不安障害を抱えている方の中には、「この不安はいつまで続くのだろう」「自分はもう普通の生活に戻れないのではないか」といった悩みを持つ方は少なくありません。
結論から言うと、不安障害は完治というよりも寛解を目指す精神疾患です。
適切な治療を続けることで症状が改善され、不安と上手く付き合いながら快適な日常生活を送れるようになります。
この記事では、不安障害の治療について詳しく解説します。
病院での治療方法や自力での対処法、よくある質問などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
不安障害の種類
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不安障害は、過度な不安や恐怖が日常生活に支障をきたす精神疾患の総称です。
具体的には、『パニック障害』『社交不安障害』『強迫性障害』『全般性不安障害』などが含まれ、それぞれ症状や原因が異なります。
ここでは上記4つの不安障害の種類について解説します。
▶不安障害の種類別の症状・診断基準┃セルフチェックや治療法も解説
パニック障害
パニック障害は、突然強い不安に襲われる『パニック発作』が特徴の精神疾患です。
発作時には動悸、めまい、息苦しさ、発汗、震え、胸の痛みなどの身体症状が急激に現れ、命の危険を感じるほどの恐怖に包まれます。
こうした発作が繰り返されると、「また発作が起こるかもしれない」と不安になる『予期不安』が生じるのも特徴です。
さらに発作を避けたいという気持ちから、電車やエレベーターなど逃げにくい場所を避ける『広場恐怖』に発展することもあります。
結果として、外出や社会活動に制限がかかり、生活の質が大きく低下してしまうケースも少なくありません。
早期の診断と治療により、発作をコントロールしやすくなります。
▶パニック障害とは?主な症状や原因、診断方法・治療法などを紹介
社交不安障害
社交不安障害は、人前で話す・注目を浴びるなどの社会的状況に強い不安を感じる精神疾患です。
単なる恥ずかしがり屋とは異なり、極度の緊張によって動悸、発汗、震え、吐き気、赤面などの身体症状が出ることがあります。
このような症状がまた現れるのではないかという恐怖から、会話や発表などの場面を避けるようになり、学校や職場での活動が困難になります。
『対人恐怖症』や『赤面恐怖症』なども、社交不安障害に該当するものです。
重症化すると人間関係の悪化やうつ状態、アルコール依存などを併発する恐れがあり、自殺念慮につながることもあります。
日常生活に大きな影響が出る前に、専門医に相談することが大切です。
強迫性障害
強迫性障害は、頭の中に繰り返し浮かぶ不安な考え(強迫観念)とそれを打ち消そうとする行動(強迫行為)を何度も繰り返してしまう精神疾患です。
例えば「手が汚れている気がする」と感じると、何度も手洗いをしてしまったり、「火を消し忘れたかもしれない」と思って何度も確認したりする行動が典型的な例です。
本人もその行動が過剰なものであることを自覚していることが多いですが、不安を抑えるためにやめられなくなります。
症状が重くなる前に、精神科でのカウンセリングや薬物療法などの治療を受け、適切に対処することが大切です。
全般性不安障害
全般性不安障害は、特定の出来事に限らず、日常生活全般にわたって過剰な不安や心配が6か月以上続く精神疾患です。
「病気になったらどうしよう」「家族が事故に遭うのでは」といった漠然とした不安が次々と浮かび、それを振り払うことができません。
この慢性的な不安は集中力の低下や疲労感、筋肉のこわばり、胃腸症状、不眠、めまい、動悸などの身体的症状を伴うこともあります。
30代前後の発症が多いとされますが、年齢を問わず発症する可能性があります。
精神的な負担を減らすためにも、早期治療が重要です。
不安障害は完治する?
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不安障害は治療によって症状が改善する病気ですが、『完治』というよりも**『寛解(症状が目立たなくなった状態)』**という表現が適していると考えられています。
これは症状が一時的におさまっても、ストレスや生活環境の変化などをきっかけに再発する可能性があるためです。
特にうつ病を併発している場合や、生まれつき不安を感じやすい性格傾向のある人では、再発リスクが高いことが報告されています。
そのため症状が落ち着いたあとも、一定期間は治療を継続することが大切です。
具体的には抗不安薬や抗うつ薬といった薬物療法、あるいは認知行動療法などの心理療法が主な治療法となります。
薬に対して抵抗がある場合や副作用が心配な場合には、医師と相談のうえで認知行動療法を中心に取り入れることも可能です。
実際には、早期に治療を開始すればほとんどの方で改善が期待できるといわれています。
ただし放置してしまうと症状が慢性化し、仕事や人間関係に深刻な支障を及ぼす恐れもあるため、早期発見・早期治療が何よりも重要です。
症状に悩んでいる場合は、自己判断せずに専門医へ相談することをおすすめします。
不安障害は自力で治る?具体的な対処法
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不安障害は医療機関での治療が基本ですが、症状が軽度の場合や予防の場合には、自分でできる対処法を取り入れると良いでしょう。
自分でできる具体的な対処法として、以下の5つが挙げられます。
- 腹式呼吸を行う
- リラクゼーション法を取り入れる
- カフェインやアルコールの摂取を控える
- 生活習慣を改善する
- ストレスをため込まない
ここでは上記5つの対処法についてそれぞれ解説します。
腹式呼吸を行う
腹式呼吸は、自律神経のバランスを整え、副交感神経を優位にすることで不安感を和らげる効果が期待できます。
特に不安障害の方は緊張状態が強く、呼吸が浅くなりがちですが、腹式呼吸を意識的に行うことで身体がリラックスしやすくなるでしょう。
まず背筋を伸ばして座り、鼻から息を吸いながらお腹をふくらませ、次に口からゆっくりとお腹をへこませるように息を吐き出します。
このとき、吸う時間よりも吐く時間を長くするのがポイントです。
息を吐く際に、不安や緊張も一緒に吐き出すようなイメージを持つと、より効果的にリラックスできます。
毎日5〜10分を目安に続けることで、心身ともに安定しやすくなります。
気分が落ち着かないときや寝る前の習慣として取り入れてみるとよいでしょう。
リラクゼーション法を取り入れる
リラクゼーション法にはさまざまな種類がありますが、不安障害に対しては**『漸進的筋弛緩法』**が効果的とされています。
この方法は身体の各部位に意識的に力を入れ、その後一気に力を抜くことで、筋肉の緊張を解きほぐすリラクゼーション法です。
例えば両肩をぎゅっとすくめて数秒間キープし、その後一気に脱力すると、肩周辺の力が抜けて温かさや心地よさが広がるのを感じられます。
このような体験を繰り返すことで、身体がリラックスする感覚を学習し、日常的な不安や緊張にも対処しやすくなります。
また誘導イメージ法(楽しい情景を思い浮かべる方法)や深呼吸法なども合わせて行うと、より効果的です。
カフェインやアルコールの摂取を控える
不安症状を悪化させやすい要因として、カフェインやアルコールの摂取が挙げられます。
カフェインは覚醒作用があり交感神経を刺激するため、心拍数が上がり、緊張や焦燥感が強くなることがあります。
さらにこの覚醒作用によって不眠や浅い眠りにつながりやすく、睡眠の質が低下すると、不安が増幅する原因にもなるのです。
アルコールは一時的にリラックス作用を感じられることがありますが、代謝される過程で逆に不安や抑うつ感を引き起こすことがあります。
特に就寝前の飲酒は睡眠の妨げになり、自律神経の乱れを悪化させる可能性があるため注意が必要です。
精神的に安定した状態を保つためには、これらの嗜好品を過剰に摂取しないよう意識することが大切です。
水やカフェインレスの飲み物に置き換えることも検討してみてください。
生活習慣を改善する
不安障害の症状を軽減するためには、生活習慣を見直すことが大切です。
特に睡眠・食事・運動といった基本的な生活のリズムを整えることで、自律神経のバランスが安定しやすくなり、心身の緊張が和らぎます。
具体的には以下のような生活習慣を意識するとよいでしょう。
- 毎日決まった時間に食事を摂る
- 早寝早起きを心がける
- 朝に太陽光を浴びる
- 適度に運動する
- カフェインやアルコールの摂取を控える
上記のような生活習慣を送ることで、不安の予防や緩和につながります。
自力での改善を目指す際には、まず生活リズムを整えることから始めてみるとよいでしょう。
ストレスをため込まない
不安障害の悪化を防ぐためには、ストレスをため込まないことが大切です。
ストレスは自律神経の働きを乱し、不安感や緊張感を強める要因となります。
日々の生活の中で自分がストレスを感じやすい場面や原因を知り、意識的に休息を取るようにしましょう。
例えば仕事の合間に深呼吸をする、趣味の時間を確保する、気軽に話せる人とコミュニケーションを取るなど、心をリラックスさせる時間を意識的に取り入れてみてください。
また「頑張りすぎない」「完璧を目指さない」ことも大事なポイントです。
ストレスをゼロにするのは難しいですが、上手く付き合う方法を見つけることで、心の負担を軽くできます。
たまったストレスに気づかず我慢を続けていると、不安症状が強くなる場合もあるため、早めの対処を心がけましょう。
不安障害の医療機関での治療方法
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不安障害の治療方法は、主に『精神・心理療法』と『薬物療法』の2つに分けられます。
ここではこれら2つの治療方法の特徴について解説します。
精神・心理療法
精神・心理療法の中でも、特に効果が高いとされているのが**『認知行動療法』**です。
これは思考の歪みと行動パターンを見直すことで、不安を軽減することを目的とした治療法です。
不安障害のある人は、過去の経験などから「人前で失敗すると取り返しがつかない」「誰も助けてくれない」など極端で否定的な思考を持ちやすい傾向があります。
認知行動療法はこうした思考の偏りに気づき、それを現実的でバランスのとれた考え方へと修正していくというものです。
治療は数か月以上かけて進められることが多く、継続的に取り組む必要がありますが、薬物療法とは異なり副作用がない点が大きなメリットといえるでしょう。
薬物療法
薬物療法で主に使用されるのは、**抗うつ薬の一種である『SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)』**と、**即効性のある『ベンゾジアゼピン系抗不安薬』**の2種類です。
SSRIは脳内のセロトニンという神経伝達物質の働きを高めることで、持続的に不安感を軽減します。
効果が出るまでには2〜4週間ほどかかりますが、依存性が少なく、長期的な治療にも向いています。
一方、ベンゾジアゼピン系薬は即効性があり、急な不安発作や不眠などに対して頓服薬として処方されることが多いです。
ただし長期間の使用によって依存が生じる可能性があるため、基本的には短期的な使用にとどめるのが望ましいとされています。
薬の効果が出ても、自己判断で中断すると再発リスクが高まるため、医師の指示のもとで計画的に治療を継続することが大切です。
不安障害の治療に関するよくある質問
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不安障害の治療に関するよくある質問をまとめました。
- 不安障害の受診目安は?
- 不安障害の病院選びで注意すべきポイントは?
- 不安障害の治療にかかる期間は?
ここでは上記3つの質問についてそれぞれ解説します。
不安障害の受診目安は?
不安や心配が長期間続き、仕事や家事、人間関係など日常生活に支障が出ていると感じた場合は医療機関を受診しましょう。
めまいや動悸、胃の不調など身体的な症状を伴うこともありますが、外見からは分かりにくく、周囲に理解されにくいことも少なくありません。
そのため受診をためらう方もいますが、放置すると悪化する可能性があります。
早期回復のためには発症から1年以内の治療開始が大切とされているため、なるべく早めに受診することが大切です。
不安障害の病院選びで注意すべきポイントは?
不安障害で受診する際は、精神科や心療内科の中でも、自分の症状に合った専門性を持つ医療機関を選ぶことが大切です。
治療内容やスタッフ構成(精神科医、臨床心理士の有無)、診療時間、予約制の有無などを確認しましょう。
症状が重い場合など入院の可能性がある場合は、対応可能な施設かどうかも事前に確認しておくことをおすすめします。
不安障害の治療にかかる期間は?
不安障害の治療期間は個人差が大きく、不安の種類や症状の強さ、治療への反応によって変わります。
薬物療法は効果が出るまでに数週間かかることが多く、精神療法もある程度の継続が必要です。
数か月から1年ほどで症状が安定する場合が多いですが、再発を防ぐためには症状が改善した後も治療の継続が推奨されます。
不安障害は適切な対処と治療で治せる
不安障害は、適切な治療や生活習慣の見直しなどにより、症状の緩和が期待できる精神疾患です。
完治というより「寛解」や「上手く付き合っていく」ことを目指す形になりますが、多くの方が治療を通じて日常生活を取り戻しています。
不安障害の症状で悩んでいる場合は、まずは早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
かもみーる心のクリニック仙台院は、幅広い精神疾患の診断・治療に対応している精神科・心療内科クリニックです。
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