自閉症はいつわかる?年代別の症状や特徴も解説

更新日 2025年06月04日

児童精神科
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自閉症は早い段階での発見と、早期の療育開始が大切です。

実際に自閉症と診断ができるのは何歳頃か、ご存じですか?

早いケースだと2歳前にわかることもありますが、症状によっては時期が遅くなる可能性もあります。

この記事では、自閉症だとわかる時期や、年齢ごとの特徴などについて詳しく解説します。

自閉症の診断について知りたい方、年齢に応じた症状を確認したい方は、ぜひ参考にしてください。

自閉症はいつわかる?

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自閉症がいつわかるかは、症状の現れ方によっても異なります。

現在は診断方法や乳幼児健診などの環境が整い、研究も進んでいるため、2歳頃までに診断されることが多くなっています。

ただ、知能障害を伴わない、対人関係に支障が出ていないなど、本人や家族が困難を感じていないケースでは自閉症の診断がつきにくい場合もあるため、経過観察が必要です。

自閉症が診断されるのは2~3歳くらいまでが多い

自閉症は2〜3歳くらいまでに診断されることが多く、早期発見できるケースが増えています。

この頃は言葉の発達や周囲との関わり方など、自閉症の特徴がわかり始める時期です。

地域の乳幼児健診や保育園・幼稚園からの意見、他の病気でかかった医師からの指摘など、きっかけはさまざまです。

自閉症の疑いがあると指摘された場合は、専門機関で慎重な診察と検査を行い、自閉症の診断を受けます。

詳しくは後述しますが、乳幼児健診(1歳6ヶ月・3歳)で自閉症を含む発達障害を早期発見して適切な支援につなげていくために、調査研究が行われました。

これにより、乳幼児健診で早期発見できる可能性が上がったため、1歳6ヶ月健康診査をきっかけに診断されるケースが増加しています。

(参照:「乳幼児健康診査における発達障害の早期発見・早期支援のための取組事例に関する調査研究報告書」株式会社政策基礎研究所(厚生労働省))

幼稚園・保育園からの意見

自閉症に気付くきっかけとして、幼稚園や保育園からの意見によるものも少なくありません。

自閉症には集団行動が苦手な傾向があったり、コミュニケーションが上手く取れなかったりする特徴があるため、通園してみて初めてわかることもあります。

友だちと上手に遊べない、言いたいことが伝えられないなど、本人も困っているかもしれません。

このような困りごとを減らす手助けにつなげるためにも、幼稚園や保育園での様子をこまめに確認してみましょう。

自閉症の検査・診断方法

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自閉症の検査や診断方法は、時期や場所などにより、さまざまです。

ここでは、よく用いられる検査や診断方法について詳しく解説します。

M-CHAT

1歳6ヶ月健康診査では、自閉症の傾向がある場合はM-CHATという質問用紙でスクリーニングを行うことが推奨されています。

M-CHATとは、国内外においてエビデンスがあるスクリーニング尺度であり、アメリカのオリジナルは16〜30ヶ月児が対象です。

日本語版は、健診の際に1次スクリーニングとして18ヶ月児を想定していて、1歳6ヶ月健康診査で使用されています。

1次スクリーニングで陽性となった場合、1〜2ヶ月後に2次としてフォローアップ面接を行い、精査をしたうえで、その後の支援へつなげていきます。

(参照:「M-CHAT(Modified Checklist for Autism in Toddlers;乳幼児期自閉症チェックリスト修正版」発達障害ナビポータル)

PARS-TR

3歳児健康診査や医療機関で診断する際には、PARS-TRというスクリーニング検査を行い、自閉症の特徴があるかを判断します。

PARS-TRは自閉症の傾向がどのくらいあるのかを判別する2次スクリーニングとして用いられるもので、診断前の評価の参考になります。

就学前から小学生、中学生以上と対象が広く、継続して経過を確認する目的でも使用できます。

(参照:「PARS-TRについて」一般社団法人 発達障害支援のための評価研究会)

カットオフ値(正常範囲を区切る値)が設定されているため、自閉症の可能性が強いのかが判定しやすいメリットがあります。

PARS-TRの結果だけで診断することはなく、自閉症の診断には専門知識を持った医師の診察が必要です。

医師による診断(DSM-5、ICD)

自閉症は、血液検査やMRIなどの生物学的な検査で診断するのは困難なため、主な診断方法としては症状を観察して診断します。

診断基準として使用されるのは、アメリカ精神医学会から2013年に発表された診断統計マニュアルであるDSM-5や、WHOのICD(国際疾病分類)です。

これらの診断基準の判定と、本人や家族が社会生活において苦しい、困っていると感じる状況がある場合に、自閉症(自閉スペクトラム症)と診断されます。

また、脳波検査(QEEG検査)や遺伝子検査を診断補助として用いることもあります。

自閉症診断の参考にでき、早期発見して適切な支援を受けるための方法のひとつです。

QEEG検査について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

▶ADHDの脳波の特徴とは?QEEG検査による発達障害の診断補助について解説

自閉症はどんな病気?

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自閉症とは、社会的なコミュニケーションに困難を抱え、興味や行動に特定の偏りが見られるなどの症状がある発達障害のひとつです。

先天性の脳機能障害によるもので、育児環境や両親の愛情不足で発症するものではありません。

2013年にアメリカ精神医学会の診断基準DSM-5が発表され、自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害と呼ばれていた障害を、自閉スペクトラム症(ASD)と総称するようになりました。

自閉症の原因

自閉症の原因は、先天性の脳機能障害で発症しますが、なぜ起こるのかはまだ詳しく判明していません。

妊娠中の環境的要因や遺伝的要因、遺伝子などが、複雑に関与すると考えられています。

生まれてからの育児環境、虐待の有無、両親からの愛情不足、トラウマなどが原因ではありません。

先天的に脳の中枢神経系で情報を整理することが困難で、記憶力は良いが応用は苦手、などの得意不得意が極端に現れる傾向があります。

自閉症の主な症状

自閉症の症状は個人差が大きく、一人ひとり異なります。

詳しくは後述しますが、年齢によっても現れ方が違い、成長とともに変化していく可能性もあります。

自閉症の主な症状は、以下のようなものです。

  • 言葉の遅れ
  • コミュニケーションが苦手
  • 対人関係を築くのが難しい
  • 感覚過敏・感覚鈍麻
  • ルーティンを重要視する
  • 変化が苦手
  • こだわりが強い
  • 興味の範囲が狭い など

すべてが当てはまるわけではなく、どのような症状が現れるかは人それぞれです。

また、症状の程度にも個人差があり、周囲から気付かれないこともありますが、その分対人関係やコミュニケーションが取れずに一人でお悩みの方も少なくありません。

家族や支援者、専門機関に相談しながら、協力して困りごとを減らせる方法を探すのが重要です。

自閉症の症状や特徴|年齢別

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自閉症の症状や特徴は、年齢によって異なります。

自閉症かもしれない?と感じる症状があるときは、他の症状についても注意して見てみましょう。

ここでは、年齢別によくある自閉症の症状や特徴について詳しく解説します。

必ずしも当てはまるわけではなく、あくまで症状の傾向であるため、専門機関へ相談するきっかけのひとつとして参考にしてみてください。

0歳~1歳頃

0歳〜1歳頃は、自閉症の特性があっても、判断するのは難しい時期です。

著しい発達の遅れが見られる場合は自閉症の傾向があるとわかるケースもありますが、疑いがある段階になり、注意深く見守っていくことが必要です。

特徴症状・理由
抱っこや添い寝が苦手・嫌がる感覚過敏や対人関係が苦手で、抱っこや添い寝すると身体を反らして嫌がる。
寝つきが悪い・眠りが浅い睡眠と覚醒のリズムが不規則になる。
感覚過敏で睡眠に障害がある。
あやしても笑わない他者への興味が薄い。
対人関係の発達が未熟。
視線が合わない通常生後6ヶ月頃から見つめ合いが見られるが、対人関係が苦手だとアイコンタクトが少ない。
音・光に敏感感覚過敏により、小さな音や光に反応して覚醒したり、激しく泣いたりすることがある。

2歳~3歳頃

2〜3歳頃は、自閉症の発見が多い年齢です。

言葉や対人関係において周囲との差が出始め、本人や家族、周囲の大人も特性に気付くことが多くなります。

特徴症状・理由
言葉が遅い言葉の発達が遅く、二語文が出ない。
コミュニケーションが苦手なため、オウム返しが多くなる。
好き嫌いが激しい食べ物や行動にこだわりが強かったり、執着が強かったりする傾向がある。
偏食は単なる好き嫌いだけでなく、こだわりからくるケースがある。
クレーン現象が見られる親の手を掴んで欲しいものや気持ちを伝えようとする現象。
自分の言葉や指さしで伝えるのが苦手。
友だちと遊ばない他人に興味が薄いため、一人で遊ぶことが多い。
指示に従うことも苦手な傾向がある。

3歳~5歳頃

3〜5歳頃になると、より対人関係が難しいと感じることが増えて、トラブルが起こることもあります。

幼稚園や保育園で自閉症かもしれないと指摘されることが多い時期です。

本人も困っている可能性があり、適切な支援につなげるためにも検査を受けることを検討してみましょう。

特徴症状・理由
集団行動が苦手一人遊びが多く、集団で同じ行動をとるのが難しい。
コミュニケーションをとることや言葉を上手に扱うのが苦手なため、友だちとの関わりが困難でトラブルにつながる可能性がある。
こだわりが強い・繰り返し行動日常生活や遊びに自分特有のルールがあり、こだわる傾向がある。
思い通りにいかないと、強いかんしゃくを起こすこともある。
ごっこ遊びが苦手他者の気持ちを考える、感情の共有などが難しく、「何かになりきる」ごっこ遊びが苦手な傾向がある。

6歳以降

6歳以降は小学校入学を経て、学校生活において困りごとが多くなります。

学習が進んだり、周りとのコミュニケーションが必要になったりする高学年になると、悩みが増える可能性があるため、注意が必要です。

また、自閉症と併存することの多いADHD(注意欠如・多動症)やLD(学習障害)などがあるケースもあり、支援や周りの環境を整え協力を得ることが重要です。

発達障害と学習の関係については、以下の記事も参考にしてみてください。

▶発達障害の子どもは勉強が苦手?種類ごとの学習困難の特徴や対策を紹介

特徴症状・理由
学習の遅れが目立ち始める指示が理解できない、読み書きが苦手などから、学習が思うように進まない。
視覚的な情報整理は得意な場合もある。
友だちとのトラブルが増えるコミュニケーションが苦手なため、すれ違いが生じる可能性がある。
ルールを守ることが難しい場合は、集団行動ができずにトラブルになってしまうこともある。
通学したがらない予定変更やクラス替えなど、環境の変化に対応するのが難しい。
時間をかけて説明して不安が解消すれば、改善する可能性もある。

大人になってから

自閉症の症状が軽度だった、検査で診断が難しい症状だったなど、さまざまな理由で大人になるまで自閉症の診断がされないケースもあります。

成人してから社会生活において困りごとや不便を感じて、もしかしたら自分は自閉症なのかもしれないと考える方も少なくありません。

女性は男性よりも自閉症の特性が目立ちにくいため、幼少期に診断されていない可能性もあり、大人になってから診断されることも多いです。

大人になってから感じる症状は、以下のようなものがあります。

  • 対人関係が上手くいかない
  • 指示や決まりごとが理解できない
  • 同じミスを繰り返してしまう
  • 集中力が続かない
  • 急な変更に対応できない など

幼少期の症状とつながることですが、仕事をするとなると周囲とのすれ違いが多くなり、「どうして自分はできないのか」と悩んでしまう方も多いです。

自閉症の症状は人それぞれで、得意不得意も個人差が大きく、得意を伸ばして仕事に就いている方も珍しくありません。

自閉症かもしれないと悩んで、社会生活を送るうえで困っていることがあるならば、専門機関を受診して相談してみてはいかがでしょうか。

自閉症と診断されたら周りに相談してサポートを受けよう

自閉症は症状の程度や現れ方に個人差があり、一人ひとりに合わせたサポートが重要です。

2〜3歳の早期発見ができれば、特性に合った環境を整えられる可能性が高まります。

お子さんの様子をよく観察して、「自閉症かも?」と感じたら、専門機関を受診しましょう。

医師監修のオンライン診療・カウンセリングサービス『かもみーる』は、お悩みに合わせて医師や心理士を選び、いつでもお悩みを相談できます。

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お子さんがまだ小さくて自閉症かわからず不安な方は、ぜひ当院へご相談ください。

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