不安障害の種類別の症状・診断基準┃セルフチェックや治療法も解説
更新日 2025年02月05日

不安や恐怖は、どんな人でも感じるものです。しかし、日常生活に支障をきたすほどの不安や恐怖を感じる状態が続く場合は、不安障害の可能性があるかもしれません。
不安障害にはいくつかの分類があり、それぞれ症状や診断基準は異なります。
この記事では、不安障害の主な種類と症状、診断基準、セルフチェック方法などについて詳しく解説します。
不安障害についての知識を深めることで、適切な対処法や治療法を見つけるきっかけにできるはずです。ぜひ記事を最後までチェックしてみてください。
不安障害とは

不安障害とは、過度の不安や恐怖により、日常生活に支障をきたしてしまう病気の総称です。
大切なプレゼンや発表、初対面の人と話すときなどに不安を感じ、ドキドキしたり、冷や汗をかいたりするのは精神的ストレスに対する正常な反応で、ごく自然なことです。
不安や恐怖は、危険を回避して生き延びるための重要な機能であるともいわれています。
しかし、誰もが時々感じるものとは異なり、不安障害で感じる不安や恐怖は非常に強く、コントロールすることも困難です。
不安や恐怖といった精神的な症状に加えて身体的な症状(動悸、発汗、震え、めまい、吐き気など)が起こり、仕事や学校、人間関係などに影響が出てしまいます。
日本での不安障害の発症率は9.2%で、約10人のうち1人は不安障害を経験するといわれています。
不安障害は決して特別な病気ではなく、私たちにとって身近な病気なのです。
▶適応障害・不安障害・うつ病の違い&共通点│セルフチェックや治療法も解説
不安障害の種類と症状・診断基準

不安障害にはいくつかの種類があり、それぞれ症状や、症状が起こるきっかけやタイミングが異なります。
- パニック障害(パニック症)
- 社会不安障害(社会不安症)
- 強迫性障害(強迫症)
- 全般性不安障害(全般不安症)
- 限局性恐怖症
- 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
- その他の不安障害
ここでは、上記の主な不安障害の種類とその症状について詳しく解説します。
パニック障害(パニック症)
パニック障害(パニック症/Panic Disorder:PD)は、突然の激しいパニック発作を繰り返す病気で、「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖(回避行動)」という症状が特徴的です。
パニック発作が起こることへの恐怖(予期不安)から外出を避けたり、特定の場所や状況を避ける広場恐怖(回避行動)が起こったりすることがあり、日常生活や社会生活に大きな支障をきたしてしまうケースも少なくありません。
パニック発作は特定の場所や状況やモノがきっかけで起こる場合もあれば、前触れなく突然起こることもあります。
主な症状 | 症状が起こるきっかけやタイミング |
---|---|
・動悸 ・発汗 ・震え ・息苦しさ ・めまい、ふらつき ・手足のしびれ ・吐き気 ・死の恐怖 | ・予期せぬタイミングで突然起こる(予期しない発作) ・特定の場所や状況やモノに反応する(状況依存性発作) |
パニック障害の診断基準
パニック障害の主な診断基準は、以下の通りです。
- パニック発作を繰り返している
- パニック発作が再び起こることへの持続的な心配がある
- パニック発作の結果についての心配がある(発狂する、自制心を無くすなど)
- パニック発作を避けるような行動を取る
- 他の物質、身体疾患や精神疾患による症状ではないなど
パニック障害については以下の記事でも詳しく解説しています。よろしければ合わせてご覧ください。
社会不安障害(社会不安症)
社会不安障害(社会不安症/Social Anxiety Disorder:SAD)は、他人から注目されたり、評価されたりする社会的状況に対して強い不安や恐怖を感じる病気です。
人との会話が怖い、たくさんの人がいる場所で不安になるなどのほか、電話や人前で字を書くような些細なことでも強い不安を感じるケースもあります。
重要な会議や面接を避けたり、人間関係を築くことが困難になったり、社会不安障害の症状によって日常生活や仕事、学業に大きな支障をきたしてしまいます。
その一方で、周囲から理解を得られない、「性格だから直せない」と誤解されてしまいがちなどの理由から、人知れず悩んでいる人も多い病気です。
「赤面症」「対人恐怖症」などといわれているのも、社会不安障害に該当します。
主な症状 | 症状が起こるきっかけやタイミング |
---|---|
・極度の緊張 ・赤面、発汗 ・震え ・吐き気 ・動悸 ・呼吸困難 ・行動異常(不安や恐怖を感じる場面の回避) | ・人前でのスピーチや発表、面接 ・初対面の人との会話 ・食事中や書類記入時など、他人に観察される状況 ・電話に出る、かけるなど |
社会不安障害の診断基準
社会不安障害の主な診断基準は以下の通りです。
- 他者からの注目を浴びる可能性のある社会的状況に対する強い恐怖または不安
- 社会的状況を意図的に回避している
- 恐怖や不安が、その状況がもたらす実際の脅威に比べて過剰
- 症状が6ヶ月以上持続するなど
強迫性障害(強迫症)
強迫性障害(強迫症/Obsessive Compulsive Disorder:OCD)は、ある考えが頭から離れなくなり(強迫観念)、それを打ち消すための行動を繰り返す(強迫行為)ことで、日常生活に支障が出てしまう病気です。
例えば、「ちゃんと家の鍵を閉めたかな」「手が汚れているんじゃないか」などが過剰に気になり、これらの思考や行動が不合理だと理解していても、何度も確認したり、手洗いに多くの時間を費やしてしまったりします。
主な症状 | 症状が起こるきっかけやタイミング |
---|---|
・汚染への恐怖と過度の手洗い ・数字や順序へのこだわり ・確認行為の繰り返し(戸締り、ガスの元栓など) ・誰かに危害を加えたかもしれないという考えや恐怖 ・物の配置などについてのこだわり | ・清潔さが求められる場面(食事前、トイレ使用後など) ・家を出る時や寝る前 ・ストレスの多い状況など |
強迫性障害の診断基準
強迫性障害の診断には、主に以下の基準が用いられます。
- 強迫観念または強迫行為、あるいはその両方がある
- 症状により時間の浪費や日常生活への支障がある
- 他の精神疾患の影響ではないなど
全般性不安障害(全般不安症)
全般性不安障害(全般不安症/Generalised Anxiety Disorder:GAD)は、はっきりした原因がないのに、漠然と日常生活のさまざまな事柄に対して過度の心配や不安を感じ、それをコントロールすることが難しい状態が続く病気です。
特定の事柄ではなく、自分の将来、家族、健康のことなどあらゆることに対して慢性的な不安を抱えているため、普通の生活を送ることが困難になってしまいます。
主な症状 | 症状が起こるきっかけやタイミング |
---|---|
・慢性的な過度の心配や不安 ・落ち着きのなさ、緊張感 ・疲れやすさ ・集中力の低下 ・筋肉の緊張 ・不眠 ・めまい ・肩こり ・イライラ感 ・消化器症状(胃痛、下痢など) | ・日常的な出来事(仕事、学業、家族の健康、ニュースや社会情勢など)のすべてが不安の範囲 |
全般性不安障害の診断基準
全般性不安障害の主な診断基準は、以下の通りです。
- 複数の出来事や活動に関する過剰な不安と心配がほとんど毎日ある(6ヶ月以上)
- 不安や心配をコントロールすることが難しい
- 落ち着きのなさや緊張感、疲れやすい、集中困難、イライラ、筋肉の緊張、睡眠障害のうち3つ以上があるなど
限局性恐怖症
限局性恐怖症(Specific Phobia:SP)は、特定の対象や状況に対して強い恐怖や不安を感じる病気です。
限局性恐怖症の種類は多岐にわたり、日常でもよく耳にする限局性恐怖症としては「高所恐怖症」「閉所恐怖症」などがあります。
恐怖を引き起こす対象を「恐怖刺激」といい、代表的なものは以下の通りです。
- 動物型(蜘蛛、犬、ヘビなど特定の動物)
- 自然環境型(高所、雷、嵐、水など)
- 血液・注射・負傷型(血を見る、注射針、点滴などの医療行為など)
- 状況型(閉所、飛行機、エレベーター、暗闇など)
- その他(窒息、嘔吐、疾病、試験、大きな音など)
恐怖を感じる対象や環境によっては、日常生活に大きく影響しないケースもあります。ヘビ恐怖症の場合でも、都会に住んでいればヘビに遭遇することはほぼありません。
一方、例えば飛行機恐怖症は旅行や仕事など外出の機会が制限されるなど、日常生活や仕事に支障が出てしまうこともあります。
主な症状 | 症状が起こるきっかけやタイミング |
---|---|
・特定の対象や状況への強い恐怖や不安 ・恐怖対象との遭遇時のパニック発作 ・恐怖対象の回避行動 | ・恐怖の対象や状況に直面したとき、遭遇する可能性がある場面 ・恐怖対象に関する映像や写真を見たとき |
限局性恐怖症の診断基準
限局性恐怖症の診断基準には、主に以下が挙げられます。
- 特定の対象や状況に対する強い恐怖や不安(6ヶ月以上)
- 恐怖の対象を避けるようになる
- 実際の危険と釣り合っていないほど恐れる
- 重大な苦痛がある、もしくは日常生活に大きな支障があるなど
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
心的外傷後ストレス障害(Post-Traumatic Stress Disorder:PTSD)は、過去に経験した恐怖がよみがえり(フラッシュバック)恐怖を感じ続けてしまう病気です。
生命を脅かすような出来事や深刻な怪我、虐待、いじめ、性的暴力などの強いトラウマ体験の後に発症します。地震や津波などの自然災害もPTSD発症の原因です。
主な症状 | 症状が起こるきっかけやタイミング |
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・侵入症状(望まない記憶のフラッシュバック、悪夢) ・トラウマを思い出される場所や事柄の回避 ・興味の喪失や抑うつ ・興奮やイライラ、攻撃性 ・眠ったり、集中したりするのが困難になる ・自分の反応をコントロールするのが難しくなる | ・トラウマ体験を想起させる状況、場所や人物との遭遇 ・トラウマを連想させる音や匂い、ニュースや映像を見たときなど |
心的外傷後ストレス障害の診断基準
心的外傷後ストレス障害の主な診断基準は以下の通りです。
- 生命の危険がある出来事を体験、もしくは目撃した
- 出来事の後、フラッシュバックや悪夢が繰り返されている
- トラウマを連想させる事柄の回避がある
- 睡眠障害やイライラ、集中困難などの症状がある
- 1ヶ月以上症状が続くなど
その他の不安障害
その他にも、以下のような不安障害があります。
物質・医薬品誘発性不安障害 (物質・医薬品誘発性不安症) |
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・薬物やアルコール、カフェインの使用や離脱によって起こる症状 |
選択性緘黙(場面緘黙) |
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・家庭などでは普通に話せるが、特定の状況や人に対して話すことができない状態 ・子ども時代に発症することが多いが、稀に成人になってから発症することもある |
分離不安障害 |
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・愛着対象(親や養育者など)から離れることに対して、過度の不安や恐怖を感じる病気 ・子どもに多く見られるが、成人でも発症する |
不安障害の原因

不安障害の正確な原因は完全には解明されていませんが、以下のような複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
- 大きなライフイベント(大切な人やペットの喪失、家族や友人との争い、経済危機など)
- 環境的なストレス
- 精神的な気質
- 体の状態(病気や薬の使用)
- 脳内神経伝達物質(ノルアドレナリン、セロトニンなど)の分泌異常
- 遺伝的要因
すぐにではなく、原因となる出来事や状況から数年経ってから発症することもあり、原因がわからないケースもあります。
不安障害の治療
不安障害の治療は、不安を根本的に取り除くことではなく、日常生活への支障をきたすさまざまな症状を緩和させることを目的として行います。
治療法は主に「心理療法(認知行動療法など)」と「薬物療法(抗不安薬や抗うつ薬)」の2つです。
また、磁気を利用して脳に電気刺激を与える「TMS治療(磁気刺激療法)」が行われることもあります。
治療法や治療方針については医師と患者さんとで相談しながら決めていくことが基本ですので、疑問や希望があればなんでも伝えて、納得したうえで焦らずに治療を進めていきましょう。
不安障害のセルフチェック

セルフチェックは病院での診断の代わりにはなりませんが、自分の状態を客観的に把握し医師に相談するきっかけにできます。
下記の記事で不安障害のセルフチェックができるので、気になる方は一度チェックしてみましょう。
ただし、不安障害の正確な診断のためには医師の診断が欠かせません。身体的な病気や薬によって不安が起こることもあり、他の病気が隠れている可能性もあります。
症状を悪化させず、つらい症状を緩和するためにも、気になる症状があれば早めにクリニックで相談しましょう。
つらい不安や恐怖はクリニックで治療できる
不安障害は、日常生活に大きく支障をきたしてしまうこともある病気です。不安障害にはさまざまな種類(分類)があり、それぞれ症状は異なります。
自分の症状に合った適切な治療を受けるためにも、一度早いうちにクリニックで医師やカウンセラーと相談してみることをおすすめします。
「不安や恐怖を抱えている」「自分や身近な人の症状が不安障害に該当するかどうか気になっている」という方は、オンライン診療・オンラインカウンセリングの『かもみーる』にご相談ください。
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つらい不安や恐怖は、治療することで改善可能です。一人で悩みを抱え込まず、安心してご相談ください。
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