パニック障害とは?主な症状や原因、診断方法・治療法などを紹介

更新日 2025年04月17日

パニック障害
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パニック障害は、日常生活のなかで身体的な発作や恐怖・不安などを伴う精神疾患で、予兆がなく突発的な症状がみられる特徴があります。

一度パニック障害が発症すると、次の発作や発症した場所への恐怖心からほかの症状が持続する可能性があるため、早めの対処・治療が大切です。

では具体的に、パニック障害の症状や原因にはどのようなものがあるのでしょうか。

この記事では、パニック障害の症状・原因や、診断方法・治療法などをわかりやすく紹介します。

原因不明の不安・恐怖心を感じたことがある人や、一定の場所で動悸や呼吸困難などの症状を伴うケースがある人は参考にしてください。

パニック障害はどんな病気?

パニック障害のイメージ

パニック障害は、突然訪れる恐怖心や強い不安感によって動悸や呼吸困難などのパニック症状が現れる精神疾患で、日常生活に支障をきたす恐れがあります。

パニック障害では、以下のようなパニック症状がみられます。

  • 動悸や息切れ・息苦しさ
  • 冷や汗をかく
  • 身体や手足が震える
  • 胸の痛みや不快感
  • 吐き気や胃の不快感
  • めまい・ふらつき
  • 寒気やほてり
  • 現実味がない、自分が自分ではないような感覚
  • 自分の感情をコントロールできないことへの恐怖
  • このまま死んでしまうかもという恐怖

激しい症状が現れても数分で治まり、原因となる疾患がないのがパニック障害の特徴です。

症状によって内科や呼吸器科を受診する方もいますが、パニック障害が原因である場合は、検査をしても身体的な疾患が見つからないケースが多いです。

反対に、パニック障害のような症状が高血圧や糖尿病など他の疾患から現れている場合もあるため、その可能性も視野に入れて検査を行います。

日常的に混雑した場所やエレベーター・エスカレーターなどのすぐに逃げられない場所にいることが多い人は発作を伴いやすく、生活に支障をきたすケースも少なくありません。

パニック障害の3大症状

パニック障害の症状イメージ

パニック障害には、大きく分けて「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」の3つの症状があります。

パニック発作

先ほど紹介したような動悸や呼吸困難、冷や汗、震えなどの症状が突然起こることをパニック発作といい、リラックスした状態の時にも起こる可能性があります。

前触れもなく唐突に発症するケースが多く、数分〜数十分で治まりますが、数時間続くケースもあります。

また、人によって頻度は違えど一日に数回や年に2〜3回などと発作を繰り返すのが特徴です。

パニック発作自体が命に危険を及ぼすわけではありませんが、このまま死んでしまうのではないか、自分が自分でなくなってしまうなどの恐怖を感じることがあります。

パニック発作はパニック障害がない人にもみられるケースがあり、閉所恐怖症の人が狭いところにいたり高所恐怖症の人が高いところにいたりする場合にも引き起こされる発作です。

予期不安

予期不安とは、パニック発作を起こした経験のある人が、再び同じ状態になったらどうしようという恐怖を感じる症状です。

パニック発作がない時も不安感が払拭されず、怯えた状態が持続します。

また同じ発作を起こすことを恐れる以外に、次はさらに酷い発作が起きるかも、今度こそ死んでしまうかもしれない、などの恐怖を感じるケースもあります。

広場恐怖

広場恐怖とは、過去に発作を起こした環境や他人に助けを得られないような場所を恐れる状態です。

ここは発作が起きそうな場所だ、人に助けてもらえなかったらどうしよう、発作が出たら恥をかくかもしれない、などの不安を感じる場所を避けるようになり、症状が強くなると日常生活に影響を及ぼします。

広場恐怖という名称ですが、広場に限らず映画館・飛行機・電車・トンネル・人ごみや行列などさまざまな場面に対して拒否反応を示します。

恐怖を感じる場所や状況が増えると、一人で外出するのが困難になったり引きこもり気味になったりする恐れがあり、うつ病につながるケースも少なくありません。

パニック障害の原因

パニック障害の原因イメージ

パニック障害は、以下の要因によって引き起こされるとされています。

なお、パニック障害を引き起こす原因について詳しく知りたい場合は、こちらの記事も合わせてご覧ください。

パニック障害の原因は?ストレスとの関係や発症・発作のきっかけについて解説

遺伝

パニック障害には遺伝性があり、家族にパニック障害やその他の不安障害をもつ方がいる場合は発症のリスクが高い傾向があるとされています。

親にパニック障害があると、その子どもも同じくパニック障害になるリスクが高まるとされていますが、詳しいメカニズムは明確にはわかっていません。

現時点では正確な遺伝子は特定されていないものの、複数の遺伝的要因がパニック障害の遺伝に関与していると考えられています。

心的外傷(トラウマ)

虐待や事件に巻き込まれた経験、大切な人との離別などのトラウマがあると、その経験が恐怖心や不安感と結びつきパニック障害を引き起こす可能性があります。

トラウマの原因となる場所や似たような状況下におかれると、その時の経験がフラッシュバックすることで発作を伴う恐れがあります。

事件や事故などの大きな出来事ではなくても、幼少期に受けた母親の過保護・過干渉や愛情不足などが要因になる可能性もあり、離別や死別に関しては、本人が乗り越えたつもりでもトラウマになっているケースは少なくありません。

また日常生活における些細なストレスでも、積み重なることで不安や緊張を感じやすくなり、パニック障害につながる場合があるため注意が必要です。

本人の性格

性格はパニック障害と密接に関わっているわけではありませんが、完璧主義で他人の目を必要以上に気にしてしまう人や、ネガティブ思考で不安を感じやすい人はパニック障害になりやすいとされています。

完璧主義で責任感が強い人は、他人の目から見ると心配事や否定的な思考になることがないように思われがちですが、マイナスな評価をされることを恐れ、不満やストレスを溜めこんでしまう傾向があります。

またネガティブ思考の人は、物事の準備を慎重に行う堅実さがあるにも関わらず、その良さが伝わりにくいケースが多いです。

これらの特徴は決して悪いものではありませんが、ストレスによる影響を感じやすくパニック障害を引き起こす要因になるとされています。

パニック障害になりやすい人の特徴については、こちらの記事でも具体的に紹介しているため参考にして下さい。

パニック障害になりやすい人の特徴|性格・年代・環境や遺伝など徹底解説!セルフチェックも

パニック障害の診断方法

診断方法のイメージ

動悸やめまいといった症状は、パニック障害以外の病気でも見られることのある症状です。

詳しい原因を確かめるために、クリニックでは「問診」「血液検査・尿検査」「心電図」「胸部レントゲン」といった検査を行います。

問診

問診では、パニック障害の代表的な症状にいくつ当てはまるかや、それが繰り返されていたかなどを確認します。

基本的には、『パニック発作の診断基準』に基づいて、4つ以上の項目と同じ症状が突然現れ、10分以内に強さがピークに達するかが判断の基準にされるケースが多いです。

また精神的・肉体的な自覚症状に加えて、症状の激しさや出現頻度、日常生活にどれほどのレベルで支障をきたしているかなどを評価します。

血液検査・尿検査

症状がパニック障害によるものなのか、そうではないのかを判断するために、血液検査や尿検査が必要になるケースがあります。

例えば、糖尿病やバセドウ病、甲状腺機能低下症などの疾患があると、動悸や不安感などのパニック障害と似た症状を伴う可能性があります。

パニック障害と診断するためには、血液検査や尿検査によってほかに異常がないのを確認することが重要です。

心電図

心電図は、胸の痛みや動悸などの症状がパニック障害によるものなのかを判断するために行います。

唐突な胸の痛みは、パニック障害ではなく心臓や肺に異常が現れていることが原因である恐れがあります。

そのため血液検査や尿検査と同様に、症状の原因となる疾患があるかの確認のために重要な検査です。

胸部レントゲン

胸部レントゲンは、心臓のほかに肺に異常がないかを調べるために行います。

症状がパニック障害によるものではなく、肺の炎症や悪性腫瘍によるものであるケースもあるため、胸部レントゲンでこれらの異常が見つかった場合は呼吸器科や循環器科の受診が必要になります。

パニック障害で引き起こされる症状は、検査を受けずにパニック障害と断定することは難しいため、潜んでいる他の疾患を発見するためにも早めに医療機関を受診しましょう。

パニック障害の治療法

治療法のイメージ

パニック障害の治療法には、以下の種類があります。

薬物療法

パニック障害の薬物療法では、パニック発作を抑えて予期不安を軽減するために、抗不安薬や抗うつ薬などが使用されます。

抗不安薬には、パニック発作における不安や筋肉の強張りを緩和する効果があり、主にベンゾジアゼピン系と呼ばれるものが用いられます。

即効性があるため突発的な発作に対する頓服として効果的ですが、副作用として眠気・ふらつき・依存性があるため、長期間の使用は避けるのが望ましいです。

抗うつ薬は、幸せホルモンや安心ホルモンとも呼ばれるセロトニンを増加させる役割を果たし、予期不安の軽減に効果を発揮します。

神経伝達物質のバランスを整えることで不安感やうつ症状を緩和する働きがありますが、悪心・めまい・眠気などの副作用を伴う可能性があるため、医師とよく相談して使用することが大切です。

パニック障害は治療せずに放置するとどんどん悪化していくため、予期不安や広場恐怖が軽度の時点で治療を開始することが重要になります。

認知行動療法

認知行動療法は、認知療法と行動療法を合わせた治療法を指します。

認知療法は、パニック障害が起こった場合に感じる不安に対して違う考え方をできるように修正する方法です。

カウンセラーと相談することで自分が偏った思考をもっていることを理解し、物事の捉え方や考え方を変えることで恐怖心やマイナスな思考にならない工夫をします。

例えば、死ぬかもしれない・呼吸困難になるかもしれないという恐怖に対しては、「発作はずっと続くわけではなく、時間が経過すれば治る」と捉えることで不安感を軽減できる考え方に再構築します。

行動療法は、不安を感じる場所や環境にあえて身を置くことで少しずつ心身の適応を図る方法です。

例えば人の多いデパートに行くと発作が起こる場合には、まずはデパートの前まで足を運び、様子をみながら少しずつ近づく・入口まで到着するなど段階を踏みながら慣れていきます。

軽い動悸や息切れがあっても、それがどんな感じか確認しながら身体を慣れさせ、一つずつステップをクリアしていきます。

カウンセラーからのアドバイスをもとに、自分で自分を治療するつもりで少しずつ症状の改善を目指すことが大切です。

パニック障害と間違えやすい疾患

間違えやすい疾患のイメージ

パニック障害は、症状の特徴から以下のような身体疾患や精神疾患と間違われやすいとされています。

  • 身体疾患
    • 甲状腺機能障害
    • インスリノーマ
    • 褐色細胞腫
    • 不整脈
    • 慢性呼吸器疾患
  • 精神疾患
    • 社交不安障害
    • 強迫性障害
    • 分離不安障害
    • PTSD
    • うつ病

パニック障害には、動悸や息切れなどの症状を伴う身体疾患や、強い不安感や恐怖を感じる精神疾患と似た症状があります。

適切な治療を受けるためには、詳しい検査や医師による診断が必要です。

パニック障害ではなく他の疾患が原因で症状が現れている可能性も懸念されるため、不安な点は医師に直接相談しましょう。

パニック障害かも?と思ったら相談してみよう

パニック障害の症状や原因、治療法について紹介しました。

パニック障害の治療には自身の積極性が必要ですが、周囲の理解やサポートを得ながら一人で抱え込まずに対処することも大切です。

家族や友人だけではなく、医師や臨床心理士、公認心理師などの専門家の力も借りながら回復を目指しましょう。

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