「突然、胸がドキドキして息苦しくなる」「心臓がバクバクして不安になる」
そんな経験がある方もいるかもしれません。
検査をしても身体に異常が見つからず、原因がわからないまま不安が募ることもあります。
これらの動悸や息苦しさはストレスや不安が原因で起こることが少なくありません。
自律神経の乱れや不安障害などは、心の状態が身体に影響を及ぼすことがあります。
この記事では、ストレスによる動悸の特徴やメカニズム、対処法や受診の目安までわかりやすく解説します。
「ストレスによる動悸かも」と感じた方は、ぜひ参考にしてください。
ストレスによる動悸の症状

急に心臓がどきどきして落ち着かなくなったり、胸がバクバクして息が詰まりそうになったりする症状は、ストレスや不安が原因で起こることのある身体的な反応です。
ストレスによる動悸は、状況や体質によって現れ方が異なります。
ここでは、ストレスが原因の動悸でよく見られる具体的な特徴や、現れやすいタイミング、そして併発しやすい他の症状について解説します。
ストレスによる動悸の特徴
ストレス性の動悸には、特有のパターンがあり、どのような症状がストレス性の動悸なのか知っておくことで、対処もしやすくなるかもしれません。
ストレス性の動悸の特徴には、以下のようなものがあります。
- 心拍が急に早くなる(頻脈)
- 心臓が強く打つ感覚(ドキドキ・バクバク)
- 脈が飛ぶように感じる(不整脈・期外収縮)
- 胸が締め付けられる・違和感がある
- 脈がゆっくりになって不安を感じる
脈がゆっくりになる徐脈が起こることはまれですが、起こる可能性があります。
これらの症状は自律神経の乱れによって引き起こされることが多く、検査をしても異常が見つからない場合は、ストレスが原因である可能性が高くなります。
動悸を感じるタイミング
ストレスによる動悸は、人前での発表や会議前、満員電車などの不安や緊張が高まる状況で一時的に強く起こることが多いです。
しかし、慢性的なストレスを感じている場合には、一日を通して感じたり、さまざまな場面で突然現れる場合もあります。
特に、寝る前は本来身体がリラックスモードになりますが、日中のストレスを引きずったり、寝る前に考え事をしてしまうと動悸を感じやすくなります。
さらに、夜間で周囲が静かになり、心臓の鼓動が意識しやすくなるため、「夜になると心臓の音が気になって眠れない」という声も聞かれます。
動悸以外に見られるストレスのサイン
動悸と同時に、次のような身体的・精神的な不調を感じる場合、ストレスの影響が疑われます。
身体的なサイン | ・息苦しさや呼吸が浅くなる ・胸部圧迫感、ちくちくとした痛み ・めまい、ふらつき ・肩こり、首こり、頭痛 ・胃の不調、下痢、便秘 ・手足の冷え、発汗、震え ・強い疲労感や倦怠感 ・入眠困難、中途覚醒など睡眠の質の低下 |
精神的なサイン | ・なんとなく不安で落ち着かない ・イライラしやすくなる ・気力がわかない、楽しくない ・集中できない、物忘れが増える ・緊張が抜けず、リラックスできない |
上記のような症状が、複数同時に出ることも多く、悪循環となって症状を強めることがあります。
動悸だけでなく、日常生活に支障をきたすような心身の変化がある場合には、早めの対処をすることが大切です。
また、動悸や息切れ、めまいといった症状は、狭心症や心筋梗塞でも起こる場合があります。
ストレスだと決めつけず、症状が出た場合はまずは病院で診察を受けて原因を解明することが大切です。
ストレスで動悸を感じる仕組み

ストレスを感じたとき、心臓がドキドキしたり脈が速くなるのには、自律神経が大きく関係しています。
ここでは、ストレスが体に与える影響と、それがどのように動悸として現れるのかを詳しく解説します。
自律神経の乱れと動悸の関係
私たちの身体には、交感神経と副交感神経という自律神経が存在し、互いにバランスをとりながら、心拍・呼吸・体温・消化などをコントロールしています。
それぞれの神経のはたらきは以下です。
- 交感神経:活動モード(心拍を上げる、呼吸を浅く速くする)
- 副交感神経:リラックスモード(心拍を下げ、身体を休ませる)
ストレスを感じると、まず交感神経が活性化し、心拍数が上がって血圧も上昇します。
これは『闘争・逃走反応』と呼ばれる生理反応で、もともとは危険から身を守るための仕組みです。
しかし、長期間にわたってストレスを受け続けると、交感神経が優位な状態が続いてしまい、副交感神経がうまく働かなくなります。
その結果、自律神経のバランスが崩れ、必要のない場面でも心拍が速くなったり、リズムが乱れたりして、動悸というかたちで身体にサインが現れるのです。
不安障害が背景にある場合も
ストレスによる動悸のなかには、心の病気が背景にあるケースもあります。
特に注意したいのが、不安障害やパニック障害といった心の不調です。
例えば、以下のような症状が起こった場合は注意が必要です。
- 理由もなく急に胸がどきどきしてくる
- 激しい不安とともに呼吸が速くなる
- 「このまま死ぬのでは」と感じるほどの強烈な発作が起こる
このような場合は、パニック発作が起こっている可能性があります。
発作が起こった時には「自分がおかしくなってしまうのでは」「また発作が起こるのでは」と恐怖や不安を感じ、外に出られなくなるなど、症状が悪化することもあります。
身体的には心臓などに問題がなくても、脳の危機反応が過剰に働いている状態のため、繰り返すようであれば、心療内科や精神科での相談をおすすめします。
その他の病気の可能性
ストレスによる動悸と似た症状が、他の病気によって引き起こされることもあるため、見極めは非常に重要です。
以下のような疾患では、ストレスに関係なく動悸が起こることがあります。
- 心臓の疾患(不整脈・心不全・狭心症など)
- 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)
- 貧血
- 更年期障害
- 薬剤の副作用(喘息の薬や抗うつ薬など)
特に、動悸に加えて胸の痛みや息切れ、めまい、失神などがある場合は、速めに内科や循環器内科を受診し、検査を受けることが必要です。
ストレスによる動悸を感じたときの対処法

ストレスが原因で動悸が生じることは珍しくありませんが、放置することで悪化したり、他の病気につながったりする可能性もあります。
ここでは、ストレスで動悸を感じた際にその場でできるセルフケアから、根本的な改善を目指す方法まで対処法を詳しく紹介します。
その場でできる呼吸法・セルフケア
動悸を感じたとき、すぐに実践できる対処法を知っておくと、不安を軽減し、心身を落ち着かせるのに役立ちます。
腹式呼吸で自律神経を整える
深くゆったりとした呼吸は、副交感神経を優位にし、心拍数を安定させる効果があります。
腹式呼吸のやり方は以下のとおりです。
- 静かな場所で楽な姿勢をとる
- 片手をおなかに当てて、鼻からゆっくり息を吸い込む
- おなかが膨らむのを感じたら、口をすぼめてゆっくり息を吐く
- 1から3を数回繰り返す
呼吸に意識を集中することで、不安や過緊張から一時的に気持ちを切り離すことができるでしょう。
姿勢や体勢を変える
身体を安定させることでリラックスしやすくなります。
- 横になる:左側を下にして休むと楽に感じるという方もいる
- 座る:立っているよりも安心感が得られやすく、動悸が落ち着く場合がある
- 前かがみになる:座った状態で上半身を前に倒すことで副交感神経が優位になることがある
無理に立ったまま我慢するよりも、リラックスできる体勢でゆっくりと呼吸をしましょう。
軽いストレッチをして冷たい水を飲む
首や肩周りの軽いストレッチで筋肉の緊張をほぐすとリラックス効果があります。深呼吸と併用するとさらに効果的です。
また、冷たい水をゆっくり飲むと、口腔内や喉の刺激でリラックスできるという方もいます。
心理的アプローチ
以下のような心理的なアプローチも動悸を落ち着かせるのに効果的です。
- 「この動悸はストレス反応である」と認識する:病気ではなく、一時的な反応と知るだけでも安心感が得られる場合がある
- 注意をそらす:音楽を聞いたり、簡単な計算をしたりして意識を別の対象に向ける
- 肯定的な言葉をかける:「大丈夫」など自己暗示で安心感を与える
- 誘導イメージ法:波の音や森の風景などを想像し、心地よい空間に意識を移す
自分に合ったアプローチを探し、実践してみることがストレス性の動悸の対処になるでしょう。
生活習慣の改善
ストレス性の動悸は、日々の生活を整えることで起こりにくくすることが可能です。
以下のような生活習慣の見直しは、動悸の予防だけでなく、心身全体の健康にもつながります。
睡眠の質を高める
十分な睡眠時間(7時間前後)を確保し、毎日同じ時間に寝起きする習慣をつけましょう。
寝室の環境をリラックスできるように整えたり、就寝前のスマホ・カフェインの制限も行ってください。
睡眠不足になると、自律神経が乱れやすくなり、動悸や不安感を増幅させる原因になります。
食生活の見直し
カフェイン・アルコールは心拍数を上げる作用があり、動悸を引き起こす要因になります。
また、ビタミンB群、カルシウム、マグネシウムなどの自律神経の働きをサポートする栄養素を意識的に摂取しましょう。
食事はきちんと三食決まった時間にとり、欠食やまとめ食いを避けることが大切です。
運動でストレスを発散する
適度な運動は、セロトニンの分泌を促し、自律神経の安定に効果的です。
ウォーキング、軽いジョギング、サイクリングなどの有酸素運動は、1日20~30分程度を目安にしましょう。
ストレッチやヨガは呼吸と組み合わせることで、リラクゼーション効果が高まります。
無理に運動することでかえって動悸を引き起こすことがあるため、心地よいと感じる強度で行いましょう。
ストレスマネジメント
ストレスそのものへの対処が根本的な解決につながります。
まずは、何にストレスを感じているのかを整理し、自分なりの向き合い方を見つけましょう。
ストレスの原因を明確にする
ストレスリストを作成することは日々のストレス要因や気持ちを整理することで何が負担になっているか見えやすくなるため、おすすめできます。
リストに書かれた問題のなかで解決可能なものは、仕事量を調整する、人間関係の相談をするなど、具体的に対処しましょう。
リストに書くことで、自分の悩みなどがわかりやすくなり、対処するための小さな行動の積み重ねが改善につながることもあります。
リラクゼーションを習慣にする
日常生活にリラクゼーションを取り入れることで、自律神経の安定に効果が期待できます。
例えば、以下のようなものを取り入れてみましょう。
- 入浴:湯舟にゆっくりつかると副交感神経が優位になる。アロマを入れるとさらに効果が期待できる
- 音楽や香り:好きな音楽やリラックス効果のある香り(ラベンダー・カモミールなど)を取り入れる
- 筋弛緩法・瞑想:体に意識を向けて緊張をほぐし、「今ここ」に集中することで不安を遠ざける
毎日の生活にリラクゼーション法を取り入れながら、動悸の頻度や強度を減らしていきましょう。
ストレスや不安からくる動悸の対処法は以下の記事も参考にしてください。
▶不安障害で動悸がする原因は?発作が起きたときの対処法についても解説
心療内科や精神科を受診する
ストレスによる動悸は、セルフケアや生活習慣の改善で軽減する可能性がありますが、不安が強く日常生活に支障をきたしている場合は、医療機関を受診しましょう。
心の不調があると感じる場合は、心療内科や精神科、メンタルクリニックに行くのが適切です。
医療機関では、以下のような治療が行われます。
- 薬物療法:抗不安薬・抗うつ薬などで動悸や不安を緩和
- カウンセリング・心理療法:認知行動療法などを通じて、ストレスや不安への対処力を高める
- 生活指導:睡眠や食事、日常の行動についてのアドバイスを受けられる場合も
「まだ大丈夫」と無理をせず、少しでもつらいと感じたときに早めに受診することで、症状が悪化する前に適切な対応が可能になります。
ストレスで動悸を感じた時に病院に行く目安

ストレスが原因と考えられる動悸の症状が強かったり、頻繁に起こったりして日常生活に支障が出ている場合には、医療機関への相談を検討しましょう。
ここでは、受診を考えるべきタイミングや受診策の目安について解説します。
不安感・動悸・息苦しさが頻繁にある
緊張やストレスによって一時的に動悸を感じるのは珍しいことではありません。
しかし、次のような状態が繰り返される場合には、医師の判断を仰ぐことが重要です。
- 動悸に伴い、息苦しさや不安が強く現れる
- 外出や人と会うことが怖くなり、生活に支障が出ている
- 動悸によって夜眠れない、集中力が続かない
- 「また起こるのでは」と考えてしまいさらに不安になる
これらの症状は、単なる緊張ではなく、自律神経の乱れや不安障害の兆候である場合も考えられます。
放置せず、精神科や心療内科の専門医に相談することで心身の負担を軽減できます。
他の病気との区別がつかない
動悸は、ストレス以外にも心臓や内分泌系など、体の異常から生じることもあります。
自分ではストレスが原因と思っていても、心臓疾患や甲状腺機能亢進症、更年期障害などの疾患が隠れている場合もあります。
ストレスとの関連性があるかどうかは、医師による検査(心電図・採血・心エコーなど)で正確に判断されるため、循環器内科を受診し、病気かどうかを判断することは重要です。
「病気かどうかわからないけど不安」という段階でも、決して早すぎることではないので、気になる症状があったら専門医に相談しましょう。
パニック発作の場合はオンラインでの診察も
突然の強い動悸、息苦しさ、めまいを感じた経験がある場合、パニック発作の可能性があります。
発作が起こると、「また起こったらどうしよう」と思い、外出そのものが不安要素になることで、通院が困難に感じることもあります。
不安が強く外出ができない、対面の受診に不安があるという場合には、オンラインカウンセリングを利用することもおすすめです。
医師や心理士などの有資格者に自宅に居ながら相談することができるため、対面よりリラックスした状態で受診することができます。
『かもみーる』では、医師監修のオンラインカウンセリングを行っており、オンライン診療は24時まで受診可能なため、時間を気にせず相談することができます。
無理なく、自分に合ったかたちで相談をすることが、改善への第一歩です。
「こんなことで相談していいのかな」と考えず、不安や違和感を感じたら、早めにご相談ください。
ストレスによる動悸を感じたら無理せずに相談しよう
ストレスが原因の動悸は、決して珍しい症状ではありません。
しかし、放っておくと日常生活に支障をきたすほどつらくなることもあります。
セルフケアで改善できる場合もあれば、不安障害やパニック障害などの専門的な治療が必要なケースもあります。
不安を抱え続ける前に、早めに専門家に相談することが大切です。
『かもみーる』では、医師監修のもとオンラインでカウンセリングを受けることができます。
専門資格である医師免許もしくは公認心理師・臨床心理士・精神保健福祉士の資格取得者がカウンセラーとして在籍しており、お悩みに合わせてカウンセラーを選ぶことも可能です。
1人で抱え込まず、まずはゆっくり話せる場を活用してみてください。