適応障害の休職期間の目安は?休職までの流れや療養期間中の過ごし方について解説
更新日 2025年07月11日
適応障害
適応障害は、仕事や人間関係などでの大きなストレスが原因で心や体に不調をきたす精神疾患です。
診断を受けた際に気になるのが、「どのくらいの期間で回復するのか」「休職はどのくらい必要なのか」といった療養期間についてでしょう。
しかし適応障害の症状は個人差が大きく、回復にかかる期間も一概には言えません。
この記事では、適応障害の療養期間(休職期間)の目安について解説します。
休職までの流れや療養期間中の過ごし方などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
適応障害はストレスにより心身に不調をきたす精神疾患

適応障害とは、日常生活における環境の変化や強いストレスが原因で、精神的・身体的に不調をきたす精神疾患です。
例えば職場での人間関係の悪化、部署異動、結婚や離婚、病気の発症など、生活の中での出来事が引き金となり、強い不安や抑うつ気分などの症状を引き起こします。
適応障害の症状は人によって異なりますが、精神的な症状・身体的な症状・行動面の変化の3つに分けられます。
それぞれの代表的な症状は以下の通りです。
精神的な症状 | 抑うつ気分、やる気が出ない、イライラ、不安感、緊張、焦りやすいなど |
身体的な症状 | 不眠、食欲不振、疲れやすい、倦怠感、頭痛、めまい、動悸、吐き気など |
行動面の変化 | 人を避けるようになる、遅刻や早退、涙もろくなる、暴飲暴食など |
適応障害は主にDSM-5-TR(アメリカ精神医学会の診断基準)に基づいて判断されます。
具体的な診断基準は以下の通りです。
- 明確なストレス因が存在すること
- そのストレス因に反応する形で3か月以内に症状が出現している
- 他の精神疾患に該当しない
通常、ストレス因が取り除かれれば6か月以内に症状は改善しますが、長期化する場合はうつ病など他の疾患への移行が疑われます。
また適応障害はストレスを受け続ける環境に身を置いたままだと、症状が慢性化する恐れもあります。
そのため早期にストレス要因を見極め、環境の調整や専門医のサポートを受けることが重要です。
放置するとうつ病や不安障害などに移行する恐れもあるため、我慢せず早めに対処しましょう。
適応障害の療養期間(休職期間)の目安

適応障害の症状は個人差が大きく、療養期間もそれぞれ異なります。
一般的には1〜3か月程度の休職で回復するケースが多いとされていますが、これはあくまで目安です。
症状が比較的軽い場合には、1か月程度で回復が見込めることもあります。
一方で、ストレスの要因が深刻であったり、心身への影響が大きかったりする場合には、3か月以上、場合によっては1年を超えるような長期の療養が必要となるケースも珍しくありません。
厚生労働省の調査によると、メンタル不調による平均休職期間は約107日(約3.5か月)とされており、再発時にはさらに長期化する傾向があります。
(参考:厚生労働省,主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究,p.383)
適応障害の治療で大切なのは、焦らず自分のペースで回復に取り組むことです。
無理な復職は再発のリスクを高めるため、主治医と相談しながら、心身の状態を見極めたうえで慎重に進める必要があります。
適応障害の療養期間(休職期間)が長引く原因

適応障害の療養期間が長引く原因として、主に以下の3つが挙げられます。
- 生活習慣
- 職場環境への抵抗感・恐怖心
- 治療に対する反応の鈍化
ここでは上記3つの原因についてそれぞれ解説します。
生活習慣
生活習慣の乱れは、適応障害の回復を妨げる大きな要因となります。
例えば昼夜逆転の生活が続いている、ほとんど外出せず家の中でじっとしている、運動をまったくしない、毎晩アルコールを過剰に摂取しているといった生活は、心身にとって良い影響を与えません。
これらの生活習慣が続くと、自律神経のバランスが崩れ、抑うつ気分や不安感がなかなか改善しない状態に陥ります。
メンタルヘルスの回復には、安定した生活リズムが必要不可欠です。
毎日同じ時間に起きて同じ時間に寝る、適度に運動する、栄養バランスの取れた食事をするなど、生活習慣を改善することが回復につながります。
職場環境への抵抗感・恐怖心
適応障害の原因が職場にある場合、その環境に戻ること自体が強いストレスとなり、回復を妨げる要因になります。
例えば特定の上司や同僚との関係が原因で症状が出ている場合、その人物に再び会うことを想像しただけで動悸や吐き気といった身体反応が出ることもあります。
またパワハラや過重労働などの問題が職場に存在する場合、たとえ一時的に症状が改善しても、復職によって再発するリスクが高まるため注意が必要です。
そのため職場復帰を急ぐよりも、まずはストレスの要因が取り除かれているかを見極めることが大切です。
場合によっては部署異動や転職などの選択肢も視野に入れて、医師や専門家と相談しながら慎重に対応する必要があります。
▶適応障害の復職で同じ職場に戻りたくない場合の対処法や休職中の注意点を紹介
治療に対する反応の鈍化
適応障害の療養期間が長引く背景には、治療への反応が思うように得られないことも関係しています。
一般的に適応障害はカウンセリングや環境調整、必要に応じた薬物療法によって治療が行われますが、全ての患者がすぐに効果を実感できるわけではありません。
特に抗うつ薬は不安や不眠を和らげる効果があるものの、適応障害の中心症状である抑うつ気分に対する効果には限界があります。
またカウンセリングを受けても気持ちが軽くならない、ストレス因子から離れても症状が改善しないという場合は、治療方法が合っていない可能性やうつ病など他の精神疾患が隠れている可能性もあります。
こうした場合は早めに治療方針の見直しを行い、新たな治療方法を検討する必要があるでしょう。
治療効果がみられないと焦ってしまう気持ちもわかりますが、医師と相談しながら治療を継続することが大切です。
適応障害の回復過程

適応障害の回復過程は、大きく分けて以下の3つの時期があります。
- 休養期
- リハビリ期(回復期)
- 調整期
ここでは上記3つの時期についてそれぞれ解説します。
休養期
休養期は適応障害による心身の疲労が強く表れている時期です。
この段階では、ストレスの原因となっている環境から一旦距離を置き、休むことに専念する必要があります。
無理に活動しようとせず、「何もしない」「動きたいときに動く」姿勢が大切です。
仕事や家事をこなそうと焦る気持ちが出てくることもありますが、まずは心と体を回復させることが最優先です。
この時期は、自律神経が乱れて睡眠が取れない、不安感が強まるなどの症状が出ることもあります。
症状がつらい場合は我慢せずに医師に相談し、必要に応じて薬を処方してもらいましょう。
リハビリ期(回復期)
休養によって症状が和らぎ心身に余裕が生まれてくると、リハビリ期に入ります。
この時期は少しずつ活動の幅を広げ、日常生活への復帰を意識した準備を始める段階です。
軽いストレッチや散歩など、体に無理のない範囲で体を動かしていくことが大切です。
意欲が湧いてきたら、趣味や楽しめることを少しずつ取り入れていくとよいでしょう。
ただし調子が良くなったと感じても、いきなり元のペースに戻すのは危険です。
無理な行動は再び症状を悪化させてしまう恐れがあるため、活動量は主治医と相談しながら、段階的に増やしていくようにしましょう。
調整期
調整期は日常生活への本格的な復帰に向けて、生活リズムや働き方を再構築していく段階です。
この時期は、規則正しい生活を維持することが重視されます。
例えば毎日同じ時間に起きる、バランスの良い食事をとる、適度な運動を取り入れるなど、健康的な習慣を継続することが大切です。
また適応障害の再発を防ぐためには、自分の考え方の癖やストレスの受け止め方を見直すことも欠かせません。
認知行動療法などを活用しながら、過度な自己批判や完璧主義的な思考を見直し、ストレスと上手に向き合う力を養っていきます。
回復後の職場復帰にあたっては、業務の内容や勤務時間を柔軟に調整してもらえるよう、必要に応じて職場と話し合うことも重要です。
▶適応障害とは?再発率や兆候・繰り返さないための対策・復職時の注意点を解説
適応障害の治療をするための休職手続きの流れ

適応障害の治療には十分な休養と環境調整が必要不可欠です。
仕事がストレスの原因となっている場合、休職手続きが必要になることもあります。
適応障害の治療をするための休職手続きの流れは以下の通りです。
- 医療機関で診断書を発行してもらう
- 職場に休職申請をする
- 福利厚生・支援制度の申請手続きを行う
ここでは上記3つのステップについてそれぞれ解説します。
1:医療機関で診断書を発行してもらう
まずは心療内科や精神科といった専門の医療機関を受診し、医師から『適応障害』の診断を受けましょう。
そのうえで休職が必要である旨を相談し、診断書の発行を依頼します。
この診断書は、会社に対して休職の正当性を示すために欠かせない書類です。
診断書には、病名・治療の必要性・休職の期間などが記載されており、会社側の判断材料になります。
医療機関によっては診断書の発行に数日かかることがあるため、体調が優れないと感じた段階で早めに相談しておくことが望ましいでしょう。
2:職場に休職申請をする
診断書が手元に届いたら、次は勤務先に対して休職の申請を行います。
直属の上司や人事担当者に診断書を提示し、休職の希望と必要な期間について伝えます。
このとき口頭での説明が難しい場合は、先にメールやチャットで簡潔に意向を伝えたうえで、面談の機会を設けるという方法をとるのも良いでしょう。
休職申請は会社ごとに定められた手続きがあるため、必要書類の提出や人事制度の確認を行う必要があります。
また休職中の給与の有無、復職時の流れなどについても、事前に確認しておくと安心です。
精神的な負担が大きいと感じる場合は、信頼できる同僚や家族に同席してもらうのも一つの方法です。
3:福利厚生・支援制度の申請手続きを行う
休職中は会社からの給与が支給されないことも多いため、経済的な支援を受けるための制度を活用することが大切です。
代表的な支援制度としては、『傷病手当金』『自立支援医療』『障害年金』などがあります。
例えば健康保険に加入していれば『傷病手当金』の申請が可能です。
この制度では、働けない状態が続いた場合に標準報酬日額の約2/3が最長で1年6か月まで支給されます。
これらの制度にはそれぞれ申請条件や手続き方法があるため、利用を希望する場合は市区町村の福祉窓口や会社の総務担当者に相談してみましょう。
制度を上手に活用することで、安心して治療に専念できる環境を整えることができます。
適応障害の療養期間中(休職期間中)の過ごし方

適応障害の療養期間中の過ごし方のポイントは以下の4つです。
- 生活習慣を改善する
- 自分に無理のない働き方を探す
- ストレスの原因・対処法を見つける
- 定期的に通院する
ここでは上記4つのポイントについてそれぞれ解説します。
生活習慣を改善する
適応障害の治療では、生活習慣を改善することも大切です。
具体的なポイントとしては以下が挙げられます。
- 毎日同じ時間に起床・就寝する
- 十分な睡眠時間を確保する
- ビタミンやミネラルを積極的に摂取する
- 栄養バランスの整った食事を摂る
- 適度に運動する
上記のポイントを意識して生活習慣を改善することで、心身の安定につながります。
自分に無理のない働き方を探す
休職中は、自分にとって無理のない働き方を模索する良い機会でもあります。
例えばタスクをこまかく分けて管理する、定期的に休憩をはさむ、業務の優先順位を見直すなど、少しの工夫でも仕事中の負担が軽減できます。
現在の職場での環境調整が難しい場合は、転職や配置換えといった選択肢も検討しましょう。
ストレスの原因・対処法を見つける
適応障害は、特定のストレス要因がきっかけとなって発症する精神疾患のため、どのようなことがストレスになっているのかを見つけることが大切です。
さらに「そうしたストレスに対してどう対応すればよかったか」「どのような支援があると楽だったか」を考えておくと、再発予防にも役立ちます。
一人で整理するのが難しいと感じた場合は、心理士やカウンセラーに相談してみるのも良いでしょう。
定期的に通院する
療養期間中は定期的に通院することが大切です。
一時的に症状が軽くなったように感じても、自己判断で通院を中断すると、再発のリスクが高まる恐れがあります。
特に適応障害は気分に波が出やすいため、安定していると感じる時期でも、医師と相談しながら治療を継続することが大切です。
薬を服用している場合は、勝手に服用を中止したり減らしたりせず、気になる点があれば必ず医師に相談しましょう。
適応障害の療養期間は個人差がある
適応障害の療養期間は軽度であれば1〜3か月、重度の場合には半年以上かかることもあり、個々の症状や環境によって大きく異なります。
療養期間を長引かせないためには、まずは休養に専念し、その後リハビリ期・調整期を経て徐々に日常生活に戻ることが大切です。
焦らず自分のペースで、医師と相談しながら回復を目指しましょう。
かもみーる心のクリニック仙台院は、適応障害やうつ病など幅広い精神疾患の診療に対応しています。
休職・復職のための診断書の作成や傷病手当金の申請なども可能なため、適応障害でお悩みの方はぜひ当院までご相談ください。