抜毛症とは?髪の毛を抜く原因・治療法と子どもへの接し方を解説

投稿日 2026年09月26日

強迫性障害
blog_image

「気づくと髪を抜いている」「まつ毛が減っているのにやめられない」「子どもが髪を抜いていて、どう声をかければよいか分からない」。

こうした困りごとの背景には、抜毛症がある場合があります。

抜毛症は、髪などを繰り返し抜き、やめようとしてもやめにくく、脱毛や強い苦痛、生活への支障が生じる状態です。

大人にも子どもにもみられ、行動のきっかけを整理する治療が役立ちます。

この記事では、症状や受診の目安、治療法、家庭での対応を解説します。

抜毛症とは

抜毛症は「ばつもうしょう」と読み、毛髪抜去症、トリコチロマニアとも呼ばれます。

髪を触ることすべてが病気なのではなく、繰り返す抜毛による脱毛、減らそうとしてもうまくいかないこと、本人の苦痛や生活への影響などを確認して診断します。

DSM-5-TRでは「強迫症および関連症群」に位置づけられています。

ただし、抜毛症と強迫性障害(OCD)は別の疾患です。

OCDの症状として髪を抜いている場合や、皮膚の病気によって毛が抜けている場合などとの区別も必要になります。

参考:米国精神医学会|強迫症および関連症群の解説

髪の毛以外にまつ毛や眉毛を抜くこともある

頭髪だけでなく、眉毛、まつ毛、ひげ、体毛などが対象になることがあります。

抜く場所が変わる人や、複数の部位を抜く人もいます。

抜いた毛を眺める、指で触る、口に入れるといった行動が続く場合も、診察で伝えてください。

脱毛を髪形や化粧で隠していると、周囲には困りごとの大きさが伝わらないことがあります。

見た目の変化が小さくても、人前に出ることや美容院に行くことを避けている場合は相談の対象です。

参考:NHS|Trichotillomania(抜毛症)

気づかず抜く場合と毛を選んで抜く場合

勉強や動画視聴中などに手が髪へ伸び、後から抜いたことに気づく場合があります。

一方、ざらつく毛やチリチリした毛を探し、納得するまで抜いてしまう場合もあります。

同じ人に両方のパターンがみられることもあります。

抜く前の緊張や、抜いた後の一時的な安堵がある人もいますが、すべての人がはっきり自覚するわけではありません。

「気持ちよくて抜いているだけ」と決めつけず、どのような状況で起きるかを見ていきます。

参考:International OCD Foundation|抜毛と皮膚むしりに対するComB治療

抜毛症の原因ときっかけ

原因は特定されていません。

生物学的な要因に加え、感覚の特徴、感情、生活環境、反復によって身についた行動などが関わると考えられています。

特定の出来事やストレスが見つからない場合もあります。

治療では、原因探しだけに時間を費やすより、「いつ、どこで、何を感じて手が伸びるか」を確かめます。

たとえば宿題の難しい問題で止まったとき、手持ち無沙汰なとき、指に特定の毛が触れたときなど、同じ抜毛でもきっかけは異なります。

家族歴やストレスとの関連があっても、それだけで発症を説明することはできません。

本人の意思の弱さや、親の育て方だけを原因にする根拠はありません。

参考:NHS|Trichotillomania(抜毛症)/International OCD Foundation|抜毛と皮膚むしりに対するComB治療

強迫性障害との違い

強迫性障害(OCD)では、望まない考えによる不安を打ち消すため、確認や洗浄などを繰り返すことがあります。

抜毛症では、毛の感触への反応や自動的な手の動きなどが中心になる場合があり、行動を繰り返す仕組みを個別に評価します。

両方が併存することもあります。

OCDの全体像は、強迫性障害の症状・原因・治療法で解説しています。

抜毛症のセルフチェックと受診の目安

次の内容は、診察で困りごとを伝えるための確認項目です。

標準化された診断テストではなく、該当数や合計点で抜毛症かどうか、軽度か重度かを判定するものではありません。

  • 髪や眉毛、まつ毛などを繰り返し抜いている。
  • 毛が薄い部分、短く切れた毛、皮膚の傷などが気になる。
  • 減らそう、やめようとしても繰り返してしまう。
  • 抜くことや、抜けた部分を隠すことに時間を使っている。
  • 恥ずかしさや自己嫌悪が強く、外出や学校、仕事に影響している。
  • 抜いた毛を口に入れたり、飲み込んだりしている。

「何本以上なら抜毛症」という一律の基準はありません。

脱毛の広さだけでなく、行動の止めにくさ、苦痛、生活への影響を医師が確認します。

困っている段階で相談でき、重くなるまで待つ必要はありません。

参考:米国精神医学会|強迫症および関連症群の解説

毛を飲み込む習慣がある場合は、胃腸に毛がたまることがあるため医師に伝えてください。

腹痛や繰り返す嘔吐、食事がとれない状態があれば、精神科の予約を待たず内科などで身体の診察を受けましょう。

参考:NHS|Trichotillomania(抜毛症)

子どもの抜毛症の特徴と親の接し方

気づいたときは責めずに困りごとを聞く

子どもは、抜いていることに気づいていなかったり、理由を言葉にできなかったりします。

「なぜやるの」「もう抜かないと約束して」と迫る前に、頭皮の状態や学校生活、睡眠、本人の気持ちを確認します。

声かけは「最近、髪のことで困っていることはある?」「やめたいのに手が動く感じかな」など、答えを決めつけない聞き方にします。

常に手元を監視するより、本人と相談して短い合図を決め、気づいたら別の動きに移れるよう支える方法があります。

親のせいなのかと悩んだとき

家庭や学校での負担を確認することは大切ですが、「母親の愛情不足が原因」とは判断できません。

親子が互いを責めるより、どの場面で起きやすいか、何を変えると過ごしやすいかを一緒に整理します。

家庭では、治療で決めた練習に取り組めたことや、困ったときに伝えられたことを認めます。

「一度も抜かなかった日」だけをごほうびの条件にすると、うまくいかなかったことを隠しやすくなるため、努力の過程も評価してください。

発達障害との関係と学校での支援

抜毛があるという理由だけで、ADHDや自閉スペクトラム症とは判断できません。

注意の向き方や感覚の特徴、反復行動なども含め、発達の経過と日常生活全体から評価します。

学校では、本人の了解や年齢に応じた配慮のもとで、担任や養護教諭に必要な情報を共有します。

人前で注意しない、からかいに対応する、相談できる場所を決めるなど、治療に取り組みやすい環境を整えます。

強い確認や儀式もみられる場合は、子どもの強迫性障害の特徴と家族の接し方も参考になります。

子どもの治療も行動に合わせて組み立てる

子どもの抜毛症に対しても、行動療法の効果を検討した無作為化比較試験があります。

2011年の小規模試験では、24人の子ども・若者を対象に、8週間の行動療法と最小限の支援を比較し、行動療法群で症状の改善が報告されました。

ただし、同じ回数で全員が改善するわけではありません。

年齢や理解力に合わせ、絵や簡単な記録、保護者の支援を取り入れて練習します。

子どもが取り組める方法を治療者と一緒に選ぶことが大切です。

参考:Franklinら(2011)|子どもの抜毛症に対する行動療法の無作為化比較試験

抜毛症の治療法と自分でできる対策

習慣逆転法で気づきと別の行動を練習する

習慣逆転法はHRTとも呼ばれる行動療法です。

髪を探す、指で毛をはさむといった前触れに気づき、その場で抜毛と両立しにくい動きへ切り替える練習をします。

たとえば、痛みのない範囲で手を軽く握る、手のひらを膝に置くなどの方法を、治療者と相談して選びます。

単に我慢し続ける指示ではなく、気づく場面と行う動きを具体的にします。

成人の比較試験では、行動療法がフルオキセチンや待機群より抜毛症状を改善しました。

ただし、単一の試験だけで、すべての薬やすべての患者さんの治療効果を判断することはできません。

参考:van Minnenら(2003)|抜毛症に対する行動療法とフルオキセチンの比較試験

生活の中のきっかけを調整する

抜毛が起きた場面を短く記録し、スマートフォンを見る姿勢や机の位置、毛抜きの置き場所などを振り返ります。

記録は正確な本数を数え続けるためではなく、治療に役立つパターンを見つけるために使います。

感覚、考え、感情、手の動き、場所などをまとめて評価し、その人に合う対策を組む方法がComB治療です。

成人36人を対象とした無作為化比較試験で検討されていますが、研究規模は限られ、効果には個人差があります。

参考:Carlsonら(2021)|抜毛症に対するComB治療の無作為化比較試験

対策グッズを使う場合も、「どの場面で何のために使うか」を決めます。

グッズを買うだけで治るとは限りません。

帽子や髪形で脱毛を目立ちにくくする工夫は、外出を支える手段になり得ますが、抜毛を減らす治療と分けて考えます。

薬は症状や併存症を踏まえて検討する

抜毛症に、OCDと同じようにSSRIが必ず効くわけではありません。

不安やうつ病などの併存症の治療を含め、処方する目的を確認します。

薬を使う場合は、期待できる効果、根拠の限界、副作用、承認適応や保険での扱いを医師に相談してください。

N-アセチルシステイン(NAC)が話題になることもありますが、小児39人を対象とした12週間の比較試験では、プラセボに対する明確な優越性は示されませんでした。

成人の研究結果を子どもにそのまま当てはめず、市販サプリメントを自己判断で治療代わりに使わないことが大切です。

参考:Blochら(2013)|小児抜毛症に対するN-アセチルシステインの比較試験

改善の途中で抜いてしまった場合

一度抜いてしまったからといって、それまでの練習が無駄になるわけではありません。

起きた場面を振り返り、対策が難しかった理由を治療者と確認します。

抜く回数だけでなく、気づいて中断できた場面、抜毛に使う時間、外出や学業への影響も評価します。

抜いた髪はまた生えるの?

発毛の見通しは、毛根や皮膚の状態、抜毛を繰り返した期間などによって異なります。

「何週間で必ず元どおり」とは約束できません。

繰り返し傷つけた部位では、回復に時間がかかったり、毛が戻りにくくなったりすることもあります。

毛が生えてこない、赤みや痛みがある、脱毛が広がる場合は皮膚科で確認してください。

円形脱毛症など、別の原因が重なっていないかも調べます。

育毛剤だけで抜く行動を止めることはできないため、皮膚の評価と抜毛への治療を並行して考えます。

参考:Mayo Clinic|抜毛症の症状と合併症

抜毛症は何科に相談する?

抜く行動がやめられない、恥ずかしさで生活が制限される場合は、精神科・心療内科に相談できます。

子どもは児童精神科や小児科も相談先です。

脱毛や頭皮の病気が心配な場合は、皮膚科での評価も受けてください。

受診前には、抜く部位、起きやすい場面、減らすために試したこと、毛を飲み込むことの有無を簡単にまとめると伝えやすくなります。

HRTなどの行動療法の実施体制は施設によって異なるため、予約時に確認しましょう。

かもみーるの受診方法は、かもみーる心のクリニック仙台院やかもみーるのオンライン診療のご案内をご覧ください。

抜毛症の相談、対象年齢、行動療法の対応については事前にお問い合わせも可能です。

症状の重症度によっては対面での診察が必要です。

この記事のテーマを相談できる医師

この記事の監修者

赤堀 将太郎

医療法人社団弘愛会理事長

赤堀 将太郎

こんにちは、赤堀将太郎と申します。 心療内科のクリニックに受診するまでに心理的なハードルが大きいかと思います。 そういった場合、「かもみーる」で病院に行くべきかどうかなど気軽にご相談ください。 オンラインで御対応いたします。 また現在、どうしても仕事がつらくて休職したいと思っているが病院に行くのを迷っている方に対して、場合によっては診断書を発行することも可能です。(オンライン診察となります) そういった場合も遠慮なくお申し付けください。

診察・カウンセリングのご案内

診察やカウンセリングの利用を検討されている方は、各サービスのご案内をご覧いただけます。

強迫性障害に関する他の記事も読んでみる

最新コラム

コラム一覧を見る