適応障害の治し方は?治療の過程や自身でできる対策を紹介
更新日 2025年03月11日
適応障害
適応障害は、環境の変化やストレスが原因で精神状態が乱れ、不安や抑うつ症状を引き起こす疾患です。
原因となる物事から距離をおき治療を行うことで回復が見込めますが、放置するとうつ病に移行するリスクがあるため、適切に対処することが大切です。
この記事では、適応障害の治し方や対策、治療し始めてからいつ治るのかを紹介します。
仕事や学校に行くのがつらいと感じている人や我慢して行くことに疲れた人、自分ではどうしたらいいかわからない人は参考にしてください。
適応障害の治療法

医療機関で受けられる適応障害の治療法には以下のものがあります。
環境調整
患者さんの適応障害の原因である環境を改善する、または距離を置けるように努めます。
適応障害の治療では、ストレスを感じる場所や人間関係を避け、症状の軽減・改善を図ることが必要です。
対人関係がストレスになっている場合、話し合いや原因となる人との関わりを減らしたりすることで改善するケースもありますが、場合によっては休職・休学や転職・転校などの対処が必要になる可能性もあります。
精神療法
精神療法では、自分の考え方や物事のとらえ方を変えてストレスにつながる考え方の修正を目指します。
嫌と感じる出来事が起こった際に、具体的にどのような感情になって心身にどのような影響を及ぼすのかを整理し、ストレスにつながらないように考え方を修正します。
環境調整がストレスを避ける方法であるのに対して、精神療法はストレスへ対処できるようにし、耐性をつけることが目的です。
薬物療法
適応障害が原因で日常生活に支障をきたす場合、状態によっては薬物療法を適用する場合があります。
おもに不安を緩和する薬・不眠を改善する薬・うつ症状を抑制する薬の3種類を、心身ともに穏やかな状態で休養することを目的として使用します。
特にうつ病に移行するリスクが高い適応障害の場合は、不眠が続いたり悪い思考をめぐらせたりといった悪循環を断ち切るために薬物療法を選択するケースが多いです。
あくまで対症療法として投薬が行われるため、適応障害の根本的な治療ができるわけではありません。
薬剤の種類や服用の仕方によっては副作用や依存症のリスクを伴う危険もあるため、環境や自分を見直すことで改善できるのが理想です。
また薬とは異なりますが、不足している栄養素を補うことで不調を改善するオーソモレキュラー栄養療法を行う際には、サプリメントを使用するケースがあります。
かもみーるでは、可能なかぎり薬物療法を用いない適応障害の治療に努めていますが、ご希望の方には処方箋の発行・郵送も承っております。
TMS治療
TMS治療では、電磁波を利用して頭部にある神経回路に刺激を与え、正常な働きを促します。
適応障害によってうつ症状がみられる場合に、薬を使用せずに改善が望める治療法です。
痛みや副作用のリスクが低く、投薬で改善しないうつ症状の治療に効果が期待できます。
TMS治療は、抗うつ剤による効果では不十分な中等度以上の症状がある18歳以上の患者さんに対してのみ保険が適用されます。
適応障害で受ける場合は自費診療になるケースが多いため注意しましょう。
適応障害でみられる症状

適応障害では、以下の症状が現れる可能性があります。
会社や学校に行くのがつらい、環境に馴染むのが苦手だと感じる場合は、以下の項目に自分がどれくらい当てはまるのか確認してみましょう。
身体症状
適応障害で身体に現れる症状には以下のものがあります。
• 腹痛・下痢・便秘がある
• 倦怠感がある
• 頭痛やめまいがする
• 動悸がする
• 寝つきが悪く、よく眠れない
• 食欲不振になる
適応障害では、身体がストレスとなる環境に対して拒否反応を起こすことで、頭痛や腹痛のほかにも動悸や不眠などの身体症状が現れる場合があります。
強いストレスは胃の不調を引き起こす原因になり、胃痛につながるケースがあります。
身体症状が現れることで出席・出勤できない状態になり、その罪悪感からさらにストレスを感じることで悪循環に陥りやすいです。
また寝つきが悪い・眠れないなども適応障害の代表的な症状です。睡眠が十分にとれないと、身体が休まらず疲れが溜まりやすい状態になります。
心身ともに回復させるためには、不眠に対する対処や治療を試みることでよく眠れるようにすることが大切です。
精神症状
適応障害でみられる精神症状には以下のものがあります。
• 涙もろくなる
• いつも気持ちが暗い
• イライラする
• 焦燥感がある
• やる気が起きない
• 集中力が低下する
• 好きなことをしていても楽しくない
適応障害では、精神的に不安定になることで涙もろくなったり、ストレスからイライラしやすくなったりします。
また抑うつ状態になるため無気力になり、なにもやる気が起きず常に落ち込んだような様子がみられます。
楽しい・嬉しいなどの感情を抱きづらくなり、表情が暗くなるケースも多いです。
焦燥感によってさらにストレスを感じ心に負担がかかるため、感情のコントロールが思うようにできなくなります。
情緒が不安定だったり感情をうまく表現できなかったりすると、人とのコミュニケーションがうまく図れなくなります。
社会人の場合は仕事に支障をきたし、さらにストレスが溜まる悪循環に陥る可能性があるため注意が必要です。
行動に関わる症状
適応障害でみられる行動に関わる症状は以下のものがあります。
• やけ食いをする
• 遅刻や欠勤が増える
• 一人を好む
• 電話に出られない
• 人との関わりを避ける
• 攻撃的な行動が増える
適応障害では、ストレスや対人関係への不安からやけ食いをしたり、人との関わりに対して消極的になったりします。
倦怠感や無気力感から食欲が無くなるケースもありますが、ストレスを食べることで発散しようとする結果、暴飲暴食をするケースもあります。
また身体症状や精神症状が原因で遅刻や欠勤が増えると、いずれ無断欠勤をするようになる可能性が高いです。
精神症状であるイライラが強いと、怒りっぽくなったり他人と喧嘩になりやすくなったりする場合があるため、トラブルに発展するケースもあります。
適応障害になりやすい人の特徴

適応障害になりやすい人には、以下のような特徴があります。
性格の特徴
適応障害になりやすい性格の特徴には、以下があります。
• 完璧主義で責任感が強い
• 真面目で几帳面
• 他人からの評価が気になる
• 自分に自信がない
• 些細なことで傷つきやすい
• 自分を後回しにして他人を優先する傾向がある
• 気分の切り替えがうまくできない
責任感が強く何でも完璧にこなしたい人や、自分に自信がなく他人の評価や機嫌が気になる人は、ストレスを感じやすいため適応障害になりやすい傾向があります。
また気持ちの切り替えがうまくできない人は、嫌なことが起こった際に受け流せず気にしすぎてしまうため、ストレスを溜めこみやすいです。
しかし、適応障害は性格に関わらず誰でも発症する可能性があるため、自分は当てはまらないと思っても、職場や人間関係に深刻に悩むことがあれば要注意です。
環境の特徴
適応障害になりやすい環境の特徴には、以下のものがあります。
• 職場や学校に苦手な人がいる
• 職場や学校での人間関係が不良
• 仕事の内容に不満がある
• 仕事を休みづらい環境にいる
• 悩みを気軽に話せる人がまわりにいない
• 転校や転職による環境変化
• 恋人・配偶者との関係が不良
適応障害の原因となる環境は、学校・職場・家などさまざまで、人間関係が関わっているケースが多いです。
また、嬉しい出来事がストレスにつながり適応障害を発症するケースもあるため、何が原因になるかは個人差によります。
適応障害の治療には、環境から原因を特定してそこから離れたり向き合い方を検討することが必要不可欠です。
適応障害になりやすい人の特徴については以下の記事でも詳しく解説しています。
▶適応障害になりやすい人の特徴│性格や環境、顔つきなどを解説!予防法&治療法も
適応障害が改善するまでの経過

適応障害は、以下の経過を経て改善を目指すことが可能です。
休養期
休養期では、ストレスの原因から距離をとり心身を休ませることに専念しましょう。
心身を休めることは、その後の治療過程に進むのに必要な準備です。
休みをもらっていることで焦りや罪悪感を感じるかもしれませんが、自分が不安になることは考えないように、とにかくリラックスすることが大切です。
何もせずゆっくりする、好きなことをするなど、気分の赴くまま過ごしてください。
休養期が必要になる期間には個人差がありますが、ストレッサーから距離を置けば一般的に3〜6ヶ月ほどで症状が改善していきます。
しかしメンタル的に大丈夫だと感じても、治療や通院を途中でやめることでまた症状が現れる可能性があるため注意が必要です。
リハビリ期(回復期)
休養期で心身を休め、日常生活を問題なく送れるようになったら、次はリハビリ期で少しずつ活動レベルを上げていきます。
軽い運動や外出から始め、疲れを溜めない程度に活動量を増やしましょう。
社会復帰や復学をする場合は、無理をせず主治医とよく相談してタイミングを見極めることが大切で、無理は禁物です。
周囲の理解やサポートも得ながら、自分のペースで慣らしていきましょう。
また、同時にストレスへの対処法を見直すことで、再発の防止につながります。
調整期
調整期は、生活習慣の改善やストレスへの対策に取り組むことで元の生活を取り戻すための期間です。
適応障害を発症する場合の行動パターンを分析し、広い思考を持つことで、学校や職場に戻ってからの生活を克服し、繰り返さないことが大切です。
ストレスへの効果的な対処法は人それぞれであるため、自分を見つめ直すことで適した方法を見つけられるように努めましょう。
適応障害に対して自分でできる対処法

ここからは、適応障害に対して自分でできる対処法を紹介します。
ストレスの原因から可能なかぎり距離をとる
ストレスの原因から距離を置ける場合は、可能なかぎり関わらないようにすることが大切です。
ストレスの原因を特定し、必要があれば環境を変えることを検討しましょう。
学校や職場ではなく、義両親やパートナーとの関係がストレスになっている場合は、実家が安心するのであれば落ち着くまで帰省するのも効果的です。
ストレス要因を遠ざけるのは逃げではなく、適応障害と向き合い回復させるために必要な行為です。
理解のある人に相談する
緊張や不安を感じている状態では、自分の考えがうまくまとめられない場合があるため、信頼できる人に相談しましょう。
気持ちの整理がつかない場合やネガティブな思考に陥っている場合は、人に話を聞いてもらうことで客観的な意見が得られ、考えをまとめる手助けをしてもらえる可能性があります。
家族だけではなく、心療内科の医師や臨床心理士によるカウンセリングも有効です。
ストレスの蓄積を避ける
適応障害の回復を目指すためには、ストレスへの対処法を身につけ蓄積しないように発散することが必要です。
特に、睡眠不足や乱れた食生活は心身の健康に影響を及ぼす可能性が高いため、睡眠の質を高める工夫をして、規則正しい食生活を心掛けましょう。
また、自分に合ったストレス解消方法を模索することも大切です。
リラックス効果のある香りや音楽を使用したり、趣味の時間を楽しんだりすることで、ストレスが溜まって限界が来ないように少しずつ発散しましょう。
ストレスを感じやすい人には、責任感が強い・些細なことでも深く考えすぎてしまうなどの特徴があります。
そのため、嫌な出来事をあまり悲観的に捉えず、受け流せるようになるのが理想です。
無理をしない
回復したと思って無理をすると症状が再発する可能性が高まるため、焦って元通りにしようとせず、ゆっくりできることから取り組みましょう。
まずは1週間・1ヶ月など、期間を決めて復帰するところから始めるのが推奨されます。
職場や学校に戻った際、本来の力が発揮できなくなっているケースがありますが、それが原因で悲観的になると適応障害を繰り返すリスクが高まります。
久しぶりに取り組むことがうまくいかないのは誰にでもありえることであるため、あまり思い詰めず、「ゆっくり頑張れば大丈夫」と割り切ることが大切です。
適応障害は一人で悩まず専門家に相談することが大切
適応障害と聞くと自分に問題があるように感じるかもしれませんが、決して「甘え」や「怠け」ではありません。
あまり自分を追い詰めずに、周囲の理解を得ながら少しずつ回復を目指しましょう。
医師が監修するカウンセリングサービス『かもみーる』では、臨床心理士や公認心理師によるつらい気持ちに寄り添ったカウンセリングを、自宅で気軽にお受けいただけます。
カウンセリングの方法は電話・ZOOMのいずれかを選択できるため、お顔を直接伺いながらお話することもできますし、緊張する場合は音声のみでの対応も可能です。
また、かもみーる心のクリニック(東京院)では、TMS治療の方針を決める際に必要な脳波検査も行っております。
『かもみーる』のオンライン診療では必要に応じて診断書の発行も承っておりますので、どうすればいいか分からない人も、ぜひ一度お話をお聞かせいただければと思います。
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