発達障害の子どもが服を着たがらないのはなぜ?原因や対処法を紹介

更新日 2024年12月12日

児童精神科, 発達障害
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発達障害の子どもは、さまざまな理由から服を着たがらない場合があり、朝の忙しい時間に子どもの着替えに時間がかかってお困りの保護者の方も多いでしょう。

発達障害の子どもが服を着たがらないのは単なるわがままや性格の問題ではなく、特性による可能性が大きいため、それを理解したうえで適切に対処・工夫することが大切です。

では実際、どのように対応するのが良いのでしょうか。

この記事では、発達障害の子どもが服を着たがらない原因や対処法、注意点などを紹介します。

子どもが服を着たがらないことにお悩みの方や、同じ服を着たがる、自分で服を着れないなどの心配事がある方は参考にしてください。

また、子どもの発達障害について詳しく知りたい場合はこちらの記事も合わせてご覧ください。

子どもの発達障害とは?早く気付くポイントやサポート方法について解説

発達障害の子どもが服を着たがらないのはなぜ?

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発達障害の子どもが服を着たがらないのには、以下の理由があると考えられています。

ボディイメージが弱いため

発達障害の子どもは、ボディイメージが弱いため服を着るのが苦手だと感じる傾向があります。

ボディイメージとは、体の動かし方や力の入り具合などのイメージのことで、日常動作や運動、姿勢を支えるために必要な感覚です。

特に自閉スペクトラム症(ASD)を有する子どもは、このボディイメージが弱いことで服を着るうえでの手足の操作や位置の把握に困難が生じたり、うまく姿勢を保つことが難しかったりしやすいとされています。

感覚過敏があるため

発達障害の子どもは、感覚過敏があることで服を着たくないと感じるケースがあります。

感覚過敏とは五感の刺激を過剰に感じる状態のことで、発達障害の子どもに現れやすい特徴があります。

触覚や嗅覚に感覚過敏がある発達障害の子どもの場合、素材特有の肌触りや買ったばかりの衣類の独特なにおいが原因で服を着ることを嫌がるケースが多いです。

強いこだわりがあるため

強いこだわりがある発達障害の子どもの場合、気に入らない服を着たがらないケースが多いです。

特にASDの場合、こだわりの強さは診断基準になるほど典型的な症状で、特定のものに対して強い執着があったりその他のものを嫌ったりする傾向があります。

ASDの子どもが一部の服に執着するのには、服の色やデザインにこだわりがある、同じ服を着ることで安心するなどの理由が挙げられます。

発達障害の子どもによくみられる着替えの問題

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発達障害の子どもの着替えでは、他にも以下のような問題が生じるケースがあります。

服のセンスに問題が生じる

発達障害の子どもでは、ファッションセンスに問題が生じるケースがあります。

感覚がアンバランスな傾向がある発達障害では、衣類を自分で選ぶことに困難を感じる場合があり、色合わせやバランスを考慮して服を選べない可能性があります。

その結果、自分で服を選ぶとちぐはぐなデザインのものを組み合わせてしまいがちです。

服を自分で着れない

発達障害の子どもは、自分で服を着られない場合があります。

原因としては、着替えている途中でテレビや他のことなどに注意がそれたり、過去に上手く着れなかった経験からもう自分で着ないと思ってしまったりすることが挙げられます。

注意力の欠如によって着替えがスムーズにいかない場合は、仕切りなどで着替えスペースを作ってあげるのが効果的です。

靴や靴下を履けない・嫌がる

発達障害の子どもは、靴や靴下をうまく履けなかったり、履くことを嫌がったりするケースがあります。

靴や靴下を履く場合、中に隠れた指を動かしたりかかとの部分にかかとを合わせたりする必要があり、発達障害の場合はそのイメージが難しい場合があります。

また、これらの着用を嫌がる原因としては、履いている感覚が苦手、左右の区別がつかない、体幹が弱いことで立ったまま上手く履けないなどの理由が多いです。

ボタンやホックをはめられない

発達障害の子どもは、ボタンやホックをはめるのが苦手な場合があります。

注意欠如・多動症(ADHD)では、ものの形状や構造を把握するのが難しいと感じやすく、ボタンやホックを上手くはめられない傾向があります。

また注意力が散漫になる特性があるため、手先の作業に集中できないケースも多いです。

自分で着る服をうまく選べない

発達障害の子どもは、自分で着る服をうまく選べないケースがあります。

気候に合わせて半袖・長袖を選択できなかったり、自分で選ぶように促すと同じ服ばかり選んでしまったりする場合が多いです。

その背景には、臨機応変な対応を苦手とする特性やこだわりの強さ、同じ服を着ると安心するなどの理由があります。

発達障害の子どもが服を着たがらない場合の対処法

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発達障害の子どもが服を着たがらない場合は、以下の対処法を試みましょう。

運動療育を行う

発達障害の子どもが上手く服を着られるようにするためには、運動療育によってボディイメージを育てることが大切です。

運動療育は、運動面で不器用さがある発達障害や学習障害の子どもの身体的・精神的な発達促進を目的として行われます。

運動を通して身体の上手な動かし方を習得することで、手足の位置や姿勢のイメージがつかみやすくなり、着替えがスムーズにできるようになります。

服を着る動作を一緒に練習してあげる

自分で服を着られるようになることが重要ですが、サポートしながら練習することも大切です。

できる部分は子ども自身にやってもらい、難しい部分は手を貸したり教えてあげたりしながら少しずつ取り組みましょう。

服の裏表や前後ろが分からずに混乱する場合は、短い言葉で分かりやすく説明しながら一緒に確認したり、そばで実際に着替えることで見本を示したりすることも有効です。

分かりやすい言葉や方法で着方を教える

服を着る練習をする際は、分かりやすい言葉や方法で着方を教えることを意識しましょう。

発達障害の場合、言われてないことを察して行動に移すというのが難しい特性があるため、説明をする場合は短い言葉でその都度やることを指示することが大切です。

例えばシャツを着てねという指示の場合は、具体的にどうすればいいのか分からない可能性があるため、右腕・左腕を通してね、頭にかぶってねなどの順序を詳しく提示してあげましょう。

あらかじめルールを決めておく

その日の気候に合わせて服を変えられない場合の対処法には、あらかじめ着る服の基準を決めておくことがおすすめです。

季節感のない服を着る原因には、服を選べないほかに感覚鈍麻がある可能性があります。

感覚鈍麻は発達障害のなかでもASDをもつ子どもに多いとされていて、感覚過敏とは反対に、特定の刺激に対して感覚が鈍い状態を指します。

発達障害では、感覚鈍麻によって暑い・寒いを感じにくくなっていたり、気温に合わせた服装をイメージすることが苦手だったりすることで季節感のない服を着てしまうケースが多いです。

そのため、気温が何度以上なら半袖、何度以下なら長袖、さらに何度で上着を着る・上着を着ないなどの決まりを作っておくことで、着る本人も混乱せずにスムーズに服が選択できます。

決まった服をローテーションで着る

着られる服を数種類用意しておき、決まったローテーションで着用することで嫌がらずにスムーズに着替えることにつながります。

また着る服をあらかじめ決めておくことで、保護者の負担も軽減できます。

前日のうちに「明日はこの服を着ようね」と声掛けをするのも有効です。

同じ服を数枚買っておく

素材やデザインへのこだわりが強く、どうしても同じ服しか着ないケースでは、同じ服を複数買っておくのも有効です。

同じ服をいくつか用意しておけば、洗濯やうっかり汚してしまった場合にも対処できます。

成長に伴い着られなくなる可能性を考慮して、少し大きめのサイズも合わせて買っておくのもよいでしょう。

子どもと一緒に服を買いに行く

子どもと一緒に服を買いに行って、実際に選んでもらうのもおすすめです。

自分で自由に見つけることが難しく、どれがいいのか悩む様子がみられた場合は、デザインや肌触りなどを考慮して選べるように手伝ってあげましょう。

試着して大丈夫だった場合でも、いざ購入して着てみようとすると抵抗が生じるケースもあります。

触ったり腕だけ通したりすることで少しずつ慣らす方法や、周囲の大人が着られたら褒めてあげる方法を取り入れることで自信がつき、自分で着ようという意欲につながります。

イメージ図を目に見える形で提示する

身だしなみが整った状態について理解しやすいように、イメージ図を目に見える形で提示することも有効です。

服を着た場合の完成図や着る手順などを写真やイラストにすることで、自分で着るための練習にもなります。

特にASDの子どもは視覚からの情報を処理することに長けている特性があるため、言葉で説明するよりも効果的です。

イラストを見て服を選ぶ・手順通りに着る・鏡でチェックするなどの流れを繰り返して習慣づけましょう。

不快な要素を取り除く

感覚過敏がある子どもの場合は、不快の原因になる要素を取り除くことで着られる服が増える可能性があります。

例えば服のタグをすべて取ったり、縫い目の凹凸が食い込まない靴下を選んだりなどの工夫が挙げられます。

また、洋服を購入する際はできるかぎり試着して肌触りに不快感がないか確認することが大切です。

ゴワゴワ・チクチクした生地が苦手な場合は、肌着を活用して直接肌と接触するのを避けることで着られる服の選択肢が広がるケースもあります。

発達障害の子どもに服を着させる場合の注意点

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発達障害の子どもに服を着させる場合は、以下の点に注意しましょう。

無理矢理服を着させない

発達障害の子どもが服を着てくれない場合、無理矢理着替えさせるのは避けましょう。

服を着る行為が必要になるのは朝の忙しい時間であることが多いため、朝ご飯や他の準備に追われているお母さんにとっては無理に着替えさせたい場面があるかもしれません。

しかし、苦手な服を着ることでパニックになってしまう可能性があるため、強引に着させることはやめましょう。

嫌がらない服をいくつか準備しておいたり、時間があるときに少しずつ練習して着られるようにしたりするなどの対処が必要です。

変わった服を着たがっても否定しない

子どもが着てほしい服を拒否したり、変わった服を着たがったりしても否定しないことが大切です。

同じ服ばかり着ていた子どもが他の服に興味を示したと思ったら、年相応ではない・TPOに合っていないケースがあるかもしれません。

「どうしてそんなものが良いの?」と思ってもそれを口に出さず、自分で選んだことや興味を持ったことを喜びましょう。

焦っていろいろな服を提示しない

子どもが同じ服しか着ないからといって、たまに違う服を着ようとした場合に他の服も色々持ち出して強引に勧めるのは避けましょう。

着たことがない服に興味を示すことで、あれもこれも今なら着てくれるかもと期待する気持ちが現れるかもしれませんが、次々に着たくない服を提示されると子どもの気持ちに負担がかかってしまいます。

いつもと違う服に興味を示したということは、時間が経てばまた他の服にも自然と興味をもつ可能性があります。

子どもの成長を感じつつ、いろいろな服を着てみたいと思ってもらえるまで焦らず見守ることが大切です。

上手に着られたら褒める

服が上手に着られたら、できたことを必ず褒めてあげましょう。

褒められることで自己肯定感が高まり、習慣づけることにも役立ちます。

褒める際は、初めて一人で着られたね、ズボンを上手に履けたね、など具体的な言葉で褒めてあげるのが効果的です。

服を嫌がる子どもは練習や見本を通してサポートしよう

発達障害の子どもが服を着たがらない理由や対処法を紹介しました。

発達障害では人によって特性が異なるため、服を着たがらない理由もさまざまです。

子どもの特性を理解して、寄り添った方法で焦らず練習したり慣らしていったりすることが大切です。

医師監修のオンラインカウンセリングサービス『かもみーる』では、発達障害のお子さんをもつお母さん・お父さんからの悩み相談を受け付けています。

お子さんの特性に合わせた改善方法や、保護者の方の悩みに合わせた対策法を一緒に模索致します。

発達障害や児童精神科の分野に精通している医師、臨床心理士・公認心理師などの有資格者のみが在籍しているため、服を着たがらない以外にもお困りのことがあればぜひご利用ください。

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