軽度の自閉スペクトラム症の特徴は?子ども・大人それぞれを解説

更新日 2025年06月04日

児童精神科
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自閉スペクトラム症は、軽度から重度まで症状の現れ方は人それぞれ異なります。

軽度の場合、子どもの頃に診断されず、大人になってから不便を感じる方も少なくありません。

この記事では、軽度の自閉スペクトラム症の特徴について、子どもと大人それぞれの場合について詳しく解説します。

お子さんやご自身が、もしかしたら自閉スペクトラム症かもしれないと気になる方は、ぜひ参考にしてください。

自閉スペクトラム症とは

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自閉スペクトラム症(ASD)とは、自閉症スペクトラム障害とも表現されることがある発達障害のひとつです。

2013年にアメリカ精神医学会の診断基準DSM-5が発表され、それまで自閉症や高機能自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害と呼ばれていた障害を自閉スペクトラム症と総称するようになりました。

これらの障害は一人ひとり症状も異なり、さまざまな特性があるため細かく分類できるものではありません。

無理に型に当てはめずスペクトラム(連続性)を大切にする支援ができるようにと、診断名が変わりました。

自閉スペクトラム症の原因

自閉スペクトラム症は、生まれつきの脳の疾患により発症することはわかっていますが、なぜ脳の疾患が発生するのかは解明されていません。

遺伝的要因や妊娠中の環境的要因など、複数の要素が重なって関係すると考えられていますが、はっきりとはわかっていないのが現状です。

育児環境や親の愛情不足、幼少期のトラウマなど、後天的な要素で発症するものとは異なります。

自閉スペクトラム症の発生頻度

日本自閉症協会は、人口に対する自閉スペクトラム症はおおよそ20〜40人に1人(2.5〜5%)は存在する可能性があるとしています。

男女比は4:1と男性に多くみられるとされていますが、この差は女性の自閉スペクトラム症が見逃されやすいことが影響しているのではないかとの報告があります。

女性の自閉スペクトラム症は、社会適応能力が高く周囲に気付かれにくいこともあり、軽度であればあるほど診断も難しく、データが少ない傾向があります。

(参照:「わが国における自閉症スペクトラム障害の女性への支援に関する文献的考察」岩男 芙美)

自閉スペクトラム症の診断方法

自閉スペクトラム症の診断は、近年では2〜3歳頃までにされることが多いです。

乳幼児健診(1歳6ヶ月・3歳)ではM-CHATやPARS-TRなどのスクリーニングで判別し、次の支援へとつなげていく仕組みが整えられています。

(参照:「乳幼児健康診査における発達障害の早期発見・早期支援のための取組事例に関する調査研究報告書」株式会社政策基礎研究所」(厚生労働省))

診断にはDSM-5の診断基準やWHOのICD(国際疾病分類)が用いられて、症状を観察します。

また、診断補助として脳波検査(QEEG検査)や遺伝子検査を導入している専門機関もあるため、問い合わせてみましょう。

QEEG検査について詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。

▶ADHDの脳波の特徴とは?QEEG検査による発達障害の診断補助について解説

自閉スペクトラム症と診断されたら

自閉スペクトラム症の診断後は、症状に合わせて以下のような支援や治療を検討します。

  • 環境調整
  • 行動療法
  • 薬物療法

軽度の場合は特に、環境を整えることで本人も周囲も困りごとを減らせる可能性が高くなります。

行動療法ではロールプレイで具体的な行動を学んだり、医師や臨床心理士のカウンセリングを受けたりでき、自閉スペクトラム症において有効な方法です。

(参照:「発達障害者に対する認知行動療法」木原 陽子他)

薬物療法は症状により慎重さが必要ですが、かんしゃくに抗精神病薬やてんかんに抗てんかん薬が処方されるなど、自閉スペクトラム症と併存する精神疾患に対する処方が行われるケースがあります。

ただし、自閉スペクトラム症そのものを根本的に治療する薬は、現在のところありません。

自閉スペクトラム症|軽度と重度

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自閉スペクトラム症の症状は人それぞれで、軽度や重度と表現されることがありますが、外科的な軽傷や重傷のように分けられるものではありません。

日常生活や社会生活を送るうえで、どの程度の困りごとがあるか、支援が必要かの目安のようなものだと理解しておきましょう。

軽度の主な症状

自閉スペクトラム症の軽度の場合、自立した生活を送ることができるケースが多く、周囲に気付かれないこともあります。

しかし、本人の努力で特性をカバーしていることもあるため、困っていないわけではありません。

軽度の場合、主な症状は以下のようなものがあります。

  • コミュニケーションが難しい
  • こだわりが強い
  • 感覚過敏・感覚鈍麻など

相手の言葉の理解はできるが自分の気持ちを上手く伝えられない、相手の表情や感情を読み取るのが難しい、いわゆる空気を読むのが苦手などの症状がよく見られます。

こだわりが強く、興味を持ったことに没頭しすぎて他のことに手を付けられない、集中しすぎて周りが見えなくなるなど、周囲とのペースの差にお悩みの方も少なくありません。

感覚過敏や感覚鈍麻は、軽度の自閉スペクトラム症でも見られる症状です。

重度の主な症状

重度の自閉スペクトラム症の場合は、自立した生活が難しく、支援やサポート体制を整えることが重要です。

社会生活や日常生活において、本人が困難を感じる場面も多いため、特性を理解した環境調整を必要とします。

重度の場合、主な症状は以下のようなものがあります。

  • 反復(繰り返し)行動が強い
  • コミュニケーション障害
  • 日常生活への支障など

環境の変化が苦手な特性が強く出ている方は、安心を得るために反復行動が強い傾向があります。

言葉でコミュニケーションをとることが困難なため、ジェスチャーや視線などの非言語的な手段を用いることが多くなります。

日常的な行動(着替えや食事など)に支援が必要なケースもあり、継続的なサポートが必要です。

ただし、人それぞれ症状や特性は異なるため、軽度や重度という言葉で単純には分けられず、一人ひとりの特性を理解して必要なサポートをしていくのが重要です。

軽度の自閉スペクトラム症の特徴|子どもの場合

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子どもの場合、軽度の自閉スペクトラム症は本人と周囲の理解により、困りごとを減らせることが多いです。

環境調整と行動療法で適切なサポートを行い学ぶことで、負担を減らせる可能性が高まります。

友だちとの関わり方がわからない

コミュニケーションが苦手な特性があると、友だちとの関わり方がわからず集団行動が難しい場合があります。

言葉のやり取りや相手の感情の動きを読み取るのが苦手、冗談が理解しにくいなど、友だちの輪で上手く立ち回ることが困難です。

このような場合は、ロールプレイで会話のキャッチボールを学んだり、絵や画像で相手の表情から感情を読み取る練習をしたりすることで、コミュニケーションを取りやすくするサポートができます。

環境や予定の変化に対応できない

自閉スペクトラム症は、環境や予定の変化に対応するのが苦手です。

子どもの場合、クラス替えや席替え、進学、転校などで学校という場所だけでも変化が多く、その度に不安な気持ちになってしまい落ち着かない様子が見られます。

環境の変化をなくすのは難しいため、どうすれば本人が安心できるかを、話し合ってみましょう。

予定変更は事実を伝えるだけでなく、そのあとどう行動するのか、代わりに何をするのかなど、具体的に話すことで受け入れやすくなります。

ルーティンを守るこだわりが強い

ルーティンを守る、決まったスケジュールを守るといったこだわりが強いのは、変化が苦手な特性の裏返しです。

急な変更は苦手ですが、毎日決まっているルールはしっかり守れて、それにより安心感が得られます。

ただし、予定の変更がある場合は事前に流れを伝えて、心の準備をするようにしましょう。

興味や関心の範囲が狭い

興味や関心をもつ範囲が狭い特性があると、他のことには関心が薄くても、興味をもった事柄には強い集中力や記憶力を発揮することがあります。

幅広く学習して知識を得るのも大切ですが、軽度の自閉スペクトラム症をもつ子どもは、好きなことを追求できる強みがあるため、伸ばしてあげましょう。

覚えたことを活かして役割を与えたり、学習につなげる工夫をすると、自己肯定感も上がります。

視覚情報で覚えるのが得意

軽度の自閉スペクトラム症の子どもは、文字や言葉よりも視覚情報から覚えるのが得意です。

イラストや図解、写真があるとすぐに覚えられたり、細かい違いに気付いたりする特性がある子どもには、文字だけでなく視覚情報を得られるように工夫してみましょう。

例えば、予定を表にして目で見てわかるようにする、フローチャートを活用するなどで、説明しても理解できなかったことがスムーズにわかるようになる可能性が高まります。

軽度の自閉スペクトラム症の特徴|大人の場合

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軽度の自閉スペクトラム症は、大人の場合は子どもの頃に気付かず、社会に出てから不便を感じて診断を受けるケースが少なくありません。

反対に、子どもの頃からのサポートが上手くいき、大人になる頃には症状が落ち着いている方もいます。

大切なのは、社会生活や日常生活を送る際に困りごとがあるかどうかです。

女性は気付かれにくい

軽度の自閉スペクトラム症の場合、特に女性は周囲に気付かれにくい傾向があります。

男性に比べると女性の方が適応能力が高く、本人の努力で対処できていたケースが多いためです。

女性の自閉スペクトラム症は診断が難しく、男性ほど手厚い支援が受けられずに見逃されてきたという報告もあります。

しかし、困っていないわけではなく、周りと上手くやろうと頑張りすぎて、後述する二次障害を引き起こしてしまうこともあります。

こだわりが強い

こだわりが強い、特定の人や物以外は無関心なども、軽度の自閉スペクトラム症の特徴です。

仕事において、自分のやり方にこだわりすぎて、柔軟性や対応力が低いと捉えられてしまうこともあります。

会社のルールや仕事の進め方などを事前に確認して、わからなかったり納得できなかったりする箇所を上司や同僚に聞いてみると、視野が狭くなるのを防ぐ効果が期待できます。

周囲に協力を求めて客観的に評価してもらい、「独りよがりになっていないか」を確認しながら進めるのも良いでしょう。

対人関係が上手くいかない

軽度の自閉スペクトラム症の方は、コミュニケーションを取るのが苦手なため、対人関係が上手くいかなくなることも少なくありません。

ころころ話題が変わる雑談に対応できなかったり、話し出すタイミングがわからなかったりするためです。

社会に出ると、子どもの頃にはなかったお世辞や建前など、言葉の裏を読まなければいけない場面も多いですが、自閉スペクトラム症はこのようなことが苦手な特性があります。

行動療法のロールプレイで対処方法を学ぶ、比喩表現のパターンの具体例を挙げてもらうなど、カウンセリングや周囲と相談しながら対応してみましょう。

成長とともに対処法が身につく

軽度の自閉スペクトラム症をもっている方は、幼い頃から少しずつ自分の特性を理解して、どう対処すればいいのか学んでいきます。

基本的に大人になってももっている特性は変わらないため、成長してさまざまな経験を積むことで苦手なことへの対処法が身につきます。

また、自分がどのようなサポートを必要としているかがわかると、周囲の協力を求めやすくなり、ストレスの軽減にもつながるでしょう。

二次障害が起こる可能性

子どもの頃から自閉スペクトラム症による困りごとが積み重なってストレスが溜まったり、精神的に追い詰められたりすることで、二次障害を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

  • 適応障害
  • 強迫性障害
  • 不安障害
  • 摂食障害
  • 引きこもり
  • 依存症など

これらの症状が現れた場合は、カウンセリングを受けたり、専門機関へ相談したりして、二次障害への対策をしましょう。

二次障害に対して有効な薬物療法や環境調整もあるため、一人で悩まず早めに診断を受けることが重要です。

軽度の自閉スペクトラム症かも?と感じたら専門機関に相談しましょう

軽度の自閉スペクトラム症の場合、本人は不便を感じていても、周りに気付かれないことも多く、頑張りすぎてストレスになっているケースも少なくありません。

子どもはもちろん、大人も適切な支援を受けることで心の負担を減らせます。

診断を受けるのは勇気がいりますが、必要なサポートを受ければ日常生活がより快適に過ごせるようになります。

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