うつ病の原因とは?治療方法やセルフケア方法も解説
更新日 2025年03月11日
うつ病
うつ病は気分が強く落ち込み、憂うつになったりやる気が出なくなったりする病気です。
精神的な症状だけでなく、疲れやすい、体がだるいなどの身体的な症状が現れることもあります。
うつ病の原因はすべての人に共通する明確な原因があるわけでなく、性格やストレス、環境などさまざまな要因が複雑に組み合わさって発症するものです。
この記事では、うつ病の原因について詳しく解説します。
うつ病の主な症状や治療方法、セルフケア方法などもまとめているため、うつ病の症状で悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
うつ病とは

うつ病は憂うつな気分になってひどく落ち込んだり、食欲や睡眠欲といったさまざまな意欲が低下したりする病気です。
気分障害という位置づけにある病気で、ほかにも双極性障害が同様の分類になります。
双極性障害はうつ病との鑑別が必要な病気で、うつ状態と躁状態を繰り返す特徴があります。
この2つの病気はそれぞれ治療方法が大きく異なるため注意が必要です。
またうつ病は100人のうち約6人が生涯のうちに経験する病気と言われており、女性と比べて男性の患者さんが多い特徴があります。
女性も妊娠や出産、更年期などのタイミングでうつ病を発症することがあるため注意が必要となります。
うつ病の重症度
うつ病にも軽度から重度まで重症度があります。
診断基準には『DSM-V』と『ICD-10』の2種類あり、各診断基準をどの程度満たすかで重症度が診断されます。
アメリカの精神医学会が作成した『DSM-V』の診断基準は以下の通りです。
1. 自分の言葉か、まわりから観察されるほとんど毎日の抑うつ気分
2. ほとんど毎日の喜びの著しい減退
3. 著しい体重の減少、あるいは体重増加、ほとんど毎日の食欲の減退または増加
4. ほとんど毎日の不眠または過眠
5. ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止(他者によって観察可能)
6. ほとんど毎日の易疲労性、または気力の減退
7. ほとんど毎日の無価値観、または過剰であるか不適切な罪責感
8. 思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日
9. 死についての反復思考、反復的な自殺念慮、または自殺企図
このうち5項目を超えない場合は軽症、5項目をはるかに超える場合は重症、その間に相当するものが中等症と診断されます。
重症度別の症状は以下の通りです。
軽症 | 中等症 | 重症 |
---|---|---|
• 集中力が落ちる • ちょっとしたことで不安や焦りを感じる • 口数が少なくなる • なんでもネガティブにとらえてしまう | • 頭や肩が重い • 体重の急な増減 • テレビや趣味に対する関心が少なくなる • 友人と会うのを避けるようになる | • 仕事や勉強に明らかな支障が出る • 周りとのコミュニケーションが困難になる • 希死念慮が強くなる |
重症になると日常生活や他人とのコミュニケーションが困難になり、さらに食事や水分を摂らなくなってしまうケースもあります。
比較的症状が軽いうちに医療機関を受診し、適切なケアを行うことが大切です。
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うつ病には4つの病型がある
うつ病にはいくつかの病型があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
具体的な4つの病型は以下の通りです。
メランコリー型 | 非定型 | 季節型 | 産後 | |
---|---|---|---|---|
特徴 | 典型的なうつ病のタイプで、仕事や責務に適応しているうちに脳のエネルギーが枯れてしまうもの | ストレスを感じるときには気分が落ち込むが、遊ぶときなどには気分が良くなるもの | うつ症状を半年程度のサイクルで毎年繰り返すもので、夏季うつ病と冬季うつ病がある | 産後4週間以内に発症するもの |
症状 | 食欲不振、体重減少、気分の落ち込み、過度な罪悪感など | 過食傾向による体重増加、過眠、倦怠感など | 過食、過眠、全身の倦怠感、無気力感など | 不眠、食欲不振、強い不安感、無気力感など |
それぞれの型によって効果的な治療方法が異なるため、医師の診断を受けることが大切です。
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うつ病の主な症状

うつ病には心の症状と体の症状があります。
ここではそれぞれの具体的な症状について解説します。
心の症状
うつ病の心の症状には以下のようなものがあります。
- 憂うつな気分が一日中続く
- イライラする、怒りっぽくなる
- 疲れやすくなる
- 何もやる気になれない
- 自分に価値がないように思える
- 集中力がなくなる
- 涙もろくなる
- 飲酒量が増える
うつ病になると何をしていても憂うつな気分になってしまいます。
典型的なうつ病のタイプだと、自分にとって良いことが起こっても、気分が落ち込んだ状態が続いてしまいます。
心の症状は自分で自覚しづらいものでもあり、重症化してしまうことも少なくありません。
上記のような症状が2週間以上続き、従来の社会生活が困難な状態になると、うつ病と診断されます。
体の症状
うつ病の体の症状には以下のようなものがあります。
- 食欲がなくなる
- 性欲がなくなる
- 眠れなかったり寝すぎてしまったりする
- 体が疲れやすくなる
- 頭痛・肩こり
- 動悸
- めまい
- 胃の不快感
- 便秘・下痢
心と体の症状で当てはまるものが多い場合、うつ病の可能性があります。
なるべく早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。
うつ病の主な原因はストレス

うつ病の主な原因はストレスです。
ストレスにもさまざまなものがありますが、なかでもうつ病を引き起こしやすいのが『大切な人を失う喪失感』『人間関係のトラブル』『環境の変化』などです。
上記の要因は大きなストレスを抱え込みやすいため、特に注意が必要となります。
またほかにもうつ病を引き起こす恐れのある要因として、身体的要因や性格、遺伝などが挙げられます。
環境要因
うつ病発症のきっかけとなりやすい環境要因には以下のようなものがあります。
- 大切な人との死別や離別
- 仕事や財産の喪失
- 人間関係のトラブル
- 環境の変化
環境の変化は、具体的に就職や退職、結婚、離婚、妊娠、育児、引越しなどがあります。
身体的要因
うつ病発症のきっかけとなり得る身体的要因には以下のようなものがあります。
- 慢性疲労
- 脳・神経疾患(脳血管障害、パーキンソン病など)
- 身体疾患(がん、甲状腺機能異常など)
- ホルモンバランスの変化
- 服用中の薬剤の影響
脳・神経疾患や身体疾患などが原因となってうつ病を引き起こすこともありますが、特に注意が必要なのが服用中の薬剤の影響です。
病気の治療のために服用する薬の副作用によって発症するうつ病を『薬剤惹起性うつ病』といいます。
薬剤惹起性うつ病を起こしうる医薬品としては、インターフェロン製剤や副腎皮質ステロイド薬、降圧薬、抗ヒスタミン薬、経口避妊薬などが挙げられます。
薬の服用中にうつ病のような症状がみられた場合は、すぐに医師に相談しましょう。
性格
ストレスを感じやすい性格の場合、うつ病を発症するリスクが高まります。
うつ病になりやすい性格は『メランコリー親和型性格』や『執着気質』などです。
メランコリー親和型性格は責任感が強く生真面目な性格で、調和を重んじるために周囲の人々に合わせて疲れやすい傾向があります。
周囲の環境の変化にも敏感で、ストレスを感じやすい性格です。
執着気質はメランコリー親和型性格と同様に責任感が強く生真面目な性格ですが、自分と同じくまじめな対応を周囲にも求める特徴があります。
周囲に求めたものが裏切られるという状況が続くと、自分ですべて抱え込んでしまいます。
完璧主義な一面もあるため、目標のために頑張りすぎてしまうことがあり、それがストレスの要因となってしまう性格です。
ただこの性格だからダメということではなく、あくまでも危険因子の一つであるため、重くとらえないようにしましょう。
遺伝や遺伝子
うつ病の原因として、遺伝や遺伝子も関係していることが明らかになっています。
精神の安定をもたらすセロトニンという脳内物質の分泌量を調整する『セロトニントランスポーター遺伝子』には、SS型、SL型、LL型の3つの種類があります。
このうちSS型の遺伝子は不安を感じやすい傾向にあり、うつ病のリスクが高まるため注意が必要です。
病気
病気が原因でうつ病を引き起こすことがあります。
病気自体の症状ではなくても、例えば病気の治療のために長期に渡って食事制限が必要となると、それがストレスとなることがあるのです。
うつ病の治療方法

うつ病の主な治療方法は以下の通りです。
- 休養
- 薬物療法
- 精神療法
- その他の治療方法
ここでは上記4つの治療方法についてそれぞれ解説します。
休養
十分な休養を取るのはうつ病治療の基本です。
学校や職場、家庭などで受けるストレスを少しでも減らせるよう、環境を整えることが大切です。
例えば残業時間を減らす、職場での配置転換をしてもらう、家族に家事を手伝ってもらう、一時的に休んで自宅で過ごすなどが挙げられます。
またうつ病の症状には睡眠障害や食欲不振などもありますが、これらを改善するためには規則正しい生活習慣を身につけることが大切です。
バランスのとれた食事や十分な睡眠時間の確保を意識し、生活リズムを整えましょう。
薬物療法
休養と同じくうつ病の治療の基本となるのが薬物療法です。
うつ病の治療に使われる薬には以下のようなものがあります。
- 抗うつ薬
- 抗不安薬
- 睡眠導入薬
- 気分安定薬
- 非定型抗精神病薬
多くの場合は最初に処方された抗うつ薬で改善しますが、効き目が微妙であれば別の種類に切り替えます。
薬物療法は服用し続けてすぐに効果が現れるわけではないため、焦らず地道に服用し続けることが大切です。
飲めば飲むほど効果が現れるというものではないため、必ず医師の指示に従って用法・用量を守って服用しましょう。
精神療法
精神療法は、うつ病の原因となっているストレスや生活・社会環境、性格傾向などを見つめなおし、改善していく治療方法です。
精神療法には『認知行動療法』や『対人関係療法』、『森田療法』、『内観療法』などさまざまな治療方法があります。
上記のような治療方法を通してストレスを軽減したり考え方の癖を改善したりすることで、根本的原因を取り除いていきます。
その他の治療方法
うつ病のその他の治療方法として、運動療法や高照度光療法、修正型電気けいれん療法(m-ECT)、経頭蓋磁気刺激法(TMS)などがあります。
- 運動療法:ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を行う治療方法
- 高照度光療法:照明器具で網膜に刺激を与える治療方法
- 修正型電気けいれん療法(m-ECT):全身麻酔と筋肉けいれんを抑える薬を使用し、脳に数秒間の電気刺激を与える治療方法
- 経頭蓋磁気刺激法(TMS):脳に繰り返し磁気による刺激を与えることで、脳の働きを制御する治療方法
それぞれの治療方法にメリット・デメリットがあるため、気になる方は医療機関に相談してみましょう。
かもみーるではうつ病の患者さんに対し、医師の判断のもとTMS治療を行っています。
TMS治療が気になる方は当院までご相談ください。
うつ病のセルフケア方法

うつ病のセルフケア方法として、以下の4つが挙げられます。
- 栄養バランスの整った食事を摂る
- 適度に運動する
- 質の良い睡眠をとる
- ストレスをため込まない
ここでは上記4つのセルフケア方法について解説します。
栄養バランスの整った食事を摂る
良好なメンタルヘルス状態を保つためには、栄養バランスの整った食事を摂ることが大切です。
具体的には以下のようなポイントを意識するとよいでしょう。
- 塩分・脂質・糖質の摂取量を控えめにする
- 野菜を多めに摂取する
- 肉・魚・卵などに含まれる良質なたんぱく質を摂取する
- 青魚に含まれるDHA・EPAを積極的に摂取する
また上記のほか、1日3食きちんと食事を摂ることも大切です。
朝食をしっかりとることで身体のバランスが整いやすくなり、うつ病の改善につながります。
適度に運動する
適度に運動することで、ストレスを緩和したりリラックス効果を得たりできます。
いきなり強度の高い運動をするのではなく、息が上がらない程度の有酸素運動をすることが大切です。
ウォーキングやジョギングは手軽に始められるおすすめの運動種目で、1日60分以上歩くことが推奨されます。
始めは5分、10分程度のウォーキングでもよいため、積極的に運動する習慣をつけてみましょう。
質の良い睡眠をとる
心身の疲労を回復するためには、質の良い睡眠をとることが大切です。
毎日十分な睡眠時間を確保するためのポイントとして、以下が挙げられます。
- 早寝早起きの生活習慣をつける
- 喫煙・飲酒を控える
- 夜間にパソコンやスマホを使用しない
- 適度に運動する
眠れない場合は無理に眠るのではなく、眠くなってから布団に入るようにしましょう。
そしていつもの時間に起きるようにすることで、少しずつ生活リズムを整えられます。
ストレスをため込まない
うつ病のセルフケア方法として、ストレスをため込まないことも大切です。
自分の考え方の癖(自分を責めすぎる、一人で抱え込むなど)が原因でストレスが溜まってしまうこともあるため、一度自分自身を見つめなおしてみるのも一つの方法です。
またリラクゼーションによって体の緊張をほぐすことで、心を楽にすることもできます。
アロマテラピーや入浴、音楽などのリラックスできる方法を見つけておくとよいでしょう。
原因を知って適切なうつ病の治療を
うつ病の主な原因はストレスですが、ストレスを引き起こす要因としては環境要因や身体的要因、性格、遺伝子などさまざまなものがあります。
うつ病の症状を改善するためには、どの原因によってストレスを感じているのかを把握し、ストレス要因からなるべく離れることが大切です。
また医療機関では専門的な治療によってうつ病の症状にアプローチできるため、持続的な憂うつな気分に悩んでいる方は受診を検討してみてください。
『かもみーる』では、医師監修のオンラインカウンセリングを行っています。
「うつ病の症状に悩んでいる」「心療内科を受診すべきかわからない」などのお悩みをお持ちの方は、ぜひ当院までご相談ください。
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