強迫性障害と摂食障害は併発することがある!診断・治療方法について解説
更新日 2025年03月11日
強迫性障害
強迫性障害は自分の意思とは関係なく、不安や恐怖を感じ、何度も同じ行動を繰り返してしまう精神疾患です。
併発しやすい精神疾患はいくつかありますが、その中で摂食障害が挙げられます。
この記事では強迫性障害と摂食障害の関係性について解説します。
それぞれの疾患の症状や診断・治療方法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
強迫性障害とは

強迫性障害は、自分の意思とは関係なく不安や恐怖を感じたり、その不安から意味のない繰り返し行動をしてしまう精神疾患です。
自分の意思に反して考えが浮かんで離れなくなるのを『強迫観念』、その考えから何度も同じ行動を繰り返してしまうのを『強迫行為』といいます。
具体的には手を何度も洗ってしまう、ドアノブや手すりが不潔に感じて触れなくなる、家の鍵を閉めたか不安になり何度も確認してしまうなどの行動がみられます。
この行動に意味がないと患者さん自身が頭では理解していても、不安や恐怖からどうしてもやめられなくなってしまうのが特徴です。
これら2つが強迫性障害の主な症状となり、悪化してくると身体的・精神的ストレスが大きくなるだけでなく、周りの人も巻き込み対人関係を悪化させてしまうこともあります。
強迫性障害の症状

強迫性障害の主な症状として、以下のようなものが挙げられます。
• 不潔恐怖
• 加害恐怖
• 確認行為
• その他の症状
ここでは上記の症状についてそれぞれ解説します。
不潔恐怖
不潔恐怖は汚れや細菌に対する過度な恐怖心を持ち、頻繁に手洗いや入浴、洗濯を繰り返してしまう症状です。
洗っても洗っても「まだ汚れているのではないか」という不安や恐怖心が拭えず、何度も洗浄行為を繰り返します。
汚れや細菌に対して過敏になるため、洗濯後のタオルに自分以外の人が触れると、汚れてしまったと感じて、また洗濯をしてしまうということもあります。
ほかの人にアルコール消毒を強要する場合もあり、対人関係にも影響する症状の一つです。
加害恐怖
加害恐怖は、自分が誰かを傷つけていないかと不安に感じてしまう症状です。
実際に自分が誰かを傷つけるような行動をしていなくても、新聞やテレビで事件・事故に自分が関わっていないかチェックしたり、実際に警察に確認したりすることがあります。
さらに道を歩いているときにも、人とすれ違うたびに「ぶつかっていないか」「怪我をさせていないか」と心配し、わざわざ来た道を戻る場合もあるのです。
日常的に加害恐怖を抱くようになると、起きてもいない出来事を過度に心配してしまうため、精神的な疲労につながります。
確認行為
確認行為は、戸締りやガス栓、電気器具のスイッチなどを何度も確認してしまう症状です。
例えば外出する際に鍵を閉めたか不安になり、何度も引き返してしまうことがあります。
2度3度と同じ確認を繰り返してしまうのは、自分がミスをしているのではないかと過度に不安に感じてしまうためです。
精神的・身体的な疲労につながるのはもちろんのこと、その確認行為によって約束の時間に遅れてしまうこともあり、人間関係にも悪影響を及ぼします。
その他の症状
強迫性障害のその他の症状として、以下のようなものが挙げられます。
• 数字へのこだわり
• 物の配置へのこだわり
• 儀式行為
儀式行為は自分で決めた手順で物事を進行しないと不安や不快感が生じてしまうもので、どんなときにも同じ手順で仕事や家事を行うことにこだわる症状です。
数字や物の配置へのこだわりも含め、行き過ぎなくらいに強いこだわりがみられるのが強迫性障害の特徴といえます。
強迫性障害と摂食障害は併発することがある

強迫性障害と摂食障害は併発することがあります。
ここでは摂食障害の特徴や強迫性障害との関係性について解説します。
摂食障害とは
摂食障害は急激な体型・体重の変化、食生活の変化、心理的・身体的変化によって心と体の両方に悪影響が及ぶ障害です。
患者さんは女性の割合が多く、10〜20代の若者に比較的多くみられます。
症状によって以下の3つのうちのいずれかに分類されます。
• 神経性やせ症(拒食症)
• 神経性過食症(過食症)
• 過食性障害
ここでは上記3つの分類についてそれぞれ解説します。
神経性やせ症(拒食症)
神経性やせ症は一般的には『拒食症』と呼ばれ、太ることに対する不安や恐怖が強まることで食事量が極端に少なくなり、低体重となっている状態です。
必ずしも食欲がなく食事が食べられないというわけではなく、食べ過ぎることに対する恐怖心から、食事後に喉に指を突っ込んで無理やり吐く『自発性嘔吐』という行動をする場合もあります。
さらに全く食事をとらなくなったり、一日に何時間も運動したりなど、太ることに対する不安から過激な行動を繰り返し、結果として極端に痩せてしまうのがこの状態の特徴です。
神経性やせ症の主な症状としては、以下のようなものが挙げられます。
• 低体温
• 低血圧
• 脈拍数の減少
• 貧血
• 低血糖
• 肝機能障害
• 運動障害
• 意識障害
• 無月経
身体的症状のほかにも飢餓による抑うつ(憂うつな気分が続くこと)や不安、強迫性の増強などが起こることがあり、人間関係にも悪影響を及ぼす恐れがあります。
また神経性やせ症は深刻な合併症のリスクがあり、適切な治療が重要です。
神経性過食症(過食症)
神経性過食症は一般的に過食症と呼ばれるもので、大量の食べ物を食べる『過食衝動』をコントロールできなくなる状態です。
通常よりも早く食べたり、お腹が苦しくても大量に食べ物を食べたり、空腹を感じていないのに過食したりといった行動を繰り返します。
さらに過食による体重増加を恐れ、代償行動(自発性嘔吐や下剤の乱用など)を行う場合もあります。
神経性やせ症と同様に体重や体型によって自己評価が変動しやすいですが、こちらは代償行動によって摂取カロリーのバランスがとられ、正常体重を維持しているケースも多いです。
そのため本人は過食衝動に苦しんでいても、周囲の人々からは気づかれにくいといった問題もあります。
過食嘔吐によって低カリウム血症や不整脈、唾液腺炎などを引き起こすことがあるほか、食費がかさみ、生活に支障をきたす恐れがあります。
過食性障害
過食性障害は過食を何度も繰り返す障害です。
過食症と異なるのは、過食した後に自発性嘔吐や下剤乱用といった代償行動がみられないことです。
何度も過食を繰り返すため、過体重または肥満傾向の人によくみられます。
双極性障害や抑うつ障害、不安症などの精神障害を併発している場合が多く、ギャンブル依存や買い物依存などの依存症の併発も少なくありません。
食べてはいけないという強迫観念を持ってしまう
摂食障害では太ることに対する過度な恐怖心から、「食べてはいけない」という強迫観念を持ってしまいます。
体重や体型に対しても過度なこだわりを持ち、その強迫観念によって心身ともにさまざまな悪影響を及ぼしてしまうことがあるのです。
ストレスをため込みやすい人やストレスを感じやすい環境にいる人、人とのコミュニケーションに問題を抱えている人、まじめで努力家な性格の人などは特に注意が必要です。
また摂食障害はうつ病が原因で発症するケースもあるため、抑うつ傾向の強い人は注意しましょう。
強迫性障害の診断・治療方法

強迫性障害の診断・治療方法について解説します。
強迫性障害の診断方法
強迫性障害の診断に使われる診断基準は、WHO(世界保健機関)が定める『ICD-10』と、アメリカ精神医学会が定める『DSM-5』の2種類があります。
ICD-10は、『強迫症状や強迫行為が少なくとも2週間続き、ほぼ毎日生活で苦痛を感じたり支障をきたしたりしているか』という判断基準です。
具体的な診断項目は以下の通りです。
• 強迫症状は患者自身の思考あるいは衝動として認識されなければならない。
• もはや抵抗しなくなったものがほかにあるとしても、患者が依然として抵抗する思考あるいは行為が少なくとも1つなければならない。
• 思考あるいは行為の遂行は、それ自体が楽しいものであってはならない(緊張や不安の単なる低減は、この意味で楽しいとはみなされない)。
• 思考、表象あるいは衝動は、不快で反復性でなければならない。
引用:『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)
アメリカ精神医学会が定めているDSM-5では、以下の4つの基準が記載されています。
• A基準:強迫観念や強迫行為が存在している
• B基準:強迫観念や強迫行為によって時間を浪費している、または社会活動に影響を及ぼしている
• C基準:強迫観念や強迫行為が物質(乱用薬物や医薬品)またはほかの精神疾患の症状によるものではない
• D基準:ほかの精神疾患では上手く説明できない障害である
それぞれの診断基準に基づいて診察を行い、当てはまる場合は強迫性障害と診断されます。
強迫性障害の治療方法
強迫性障害の主な治療方法として、薬物療法、認知行動療法、TMS治療の3つが挙げられます。
薬物療法
強迫性障害ではセロトニンの異常が原因の一つと考えられているため、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)という抗うつ・抗不安薬を使用します。
具体的にはフルボキサミン(ルボックス、デブロメール)やパロキセチン(パキシル)といった薬があり、いくつか種類があります。
この薬によってセロトニン異常が調整されると、セロトニンの減少に伴って起こる不安や恐怖を緩和することが可能です。
ただしセロトニン再取り込み阻害薬は即効性のある薬ではなく、効果が現れるまでに10〜12週程度の期間を要する点に注意が必要です。
またセロトニン再取り込み阻害薬は服薬量が多いほど高い効果が期待できるため、効果がみられたら薬の量を増やしていきます。
治療を中止すると症状が再発する恐れがあるため、少なくとも1年以上は治療を続けることが推奨されています。
認知行動療法
強迫性障害の治療では、認知行動療法が有効です。
その中でも特に代表的なものが、曝露反応妨害法という認知行動療法です。
患者さんを強迫観念による不安に直面させ、その際に強迫行為を行わないように我慢させる治療方法となっています。
何度も課題を繰り返すことで、徐々に強迫観念による不安を取り除き、強迫行為を減らしていきます。
TMS治療
TMS治療は脳に繰り返し磁気による刺激を与えることで、脳の働きを正常化していく治療方法です。
日本ではまだあまり普及していない治療方法ではあるものの、アメリカや欧州では精神疾患の治療方法として確立されています。
また日本では現在(2025年3月時点)、うつ病に対する治療に保険が適用されていますが、他の精神疾患への適用は限定的です。
しかし、アメリカでは強迫性障害に対する治療効果のエビデンスがあり、強迫症状そのものの改善が期待できます。
→TMS治療は何に効く?効果や適応疾患&メリット・デメリットを紹介
摂食障害の診断・治療方法

摂食障害の診断・治療方法について解説します。
摂食障害の診断方法
摂食障害の診断では、WHO(世界保健機関)の『ICD-10』やアメリカ精神医学会の『DSM-4』のほか、厚生労働省研究班が作成した神経性無食欲症の診断基準、Feighnerの診断基準などが用いられます。
また摂食障害では問診のほか、身体測定や血液検査、心電図、CT・MRI検査などを行い、さまざまな情報をもとに診断を行うのがポイントです。
身体測定ではBMI指数により重症度が判断され、重症の場合は入院しなくてはいけないケースもあります。
摂食障害の治療方法
摂食障害の主な治療方法は、栄養指導と認知行動療法の2つです。
栄養指導
摂食障害の患者さんは栄養バランスの崩れた食生活になってしまっているため、栄養士による栄養指導や医療サポートが不可欠になります。
具体的には食事回数や量、栄養バランスといった食生活の見直しを行います。
バランスの良い食事計画に従い、毎日適切な栄養を摂取することが大切です。
また貧血や骨密度低下などの症状が現れている場合は、必要に応じてサプリメントや薬が処方される場合もあります。
認知行動療法
認知行動療法は、患者さんの食生活に対する行動や考え方を改善するための治療方法です。
摂食障害の患者さんは「太りたくないから食事は避けなければいけない」と考えてしまうことがありますが、これを「栄養バランスの整った食事は健康に良い」といった考えに修正するのが認知行動療法です。
認知行動療法にはいくつもの種類があり、患者さんの症状に合わせて選択されます。
精神疾患は早めの治療が大事
摂食障害は、強迫性障害と併発しやすい精神疾患です。
過度な不安や恐怖心から体重・体型の変化に過敏になり、「食べてはいけない」という強迫観念を持ってしまいます。
摂食障害は自力で治すのが難しい疾患でもあるため、思い当たる節がある方はなるべく早めに医療機関を受診しましょう。
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