投稿日 2026年08月12日
夜中に突然起き上がって叫んだり、目を見開いて怖がったりする姿を見ると、「発達障害と関係があるのではないか」と不安になる保護者の方は少なくありません。
夜驚症は、眠っている途中に強い恐怖や混乱を示す睡眠時随伴症の一つです。
自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)のある子どもでは、入眠の難しさや睡眠リズムの乱れなど、さまざまな睡眠の困りごとが重なりやすいことが知られています。
一方で、夜驚症があることだけで発達障害と判断することはできません。
参考文献:Leung AKC, et al. Sleep Terrors: An Updated Review. Curr Pediatr Rev. 2020
この記事では、夜驚症と発達障害の関係を整理しながら、家庭でできる安全な対応、受診を考えたいサイン、医療機関に相談するときに伝える内容をわかりやすく解説します。
夜驚症とは?悪夢とは異なる「眠りの途中の混乱」

夜驚症は、深いノンレム睡眠から不完全に覚醒したときに起こることが多い睡眠時随伴症です。
寝ついてから最初の数時間に、突然叫ぶ、恐怖で起き上がる、汗をかく、呼吸が速くなるなどの反応がみられます。
発作中は本人が十分に目覚めていないため、呼びかけに反応しにくく、なだめようとしても混乱が強くなることがあります。
多くの場合、数分ほどで落ち着いて再び眠り、翌朝には出来事を覚えていません。
夜驚症は悪夢と混同されやすい症状です。
両者の違いを、次の表で確認ください。
観点 | 夜驚症 | 悪夢 |
起こりやすい時間帯 | 就寝後の前半、深いノンレム睡眠中 | 就寝後の後半、レム睡眠中 |
発作中の様子 | 叫ぶ、起き上がる、混乱する、発汗する | 目覚めて怖がる、泣く、助けを求める |
声かけへの反応 | 反応が乏しいことが多い | 比較的反応しやすい |
翌朝の記憶 | ほとんど残らないことが多い | 夢の内容を覚えていることが多い |
夜驚症の一般的な症状、原因、受診や治療の全体像については、夜驚症とは?原因・対処・治療法について解説もあわせてご覧ください。
夜驚症があると発達障害?

夜驚症は、発達障害の有無にかかわらず子どもに起こりうる症状です。
夜驚症だけを理由に、「ASDかもしれない」「ADHDに違いない」と決めつけることはできません。
ただし、ASDやADHDのある子どもでは、入眠困難、夜中に何度も起きる、睡眠時間が短い、昼夜のリズムが乱れやすいといった睡眠の問題が生じやすいことが報告されています。
睡眠不足や睡眠の分断は夜驚症の起こりやすさにも関わるため、発達特性と夜驚症が同時にみられることはあります。
参考文献:和田真孝. 神経発達症における睡眠障害の特徴と治療. 精神神経学雑誌. 2025;127(3):175-181
夜驚症と発達障害の判断については、睡眠、体調、不安、感覚の特性、生活リズム、いびきや服薬、夜間覚醒時の様子などを、子ども一人ひとりの状況に合わせて専門の医師が時間をかけて確認する必要があります。
夜驚症と発達障害の合併について心配な場合は、夜間の様子だけでなく、日中のコミュニケーション、遊び方、注意の向け方、生活上の困りごと、発達の経過を含めて医療機関に相談してみてください。
発達障害のある子どもで睡眠の困りごとが重なりやすい理由

発達障害(ASD・ADHD)の特性を持つ子供では、夜驚症に限らず睡眠に関する問題が複数出現することがあります。
以下に発達障害の特性と睡眠トラブルについて表でまとめます。
確認事項 | 発達障害(ADHD,ASD)でみられやすい背景 | 家庭で見直せるポイント |
就寝時刻が遅い・日によってばらつく | 切り替えの難しさ、活動への没頭、見通しの立てにくさ | 起床時刻をなるべく一定にし、就寝までの流れを固定する |
寝室の光や音、寝具が気になる | 感覚過敏や環境刺激への反応 | 明るさ、音、室温、寝具の肌触りを調整する |
寝る前に興奮が高まる | 不安、日中の刺激、衝動性、画面への集中 | 就寝前の予定を少なくし、落ち着く習慣をつくる |
いびき、呼吸が止まるように見える | 睡眠時無呼吸症候群など、別の睡眠障害の可能性 | いびき・口呼吸・日中の眠気を記録して受診時に伝える |
夜間に足を動かす、寝返りが極端に多い | むずむず脚症候群や睡眠時運動障害などの可能性 | 自己判断で対処せず、症状と頻度を医師に伝える |
ASDでは、感覚過敏、不安、就寝前のルーティンへのこだわり、環境の変化への負担などが睡眠に影響することがあります。
ADHDでは、夜になっても頭や体が落ち着きにくいこと、活動への没頭、概日リズムの乱れなどが関係する場合があります。
このような発達障害の特性を原因として、夜驚症が引き起こされる場合もあるのです。
夜驚症に加えてASD・ADHDの特性もある場合に家庭でできる対処法

発作中は無理に起こさず、安全を守る
夜驚症の発作中は、強く揺さぶる、大声で呼び続ける、無理に目を覚まさせるといった対応は避けましょう。本人は半分眠った状態で混乱しているため、強い働きかけが恐怖や興奮を増やすことがあります。
保護者の方は落ち着いて、ぶつかりそうな家具や硬い物を遠ざけ、お子さんがベッドから落ちないように見守ります。
お子さんが歩き出したり走り出したりする場合は、体を強く押さえつけず、けがをしないよう静かに進行方向を変えたり、寝床へ誘導したりすることを優先してください。
就寝前の流れを「見える化」して、毎日なるべく同じにする
発達特性のある子どもでは、就寝前の見通しがあると切り替えやすい場合があります。
「夕食→入浴→歯みがき→絵本→消灯」のように、家族に合った短い手順を決め、絵や写真で示す方法も役立ちます。
完璧は目指さず、就寝・起床の時刻を大きくずらさないこと、寝る前の画面視聴や激しい遊びを減らすこと、落ち着ける環境をつくることから始めてみてください。
発達障害のある子どもの睡眠支援では、生活リズムや環境を個別に調整することが治療の基本となります。
感覚面の負担を減らす
音、光、におい、寝具の手触りなどが気になって眠りに入りにくい子どももいます。真っ暗な部屋が不安なら、明るすぎない暖色系の小さな照明を使うなど、その子が安心して眠れる環境を探しましょう。
「静かな部屋でなければならない」と決めつけず、一定の小さな環境音のほうが落ち着く子どももいます。本人の反応を見ながら、一度に多くを変えず、取り組みやすい工夫を一つずつ試すことが大切です。
睡眠日誌をつけて、発作のパターンを把握する
夜驚症は、同じような時刻に起こることがあります。少なくとも1〜2週間、次の内容を簡単に記録してみましょう。
記録すること | 例 |
寝床に入った時刻・眠ったと考えられる時刻 | 21時00分に就床、21時30分頃に入眠など |
発作の開始時刻と続いた時間 | 23時10分頃から約5分 |
発作中の様子 | 叫ぶ、立ち上がる、汗をかく、呼びかけに反応しない |
その日の体調・生活 | 発熱、遠足、昼寝なし、寝不足、強い不安があった |
いびきや呼吸の様子 | 大きないびきだった、息が止まるように見えた など |
日中の出来事 | 学校で大きな出来事があった、家庭内で厳しく叱る出来事があったなど |
発作がほぼ決まった時刻に繰り返される場合には、予想される時刻の15〜30分前に一度やさしく起こす「予定覚醒」が役立つことがあります。
家庭内だけで無理に完結させようとせず、症状が頻回に続く場合は、小児科や児童精神科に相談しながら改善を図っていきましょう。
医療機関の受診を考えるタイミング
夜驚症の多くは、生活リズムの調整と安全確保を行いながら経過をみることができます。
しかし、次のような場合は、小児科もしくは児童精神科に相談することをおすすめします。
受診を考えたい状況 | 受診が必要な理由 |
ベッドから飛び出す、窓やドアへ向かう、けがをした・しそうになった | 夜間の安全対策や、ほかの睡眠時随伴症の評価が必要になることがある |
週に2回以上の頻度で繰り返す、長期に続く | 睡眠不足、ストレス、身体疾患、ほかの睡眠障害などを確認する必要がある |
大きないびき、呼吸が止まるように見える、日中の強い眠気がある | 睡眠時無呼吸症候群などが睡眠を分断している可能性もある |
同じ動きを短時間で何度も繰り返す、体を硬くする、昼間にも発作のような症状がある | てんかんなどとの鑑別が必要になることがある |
思春期以降に初めて始まった、強い心理的負担や生活への支障がある | 背景に別の睡眠障害や心身の問題がないかを確認する必要がある |
受診先は、まずかかりつけの小児科、もしくは児童精神科が一般的となります。
特に「睡眠時無呼吸症候群」や「てんかん」を疑う場合は、児童精神科に相談をするようにしてください。
受診時に伝えると役に立つ情報
診察では、保護者からの詳しい説明が診断の手がかりになります。
安全を優先したうえで、可能なら発作時の短い動画を撮影しておくと、夜驚症と悪夢、夢遊病、てんかん発作などを見分ける参考になる場合があります。
受診時には、睡眠日誌、発作の頻度・時刻・持続時間、いびきや呼吸の様子、日中の眠気や集中の状態、最近の環境変化、服用中の薬の情報を医師に伝えてください。
【まとめ】夜驚症と発達障害を結びつけすぎず、睡眠全体を見直しましょう
夜驚症は、子どもに起こりうる睡眠時随伴症の一つです。
ASDやADHDのある子どもでは睡眠の困りごとが重なり、夜驚症を来す場合もありますが、夜驚症だけで発達障害と判断することはできません。
大切なのは、発作中の安全を守ること、睡眠不足や生活リズムの乱れを減らすこと、いびきや日中の眠気など見逃したくないサインを確認することです。
保護者だけで抱え込まず、発作の記録をもとに小児科や児童精神科へ相談しましょう。
夜驚症の一般的な原因・対処・治療については、夜驚症とは?原因・対処・治療法について解説でも解説をしています。
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