うつ病と動悸の意外な関係|原因・対処法や受診目安を解説
更新日 2025年03月26日

「何もしていないのに心臓がバクバクする」
「胸が苦しくて息ができない」
実は、このような動悸の症状は、単なる疲れや心臓の問題だけでなく、うつ病などの精神疾患が原因となっているケースも少なくありません。
うつ病は心の症状だけでなく、動悸や息苦しさといった身体症状としても表れることがあります。
この記事では、動悸とうつ病の関係や見分け方、対処法と適切な診療科の選び方までを詳しく解説します。
ご自身の身体の不調に悩んでいる方、大切な人の変化が気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。
動悸の正体とうつ病との関係

胸がドキドキする、息が苦しくなる、心臓が早く鼓動している。
このような症状は『動悸』と呼ばれるもので、実は精神疾患であるうつ病と深い関わりがあります。
動悸には主に3つのパターンがあります。
パターン | 特徴 | 関連する可能性 |
---|---|---|
脈が速い | ドキドキと脈拍が早くなる | 身体の病気である可能性 |
鼓動が大きい | ドクンドクンと心臓の鼓動を強く感じる | ストレスが原因となっている可能性 |
脈が不規則 | 脈が飛んだり詰まったりする | 不整脈の一種である可能性 |
なかでも『脈が速い』というタイプの動悸は、医療的な治療が必要な身体の病気が潜んでいる恐れがあるため注意が必要です。
うつ病に関連する動悸の特徴
うつ病による動悸では、何もしていないのに胸がバクバクしたり、静かな場所や一人でいるときに大きな鼓動を感じたりするという特徴があります。
これは実際に心臓の働きが変化しているだけでなく、ストレスや不安によって通常の鼓動をより強く感じる過敏状態になっているためです。
うつ病の方は自律神経のバランスが崩れやすく、交感神経が優位になることで心拍数の上昇や心筋収縮力の増加が起こります。
これが動悸として感じられる原因です。
うつ病について、詳しくはこちらの記事もご覧ください。
パニック障害とうつ病の併発
パニック障害とうつ病は併発するケースが少なくありません。
これらはどちらも、脳内の神経伝達物質『セロトニン』の分泌異常が関連しているとされる疾患です。
パニック障害では突然の動悸や息苦しさなどの発作が現れ、『死んでしまうのではないか』という程の強い不安を感じます。
パニック障害の治療には時間がかかるため、その不安やストレスから二次的にうつ症状が発現することもあります。
この場合のうつ病は気分の浮き沈みが激しい非定型うつ病の特徴を示すケースが多いです。
パニック障害について、詳しくはこちらの記事もご覧ください。
▶︎パニック障害の原因は?ストレスとの関係や発症・発作のきっかけついて解説
心臓疾患との違い
動悸が心臓の問題なのか、うつ病などの精神疾患からくるものなのかを見分けるポイントをおさえておきましょう。
【心臓疾患の可能性が考えられるケース】
- 運動や活動後でないのに突然始まる
- 動悸と共に胸痛や息切れがある
- 動悸が長時間(30分以上)続く
- 高齢者や心臓病の既往がある方の動悸
【うつ病など精神的な原因が高いケース】
- ストレスを感じたあとに起こる動悸
- 夜間や一人でいるときに強く感じる
- 不安を感じると悪化する
- 他の精神症状(意欲低下、睡眠障害など)もあわせて現れる
動悸の原因が分からないときは、自己判断せずに医療機関を受診することが大切です。
まずは内科や循環器内科で身体的な問題がないか確認し、必要に応じて心療内科や精神科を受診するのをおすすめします。
仮面うつ病とは?心より先に体が発するSOSサイン

うつ病というと、『気分が落ち込む』『何も楽しめない』といった心の症状を思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし、動悸や頭痛などの身体症状が主に現れ、心の症状が目立たないタイプのうつ病に『仮面うつ病』と呼ばれるものがあります。
なぜ身体症状が先に現れるのか
仮面うつ病で身体症状が先に現れるのは、脳内の神経伝達物質バランスの乱れが理由です。
うつ病になると、神経伝達物質が影響を受けて脳の機能低下が起き、これが身体にさまざまな不調として表れます。
また、心の症状より身体症状を訴える方が周囲の理解を得やすいという心理的要因も関係しています。
【仮面うつ病の身体症状の特徴】
- 疲労感や倦怠感が強く日常生活に支障をきたす
- 頭痛や肩こりなどの痛みが続く
- 動悸や息苦しさを頻繁に感じる
- 食欲の変化(減退または増加)がある
- 睡眠の問題(不眠または過眠)がある
とりわけ日本では『心の問題』を表面化させるのに抵抗を感じる文化的背景があるため、無意識に身体症状として表現してしまうことがあります。
見過ごされがちな初期症状と早期発見のポイント
うつ病は、一般的な検査で異常が見つからないため原因不明の不調として片付けられてしまうことがあります。
そのため発見が遅れ、症状が悪化してから心の症状も表面化するケースが少なくありません。
以下のような状況に心当たりがある場合は、うつ病の可能性を考慮してみましょう。
見過ごされがちな兆候 | 説明 |
---|---|
幾つも病院を受診しても原因が見つからない | 検査結果に異常がないにもかかわらず身体の不調が続く |
症状が徐々に増えてくる | 一つの症状から徐々に異なる不調も感じるようになる |
休息しても疲れが取れない | 十分な睡眠をとっても疲労感が改善しない |
朝方に症状が悪化する | 朝起きたときに強い倦怠感や気分の落ち込みを感じる |
治療の効果が限定的 | 痛み止めなどの対症療法が一時的にしか効かない |
うつ病の早期発見のためには、持続する身体症状だけでなく、生活の変化や気分の微妙な変動にも注意を払うのが大切です。
例えば、以前は楽しめていた趣味に興味を持てなくなった、ささいなことで疲れを感じるようになったなどの変化がみられたら、うつ病の可能性を考慮してみましょう。
早期の診断と適切な治療によって症状の悪化を防ぎ、回復への道に踏み出せます。
うつ病で現れる他の身体症状

うつ病は心だけでなく、身体にもさまざまな形で影響を及ぼします。
動悸以外にも多くの身体症状が現れることがあり、これらを知っておくとうつ病の早期発見につながります。
睡眠障害:うつ病患者の80%以上が経験
睡眠の問題はうつ病患者さんの多くが経験する症状です。
うつ病の方の睡眠障害には次のような特徴があります。
睡眠障害のタイプ | 特徴 |
---|---|
入眠障害 | ・なかなか寝付けない・寝付くのに時間がかかる |
中途覚醒 | 夜中に何度も目が覚めてしまう |
早朝覚醒 | 予定より早く目が覚め、その後眠れない |
熟眠障害 | 眠りが浅く休んだ感じがしない |
これらの睡眠の問題が続くと、体内リズムが乱れ、日中の倦怠感や集中力の低下にもつながります。
『朝起きても疲れが取れていない』という感覚は、うつ病の重要なサインかもしれません。
疲労感・倦怠感:小さな動作でも疲れを感じる
うつ病による疲労感や倦怠感は、通常の疲れとは質が異なります。
その特徴として、以下のような点が挙げられます。
- すぐに疲れてしまい最低限の家事や仕事をするのにも大きな労力が必要
- 休息を十分取っても疲れが改善しない
- とりわけ朝方に強い倦怠感を感じる
- 体が鉛のように重く感じられる
うつ病の疲労感は、洗顔や着替えといった日常的な動作でも疲れを感じる程強いものです。
『何もしていないのに疲れる』という状態が続く場合は、うつ病の可能性を考慮するとよいでしょう。
息苦しさや口の渇き:自律神経の乱れのサイン
うつ病になると自律神経のバランスが崩れやすくなり、その結果、次のような症状が現れることがあります。
- 息苦しさや呼吸が浅くなる感覚
- 喉の違和感やつかえ感
- 口の渇き
- めまいやふらつき
- 消化器系の不調(胃もたれ、便秘、下痢など)
- 頭痛や肩こり
これらの症状は、一見するとうつ病とは無関係に思えるかもしれません。
しかし、検査で身体に異常が見つからないにもかかわらずこのような症状が複数あり、さらに長期間続く場合は、うつ病などの精神疾患が隠れている可能性があります。
自律神経は体中を張り巡っている神経のため、うつ病による自律神経の乱れは全身にさまざまな影響を及ぼします。
うつ病の治療においては、心の症状だけでなく、これらの身体症状にも適切に対応するのが重要です。
うつ病の症状について、詳しくはこちらの記事もご覧ください。
▶︎うつ病の初期症状?12のサイン丨受診目安・対処法・顔つきの変化も解説
▶うつ病を9種類に分けて症状・原因別に解説!重症度や間違われやすい病気も
動悸を感じたときの対処法とセルフケア

ここでは、動悸を感じたときにすぐに実践できる対処法と、長期的な予防につながるセルフケア法を紹介します。
すぐにできる対処法:深呼吸とリラクセーション法
動悸を感じたら、まずは落ち着いて対応することが大切です。
以下の方法を試してみましょう。
対処法 | 実践方法 |
---|---|
深呼吸 | 鼻から4秒かけてゆっくり息を吸い、6秒かけて口から吐き出す |
4-7-8呼吸法 | 4秒で息を吸い、7秒間息を止め、8秒かけて吐き出す |
筋弛緩法 | 全身の筋肉に力を入れたあと、一気に脱力する |
冷タオル | 冷たい水で濡らしたタオルを首や手首に当てる |
これらは自律神経のバランスを整え、過剰な交感神経の働きを抑える効果があります。
とりわけ意識的な呼吸法は、すぐに実践でき、効果も感じやすい方法です。
生活習慣の見直し:睡眠・カフェイン・アルコール
日常生活のなかで、次のような点に注意することで動悸の予防につながります。
【睡眠の質を高める】
- 決まった時間に起床・就寝する
- 寝る前のスマホやパソコンの使用を避ける
- 寝室は静かで暗く、適温に保つ
【食事と飲み物における注意点】
- カフェインの摂取を控える(コーヒー、緑茶、エナジードリンクなど)
- アルコールは適量にとどめる
- 規則正しい食事を心がける
【適度な運動を取り入れる】
- ウォーキングやヨガなどの軽い運動から始める
- 無理のない範囲で継続的に行う
これらの習慣改善は自律神経の安定につながり、動悸だけでなくうつ病の症状全体の改善にも効果があります。
いつ病院を受診したらよいか
セルフケアで対応できる範囲を超えたと感じたら、早めに医療機関の受診を検討しましょう。
- 動悸が10分以上続く
- 動悸と一緒に胸の痛みや激しい息切れがある
- 意識がもうろうとする、めまいがひどい
- 動悸の頻度や強さが増している
- 自分でコントロールできず不安が強い
ただの疲れや年齢のせいと安易に考えず、気になる症状があれば専門家に相談することが大切です。
動悸の原因によっては、早い段階で治療が必要な場合もあります。
セルフケアと適切な医療を組み合わせることで、動悸やうつ症状の改善につながります。
一人で抱え込まず、体と心の声に耳を傾けながら対処しましょう。
動悸やうつ症状があるときの診療科の選び方と新しい治療法

動悸やうつ症状を感じたとき、どの診療科を受診すればよいのか迷うことがあるかもしれません。
適切な診療科選びが症状改善への第一歩となります。
最初に受診する診療科は?
動悸が気になるときは、まずは内科や循環器内科を受診するのをおすすめします。
ここで血液検査、心電図、胸部レントゲン写真などの検査を行い、身体的な原因を調べます。
検査で体に異常が見つからなければ、心療内科や精神科での診察が必要です。
心因性による動悸と不整脈による動悸は、問診の段階でもある程度区別できることがあります。
循環器内科医は心臓の専門家ですが、それ以外の疾患が原因の動悸を訴える患者さんもたくさん診察しているため、診断がスムーズに進む場合が多いです。
うつ病治療の選択肢
うつ病やパニック障害に対する治療法としては、薬物療法や認知行動療法などがあります。
最近では経頭蓋磁気刺激法(TMS)という新しい治療法も注目されています。
これは薬物療法とは異なり、副作用が殆どなく、侵襲性の少ない治療法です。
週に2〜3回の通院で効果が期待できる方法として、うつ病やパニック障害などの治療に用いられています。
また、外出が難しい時期はオンラインで診察やカウンセリングを受けるのも選択肢の一つです。
自宅から出ることなく診察を受けられるため、時間や費用の節約にもつながります。
オンライン診察・カウンセリングについて、詳しくはこちらの記事もご覧ください。
▶︎精神科・心療内科のオンライン診療のメリットとは│流れ&診断書の発行について解説
▶初めてのカウンセリングにかもみーるをおすすめする3つの理由
うつ病による動悸は治療で改善できます
動悸はただの疲れではなく、うつ病やパニック障害のサインかもしれません。
胸がドキドキする、息苦しさを感じるといった症状が続く場合は、自己判断せずに専門家に相談することが大切です。
うつ病は早期発見と適切な治療が回復への鍵となります。
まずは内科や循環器科で身体的な原因を確認し、必要に応じて心療内科や精神科を受診しましょう。
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