦しさ・めまいなどの症状が現れる心の病気です。
発作の最中には、「このまま死んでしまうのでは」と感じるほどの恐怖に包まれ、混乱や強い不安から自然に涙が出てくることがあります。
本人の意思に関係なく涙が勝手に出るため、「涙が出る理由がわからない」と感じる方も少なくありません。
発作を繰り返すうちに「また起きたらどうしよう」という予期不安が強まり、人前に出るのを避けるなど、日常生活にも影響が出てきます。
涙が出てくるときによくある質問

涙が出てくる原因がわからず、不安を感じる方は少なくありません。ここからは、涙が出てくるときによくある疑問について解説します。
悲しくないのに泣いてしまう理由とは?
悲しくないのに涙が出てくる場合、心の問題だけでなく、身体の不調が原因になっていることもあります。
例えば、涙は通常鼻涙管(びるいかん)を通じて体内に排出されますが、鼻涙管に詰まりや異常があると、涙が目にあふれ出やすくなります。これは「流涙症」と呼ばれ、目の病気の一種です。
また、女性に多い原因の1つに「月経前不快気分障害(PMDD)」があります。これはPMS(月経前症候群)の中でも、特に精神的な症状が強く出るタイプで、月経前のホルモン変化によってイライラや情緒不安定、涙もろさがあらわれることがあります。
感情と関係なく涙が出て止まらない状態が続く場合は、眼科や婦人科などで相談してみると安心です。
急に涙が出るのは病気?受診の判断基準とは
目にゴミが入ったり、感情が一時的に揺れ動いたりしたときに、急に涙が出るのは誰にでもある自然な反応です。
そうした一時的なものであれば、特に心配する必要はありません。
しかし「悲しくないのに涙が出てくる」といった状態が何日も続く場合は、注意が必要です。
例えば、眠れない、気分が落ち込む、人と会うのがつらいといった心身の不調があるときは、うつ病や自律神経の乱れなど、何らかの病気が背景にある可能性も考えられます。
自分だけで抱え込まず、早めに心療内科や精神科、婦人科など専門の医療機関に相談することが大切です。
早期に対応することで、症状の悪化を防ぎ、より早い回復につながります。
涙が止まらないときに知っておきたい大切なこと
悲しいわけではないのに涙が出ると「自分はおかしいのでは?」と感じることもあるかもしれませんが、決して特別なことではありません。
疲れやストレス、ホルモンの変化、心の不調など、さまざまな要因が重なって涙としてあらわれることは、誰にでも起こりうる自然な反応です。
涙が止まらずつらさを感じることがあれば、ご自身を責めず、ぜひ専門のサポートを検討してください。
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涙が続くときやつらさを感じるときは、1人で抱え込まず、専門の医療機関に相談することも大切です。
あなたのペースで、少しずつ心を整えていきましょう。
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