うつ病でずっと眠い・強い眠気の原因は?過眠との関係や対処法も解説
更新日 2025年01月01日
うつ病
「寝ても寝ても眠い」
「日中も強い眠気に襲われる」
「十分寝たはずなのに一日中ずっと眠い」
このような症状に悩まされている方は少なくありません。実は、これらの症状はうつ病と深い関係があるのです。
うつ病による過眠は単なる疲れや眠気とは異なります。しかし、その原因や対処法についてはあまり知られていないようです。
この記事では、うつ病と過眠の関係性や症状、原因、そして対処法について詳しく解説します。
うつ病以外の過眠が起こる原因や病気についても解説しますので、「うつ病の眠気がつらい」「過眠の症状があるが、もしかしてうつ病?」などお悩みの方はぜひ記事をチェックしてみてください。
うつ病と過眠の関係

過眠とは、夜に十分な睡眠を取っているにもかかわらず、日中に起きているのが困難なほどの眠気が生じる状態のことです。
うつ病と過眠には密接な関係があります。多くの人がうつ病の症状として不眠を思い浮かべますが、実は過眠もうつ病でよくみられる症状の一つです。
ここでは、うつ病と過眠の関係について詳しく見ていきましょう。
過眠など睡眠の変化はうつ病で見られる症状の一つ
うつ病の診断基準には「ほぼ毎日の不眠または過眠」といった睡眠の変化が含まれ、過眠はうつ病の特徴的な症状の一つです。
うつ病に伴う睡眠の変化や睡眠障害については不眠がよく知られていますが、過眠もうつ病の10〜20%ほどで見られるといわれています。
うつ病など気分障害の過眠の症状は男性より女性に多く見られ、年代では、高齢者よりも若者に多く見られる傾向にあります。(※参照:精神神経学雑誌『気分障害における過眠への対応』)
過眠は気分障害(うつ病・双極性障害)の発症リスクを高める
うつ病は気分障害の一種です。気分障害には大きく分けて「うつ病」と「双極性障害(躁うつ病)」があります。
不眠は気分障害の危険因子になることが知られていますが、過眠も同様に気分障害の発症リスクを高める危険因子であると考えられています。
また、うつ病ではなく他の病気によって過眠の症状が出ている可能性もあります。
「最近寝ても寝ても眠い」「眠気で仕事や家事に支障が出ている」など気になる症状がある場合は早めにクリニックで相談しましょう。
うつ病の再発リスクにも影響している
過眠や不眠の症状は、うつ病の再発リスクにも影響します。
うつ病が治癒した後も約70%の患者さんに過眠の症状が残り、うつ病の再発リスクを高める可能性が指摘 されています。
うつ病で見られる過眠の症状

うつ病では「日中の過度の眠気」「睡眠時間が長くなる」といった症状が見られることがあります。
日中の過度の眠気
日中の過度の眠気とは、目覚めていられないような病的な眠気です。
例えば、「仕事や勉強中などに抗えないほどの強い眠気に襲われる」「会話中や食事中でも眠くなってしまう」「気づいたら眠ってしまっていた」といった症状が挙げられます。
過度の眠気は仕事や学業のパフォーマンスが低下したり、居眠り運転や転倒といった事故のリスクになったりするため、決して放置できない注意すべき症状です。
睡眠時間が長くなる
うつ病では脳内の神経伝達物質のバランスが乱れ、睡眠と覚醒リズムも乱してしまいます。また、イライラや意欲低下、気分の落ち込みと言った症状も、眠気や気だるさを引き起こす原因です。
これが「寝ても寝ても眠く、長く眠ってしまう」「10時間以上眠ってしまう」といった症状につながります。
ただし、過眠ではなく「臥床時間(横になっている時間)の延長」を患者さんが過眠と感じているケースもあり、診察によって実際に起きている症状を明確にする必要があります。
うつ病で見られる過眠以外の症状

うつ病では過眠以外にも、心や身体に多岐にわたる症状が現れます。
精神症状 | 身体症状 |
---|---|
・気分の落ち込み ・意欲低下 ・好きだったことに無関心になる ・集中力や記憶力の低下 ・悪い方に考えてしまう ・希死念慮(自殺念慮)など | ・睡眠障害(過眠や不眠) ・疲れやすい ・だるい ・食欲の変化(過食、食欲不振) ・頭痛やめまい、耳鳴り、肩こりなど |
過眠だけでなく、上記のような症状が続く場合はうつ病の可能性が考えられます。
軽度であれば抗うつ薬などの薬を使わずに治療できることもあるため、早めに医師やカウンセラーに相談してみましょう。
うつ病については以下の記事でも詳しく解説しています。よろしければ合わせてご覧ください。
うつ病で過眠が起こる原因

ここでは、なぜうつ病で過眠が起こるのか、考えられるいくつかの原因について解説します。
うつ病の症状によるもの
まず考えられるのが、うつ病の症状として眠気が起こっているケースです。
セロトニン不足
うつ病は、脳内の神経伝達物質である「セロトニン」や「ノルアドレナリン」が減少してしまう病気であると考えられています。
セロトニンは精神の安定や安心感であると同時に、睡眠に深く関わっている物質です。
セロトニンが不足すると睡眠・覚醒のリズムが乱れることがわかっており、眠りが浅くなり、睡眠の質の低下を引き起こすことで日中の眠気につながります。
(※参照:独立行政法人理化学研究所 独立行政法人科学技術振興機構『睡眠・覚醒機能と24時間リズムをセロトニンが束ねる』)
季節性感情障害(SAD)
季節性感情障害(SAD)は「冬季うつ病」とも呼ばれ、秋から冬にうつ症状が現れ、春や夏になるとよくなるサイクルを繰り返す病気です。
「過眠」「過食」「体重増加」が特徴的な症状で、季節性感情障害の患者さんの約70%に過眠が見られるといいます。
季節性感情障害のメカニズムははっきりはわかっていないものの、冬場の日照時間の減少が原因と考えられています。
うつ病とは正反対の症状が見られるため、本人や周囲が気づかないことが多く、注意が必要です。
▶ うつ病を9種類に分けて症状・原因別に解説!重症度や間違われやすい病気も
回復期の眠気
うつ病の回復過程は「急性期」「回復期」「再発予防期」の3段階に分けられます。回復期は、うつ病の症状が最もつらい時期を乗り越え、少しずつ回復の兆しが見えて来る頃です。
うつ病の回復期には強い眠気を感じることがあり、「10〜12時間以上寝ても眠い」「とにかく眠い」という方もいます。
回復期の眠気の場合、身体が睡眠を必要としているサインだと考えて、眠いときは無理せずゆっくり眠るようにしましょう。
ストレスに対する防衛本能
ストレスは、うつ病の発症や悪化に大きく影響しています。
「寝逃げ」ともいわれるように、ストレスに対する防衛本能の一種として眠気が現れている可能性が考えられます。
ストレスが溜まったとき、起きているとあれこれと考えて不安やイライラ、気分の落ち込みにつながってしまうこともあるでしょう。
眠ってしまえば必要以上に考え込んでしまうのを防ぐことができ、さらに心身の疲労を回復させられるため、寝逃げはメリットもある行動です。
しかし、日常生活に支障が出たり一日中眠い状態が続いたり、ストレスになってしまうケースもあります。
うつ病の治療薬の副作用
すべてのケースではありませんが、中等度〜重度のうつ病の場合、抗うつ薬による薬物療法が行われることがあります。
抗うつ薬には副作用として眠気を引き起こすものがあり、特に服用開始したばかりの頃に症状を感じやすいです。
ただし、抗うつ薬の副作用は多くの場合、時間とともに改善していきます。また、近年は副作用の少ない抗うつ薬が用いられることがほとんどです。
薬の副作用による眠気は、薬の種類や用量の調整によって改善できることが多いため、自己判断で断薬・減薬はせず医師に相談しましょう。
うつ病以外で考えられる過眠・強い眠気の原因

過眠や強い眠気は、うつ病以外にも以下のようなさまざまな原因で起こる可能性があります。
- 睡眠不足
- 睡眠障害
- 双極性障害(躁うつ病)
- 発達障害
- むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)
- その他の原因(身体疾患・薬の影響)
ここからは、それぞれの項目について詳しく解説します。
睡眠不足
必要な睡眠時間には個人差があり、成人の適切な睡眠時間の目安は6〜9時間と幅があります。(参照:厚生労働省「良い睡眠の概要(案)」)
現代社会では仕事や学業のストレス、スマホやパソコンの使用増加などにより、十分な睡眠時間を確保できていない方も少なくありません。
また、本人は十分睡眠時間を確保しているつもりでも、身体はもっと睡眠時間を欲している可能性もあります。
睡眠不足状態が長く続いた状態を「睡眠不足症候群」といい、睡眠不足を取り戻すため睡眠時間が9~10時間と長くなります。
ただし、睡眠不足の場合は十分に睡眠を取れば自然に眠気は無くなるのが普通です。
睡眠障害
過眠はさまざまな睡眠障害の症状として現れることがあります。主な睡眠障害には以下があります。
- NARCOLEPSY(ナルコレプシー)
- 特発性過眠症
- クライネ-レビン症候群
- 周期性四肢運動障害(PLMD)・睡眠時周期性四肢運動(PLMS)
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)
中でもうつ病や双極性障害といった気分障害で合併が多く見られるのが、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)です。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何度も息が止まることで睡眠の質が著しく低下し、日中に過度の眠気が起こる病気です。
通常の有病率が男性3〜7%、女性2〜5%である一方、うつ病では約36.3%、双極性障害では約24.5%と閉塞性睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まることがわかっています。
双極性障害(躁うつ病)
双極性障害(躁うつ病)は、躁状態とうつ状態を繰り返す気分障害です。双極性障害でうつ状態のときには、約半数に過眠が見られることがあります。
発達障害
発達障害と睡眠・覚醒障害(過眠症や不眠症など)は合併しやすく、海外の調査ではADHDの方の47%が日中の過度の眠気を感じ、そのうち22%の方は中枢性過眠症が認められたという結果が出ています。
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)は、足に「痛がゆい」「むずむず、ピリピリする」といった不快な感覚が生じ、動かさずにはいられなくなる神経疾患です。
この症状により睡眠の質が低下し、日中の眠気につながることがあります。
その他の原因(身体疾患・薬の影響)
その他、さまざまな身体疾患や薬の副作用によって過眠が引き起こされている可能性もあります。
- 甲状腺機能低下症
- 慢性疲労症候群
- パーキンソン病
- 脳腫瘍
- 脳炎
- 頭部外傷
- アルコール
- 薬の副作用(抗うつ薬・抗精神病薬・抗不安薬・抗てんかん薬・抗ヒスタミン薬など)
薬の副作用が原因で眠気が起こっていると考えられる場合でも、自己判断で薬を飲むのをやめたり、減らしたりするのは避けてください。必ず前もって医師に相談しましょう。
寝ても寝ても眠い・強い眠気があるときの対処法や注意点

寝ても寝ても眠い・強い眠気がある場合は、以下の対処法や注意点を参考にしてみてください。
- 適度に仮眠を取る
- 寝るときの環境を整える
- カフェインやアルコールを控える
- 危険な作業や操作は避ける
強い眠気がある場合、無理せず適度に仮眠を取った方がいいこともあります。寝すぎてしまうと体内のリズムが乱れてしまうため、15分程度の仮眠を取るとリフレッシュにつながるでしょう。
寝室の湿度・温度・明るさは睡眠の質に影響するため、快適で眠りやすい環境を整えることが大切です。睡眠の質を低下させるカフェインやアルコールは控えましょう。
また、強い眠気があるときは運転や重機械の操作などの危険な作業は行わないようにしてください。事故やケガ防止のためにも、十分注意しましょう。
寝ても寝ても眠い・強い眠気の症状で病院を受診する目安

目安としては、過眠の症状が2週間以上続く場合は、一度クリニックで医師に相談してみましょう。
- 眠気だけでなく、「気分の落ち込み」や「何事も楽しめない」などの症状がある
- 眠気や睡眠時間の延長により日常生活に支障が出ている
- うつ病の症状で過眠が起こっており、悩んでいる
- うつ病の薬の副作用による過眠の可能性がある
また、上記のようなケースの場合は、できるだけ早めにクリニックを受診することをおすすめします。
「ずっと眠い」「寝ても寝ても眠気が取れない」といった症状はうつ病だけでなく、その他のさまざまな病気でも見られる症状です。
適切な治療を受けるためにも、不安な症状がある場合は躊躇せずに医療機関で相談してみましょう。
強い眠気や過眠など気になる症状はクリニックで相談してみよう
うつ病と過眠には密接な関係があり、「寝ても寝ても眠い」「日中も強い眠気に襲われる」といった症状に悩まされている患者さんも多いです。
一方で、うつ病以外にも睡眠障害や他の身体疾患が原因となっている可能性もあります。
うつ病と過眠の問題は複雑で、個人差も大きいため、自己判断だけで対処することはできません。
過眠の原因を正確を突き止め、原因に合った治療を受けるためにも、早めに医師に相談してみましょう。
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