発達障害の小学生が口に物を入れるのはなぜ?原因や対処法、改善策などを紹介
更新日 2025年03月11日
児童精神科
赤ちゃんは知らないものを口に入れて情報を得るケースが多いですが、小学生になってからも口に物を入れてしまう行為が見られることがあります。
単なるストレスや習慣づいた癖が原因である場合もありますが、発達障害によって引き起こされている可能性もゼロではありません。
このような癖は周囲の目が気になったり、危険な物を飲み込んでしまったりするリスクにつながるため、早めに対処することが大切です。
では実際、小学生の子どもが口に物を入れるのにはどんな理由や改善策があるのでしょうか。
この記事では、発達障害の子どもが食べ物以外のものを口に入れる原因や対処法などを紹介します。
噛み癖・舐め癖が直らない発達障害のお子さんに不安を感じている人や、どう対処したらいいのか悩んでいる人は参考にしてください。
なお、子どもの発達障害に早く気付くポイントやサポート方法についてはこちらの記事も合わせてご覧ください。
▶子どもの発達障害とは?早く気付くポイントやサポート方法について解説
発達障害の子どもが口に物を入れる理由

発達障害の子どもが口に物を入れるのには、以下の理由や原因があります。
感覚刺激を求めるため
赤ちゃんは、物を口に入れることで確認したり感覚刺激を満たしたりするケースが多くみられますが、発達障害の小学生にも同じ行動がみられる場合があります。
発達障害には感覚探求と呼ばれる特性があり、常に新しい刺激を求めたり、感覚を刺激する行為を好んだりする傾向があります。
そのため、この特徴がある子どもは物を口に入れることで欲求を満たしているケースが多いです。
また発達障害の子どもには、他人とコミュニケーションを取ることや相手の考え・空気を読むことを苦手とする子、指先が不器用な子が多い傾向があります。
これらの困難を感じている子どもは、人とのやりとりや細かい手の動きを用いて楽しむ方法よりも、口に物を入れるといった感覚的な刺激を好むことがあります。
発達の遅れがあるため
発達障害の子どもは他の子よりも発達のスピードが緩やかなケースが多いため、それが口に物を入れる行為につながっている可能性があります。
発達が遅れる傾向がある発達障害の子どもは同い年の子よりも赤ちゃんの感覚に近く、赤ちゃんが口に物を入れて確認するのと同様の行動をしてしまうケースがあります。
口に物を入れることが問題というよりは、幼い年齢の子と同じ発達段階であるという認識を持つことが大切です。
ストレスを発散するため
子どもは、ストレスを発散するために口に物を入れる場合があります。
特に小学生になったばっかりの年齢の子どもは、環境の変化がストレスになることで爪噛みや指しゃぶり、口に物を入れるなどの行為がみられるケースが多いです。
子どもにこれらの癖がみられる場合は、何か嫌なことはないか、ストレスになっているものは何か探ってみることが大切です。
噛み癖があるため
小学生の子どもが物を噛むのは、赤ちゃんの頃の噛み癖が抜けていないことが原因である可能性があります。
赤ちゃんは物を口で認識したり、歯の生えかけのむず痒さから物を噛んだりすることが多いですが、成長に伴ってその必要はなくなっていくことが一般的です。
しかし、小学校に上がる年齢になってもその癖が直らないと、鉛筆の後ろを噛んだりハンカチを口に入れたりするようになる可能性があります。
また、脳が刺激を必要としていることで無意識のうちに物を噛んでいるケースもあります。
周りの気を引きたいため
小学生の子どもは、周りの気を引きたいと感じることで口に物を入れる場合があります。
寂しさや注目されたい欲求があると、変わった行動をすることで構ってもらいたい心理が働き、それが口に物を入れる行動として現れている可能性があります。
両親や友達に自分を見てほしいと感じている時に、何でも口に入れてみたらみんなが反応してくれたからついやってしまう、というケースもあるでしょう。
子どもは他人の気を引くために突拍子もないことをする場合も多く、それには何かしらの原因が隠れているため、一度よく向き合ってみることが大切です。
異食症の可能性があるため
発達障害の子どもが口に物を入れるのは、精神の遅滞や知的障害による異食症が原因である可能性があります。
異食症は、食べ物以外のもの・食べてはいけないものを日常的に食べようとする摂食障害の一種です。
小児の場合は、食べられる・食べられない物の判断ができない、極度の栄養不足や食事不足、保護者からの愛情不足などが引き金となって発症するケースがあります。
原因によって対処法が異なりますが、もし子どもの異食行為を発見した場合は、声を荒げたりパニックになったりせず、子どもの目線に合わせて食べ物ではないことを諭すことが必要です。
例えば、「それは食べ物じゃなくて、こうやって遊ぶおもちゃなんだよ」と声をかけ、食べることから遊ぶことへ意識を誘導しましょう。
赤ちゃんが口に物を入れるのは正常?

赤ちゃんの場合は以下の理由から口に物を入れることがあり、これはほとんどの子どもが経験する過程であるため問題ありません。
しかし、同じ状態が小学生になっても変わらない場合は注意しましょう。
口で物の形や感触を確認している
赤ちゃんは、口に物を入れることで形や感触を認識しています。
赤ちゃんは視覚や触覚が未熟ですが、母乳やミルクを飲むために口内が発達しており、歯茎や舌を使って物の情報を得る本能があります。
成長につれて他の感覚が発達することで口に物を入れる行為は減少していきますが、3歳頃を過ぎても続く場合は、一度専門機関に相談してみましょう。
好奇心が強い
赤ちゃんには未知のものが多いため、好奇心から口に物を入れやすいです。
特にカラフル・キラキラなどの見た目に特徴があるものや、大人がよく触れているものには強い興味を示しやすく、どんなものか確認するために口に入れるケースが多くなります。
また動くものや床に落ちているものなど、赤ちゃんの視界に入って好奇心を刺激するものが気になりやすいです。
一方で発達障害の小学生の場合は、鉛筆や消しゴムなどのよく知っている物でも口に入れる特徴があります。
歯にむず痒さがある
歯が生え始める年齢の赤ちゃんは、むず痒さを感じることで口に物を入れる場合があります。
このケースでは、ただ口に含むというよりも、物を噛むようなしぐさがみられる場合が多いです。
一般的には歯が生えそろっているはずの小学生でこのような行為がみられる場合は、歯のむず痒さではない他の原因が考えられるため、早めに医療機関を受診しましょう。
小学生の子どもが口に物を入れる場合の対処法

小学生の子どもが口に物を入れるのには、理由があるケースが多いです。
やめさせてあげることが理想ですが、無理矢理やめることを命令するのではなく、以下の方法で対処しましょう。
危険なものは手が届かない場所に置く
口に入れると危険な物は、お子さんの手が届かないところに置くことが大切です。
赤ちゃんに限らず、発達障害の子どものなかにも何でも口に入れる子がいるため、口に入れてはいけないものは届かない場所や開けられないタンス・棚などに保管しましょう。
万が一電池やたばこなどを飲み込んでしまうと、健康に重大な影響を及ぼす可能性や、生命を脅かすリスクがあります。
特に発達障害の場合は、どんな物を口に入れるのか予測が出来ないケースも多いため、赤ちゃん・小学生に関わらず保護者の方が安全な環境を整えましょう。
噛む欲求を満たす方法を取り入れる
発達障害のお子さんが物を口に入れたがる・噛みたがる場合は、噛む欲求を満たす他の方法を取り入れるのがおすすめです。
ガムは手軽に取り入れられる工夫として有効ですが、飲み込む癖がつかないように注意しましょう。
そのほか、フランスパンや歯ごたえのある野菜スティックなどの食べ物をおやつの代わりにする方法もあります。
代わりの遊びで満足感を与える
感覚刺激を求めることで口に物を入れる場合は、代わりの遊び方を提案することで改善が期待できます。
例えば砂場遊びや粘土遊びなど、触れる刺激や身体の感覚への刺激がある遊び方を取り入れると、口で刺激を求める必要がなくなります。
この方法は感覚統合療法といい、子どもの感覚を処理する能力を強化する効果が期待できますが、専門家が指導するケースが多いです。
しかし例に挙げたような簡単な方法であれば家庭でも取り入れられ、子どもが楽しみながら感覚刺激を養えるため、医師やカウンセラーと相談してお子さんに合った方法を模索してみましょう。
子どもと話し合いをする
口に物を入れるのには子どもなりの理由があるケースが多いため、一度お子さんと向き合って話し合うことが必要です。
一例として、「両親に構ってほしくて始めたら自分を見てくれるようになったためやめられなくなったから」「友達の前でやると注目の的になれるから」などの理由が隠れている可能性があります。
小学生くらいの年齢になると、自分がどうしてこの行為をしてしまうのかを自覚できるケースも少なくないため、たずねてみると意外と素直に教えてくれる場合があります。
話し合いをするときは、決して否定をせず、「そうだったんだね」「それはそう感じるよね」など、相手の気持ちを受け入れる反応を心掛けましょう。
子どもとのスキンシップを増やす
お子さんが愛情不足や寂しさから口に物を入れてしまう場合は、スキンシップを増やすことで愛着形成を行いましょう。
普段から十分触れ合っているつもりでも、不安になりやすい発達障害の子どもはもっとスキンシップを取りたいと感じている可能性があります。
お子さんからのスキンシップに応えるだけではなく、保護者の方から積極的に関わることが大切です。
また行動に加えて、嬉しい・楽しいなどの言葉で表現することで、愛されている安心感を得られて心が落ち着くでしょう。
子どものストレスになる環境を改善する
ストレスから口に物を入れてしまうお子さんの場合は、ストレスを軽減できる環境を整えてあげることが大切です。
発達障害では感覚過敏の特性がみられるケースがあるため、家族が普通に過ごしている環境でもお子さんにとっては苦痛を感じる環境である可能性があります。
ストレスの原因となる音や光などに配慮した空間を作り、お子さんがリラックスして過ごせる状態を保つことで、行動の改善が期待できます。
学校と連携して対応する
日常的なサポートが必要になる場合は、学校側にも協力をお願いしましょう。
学業に差し支えない範囲で感覚刺激の道具の使用を許可してもらったり、休み時間に専用のアイテムを使用する時間を設けてもらったりする工夫が必要なケースがあります。
発達障害のお子さんをもつ保護者の方には、お子さんの学校での様子や行動が気になる人も多いでしょう。
学校での出来事を伝達する協力や、快適に生活できる環境づくりなどのサポートを受けながらお子さんを支えていくことが大切です。
専門の機関に相談する
保護者だけでは改善が困難だと考えられる場合は、発達障害に詳しい医療機関や保健センター、市の子育て相談窓口などを利用しましょう。
専門家は発達障害の特性について深く理解しており、一般の方とは異なる専門的な視点で状況を把握できるため、より効果的な対策を提案できます。
根本的な改善策についてのアドバイスだけではなく、おすすめの感覚刺激アイテムや効果的な使い方などを提案してもらえるでしょう。
一人で悩みを抱えることで保護者の方の心の負担も大きくなってしまうため、無理をせず専門家を頼ることが大切です。
口に物を入れる子どもには、特性に合わせた対処が大切
子どもが口に物を入れるのは、成長過程でみられるごく自然な行動ですが、小学生になる年齢で改善されない場合は、発達障害が原因である可能性があります。
何でも口に入れてしまう様子をみると、心配になる保護者の方も多いと思いますが、原因を明確にして、焦らず改善していくことが大切です。
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