投稿日 2026年05月21日
メンタルヘルスの不調で休職し、「復職に向けて何か準備できることはないか」と考えている方に向けて活用されているのがリワーク(復職支援)プログラムです。
リワークは医療機関・地域障害者職業センター・就労移行支援事業所・職場内など複数の機関で提供されており、それぞれ目的や費用、対象条件が異なります。
どの機関が自分に合うかを判断するには、各制度の仕組みを正しく理解することが必要です。
この記事では、リワークの定義・種類・プログラム内容・費用・利用条件を整理して解説します。
リワーク(復職支援)とは何か

リワークは休職者が職場復帰を目指すためのリハビリテーションプログラムであり、単に仕事に戻るための準備にとどまらず、再休職を防ぐことまでを目的としています。
ここでは、リワークの名称の意味・定義・背景について詳しく解説します。
名称の意味と定義
リワークとは、Return to Workの略語です。精神疾患などを原因として休職している労働者が、職場に戻るためのリハビリテーションを行うプログラムを指します。
「復職支援プログラム」や「職場復帰支援プログラム」とも呼ばれ、どの名称も同じ取り組みを示しています。
対象となるのは気分障害などの精神疾患を原因として休職している労働者であり、職場復帰に向けたリハビリテーションを医療機関や支援機関で受ける形が一般的です。
プログラムの中心的な目的は、単なる復職ではなく「復職後の再休職を防ぐこと」です。
心身の回復を図りながら、再発を招いた働き方や考え方のパターンを見直し、安定した就労を継続できる状態をつくることを目指します。
復職支援が必要とされる背景
メンタルヘルス上の不調を理由に休業・退職する労働者は少なくありません。主治医が「復職可能」と判断した後に職場復帰しても再休職に至るケースが多いとされています。
こうした状況が、リワークプログラムの必要性を高めてきたとされています。
復職に至る過程には、生活リズムの乱れ、対人関係への不安、業務負荷への耐性低下など、乗り越えるべき課題が多いです。
これらを医療や福祉の専門家が体系的にサポートする仕組みとして、リワークプログラムが整備されてきました。
リワークの種類と実施機関

リワークは実施する機関によって、根拠となる制度・費用・対象者・プログラムの方向性がそれぞれ異なります。
ここでは、医療・職リハ・福祉・職場の4種類について、各機関の特徴を解説します。
医療リワーク(精神科クリニック・病院)
精神科クリニックや病院が実施する形態で、診療報酬上の「精神科デイケア」「精神科ショートケア」「通院集団精神療法」などの枠組みで提供されるプログラムです。
医師・看護師・精神保健福祉士・作業療法士・心理職など多職種のスタッフが関与するため、心身の回復を優先したプログラム内容になりやすい傾向があります。
健康保険が適用され、自立支援医療制度(精神通院医療)を利用すれば医療費の自己負担が原則1割に軽減されます。
全国的に実施機関が多く、通いやすい点もメリットのひとつです。
一方で、かかりつけ医がリワークに対応していない場合は、対応機関への転院が必要になることがあります。
かもみーる心のクリニック、かもみーる心のクリニック仙台院では、精神科デイケアの一環としてリワークプログラムを提供しています。
生活リズムの回復から認知行動療法・SST・復職支援まで、専門スタッフが一貫してサポートします。東京近郊にお住まいの方は、お気軽にお問い合わせください。
職リハリワーク(地域障害者職業センター)
各都道府県に1か所以上設置されている地域障害者職業センター(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が設置)が実施します。
「職場復帰支援(リワーク支援)」という名称で提供されており、センターの職業カウンセラーが休職者本人・雇用主・主治医の3者をコーディネートしながら支援を進めます。
治療ではなく「職場への適応」を目的とする点が医療リワークとの大きな違いです。受講料は無料ですが、雇用保険適用事業所の従業員に限られるため、公務員は利用できません。
施設数が少ないため申込みから支援開始まで2か月以上かかるケースもあり、早めの問い合わせが必要です。
福祉リワーク(就労移行支援事業所など)
障害福祉サービスを提供する就労移行支援事業所が実施する形態です。
2024年4月施行の障害者総合支援法改正により、休職中の障害者が所定の要件を満たす場合に就労移行支援などの就労系障害福祉サービスを一時的に利用できることが、法令上明確に位置づけられました。
就労移行支援事業所は障害者総合支援法に基づくため、利用料の9割は市区町村が負担します。
前年度の世帯収入によって月額の自己負担上限が決まり、収入が一定以下の場合は自己負担ゼロで利用できます。
医療リワークよりも実践的なプログラムを提供しやすい事業所もあり、ニーズに応じた選択肢として注目されている制度です。
職場リワーク(在籍企業内)
休職前に在籍していた職場で、段階的に業務へ戻る形態です。
厚生労働省が2009年に改訂した「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、事業場が「職場復帰支援プログラム」を策定し、休職開始から通常業務復帰までの流れを整備するよう求めています。
実際の職場環境や業務に近い形で準備を進められるため、復職後のギャップを減らしやすい点がメリットのひとつとして挙げられます。
在籍企業が独自に設けるプログラムで、人事・産業医・上司が連携して段階的な復帰をサポートする形が一般的です。
大手企業を中心に整備が進んでいますが、全ての職場で実施できているわけではありません。
リワークプログラムの主な内容

リワークのプログラムは、生活リズムの回復から始まり、作業訓練・心理的アプローチへと段階的に進む構成が一般的です。
ここでは、各段階で実施される主なプログラム内容について解説します。
生活リズムの立て直しと通勤訓練
リワークの初期段階では、規則正しい生活リズムの回復が優先されることが多いとされています。
休職中は昼夜逆転や睡眠の乱れが生じやすく、通所自体がリハビリとして機能する面があります。決まった時間に施設に通うことで、通勤を想定した訓練にもなるでしょう。
セルフモニタリングの習慣づけもこの段階から始まることが一般的です。体調・気分・睡眠の記録をつけながら、自分の状態を客観的に把握する力を身につけていきます。
この自己管理能力は、復職後の再発防止に役立つスキルとされています。
オフィスワーク・作業訓練
生活リズムが安定してきた段階で、仕事に近い内容の訓練に移行するケースが多いとされています。
文書作成、データ入力、グループワークなど、実際の業務を想定した課題に取り組みながら、集中力・持久力・作業精度といった基礎的な仕事能力の回復を図ります。
グループでの活動を通じて対人関係の練習も行われ、集団生活への慣れと職場でのコミュニケーションスキルの回復を同時に目指す構成が一般的です。
心理教育・認知行動療法・SST
再発防止の観点から、心理的なアプローチもプログラムの重要な要素とされています。主に以下の3つが取り入れられることが多いです。
心理教育
心理教育は、自分の疾患や症状のメカニズムを正しく理解するための学習です。ストレスの仕組みや、自分が休職に至った要因を整理する機会になります。
認知行動療法(CBT)
認知行動療法(CBT)は、思考のパターンと行動の関係を見直すアプローチです。ネガティブな思考の偏りに気づき、より適応的な認知と行動を身につけることを目指します。
医療リワークでは多職種の専門家が関与して実施されることが一般的です。
SST(ソーシャルスキルトレーニング)
SST(ソーシャルスキルトレーニング)は、職場での対人関係や自己表現のスキルを練習するプログラムです。
断り方、相談の仕方、感情の伝え方など、実践的なコミュニケーション能力の向上を目的としています。
リワークの対象者と利用条件

リワークは誰でも利用できるわけではなく、対象となる疾患の状態や主治医の判断、機関ごとの要件を満たすことが前提となります。
ここでは、対象となる疾患・状態の目安と、利用開始に必要な手続きや書類について解説します。
対象となる疾患・状態の目安
リワークの主な対象者は、うつ病や適応障害などの精神疾患を原因として休職中で、復職を希望している人です。
機関によっては双極性障害など気分障害全般や、不安障害を対象に含める場合もあります。
利用にあたっては、以下の条件を満たすことが求められます。
- 精神科または心療内科の主治医から精神疾患の診断を受けていること
- 主治医がリワークへの参加を認めていること
- 本人および職場の双方に復職の意思があること
精神障害者保健福祉手帳の所持は必須ではありません。職リハリワークは「主治医から精神疾患の診断を受けていること」が要件であり、手帳の有無に関係なく利用できます。
退職後に利用できるかどうかは機関によって異なります。医療リワーク・就労移行支援事業所は退職後でも利用できる場合がありますが、職リハリワークは在職中の休職者が対象です。
▶︎うつ病で仕事ができない!原因や向き合い方、復職への道筋を紹介
▶︎適応障害の復職で同じ職場に戻りたくない場合の対処法や休職中の注意点を紹介
利用に必要な手続きと書類
利用を始めるには、まず主治医への相談が出発点になります。主治医の了承を得たうえで、各機関に問い合わせ・見学・面談という流れが一般的です。
必要書類は機関によって異なりますが、共通して求められることが多いのは以下の書類です。
- 主治医による診断書または意見書
- 健康保険証
- 雇用保険被保険者証(職リハリワークの場合は必須)
就労移行支援事業所を利用する場合は、障害福祉サービスの受給者証が必要になります。受給者証はお住まいの市区町村の窓口で申請できます。
申請から発行まで1か月程度かかる自治体もあるため、早めの手続きを検討してください。
種類別の費用と期間の目安

リワークの費用は機関によって大きく異なり、無料で利用できるものから健康保険の自己負担が発生するものまで幅があります。
ここでは、医療・職リハ・福祉・職場それぞれの費用と利用期間の目安について解説します。
各機関の費用比較(医療・職リハ・福祉・職場)
種類 | 費用の目安 | 根拠となる制度 |
医療リワーク | 健康保険適用で原則3割負担。自立支援医療制度(精神医療)利用で原則1割負担(1日あたり800〜900円程度が目安)。 | 健康保険法・自立支援医療制度 |
職リハリワーク | 受講料は無料(交通費・昼食代は自己負担)。 | 雇用保険から支出 |
福祉リワーク(就労移行支援) | 前年度世帯収入に応じて月0〜37,200円。収入が一定以下の世帯は自己負担0円となるため、実際には多くの方が無料または少額で利用できます。 | 障害者総合支援法 |
職場リワーク | 企業の制度・方針による。 | 各事業者の判断 |
医療リワークで自立支援医療制度を利用するには、お住まいの市区町村窓口への申請が必要です。
なお、自己負担額には世帯収入に応じた上限が設けられており、一定収入以下の世帯では月額上限が低く抑えられます。
利用期間の目安と終了後の流れ
利用期間は機関と個人の状態によって異なりますが、おおよその目安は以下の通りです。
- 医療リワーク:3か月から1年程度
- 職リハリワーク:12〜16週(3〜4か月)が標準的な目安。申込みから支援開始まで1〜2か月以上かかることもある
- 福祉リワーク(就労移行支援):最長2年間(個別審査で1年延長可能)。リワーク目的の利用では数か月で復職に至るケースも多い
プログラム終了後は、復職する企業の人事担当者・産業医・上司と「職場復帰支援プラン」を作成し、段階的に業務量を戻していくことが推奨されています。
リワークと就労移行支援の違い

リワークと就労移行支援は目的・対象・最長利用期間のいずれも異なりますが、同じ事業所で提供されることがあるため混同されやすいサービスです。
ただし、本来の目的・対象は明確に異なります。
比較項目 | リワーク | 就労移行支援 |
主な目的 | 元の職場への復職 | 一般企業への新規就職・転職 |
主な対象 | 精神疾患で休職中の在職者 | 離職中または未就労の障害・疾患のある人 |
復職・就職先 | 原則として元の在籍企業 | 新たな企業への就職 |
最長利用時間 | 期間によって異なる | 原則2年間(審査で1年延長化) |
就労移行支援事業所の中には、リワークプログラムを独自に提供している事業所もあります。
「元の職場に戻りたい」のか「新しい職場に就職したい」のかによって、利用すべきサービスが変わります。
現在の状況と目標を主治医や支援機関に相談しながら、適切な選択をしてください。
リワーク・復職支援を検討するならまずは医師に相談
リワーク(復職支援)は、精神疾患などを原因として休職している方が職場復帰を目指すためのリハビリテーションプログラムです。
実施機関は医療機関・地域障害者職業センター・就労移行支援事業所・在籍企業内の4種類に分かれており、費用・対象条件・プログラムの方向性がそれぞれ異なります。
心身の回復を重視したい場合は医療リワーク、職場との連携を重視したい場合は職リハリワークが選択肢になるなど、自分の状況や目的に合わせた機関選びが重要です。
まずは主治医に相談し、自分に合った機関への問い合わせを次の一歩にしてください。
「リワークに進む前に、まず誰かに話を聞いてほしい」という方には、オンラインカウンセリング『かもみーる』をご検討ください。
自宅にいながら利用でき、うつ病・適応障害・休職に関する悩みにも対応しています。復職に向けた不安を整理する場としてお気軽にご活用ください。
また、東京もしくは宮城県でデイケア・リワークへの参加をご検討の方は、かもみーる心のクリニック、かもみーる心のクリニック仙台院のプログラムもご利用いただけます。
精神科デイケアの枠組みで提供しているため健康保険が適用され、自立支援医療制度を利用すれば自己負担をさらに抑えることができます。
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