投稿日 2025年06月04日
最終更新日 2026年10月19日

自閉スペクトラム症は、軽度から重度まで症状の現れ方は人それぞれ異なります。
軽度の場合、子どもの頃に診断されず、大人になってから不便を感じる方も少なくありません。
この記事では、軽度の自閉スペクトラム症の特徴について、子どもと大人それぞれの場合について詳しく解説します。
お子さんやご自身が、もしかしたら自閉スペクトラム症かもしれないと気になる方は、ぜひ参考にしてください。

自閉スペクトラム症(ASD)とは、自閉症スペクトラム障害とも表現されることがある発達障害のひとつです。
2013年にアメリカ精神医学会の診断基準DSM-5が発表され、それまで自閉症や高機能自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害と呼ばれていた障害を自閉スペクトラム症と総称するようになりました。
これらの障害は一人ひとり症状も異なり、さまざまな特性があるため細かく分類できるものではありません。
無理に型に当てはめずスペクトラム(連続性)を大切にする支援ができるようにと、診断名が変わりました。
自閉スペクトラム症は、生まれつきの脳の疾患により発症することはわかっていますが、なぜ脳の疾患が発生するのかは解明されていません。
遺伝的要因や妊娠中の環境的要因など、複数の要素が重なって関係すると考えられていますが、はっきりとはわかっていないのが現状です。
育児環境や親の愛情不足、幼少期のトラウマなど、後天的な要素で発症するものとは異なります。
日本自閉症協会は、人口に対する自閉スペクトラム症はおおよそ20〜40人に1人(2.5〜5%)は存在する可能性があるとしています。
男女比は4:1と男性に多くみられるとされていますが、この差は女性の自閉スペクトラム症が見逃されやすいことが影響しているのではないかとの報告があります。
女性の自閉スペクトラム症は、社会適応能力が高く周囲に気付かれにくいこともあり、軽度であればあるほど診断も難しく、データが少ない傾向があります。
(参照:「わが国における自閉症スペクトラム障害の女性への支援に関する文献的考察」岩男 芙美)
自閉スペクトラム症の診断は、近年では2〜3歳頃までにされることが多いです。
乳幼児健診(1歳6ヶ月・3歳)ではM-CHATやPARS-TRなどのスクリーニングで判別し、次の支援へとつなげていく仕組みが整えられています。
(参照:「乳幼児健康診査における発達障害の早期発見・早期支援のための取組事例に関する調査研究報告書」株式会社政策基礎研究所」(厚生労働省))
診断にはDSM-5の診断基準やWHOのICD(国際疾病分類)が用いられて、症状を観察します。
自閉スペクトラム症の診断後は、症状に合わせて以下のような支援や治療を検討します。
軽度の場合は特に、環境を整えることで本人も周囲も困りごとを減らせる可能性が高くなります。
行動療法ではロールプレイで具体的な行動を学んだり、医師や臨床心理士のカウンセリングを受けたりでき、自閉スペクトラム症において有効な方法です。
(参照:「発達障害者に対する認知行動療法」木原 陽子他)
薬物療法は症状により慎重さが必要ですが、かんしゃくに抗精神病薬やてんかんに抗てんかん薬が処方されるなど、自閉スペクトラム症と併存する精神疾患に対する処方が行われるケースがあります。
ただし、自閉スペクトラム症そのものを根本的に治療する薬は、現在のところありません。

自閉スペクトラム症の症状は人それぞれで、軽度や重度と表現されることがありますが、外科的な軽傷や重傷のように分けられるものではありません。
日常生活や社会生活を送るうえで、どの程度の困りごとがあるか、支援が必要かの目安のようなものだと理解しておきましょう。
DSM-5-TRでは、自閉スペクトラム症について、社会的コミュニケーションと限定的・反復的な行動のそれぞれを評価し、必要な支援の程度に応じて3段階の重症度レベルを示しています。
レベル1は「支援を要する」、レベル2は「十分な支援を要する」、レベル3は「非常に十分な支援を要する」とされています。
ただし、一般的に使われる「軽度の自閉スペクトラム症」という言葉が、必ずしもDSM-5-TRのレベル1と一致するわけではありません。
また、知的能力や言語能力が高くても、社会生活で大きな困難を抱える場合があります。
自閉スペクトラム症の軽度の場合、自立した生活を送ることができるケースが多く、周囲に気付かれないこともあります。
しかし、本人の努力で特性をカバーしていることもあるため、困っていないわけではありません。
軽度の場合、主な症状は以下のようなものがあります。
相手の言葉の理解はできるが自分の気持ちを上手く伝えられない、相手の表情や感情を読み取るのが難しい、いわゆる空気を読むのが苦手などの症状がよく見られます。
こだわりが強く、興味を持ったことに没頭しすぎて他のことに手を付けられない、集中しすぎて周りが見えなくなるなど、周囲とのペースの差にお悩みの方も少なくありません。
感覚過敏や感覚鈍麻は、軽度の自閉スペクトラム症でも見られる症状です。
重度の自閉スペクトラム症の場合は、自立した生活が難しく、支援やサポート体制を整えることが重要です。
社会生活や日常生活において、本人が困難を感じる場面も多いため、特性を理解した環境調整を必要とします。
重度の場合、主な症状は以下のようなものがあります。
環境の変化が苦手な特性が強く出ている方は、安心を得るために反復行動が強い傾向があります。
言葉でコミュニケーションをとることが困難なため、ジェスチャーや視線などの非言語的な手段を用いることが多くなります。
日常的な行動(着替えや食事など)に支援が必要なケースもあり、継続的なサポートが必要です。
ただし、人それぞれ症状や特性は異なるため、軽度や重度という言葉で単純には分けられず、一人ひとりの特性を理解して必要なサポートをしていくのが重要です。

子どもの場合、軽度の自閉スペクトラム症は本人と周囲の理解により、困りごとを減らせることが多いです。
環境調整と行動療法で適切なサポートを行い学ぶことで、負担を減らせる可能性が高まります。
コミュニケーションが苦手な特性があると、友だちとの関わり方がわからず集団行動が難しい場合があります。
言葉のやり取りや相手の感情の動きを読み取るのが苦手、冗談が理解しにくいなど、友だちの輪で上手く立ち回ることが困難です。
このような場合は、ロールプレイで会話のキャッチボールを学んだり、絵や画像で相手の表情から感情を読み取る練習をしたりすることで、コミュニケーションを取りやすくするサポートができます。
自閉スペクトラム症は、環境や予定の変化に対応するのが苦手です。
子どもの場合、クラス替えや席替え、進学、転校などで学校という場所だけでも変化が多く、その度に不安な気持ちになってしまい落ち着かない様子が見られます。
環境の変化をなくすのは難しいため、どうすれば本人が安心できるかを、話し合ってみましょう。
予定変更は事実を伝えるだけでなく、そのあとどう行動するのか、代わりに何をするのかなど、具体的に話すことで受け入れやすくなります。
ルーティンを守る、決まったスケジュールを守るといったこだわりが強いのは、変化が苦手な特性の裏返しです。
急な変更は苦手ですが、毎日決まっているルールはしっかり守れて、それにより安心感が得られます。
ただし、予定の変更がある場合は事前に流れを伝えて、心の準備をするようにしましょう。
興味や関心をもつ範囲が狭い特性があると、他のことには関心が薄くても、興味をもった事柄には強い集中力や記憶力を発揮することがあります。
幅広く学習して知識を得るのも大切ですが、軽度の自閉スペクトラム症をもつ子どもは、好きなことを追求できる強みがあるため、伸ばしてあげましょう。
覚えたことを活かして役割を与えたり、学習につなげる工夫をすると、自己肯定感も上がります。
自閉スペクトラム症の子どものなかには、口頭での説明だけでは理解しにくくても、写真やイラスト、予定表などを使うことで情報を理解しやすくなる子がいます。
例えば、1日の予定を視覚的に示したり、作業の手順を図解したりすることで、見通しが立ちやすくなる場合があります。
ただし、情報の理解や記憶の仕方には個人差があるため、一人ひとりに合った伝え方を選ぶことが重要です。

軽度の自閉スペクトラム症は、大人の場合は子どもの頃に気付かず、社会に出てから不便を感じて診断を受けるケースが少なくありません。
反対に、子どもの頃からのサポートが上手くいき、大人になる頃には症状が落ち着いている方もいます。
大切なのは、社会生活や日常生活を送る際に困りごとがあるかどうかです。
成人期の発達障害による仕事や日常生活での困りごと、利用できる支援については、大人の発達障害の特徴と対処法・支援先でも詳しく解説しています。
女性の自閉スペクトラム症では、周囲の言動を観察して模倣したり、自分の困難を表に出さないように振る舞ったりすることで、特性が気付かれにくくなる場合があります。
このように、自閉スペクトラム症の特性を周囲から見えにくくする行動は「カモフラージュ」と呼ばれています。
カモフラージュは女性だけに見られるものではありませんが、女性のASDが見逃される背景の一つとして研究されています。
また、こうした努力が心理的負担や疲労につながる場合もあります。
女性の自閉スペクトラム症に見られる特徴や、男性との違いについては、ASD(アスペルガー)の特徴とは?大人に多い症状・男女の違いを解説でも詳しく紹介しています。
参考文献:
こだわりが強い、特定の人や物以外は無関心なども、軽度の自閉スペクトラム症の特徴です。
仕事において、自分のやり方にこだわりすぎて、柔軟性や対応力が低いと捉えられてしまうこともあります。
会社のルールや仕事の進め方などを事前に確認して、わからなかったり納得できなかったりする箇所を上司や同僚に聞いてみると、視野が狭くなるのを防ぐ効果が期待できます。
周囲に協力を求めて客観的に評価してもらい、「独りよがりになっていないか」を確認しながら進めるのも良いでしょう。
軽度の自閉スペクトラム症の方は、コミュニケーションを取るのが苦手なため、対人関係が上手くいかなくなることも少なくありません。
ころころ話題が変わる雑談に対応できなかったり、話し出すタイミングがわからなかったりするためです。
社会に出ると、子どもの頃にはなかったお世辞や建前など、言葉の裏を読まなければいけない場面も多いですが、自閉スペクトラム症はこのようなことが苦手な特性があります。
行動療法のロールプレイで対処方法を学ぶ、比喩表現のパターンの具体例を挙げてもらうなど、カウンセリングや周囲と相談しながら対応してみましょう。
軽度の自閉スペクトラム症をもっている方は、幼い頃から少しずつ自分の特性を理解して、どう対処すればいいのか学んでいきます。
基本的に大人になってももっている特性は変わらないため、成長してさまざまな経験を積むことで苦手なことへの対処法が身につきます。
また、自分がどのようなサポートを必要としているかがわかると、周囲の協力を求めやすくなり、ストレスの軽減にもつながるでしょう。
子どもの頃から自閉スペクトラム症による困りごとが積み重なってストレスが溜まったり、精神的に追い詰められたりすることで、二次障害を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
これらの症状が現れた場合は、カウンセリングを受けたり、専門機関へ相談したりして、二次障害への対策をしましょう。
二次障害に対して有効な薬物療法や環境調整もあるため、一人で悩まず早めに診断を受けることが重要です。
軽度の自閉スペクトラム症の場合、本人は不便を感じていても、周りに気付かれないことも多く、頑張りすぎてストレスになっているケースも少なくありません。
子どもはもちろん、大人も適切な支援を受けることで心の負担を減らせます。
診断を受けるのは勇気がいりますが、必要なサポートを受ければ日常生活がより快適に過ごせるようになります。
医師監修のオンライン診療・カウンセリングサービス『かもみーる』は、夜遅い時間の予約も可能で、医師や心理士にお悩みを相談できます。
東京都でADHDの相談を検討されている方は、『かもみーる心のクリニック(東京院)』もご利用いただけます。
仙台でADHDの相談を検討されている方は、かもみーる心のクリニック仙台院の診療案内をご確認ください。
カウンセリングを受けてみたい方、自閉スペクトラム症かもしれないとお悩みの方は、ぜひ当院へご相談ください。
はい。軽度の自閉スペクトラム症では、知的発達や言語発達に大きな遅れがなく、子どもの頃には特性が目立たない場合があります。しかし、進学や就職などで対人関係が複雑になったり、臨機応変な対応が求められたりすることで、初めて困りごとが顕在化するケースもあります。そのため、大人になってから診断される方もいます。
人付き合いが苦手、こだわりが強いといった特徴は、自閉スペクトラム症がない方にも見られます。自閉スペクトラム症の診断では、幼少期からの発達歴、対人コミュニケーションの特徴、限定的・反復的な行動や興味、日常生活への影響などを総合的に評価します。特定の性格や行動だけで判断することはできず、診断には専門的な評価が必要です。
はい。軽度とされる場合でも、対人関係や仕事、学校生活などで大きな困難を抱えることがあります。例えば、急な予定変更への対応が苦手だったり、周囲に合わせようと無理をすることで強い疲労を感じたりする場合があります。困りごとの程度は環境によっても変わるため、症状が軽く見えても、本人に必要な支援が少ないとは限りません。
この記事の監修者
医療法人社団弘愛会理事長
赤堀 将太郎こんにちは、赤堀将太郎と申します。 心療内科のクリニックに受診するまでに心理的なハードルが大きいかと思います。 そういった場合、「かもみーる」で病院に行くべきかどうかなど気軽にご相談ください。 オンラインで御対応いたします。 また現在、どうしても仕事がつらくて休職したいと思っているが病院に行くのを迷っている方に対して、場合によっては診断書を発行することも可能です。(オンライン診察となります) そういった場合も遠慮なくお申し付けください。
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