うつ病は脳波検査で診断できる?検査でわかることや実施する意義について解説

更新日 2025年03月11日

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うつ病は一日中気分が落ち込む精神症状に加え、疲労感や睡眠障害などの身体症状が現れる気分障害です。

うつ病は基本的に診断基準を用いた問診や採血検査・画像検査・心理検査などにより診断を行いますが、脳波検査を用いるケースもあります。

この記事では、うつ病の診断で脳波検査を行う意義について詳しく解説します。

うつ病の症状や診断方法、典型的な脳波パターンなどもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

うつ病とは

うつ病とは

うつ病は、一日中気分が落ち込んだり物事に関する興味や関心が薄れたりする精神症状疲れやすかったり食欲がなくなったりする身体症状などが現れる気分障害の一種です。

気分障害はうつ病性障害と双極性障害(躁うつ病)に分類されますが、一般的にいわれているうつ病はうつ病性障害の中の『大うつ病性障害』を指します。

健康的な人でも憂うつな気分になることがありますが、うつ病の場合は気分が落ち込むような明確な原因が見当たらない、またはその原因が解決しても気分が回復しないといった特徴があります。

症状が悪化すると日常生活に支障をきたすようになるため、医療機関での専門的な治療が必要です。

ここではうつ病の主な症状や原因について解説します。

うつ病の主な症状

うつ病には精神症状と身体症状があり、具体的には以下のような症状が挙げられます。

精神症状身体症状
• 抑うつ気分
• 気力がわかない
• 何事にも興味がわかない
• 集中できない
• 不安な気持ちで落ち着かない
• ネガティブな感情になる
• 疲労感・倦怠感
• 睡眠障害(不眠・過眠)
• 頭痛
• 肩こり
• めまい
• 動悸
• 食欲不振
• 味覚障害
• 性欲減退
• 生理不順

うつ病は気分が落ち込む抑うつ気分が主な症状ですが、ほかにも上記のようにさまざまな症状がみられます。

精神症状よりも前に身体症状が現れることもあるため、少しでも体の不調を感じたら注意が必要です。

うつ病の原因

うつ病の最大の原因はストレスですが、そのストレスにもさまざまな要因があります。

うつ病の要因となり得るものとしては、環境要因、身体的要因、性格傾向、遺伝的要因などが挙げられます。

環境要因はうつ病のきっかけになりやすいもので、具体的には以下のようなものです。

  • ・親しい人との死別・離別
  • ・仕事や財産など大切なものの喪失
  • ・人間関係のトラブル
  • ・家庭内トラブル
  • ・職場での昇格や降格
  • ・結婚・妊娠・出産など

このような環境の変化によってストレスを感じることで、うつ病を発症することがあります。

身体的要因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • ・慢性的な疲労
  • ・身体疾患(がん、甲状腺機能異常など)
  • ・脳・神経疾患(脳血管障害、パーキンソン病など)
  • ・ホルモンバランスの変化
  • ・服用している薬の影響

服用している薬の影響で発症するうつ病は『薬剤惹起性うつ病』といい、インターフェロン製剤や副腎皮質ステロイド薬で稀に見られる副作用です。

また仕事熱心、義務感が強い、完璧主義、常に他人への配慮を重視するなどの性格はうつ病の発症リスクを高めると考えられています。

このようにうつ病の原因は一つではなく、さまざまな要因があります。

うつ病の原因やきっかけが分からないことはある?理由や対処法・放置するリスクを解説

うつ病の基本的な診断方法

うつ病の基本的な診断方法

うつ病の基本的な診断方法として、以下の5つが挙げられます。

  • ・問診検査
  • ・採血検査
  • ・画像検査
  • ・光トポグラフィー検査
  • ・心理検査

ここでは上記5つの診断方法についてそれぞれ解説します。

問診検査

うつ病の診断の中心となるのが問診検査です。

問診検査で用いられる診断基準には、WHO(世界保健機関)が作成した『ICD-10』とアメリカ精神医学会が作成した『DSM-5』の2つがあります。

それぞれの診断基準の詳細は以下の通りです。

ICD-10DSM-5
抑うつ気分・興味と喜びの喪失・易疲労感の増大のうち2つ以上の症状があり、かつ以下の症状のうち2つ以上が2週間以上続く
1. 集中力と注意力の減退
2. 自己評価と自信の低下
3. 罪責感と無価値感
4. 将来に対する希望のない悲観的な見方
5. 自傷あるいは自殺の観念や行為
6. 睡眠障害
7. 食欲不振
当てはまる症状の数やその症状の重症度によって、うつ病の軽症・中等症・重症が診断されます。
以下のうち1か2のいずれかに当てはまり、さらに合計5つ以上の症状が2週間以上続く
1. 自分の言葉か、まわりから観察されるほとんど毎日の抑うつ気分
2. ほとんど毎日の喜びの著しい減退
3. 著しい体重の減少、あるいは体重増加、ほとんど毎日の食欲の減退または増加
4. ほとんど毎日の不眠または過眠
5. ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止(他者によって観察可能)
6. ほとんど毎日の易疲労性、または気力の減退
7. ほとんど毎日の無価値観、または過剰であるか不適切な罪責感
8. 思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日
9. 死についての反復思考、反復的な自殺念慮、または自殺企図
さらに上記に加え、以下の2つを満たしている場合にうつ病と診断されます。
1. 症状は臨床的に著しい苦痛または社会的・職業的・他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
2. 物質(乱用薬物や医薬品など)や他の医学的状態による精神的な影響が原因とされない。

上記の診断基準に基づいて、問診検査では以下のような内容が聞かれます。

  • ・今一番困っていることは?
  • ・気になっている症状は?
  • ・いつ頃から症状に悩んでいるのか?
  • ・思い当たる原因はあるか?

ほかにも、生い立ちや家族構成、過去の受診歴などが聞かれる場合もあります。

採血検査

採血検査のみでうつ病を診断することはできませんが、うつ病に似た症状が現れる病気と鑑別することができます。

採血検査により鑑別できる病気や症状として、以下のようなものが挙げられます。

  • ・鉄欠乏状態
  • ・甲状腺機能低下
  • ・低たんぱく状態
  • ・男性更年期症状
  • ・女性更年期症状
  • ・栄養素の欠乏

採血検査を行うことで、隠れた病気や内臓の不調の発見につながります。

画像検査

うつ病の診断では、CT検査やMRI検査などの画像検査を行うことがあります。

それぞれの特徴は以下の通りです。

CT検査MRI検査
検査方法放射線(X線)を使用した検査方法磁場と電波を使用した検査方法
特徴• 骨や肺の内部構造を明確に描写できる
• 心臓や肺、血管の診断に優れている
• 体内に金属が入っている場合も撮影可能
• 軟部組織構造の描写に優れている
• 放射線被ばくがない
• 造影剤なしで検査できる

画像検査も採血検査と同様、ほかの病気との鑑別や内臓や脳の異常を発見するために行う検査です。

光トポグラフィー検査

光トポグラフィー検査は脳の血流量の変化パターンを測定し、うつ病の診断を行う検査方法です。

具体的には大脳皮質の血中ヘモグロビン濃度変化を計測する検査となっており、健常な状態やうつ病、双極性障害、統合失調症で異なる変化パターンが記録されます。

うつ病にも典型的な血流量の変化パターンがあるものの、この検査単体でうつ病を診断することはありません。

あくまでも診断のサポートとして行うもので、うつ病の診断には十分な問診が必要となります。

心理検査

心理検査は、患者さんの性格傾向や知的機能、発達傾向などを客観的に測定・把握するために行われるものです。

うつ病の心理検査にはいくつもの種類がありますが、代表的なものとしては『SDS(自己評価式抑うつ性尺度)』『BDI-2(ベック抑うつ質問票 第2版)』『CES-D(うつ病自己評価尺度)』が挙げられます。

これらの検査により高いスコアが出た場合、うつ病の可能性が高いまたは重症度が高い可能性が考えられます。

心理検査もほかの検査と同様、この検査単体でうつ病が診断されることはなく、十分な問診が必要です。

脳波検査でうつ病の診断は可能?

脳波検査でうつ病の診断は可能?

うつ病の診断は問診や心理検査などに依存しており、客観的な指標を得るのが難しいという課題を抱えています。

しかし脳波検査を用いることにより、健常者であっても抑うつ傾向の評価が可能になる可能性があることが示唆されているのです。

脳波検査とは?

脳波検査は頭皮に電極を装着し、脳波(脳の活動によって発生する電気信号)を記録する検査方法です。

神経細胞から発せられる微弱な電気信号を測定することで、リアルタイムで脳の活動状態を観測でき、てんかんや睡眠障害、認知症などの幅広い診断に用いられています。

より正確な脳の状態を評価できるQEEG検査(定量的脳波検査)を導入するクリニックも増えてきています。

脳波活動の観察により健常者のうつ度を推定可能

最新の研究により、脳波の特定の周波数で発生する『位相リセット』と呼ばれる現象の頻度が、日々のうつ気分の変化を反映することが明らかになりました。

この発見を活用することでわずか1分間の脳波計測によって、その時点のうつ気分の強さ(うつ度)を推定することが可能になります。

実際に行われた研究では、実験参加者に自宅で安静閉眼状態の脳波を毎日1分間計測してもらい、それを2〜4週間継続することで脳波の変化とうつ気分の関係を解析しました。

その結果、特定の周波数帯において、異なる脳領域の脳波が同期する『位相リセット』の発生頻度がうつ気分の強さと関連していることが確認されたのです。

具体的には、ある周波数帯ではうつ気分が強いほど位相リセットの頻度が増加し、別の周波数帯では逆に減少する傾向が見られました。

この研究からわかることは、脳波の計測によってうつ気分の変化を客観的に測定できる可能性があるということです。

技術の応用により、うつ病の早期発見や新たな治療法の開発につながることが期待されています。

うつ病の典型的な脳波パターン

脳波には周波数の多い順番にβ(ベータ)波、α(アルファ)波、θ(シータ)波、δ(デルタ)波の4種類があり、それぞれ以下のような特徴があります。

  • ・β波:目が覚めているときに常に出ている脳波
  • ・α波:リラックスしているときに後頭部に現れる脳波
  • ・θ波:まどろんでいるときに現れる脳波
  • ・δ波:熟睡中や無意識中に現れる脳波

脳波パターンは健常者と精神疾患患者とで異なることがわかっています。

うつ病の典型的な脳波パターンは、前頭葉左側の低活動(α波の過剰)や全般的なβ波の低下などです。

このような脳波パターンを計測することで、うつ病の診断に役立てることが可能です。

うつ病の診断で脳波検査を行う意義

うつ病の診断で脳波検査を行う意義

脳波検査単体でうつ病の診断を行うことはできませんが、検査を行う意義としては、以下の2点が挙げられます。

  • ・脳波検査は器質的な疾患(てんかん等)を見つけるために行われる
  • ・脳波検査でうつ病と発達障害の鑑別が可能な場合がある

ここでは上記2つの意義についてそれぞれ解説します。

脳波検査は身体的な病気を見つけるために行われる

脳波検査は身体的な病気を見つけるために行われます。

例えばうつ病と似たような症状が現れる病気として、甲状腺機能低下やホルモン異常、脳腫瘍、認知症などが挙げられます。

症状だけでうつ病と診断してしまうと、これらの病気が隠れていた際に適切な治療を行えなくなってしまうのです。

症状が改善されないだけでなく、知らず知らずのうちに病気が進行し、治療が複雑になる可能性もあります。

精神的な病気とみられる症状であっても、脳波検査や血液検査を行うことで、隠れている病気を見落としてしまうのを避けられます。

脳波検査でうつ病と発達障害の鑑別が可能な場合がある

脳波検査を行う意義として、通常のてんかんに限らず、うつ病と発達障害の鑑別が可能な場合があることが挙げられます。

精神疾患の中にもさまざまな種類がありますが、特にうつ病の患者さんだと前頭葉のα波の左右差に通常とは異なる特徴が現れることがあります。

また発達障害の患者さんだとTBR(前頭葉のθ波とβ波の比率)に通常とは異なった値を認めることがあります。

脳波検査はうつ病の診断をサポートする

うつ病は脳波検査のみで診断を行うことはできません。

しかし通常の問診に加えて診断の精度を上げるためのツールとして脳波検査を行うことが可能です。

あくまでも診断の補助的な役割になりますが、脳波検査を行うことでよりスムーズかつ正確な診断が行えることがあります。

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