強迫性障害が再発する原因は?予兆や効果的な予防法を解説

更新日 2025年03月06日

blog_image

強迫性障害の治療後、症状が落ち着いたように見えても、ストレスや環境変化をきっかけに再び強迫観念や強迫行為が現れる場合があります。

強迫性障害の再発率は低くはないものの、適切な知識と予防策があれば、再発リスクを減らすことが可能です。

この記事では、強迫性障害が再発するメカニズムから予防法、そして再発してしまった際の対処法まで、症状と上手に付きあっていくためのポイントを解説します。

強迫性障害にお悩みの方はもちろん、そのご家族や支援者の方もぜひ参考にしてみてください。

強迫性障害(OCD)と再発について

強迫性障害(OCD)と再発について

強迫性障害の再発のメカニズムを理解し適切に対処すれば、症状とうまく付きあっていくことができます。

まずは強迫性障害の基本と再発の実態について理解を深めましょう。

強迫性障害の基本

強迫性障害とは、自分の意思に反して特定の考えが頭から離れなかったり、ある行動を繰り返さずにはいられなかったりする精神疾患です。

『手が汚れているかもしれない』『戸締まりができていないかもしれない』といった強迫観念と、それに対処するための手洗いや確認などの強迫行為が特徴です。

患者さんの多くは『これは意味がない』『やめたい』と思っていながら、不安や恐怖から強迫行為をやめられません。

これらの症状によって日常生活に支障が出る状態を強迫性障害といいます。

厚生労働省によると日本では約100万人の患者さんがいると推定され、決して珍しい病気ではありません。

脳内の神経伝達物質であるセロトニンの働きの乱れが原因の一つと考えられていますが、具体的にはまだ解明されていません。

強迫性障害やその他の不安障害について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶︎不安障害の種類別の症状・診断基準┃セルフチェックや治療法も解説

不安障害とその対処法について

再発の実態

強迫性障害は適切な治療を受ければ症状の改善が見込める病気です。

しかし、治療を中断してしまうと、再発してしまうことも珍しくありません

再発の主な原因としては、残遺症状(完全には消えていない症状)との共存を許容してしまうことが挙げられます。

例えば、ある会社員の患者さんは治療により症状が改善し、遅刻せずに出社できるようになりました。

しかし、治療効果が出てきたため自己判断で薬の服用を中止したところ、1ヶ月後に症状が再燃しました。

この方の場合、外出時にドアの鍵を一度だけ確認するという『許容できる範囲』の習慣があり、それが残遺症状として残っていたのです。

ある日仕事でストレスが増加すると、その一度だけの確認が徐々に増え始め、やがて出勤前に10回以上繰り返すようになり、再び日常生活に支障をきたすようになってしまったというケースです。

このように、強迫性障害は症状を消し去れないと、ストレスや環境変化をきっかけに再発するリスクが高まります。

しかし、再発のメカニズムを理解して適切な予防策を講じられれば、再発リスクは減らすことが可能です。

強迫性障害が再発する理由

強迫性障害が再発する理由

強迫性障害の再発には、幾つかの要因が複雑に絡みあっています。

ここでは、強迫性障害が再発する主な理由について詳しく解説します。

一般的な再発率と主な要因

海外のデータによると『寛解率60%・再発率30%』や『寛解率50%・再発率50%』といった報告がありますが、適切な予防策を講じることで再発リスクを下げられます。

再発の主な要因としては、以下が挙げられます。

  • 治療の中断
  • 不完全な寛解
  • 認知行動療法の不十分な実施

薬物療法の効果が出ているからといって自己判断で服用を中止すると、セロトニンなどの脳内物質のバランスが再び崩れやすくなります。

また、症状がある程度まで改善しただけで治療を終えると、残った症状が悪化し再発する恐れがあります。

さらに、認知行動療法、とりわけ曝露反応妨害法を十分に実践しないと不安への対処能力が身につかず、再発を招く原因となりかねません。

残遺症状と再発リスクの関係

強迫性障害の治療において、残遺症状の存在は再発の大きなリスク因子です。

残遺症状は一見生活に支障がなく見えるため、『この程度なら』と患者さん自身も周囲も許容してしまいがちです。

【残遺症状の例】
・特定の順序でなければ行動できない儀式的行為
・家族に確認を求める習慣
・特定の場所や物に対する回避行動

これらは日常生活の一部として習慣化されやすく、ストレスがかかると悪化しやすい特徴があります。

残遺症状を正常な行動の延長線上と捉えてしまうと、どこからが病的な状態なのか判断が難しくなります。

強迫性障害の症状と完全に決別せずに残遺症状との共存を選択してしまうことが、再発の引き金となるケースも少なくありません。

環境・ライフイベントの影響

強迫性障害の再発には、環境変化やライフイベントも大きく影響します。

以下のような状況が再発のきっかけとなる場合があります。

  • 仕事や学校での過剰なストレス
  • 引っ越し、結婚、出産、別居など家庭環境の変化
  • 体調不良や他の病気の発症
  • 不規則な生活習慣による睡眠リズムの乱れ
  • 過度の疲労

強迫性障害は、このようなさまざまな要因が複合的に作用して再発します。

ただし、再発のメカニズムを理解し早期に適切な対応をとれば、症状の悪化を抑えられます。

再発は治療過程の一部と捉え、焦らずに対処していくことが大切です。

再発の予兆と早期発見

再発の予兆と早期発見

強迫性障害の再発を抑えるためには、早期発見が鍵となります。

ここでは、再発の予兆と、どのような状況で再発リスクが高まるかを解説します。

注意する兆候とサイン

通常、強迫性障害の再発時には幾つかの前兆が現れるため、これらのサインに気付くことが早期対応への第一歩です。

主な再発の兆候としては、以下のようなものが挙げられます。

  • ささいな出来事が気になり始める → 不安レベルの上昇
  • 一度克服したはずの確認行為など → 儀式的行動の復活
  • 不安を感じる場所や状況を避けるようになる → 回避行動の増加
  • 『〜しなければならない』という考えが強まる → 思考の柔軟性低下
  • 不安による入眠困難や中途覚醒など → 睡眠の質の低下
  • 不安な思考が邪魔をして集中できなくなる → 集中力の低下

これらの兆候は必ずしも一斉に現れるわけではなく、徐々に、あるいは断続的に現れることもあります。

自分自身の変化には気づきにくい場合もあるため、家族や親しい友人など周囲の人に『変化があれば教えてほしい』と伝えておくのも有効です。

また、症状日記をつけておくと、ご自身の状態の変化を客観的に把握できます。

再発リスクが高まる状況

強迫性障害の再発リスクは、特定の状況下で高まることが知られています。

以下のような状況では、より注意深くご自身の状態を観察することが大切です。

  • 仕事や学業などで過度のストレスがかかる時期
  • 引っ越し、転職、結婚、出産など、大きな環境変化
  • 対人関係でトラブルがあったとき
  • 睡眠不足が続く時期
  • 体調不良のとき
  • 季節の変わり目
  • 薬の減量や頻度の変更など、治療の転換期

これらの状況に直面しているときはセルフケアをより意識的に行い、必要に応じて早めに医療機関に相談するのが望ましいでしょう。

様子を見ようと放置すると症状が悪化し、日常生活に大きな支障をきたす場合があります。

ご自身の状態に敏感になり変化に気付く習慣を身につけることが、強迫性障害と付きあっていくために大切です。

効果的な再発予防法

効果的な再発予防法

強迫性障害の再発を予防するためには、計画的かつ継続的な取り組みが必要です。

ここでは効果的な再発予防の方法について詳しく解説します。

薬物療法の適切な継続

強迫性障害の治療において、薬物療法は重要な柱の一つです。

再発予防のためには、医師の指示に従って服薬を継続するのが重要です。

症状が改善したからといって自己判断で薬を減量したり中止したりすると、高い確率で症状が再燃します。

薬の効果が実感できるようになるまでには通常4〜8週間程度かかることがあり、また、症状が安定したあとも1〜2年程度は薬物療法を継続するよう推奨されています。

減薬を行う場合は少しづつ減らしていくなど慎重に進め、症状の変化に注意を払うのも大切です。

認知行動療法を活用した再発予防

認知行動療法、とりわけ曝露反応妨害法は、強迫性障害の治療において高い効果が実証されている治療法です。

曝露反応妨害法とは、不安を引き起こす状況に意図的に向きあい(曝露)、不安を和らげるための強迫行為を行わない(反応妨害)訓練です。

この方法で身につけた『不安に耐える力』は、再発予防の強力な武器となります。

具体的な認知行動療法を活用した予防方法としては、以下のようなものがあります。

  • 定期的な曝露練習
  • 認知の再構成
  • 不安階層表を作成し段階的に更新する
  • 再発予防プランをあらかじめ計画しておく

治療で学んだスキルを日常生活に取り入れ定期的に実践することで、不安への耐性を維持し、再発リスクを低減できます。

TMS治療

強迫性障害の治療および再発予防において、TMS(経頭蓋磁気刺激)治療も新たな選択肢として注目されています。

TMS治療は脳の特定部位に磁気刺激を与える非侵襲的な治療法で、副作用が少なく通院しながら継続できるのが利点です。

かもみーる心のクリニック』では、強迫性障害の患者さんにTMS治療を提供しています。

iTBS(シータバースト治療法)を主に採用し、1回あたり5〜15分程度の照射を週2〜3日、2週間以上継続することで効果が期待できます。

日常生活での自己管理テクニック

クリニックでの治療と並んで、日常生活での自己管理も再発予防に重要な役割を果たします。

以下のような自己管理テクニックが効果的です。

  • 規則正しい生活リズム
  • ストレス管理
  • 適度な運動
  • 社会的なつながりの維持
  • 症状をモニタリングする
  • 断酒・減酒

再発予防は一つの方法ではなく、薬物療法、認知行動療法、そして日常生活での自己管理を組みあわせた総合的なアプローチが効果的です。

再発してしまったときの対処法

再発してしまったときの対処法

強迫性障害が再発することがあっても、それは治療の失敗ではありません。

再発したとしても適切に対処すれば、症状のコントロールを取り戻せます。

初期対応のポイント

強迫症状の再発に気づいたら、まず落ち着いて対応することが重要です。

パニックになったり自己否定したりせず、冷静に状況を把握しましょう。

初期対応として、以下のステップが効果的です。

  • 状況を客観的に評価する
  • 以前学んだ対処法を思い出す
  • ストレス要因を軽減する
  • 基本的なセルフケアを強化する
  • リラクセーション法を実践する

再発に早期に対応すると症状が重症化する前に改善できるケースも多いため、変化に気づいたらためらわずに行動するのが大切です。

医療機関への再受診と家族の関わり方

自己対処だけでは症状が改善しない場合や、日常生活に支障が出始めた場合は、迷わず再受診をおすすめします。

再受診の際は、症状の変化や再発のきっかけとなった出来事について、できるだけ詳しく医師に伝えることが大切です。

症状日記があれば、それを持参するとよいでしょう。

また、ご家族や周囲の関わりも再発からの回復に大きく影響するため、以下のような点に注意してサポートしましょう。

  • 批判や非難は避ける
  • 共感的な理解を示す
  • 過剰な関与を避ける
  • 適切な距離感を保つ
  • 家族自身もケアを受ける

再発は治癒への道のりの一部として捉え、焦らず着実に対応していくことが大切です。

適切な自己対処と必要に応じた専門家の支援を組みあわせることで、再発からの回復を円滑に進められます。

長期的な回復への考え方

強迫性障害との付きあい方は、『完全な克服』より『症状の適切な管理と対処』と考えるといいでしょう。

長期的な視点をもち、再発を恐れるのではなく回復プロセスの一部として捉えることが大切です。

ご自身の変化に敏感になり早期対処する習慣と、『完璧であるべき』という考えから離れる柔軟性をもつことで、再発の恐怖に縛られず充実した日常を送れるでしょう。

医師監修のオンラインカウンセリングサービス『かもみーる』では、強迫性障害などでお悩みの方に、医師による診察や、専門資格をもつ心理士や福祉士によるカウンセリングを提供しています。

また、港区虎ノ門にある『かもみーる心のクリニック』では、対面診察とTMS治療もお受けいただけます。

まずは『かもみーる』のオンライン診察やオンラインカウンセリングでご相談ください。

▶︎ カウンセラー(医師・心理士)一覧 はこちら

▶︎ 新規会員登録 はこちら