うつ病の末期症状とは?重症化の原因や発症の兆候、治療の経過などを紹介

更新日 2025年03月11日

うつ病
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うつ病は慢性的な気分の落ち込みや倦怠感を伴う精神疾患のひとつで、最悪の場合は自殺や自殺未遂につながるケースもあります。

うつ病の診断は医師によって行われますが、症状が長引いたり悪化したりすると回復に時間がかかるため、自身や周囲が初期症状に早めに気が付いて医療機関を受診することが大切です。

この記事では、うつ病の末期症状や重症化の原因、発症の兆候について紹介します。

うつ病に早めに気が付くため、悪化する前に対処するための参考にしてください。

うつ病に末期症状はある?

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うつ病は重症化するケースがある疾患で、悪化すると死にたい・自殺したいという思考になる可能性があります。

医学における末期症状とは、治療が極めて困難または不可能な状態で死に近付いている場合に使われるケースが多いです。

うつ病は直接的に死に関わる疾患ではなく、治療によって回復する見込みがあるため、末期症状という表現はあまり適切ではありません。

しかし、うつ病は軽度・中等度と段階を踏んで重症化するリスクがある疾患で、それに伴い症状にも変化がみられます。

重症化したうつ病では、希死念慮や実際に自殺によって命を落とすケースがあるため、早い段階での治療開始が重要です。

この記事では、「うつ病の末期症状」について、「うつ病で見られる症状の中でも特に重度のもの」として紹介していきます。

うつ病でみられる症状の兆候(サイン)

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以下の症状は、うつ病の兆候である可能性があります。

気になる症状がある場合は、重症化する前に早めに精神科や心療内科を受診しましょう。

睡眠の問題が生じる

うつ病では、寝つきが悪い、目覚めが悪い、夜中・朝早くに目が覚めるなどの睡眠の問題が生じることがあります。

• 入眠困難
• 早朝覚醒
• 中途覚醒

うつ病と睡眠障害は互いに影響を及ぼし合い、うつ病は睡眠障害を、睡眠障害はうつ病を併発しやすいとされています。

特に早朝覚醒は、うつ病の患者さんが抱える睡眠の問題のなかでも多いため、診断の手がかりとしても有効です。

うつ病における過眠・強い眠気の症状については、こちらの記事も合わせてご覧ください。

うつ病でずっと眠い・強い眠気の原因は?過眠との関係や対処法も解説

食欲の不自然な変化

うつ病では食欲が著しく低下するケースが多いですが、反対に過食や甘いものを異常に欲する症状がみられる場合もあります。

• 食欲不振
• 過食

食欲が低下しても、食べないとダメだと考えることで無理をして食事をするケースがありますが、食事を楽しいと感じないため、美味しく食べることも難しくなる可能性が高いです。

食事を摂らなくなると体重や体力の減少を引き起こすため、体調の悪化や疲労感の増加につながります。

興味や関心がなくなる

うつ病になると、趣味や好きだったものへの関心が薄れたり、人と関わるのをめんどくさがったりする傾向があり、身だしなみにも気を遣わなくなる可能性があります。

• 趣味や娯楽に対する楽しい・嬉しいの感情が薄れる
• 人と会うのが億劫になる
• 身だしなみに気を遣わなくなる

夢中になっていたことや面白かったテレビ番組などにも関心がなくなり、毎日がつまらなくなる症状がみられます。

物事を楽しいと感じなくなることで家でぼーっと過ごす時間が増え、周囲の目には人が変わってしまったように映るケースも多いです。

無気力感・無価値観がある

うつ病では、無気力で何もやる気がしなくなったり、自己肯定感が低下したりします。

• 何もやる気が起きない
• 日常動作をだるいと感じる
• 自分を否定し、自信を喪失する

例えば、「今日は疲れたから・仕事が休みの日だから何もしたくない」と考えるのは誰にでも経験があると思いますが、うつ病ではそれが毎日のように続いたり、トイレや歯磨きなどの日常動作に対しても感じる可能性があります。

また自分に対して異常なほど悲観的になり、何に対しても自分が悪い・迷惑な存在だと感じる傾向があります。

頭が上手く働かない

うつ病になると、頭が上手く働かないことで判断力が低下し、些細なミスが増えたり集中力が低下しやすくなったりします。

• 集中力が続かず、些細なミスが増える
• 仕事や勉強に身が入らない
• 簡単なことでも決断・判断がすぐにできない

考えることや集中することを意識しても、頭が思いつかなかったり、途中で関係ない思考に陥ってしまう傾向があります。

加えて、考えが頭に浮かんでもすぐに忘れてしまうなどのパターンもあるため、一つのことを思考することに時間を要し、判断力の低下につながります。

また、普段真面目な人が遅刻や欠席をしがちになった場合はうつ病の前兆である可能性があるため、本人だけではなく周囲の人が異変に気付くことも大切です。

焦燥感やイライラを感じやすくなる

うつ病では、不安や焦り、イライラなどの精神状態になるケースが多いです。

• 些細なこと、または理由もないのに焦りを感じる
• 短気で気難しくなる
• 他人に対して攻撃的になる

通常ではそこまで気にならないはずのことが受け流せず、些細なことや理由がないことに不安や焦りを感じやすくなります。

高齢者のうつ病では焦燥感が強くなりやすい傾向があり、それに加えて落ち着いていることが出来ずにそわそわと歩き回ったり身体をずっと動かしたりするケースが多いです。

また男性のうつ病では、イライラしやすい、攻撃的・短気などの症状が現れる可能性が高まる傾向にあります。

常に表情が暗い

うつ病になると気持ちが沈むことで暗い状態が慢性化し、楽しいと感じる感情がほとんどなくなります。

• 涙もろく、口数が少ない
• 楽しいと感じることがほとんどなくなる
• 常に悲しい・虚しい気持ちでいる

周りが楽しそうにしていたり、にぎやかな雰囲気の場所にいたりしてもそれに心が動くことがなく、ただ孤独を感じて気持ちは沈んでいきます。

悲しい・虚しいという感情を常に感じていて、その原因がわからなかったり理由がなかったりするケースも多いです。

またうつ病の前兆では涙もろさがよくみられ、些細なことで泣いたり、理由がわからないのに涙が止まらなかったりするなどの症状が現れます。

さまざまな身体症状が現れる

うつ病では、メンタル面の不調以外に身体症状が現れるケースも多いです。

• 締め付けるような頭の痛み
• 動悸・息切れ
• 肩こり・腰痛・関節痛
• 胃腸の不調
• 冷汗・ふらつき
• 生理不順

うつ病でみられる身体症状は一時的なものではなく、数週間続いたり、朝に特に強くなる症状を日常的に感じたりする傾向があります。

原因不明の身体症状と、うつ病の兆候のような症状がみられる場合は早めに精神科・心療内科を受診しましょう。

医師監修のオンラインカウンセリングサービス『かもみーる』では、電話やzoomによる相談だけの利用も可能です。

うつ病に伴う身体症状については、こちらの記事も合わせてご覧ください。

うつ病になると疲れやすい?主な症状や疲れを軽減する方法について解説

うつ病と動悸の意外な関係|原因・対処法や受診目安を解説

重度のうつ病でみられる症状

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うつ病が軽度・中等度の段階を経て重度まで進行すると、以下の症状がみられます。

• 死をほのめかす発言・行動がみられる
• 家から1歩も出られない
• 日常生活を送ることが困難になる

重度のうつ病では、日常生活を送ることが難しくなってしまうほか、死ぬことについて考える(希死念慮)可能性があります。

人とコミュニケーションが取れないことはおろか、寝たきりになり飲食もままならない状態になるケースもあります。

希死念慮がみられるだけではなく、生活が困難になることで命が危険にさらされる可能性があるため、場合によっては入院治療が必要です。

うつ病でみられる末期症状

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うつ病が最悪の状態まで悪化すると、実際に命に関わる行動をとってしまう危険があります。

うつ病の患者さんに以下の行動がみられた場合は要注意です。

• 前触れなく家出や失踪をする
• 遺書を用意する
• 身辺整理をする
• 自殺に必要な道具を用意する
• 実際に自殺未遂をする

うつ病の患者さんにとって死は苦痛から逃れるための手段であって、目的ではありません。

死にたいと感じるのは、自分はいない方がいい、他人に迷惑をかけているという強い苦しみからくる感情です。

しかし、判断力の低下や偏った思考で死ぬ以外の選択肢が考えられなかったり、苦しみが死の恐怖を上回ってしまったりすることで実際に自殺をしてしまう可能性があります。

末期のうつ病患者さんは、口癖のように死にたい・消えたい・生きているのが辛いなどの発言をする場合がありますが、何を話しても無駄だと考えることで何も話さなくなってしまうケースも少なくありません。

家族や身内でうつ病の兆候がある人と対話が困難な状態のときは、危険性の判断がより難しくなるため、早急に専門家に相談することを強く推奨します。

うつ病を重症化させる要因

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ここでは、うつ病が悪化する原因や、悪化したと感じる原因について詳しく解説します。

抗うつ薬の効果が十分発揮されていない

抗うつ薬は、飲み始めて間もない・自分に合っていないなどの理由で十分効果が発揮されないと、治療が上手く進まずに悪化したと感じる可能性があります。

抗うつ薬には即効性がなく、効果が得られるまでに飲み始めてから2~4週間かかることが一般的です。

抗うつ薬は合う・合わないがあるため、思うように効き目が感じられないケースもあります。

最初の抗うつ薬が合わない場合、その他の種類を順番に試す必要がありますが、自分に合うものが選択されないとなかなか効果が得られず、つらさを感じてしまうことがあるでしょう。

また、難治性うつ病や治療抵抗性うつ病などの特徴がある場合は薬物治療が難しく、精神療法やその他の治療法を行う必要があります。

薬の副作用で悪化したと感じる

抗うつ薬は副作用で倦怠感・食欲低下・日中の眠気などを症状を伴うケースがあり、これがうつ病で現れる症状と似ているため、悪化していると感じる場合があります。

身体が薬に慣れることで症状は緩和されますが、薬の種類が合わない場合や個人差によっては良くならない可能性もあります。

その場合は医師による減薬・中断などの判断が必要なため、自己判断で薬を減らしたりやめたりせずに一度相談しましょう。

ストレスを抱え込みやすい性格

完璧主義の人や責任感の強い人、自分に自信がない人はストレスを溜めこみやすく、うつ病が重症化する原因になります。

これらの特性がある人は、悩みや困りごとがあっても人に頼れなかったり、感情を表に出さずに抱え込んでしまったりしやすいです。

その結果、ストレスが蓄積してうつ病が悪化する傾向があります。

このようなケースでは、自分の特性を理解してストレスへの対処法・考え方を修正する認知行動療法が有効です。

うつ病治療の経過とかかる期間

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うつ病の治療は、基本的に3つのステップに分けて進められます。

ここからは、うつ病の治療開始から社会復帰までの過程やかかる期間を紹介します。

急性期

十分な休養と適切な対処を行うことで回復していきますが、症状が出やすい期間でもあるため、焦らずゆっくり治療を受けましょう。

薬の効き方や治療環境によって半年かかる人もいますが、大切なのはかかる期間ではなくストレスの原因から距離をとって心身の休息を優先することです。

急性期を過ごすための環境は、本人の負担を少しでも軽減するために周囲の人が協力して整えてあげることも大切です。

嫌がることの無理強いを避けたり、悲観的な思考になった際にフォローしたりすることを意識しましょう。

回復期

回復期は、うつ病の治療開始から約4週間〜半年までの期間を指し、体調が良い状態と優れない状態を繰り返しながら回復に向かっていきます。

調子が良い状態が続くことで回復したと感じて油断してしまうケースがあったり、反対に不調が続くことでもう治らないのではないかと落ち込んでしまうケースがあったりします。

途中で治療をやめたり、諦めてしまったりすると再び症状が悪化し、回復までさらに時間がかかる可能性があるため注意が必要です。

体調が良くても無理はせず、休養を十分にとりながら社会復帰に向けて生活リズムを整えていきましょう。

再発予防期

うつ病の治療を始めてから1〜2年までの期間を再発予防期といい、症状が治る兆しが見え始める時期ですが、同時に再発防止への注意が必要な時期でもあります。

社会復帰を実現できる人も現れ始めますが、うつ病は再発しやすい疾患であるため、薬物治療や経過観察を続けながら調子のいい状態を維持することが大切です。

また周囲の人が変化に気が付くことも重要で、再発のサインがみられた場合にすぐに気が付けるように見守ってあげる工夫をしましょう。

うつ病が重症化する前に相談・治療することが大切

重症化したうつ病でみられる症状や、発症の兆候について紹介しました、

うつ病が重度にまで進行すると、実際に命に関わる行動を取ってしまうだけではなく、受診につなげられたとしても回復までに長期間を要したり、生涯にわたって治療を受け続ける必要が出てきたりします。

症状が長期化することで心身の健康にも大きな影響を及ぼすため、早期発見・治療のためにもうつ病について理解を深め、本人だけではなく周囲の人も異変に気が付けるように努めることが大切です。

かもみーる』は、医師のほか、臨床心理士や公認心理師などの有資格者のみが在籍するオンライン診療・カウンセリングサービスです。

悩み相談だけではなく、電話・zoomでの認知行動療法や休職のための診断書の発行も可能で、うつ病で外出が困難な患者さんでもご自宅から気軽に利用できます。

オンライン診療・カウンセリングに加えて『かもみーる心のクリニック』(東京院)では対面診療TMS治療もご利用いただけます。

うつ病の兆候を感じている人や、家族に心療内科を勧められた人はぜひ一度ご相談ください。