子どもの不安障害の原因は?症状やサポート方法について解説

不安障害(不安症)は過度な不安や心配、恐怖などによって身体や心に悪影響を及ぼしてしまう病気です。
不安障害は子どものころから発症する病気の一つであり、ストレスや心身の不調の原因になるため、早めに気づいてあげることが大切です。
この記事では、子どもの不安障害の原因や症状について詳しく解説します。
不安障害を持つ子どもに対する接し方やサポート方法もまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
不安障害(不安症)とは?

不安障害(不安症)とは、不安や心配の気持ちが過剰に強くなってしまう病気です。
不安は誰でも抱くことのある感情の一つですが、不安障害の場合はその感情が強くなりすぎてしまい、身体や心に悪影響を及ぼしてしまいます。
不安障害は恐怖や心配が向けられる対象によって、さまざまなタイプに分類されます。
具体的なタイプは以下の通りです。
- 全般性不安障害
- 社会不安障害
- パニック障害
- 強迫性障害
- 広場恐怖症
- 分離不安障害
人前で恥ずかしい思いをする可能性がある場面を避けたがる『社会不安障害』や、不安や恐怖により吐き気やめまいなどの症状が起こる『パニック障害』などがあります。
研究結果によると、不安障害は6歳児の約3%、青年期男子の5%、青年期女子の10%にみられるとされています。
また不安障害を持つ子どもはうつ病や自殺行動、アルコール・物質使用障害、学業困難のリスクが高まるため、注意が必要です。
▶不安障害の種類別の症状・診断基準┃セルフチェックや治療法も解説
子どもの不安障害の種類ごとの症状・サイン

不安障害は種類ごとに症状・サインが異なります。
具体的に以下のような症状がみられることがあります。
種類 | 代表的な症状 |
---|---|
全般性不安障害 | 極度に不安や心配になる、落ち着きがない、疲れやすい、集中できないなど |
社会不安障害 | 人と話すことや人が多くいる場所に苦痛を感じる、人と会うことを避けるなど |
パニック障害 | 動悸、めまい、ふらつき、吐き気、感覚麻痺など |
強迫性障害 | 何度も手洗いをする、戸締りを何度も確認する、特定の数字に過度にこだわるなど |
広場恐怖症 | レジの行列に並ぶことやバス・飛行機などの公共交通機関を利用することに恐怖や不安を感じる |
分離不安障害 | 自宅や愛着のある人から離れるときに強い苦痛を感じる |
全般性不安障害
全般性不安障害は、ある特定の事柄に対してでなく、さまざまな事柄・活動に対して不安を抱く病気です。
以下のような症状が半年以上続く場合、全般性不安障害と診断されます。
- さまざまな事柄に対して過剰に心配してしまう
- 多動
- 落ち着きがない
- 怒りっぽい
- 興奮・緊張・いらだち
- 不眠
- 疲れやすい
- 腹痛
- 筋肉痛
- 頭痛など
例えば学校のことや家族のこと、友達のこと、さらには地震などの天災、海外での戦争などさまざまなことに対し不安や心配になる状態が続きます。
不安な気持ちをコントロールするのは難しく、ストレスによってさらに不安が高まるのが特徴です。
症状が悪化すると不眠や疲労感など、心身の不調にもつながり、日常生活にも悪影響を及ぼします。
社会不安障害
社会不安障害は、恥ずかしい思いをすることや人の注目を浴びることに強い恐怖や不安を感じる病気です。
人と話すことや人が多くいる場所に強い苦痛を感じ、強い恐怖心からパニック発作を起こすこともあります。
社会不安障害の主な症状・サインとしては以下のようなものが挙げられます。
- 社会的な状況で泣く
- かんしゃくを起こす
- 人にしがみつく
- 緊張から固まる
- 外に出たり人と話したりするのを拒否する
子どもの社会不安障害は上記のような症状で気づかれることが多いです。
また学校で間違った回答をしてしまったりばつの悪い思いをすると、同級生の前で恥ずかしい思いをすることに強い恐怖を感じるようになり、外出を嫌がることがあります。
パニック障害
パニック障害は、突然理由もなく激しい不安に襲われ、動悸やめまいなどの発作的な症状『パニック発作』を繰り返す病気です。
パニック発作には以下のような症状があります。
- 動悸
- 汗が出る
- 体が震える
- 胸苦しさがある
- 吐き気
- めまい、ふらつき
- 死への恐怖
- 感覚麻痺
- 冷たいまたは熱い感覚がする
パニック発作は10分以内にピークに達し、「死んでしまうのではないか」という恐怖を抱くこともあります。
パニック障害はパニック発作の経験から、「またあの時のような発作が起きたらどうしよう」と不安になる『予期不安』が生じやすいのも特徴です。
予期不安が原因で、発作が起きそうな場面(人混みや一人での外出など)を避けるようになることがあります。
強迫性障害
強迫性障害は、強い不安やこだわりによって日常生活に支障が出てしまう病気です。
主な症状は自分の意思に反してある考えが頭から離れなくなる『強迫観念』と、その不安を振り払うために何度も同じ行動を繰り返す『強迫行為』の2つです。
具体的には以下のような症状がみられます。
- 手洗いや入浴を何度も繰り返す
- 誰かに危害を加えたかもしれないと不安を抱く
- 戸締りやスイッチなどを何度も確認する
- 自分の決めた手順で物事を行うことにこだわる
- 数字や物の配置に対し強いこだわりを持つ
誰でも不安を抱くことはありますが、強迫性障害の場合はその不安が過剰になり、何度も同じ行動を繰り返すことで心身ともに疲弊してしまいます。
広場恐怖症
広場恐怖症は、公共機関や美容院、歯科、映画館、トンネル、渋滞、人混みなどのすぐに逃げられなかったり助けを求められなかったりする場面や場所で不安を感じる症状です。
パニック障害と合併することが多く、パニック発作に強い不安を感じ、上記のような場面・場所を避けるようになることがあります。
広場恐怖症が悪化すると一人で外出するのも困難になり、日常生活に支障が生じるようになります。
分離不安障害
分離不安障害は、自宅や愛着を持っている人(母親など)から離れることに強い不安を感じる病気です。
小児期で起こるのは正常な反応で、ほぼすべての小児にみられます。
通常は成長に伴って乗り越えていくものですが、不安が過剰になると思春期以降も症状が残る場合があります。
分離不安障害の主な症状は以下の通りです。
- 自宅または愛着を持っている人と離れるときに強い不安・苦痛を感じる
- 愛着を持っている人を失うかもしれないという不安や恐怖を感じる
- 愛着を持っている人から離れる場所へ行くことに不安を感じる
- 自分一人でいることに不安や恐怖を感じる
- 自宅を離れて寝ることや愛着を持っている人のいない環境で過ごすことに不安や恐怖を感じる
年齢不相応でかつ過剰な恐怖・不安が一定期間以上続く場合、分離不安障害と診断されます。
子どもの不安障害の発症原因

子どもの不安障害の発症原因ははっきりとわかっているわけではありませんが、以下のような要因が関係していると考えられています。
- 遺伝的要因
- 環境的要因
- 精神的な気質
- 身体的・精神的変化
- 病気や薬の影響
ここでは上記の要因についてそれぞれ解説します。
遺伝的要因
不安障害は遺伝的要因が大きいと考えられています。
例えば親が不安障害を発症している場合、その子どもも発症する可能性が高いです。
しかし親が発症しているからといって、必ず子どもも発症するというわけではありません。
また親が不安障害を発症している場合、その親の価値観や考えなど不安に対する感覚が子どもに受け継がれ、発症率が高まる場合があります。
環境的要因
子どもの不安障害の発症原因として、環境的要因が挙げられます。
具体的な要因としては以下のようなものがあります。
- 学校や学業に対するプレッシャー
- 人間関係の変化
- SNSやメディアの影響
- 厳しい家庭環境
- 幼少期のトラウマ
- いじめなどの社会経験
上記のようにさまざまな環境的要因がストレスの原因となり、不安障害を引き起こす恐れがあります。
特に最近はSNSが身近にあることから、SNS上の他人の成功や理想的な生活を目にして、子どもの自己評価が低くなってしまうこともあります。
SNSによる自己評価の低下や学校での疎外感などは不安を感じさせる要因になるため、注意が必要です。
精神的な気質
不安障害の発症には精神的な気質も関係していると考えられています。
不安障害を発症しやすい子どもの性格・気質として、以下が挙げられます。
- 感受性が高い
- 完璧主義
- 自己評価が低い
上記のように環境の変化や人間関係に敏感な子どもや、常に完璧を目指そうとする子どもなどは不安を感じやすい傾向にあります。
また上記のような子どもほど周囲に相談できず、一人で抱え込みやすいため、周囲の大人が気づいてあげたりサポートしてあげたりすることが大切です。
身体的・精神的変化
不安障害の発症には、身体的・精神的変化も影響する可能性があります。
例えば思春期にはホルモンバランスが変化するため、ストレスホルモンや性ホルモンの影響で不安を感じやすくなることがあります。
不安障害だけでなく、イライラしたり攻撃的になったり、気分が落ち込んだりする『思春期うつ』を発症することもあるため注意が必要です。
病気や薬の影響
病気や薬の影響によって、不安障害を発症することがあります。
不安を引き起こす病気や薬には以下のようなものがあります。
種類 | 具体的な例 |
---|---|
病気 | • 心臓の病気(心不全や不整脈など) • ホルモンの病気(副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能亢進症など) • 呼吸器系の病気(喘息や慢性閉塞性肺疾患など) |
薬 | • アルコール • カフェイン • 中枢刺激薬 • コカイン • 市販のダイエット製品など |
薬を中止するときに起こる『離脱症状』によって、不安が生じる場合もあります。
不安障害を持つ子供に対する接し方・サポート方法

子どもに不安障害の疑いがある場合の接し方・サポート方法について解説します。
不安障害を持つ子供に対する接し方
子どもに不安障害の疑いがある場合、まずは子どもの話に耳を傾け、理解を示してあげることが大切です。
特定の者に対し不安や恐怖を感じていたり、避けたりする場合、不安障害の可能性が高いといえます。
子どもの行動や感情の記録を取ることで、症状のパターンが見えてくることもあります。
また不安を感じている子どもに対し、「気にしなければいい」などの声かけをするのは良くありません。
子どもの不安に対ししっかり寄り添い、「私はあなたの味方」というメッセージを伝えることで、本人の気持ちを落ち着かせることが大切です。
クリニックや相談機関に相談する
不安障害の疑いがある場合は、身近な相談機関に相談しましょう。
不安障害に関する相談は、地域の保健所や保健センター、精神保健福祉センターなどで行えます。
市区町村役場に問い合わせれば教えてもらうことができ、いずれの相談も無料となっています。
また、クリニックへの相談もおすすめです。子どもが病院を嫌がる場合は、オンライン診療やオンラインカウンセリングで相談してみるといいでしょう。
子どもの不安障害の治療方法

子どもの不安障害の治療方法は主に2つあります。
- 行動療法
- 薬物療法
不安症状が軽度の場合は行動療法のみで治療を行うことが多く、不安が強い場合は薬物療法も併用することもあります。
ここでは上記2つの治療方法についてそれぞれ見てみましょう。
行動療法
行動療法とは、患者さんの極端な考えの癖を改善したり、不安を引き起こす状況にあえて向き合わせることで耐性をつけたりする治療方法です。
具体的には『曝露療法』や『認知行動療法』などがあり、これらの治療方法によって不安に対する敏感性を和らげ、不安を感じにくくさせられます。
不安が軽度の場合は、行動療法のみで症状が改善するケースも少なくありません。
薬物療法
薬物療法は不安が重度の場合の治療方法で、主に『選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)』が使われます。
この薬は抗うつ薬の一種で、意欲低下や不安の原因となる脳内の神経伝達物質『セロトニン』の再取り込みを阻害することで、抗うつ作用をもたらすものです。
そのほか、症状に合わせて抗不安薬や睡眠薬が処方されることもあります。
不安障害は本人の気持ちに寄り添ってサポートすることが大切
不安障害には全般性不安障害や社会不安障害、パニック障害、強迫性障害などがあり、これらの症状は子どものころから現れることがあります。
周囲の大人は子どもの声に耳を傾け、本人の不安に寄り添ってあげることが大切です。
子どもに不安障害の疑いがある場合は、身近な相談機関または医療機関に相談しましょう。
『かもみーる』では、医師監修のオンラインカウンセリングを行っています。
「子どもが不安障害かもしれない」「病院の受診を悩んでいる」という方は、ぜひ当院まで気軽にご相談ください。
▶︎ カウンセラー(医師・心理士)一覧はこちら
▶︎ 新規会員登録はこちら