投稿日 2025年03月18日
最終更新日 2026年09月03日
投稿日 2025年03月18日
最終更新日 2026年09月03日

強迫性障害は、日常生活や社会生活に支障をきたすレベルで強い不安やこだわりを持ってしまう精神疾患です。
強迫性障害(OCD)の標準的な治療は、曝露反応妨害法(ERP)を中心とした認知行動療法と、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などによる薬物療法となっております。
一方、これらの治療を適切に行っても症状が十分に改善しない場合があり、追加の治療選択肢として反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS・dTMS)が研究・臨床応用されています。
米国では、特定の機器とプロトコルによるTMSが、成人の強迫性障害に対する補助療法としてFDAの承認・クリアランスを受けています。
しかしながら、すべての強迫性障害の症状にTMSが有効とは限らず、日本では強迫性障害に対する標準的な保険診療として現時点で確立はしていません。
この記事では、強迫性障害に対するTMS治療の、現在までのエビデンス、FDA承認プロトコル、対象者、治療回数、副作用、日本で受ける際の注意点について解説します。
具体的な治療メカニズムやエビデンス、治療のポイントなどもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

強迫性障害(OCD)は、自分の意思に反して繰り返し浮かぶ考えやイメージである『強迫観念』と、その不安を軽減するために繰り返す『強迫行為』を主症状とする精神疾患です。
代表的な症状としては、過度な洗浄、戸締まりなどの確認、加害への不安、順序や配置への強いこだわりなどがあります。
症状に時間を取られ、仕事、学校、家事、人間関係などに支障が生じる場合は、専門的な評価と治療が必要です。
強迫性障害の症状については下記の記事でも詳しく解説をしています。

強迫性障害は、正しい治療を受けることで症状を改善させられる精神疾患です。
強迫性障害の主な治療方法としては、以下の2つが挙げられます。
ここでは上記2つの治療方法についてそれぞれ解説します。
強迫性障害の主な治療方法の一つが薬物療法です。
強迫性障害の薬物療法では、『選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)』が第一選択薬となっています。
一般的なうつ病治療より高用量が検討されることがあり、十分な期間をかけて効果を評価します。
反応が不十分な場合は、診断、服薬状況、用量、治療期間を再評価したうえで、別のSSRIへの変更、認知行動療法の併用、または一部の抗精神病薬による増強療法などを検討します。
薬の選択や調整は、副作用や併存症を含めて医師が個別に判断します。
強迫性障害の治療では、基本的に薬物療法と精神療法を並行して行うケースが多いです。
精神療法にはいくつか種類がありますが、強迫性障害の治療で行われる代表的な治療方法として『曝露反応妨害法(ERP)』が挙げられます。
曝露反応妨害法(ERP)とは、治療者と相談しながら段階的に不安を感じる場面へ向き合い、確認や洗浄などの強迫行為を行わずに過ごす練習をする治療法です。
不安を無理に我慢させるのではなく、不安があっても強迫行為に頼らず対処できる経験を重ね、強迫症状による生活上の支障を減らしていきます。

強迫性障害に対するTMSは、ERPや薬物療法で十分な改善が得られない成人患者に対する追加・補助治療として研究されています。
代表的な無作為化比較試験では実刺激群が偽刺激群より有意に改善しましたが、治療に反応しない患者も一定割合確認され、すべてのOCDに効果が保証される治療ではありません。
TMSは、頭皮上に置いたコイルから磁気パルスを発生させ、脳の神経活動に影響を与える非侵襲的な治療法です。
強迫性障害では、思考や行動の切り替え、エラーの検出、不安への反応などに関係する皮質-線条体-視床-皮質回路(CSTC回路)の機能異常が研究されています。
強迫性障害向けTMSでは、背内側前頭前野(dmPFC)や前帯状皮質(ACC)と関連するネットワークに反復刺激を行い、強迫観念や強迫行為の軽減を目指します。
遠隔の皮質領域や皮質下領域を含むネットワークをTMSが調整すると考えられています。
【関連記事】
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米国では、特定のTMS機器とプロトコルが成人OCDに対する補助療法としてFDAの承認・クリアランスを受けています。
ただし、FDAの位置付けは機器と使用条件に紐づくものであり、すべてのTMS機器や任意の刺激方法がOCD治療として認められているわけではありません。
一方、日本で保険診療として実施されているrTMSは、一定の条件を満たす成人の治療抵抗性うつ病を対象とします。
強迫性障害に対するTMSは、日本国内で標準的な保険治療として広く認められているわけではなく、自由診療として医師の管理において実施されます。
米国では、BrainsWayのH7コイルを用いたシステムが2018年に成人強迫性障害治療機器としてFDAの販売承認を受けました。
その後、MagVentureのMagPro R30、R30 with MagOption、X100、X100 with MagOptionも、Cool D-B80コイルを用いる成人強迫性障害の補助療法として2020年にFDA 510(k)クリアランスを取得しています。
MagProのOCDプロトコルでは、両側dmPFCを標的に、下肢運動野で測定した運動閾値の100%、20Hz、1回2,000発、約18.3分、原則29回・6週間の刺激が設定されています。
項目 | 内容 |
位置付け | 成人強迫性障害に対する補助療法 |
標的 | 両側背内側前頭前野(dmPFC) |
コイル | Cool D-B80 |
強度 | 下肢運動野で測定した運動閾値の100% |
周波数 | 20Hz |
刺激条件 | 2秒刺激/20秒間隔/50トレイン |
刺激数・時間 | 2,000発/約18.3分 |
標準回数 | 29回・6週間(週5回×5週+第6週4回) |
症状誘発 | 刺激前に個別の強迫症状を誘発 |
刺激前には患者ごとの強迫症状を一時的に誘発する手順が組み込まれます。
主要な多施設共同無作為化二重盲検試験では、99人のOCD患者を20Hzの実刺激群と偽刺激群に割り付け、個別の症状誘発後に週5回を基本として6週間治療しました。
その結果、治療終了時のY-BOCS平均低下は実刺激群6.0点、偽刺激群3.3点で、30%以上改善した反応者の割合は38.1%対11.1%でした。
1か月後の反応率は45.2%対17.8%で、群間差が維持されました。
この結果はTMSの有効性を支持しますが、治療終了時に反応したのは実刺激群でも約4割であり、全員に効果が得られるわけではありません。

強迫性障害でTMS治療を行うメリットとして、以下の2つが挙げられます。
ここでは上記2つのメリットについてそれぞれ解説します。
強迫性障害でTMS治療を行うメリットとして、薬とは異なるメカニズムで症状にアプローチできる点が挙げられます。
TMSは、SSRIなどの薬物療法とは異なり、磁気刺激によってOCDに関連する神経ネットワークへ働きかけることを目指す治療です。
薬物療法やERPを適切に行っても十分な改善が得られない成人患者では、追加・補助治療として検討される場合があります。
ただし、効果は保証されず、標準治療の実施状況や症状、安全性を確認したうえで医師が適応を判断します。
参考文献:Carmi L, et al. Am J Psychiatry. 2019;176(11):931–938. doi:10.1176/appi.ajp.2019.18101180
TMS治療を行うメリットとして、他の治療方法と比べて副作用が少ないことが挙げられます。
薬物療法の場合、薬の成分が血液を通して体全体に行き渡り、以下のようにさまざまな副作用が現れる恐れがあります。
使用する薬によって症状は異なりますが、副作用のリスクが全くないものはありません。
その点、TMS治療は治療中の頭皮痛や不快感などが主な副作用です。
稀に吐き気やめまいといった副作用が現れる場合もありますが、回数を重ねるごとに慣れてくる患者さんが多く、身体的にも精神的にも負担が少ない治療方法といえます。
【関連記事】
TMS治療は頭痛に効果がある?治療の特徴や副作用について解説

強迫性障害に対するTMSでは、通常の8の字コイルや、より広い範囲の神経ネットワークを刺激するよう設計されたコイルを用いた研究があります。
FDAクリアランスを受けた代表的な方式には、BrainsWayのH7コイルや、MagVentureのCool D-B80コイルを用いるプロトコルがあります。
これらはdmPFCなどの皮質を刺激し、ACCを含む関連ネットワークへ作用することを目指します。
100%まで徐々に刺激の強度を高めていき、強迫症状自体の改善を目指します。
FDAクリアランスを受けたH7コイルおよびCool D-B80コイルの代表的なOCDプロトコルでは、20Hzの高頻度刺激が採用されています。
ただし、OCDでは他の刺激部位や周波数での治療も研究段階であり、全てのTMS方式で20Hzが最適とエビデンスが確立されているわけではありません。
参考文献:Siebner HR, et al. Clin Neurophysiol. 2022;140:59–97. doi:10.1016/j.clinph.2022.04.022

強迫性障害に対するTMS治療で押さえておきたいポイントが3つあります。
ここでは上記3つのポイントについてそれぞれ解説します。
強迫性障害に対するTMS治療の臨床研究では、治療前と比較してY-BOCSが30%以上低下した場合を『治療反応あり』と定義することがあります。
これはあくまで臨床研究上の判定基準であり、全ての強迫性障害の患者について症状改善の目標をY-BOCS 30%改善と定義するものではありません。
ただ、症状が30%改善されるだけでも生活の質が改善され、日常生活や社会生活を送りやすくなります。
また、22施設から収集された市販後データでは、治療を完了した患者の57.9%が反応基準を満たしたと報告されています。
ただし、これは偽刺激群を置いた無作為化比較試験ではなく、治療を完了した患者を中心とする実臨床データ(観察データ)となるため、RCTによる研究結果よりも信頼性の低いエビデンスとなります。
参考:強迫性障害に対する深部 TMS の実際の有効性: 22 の臨床施設から収集された市販後データ
TMSは標準治療に代わるものではなく、あくまで薬物療法やERPなどを継続しながら、追加・補助治療として実施される治療法となります。
治療終了後の効果の持続期間や、維持療法・再発率などについては、現時点で明確なエビデンスは出ていません。
また強迫性障害だけでなくうつ病も併発している場合、強迫性障害とうつ病のそれぞれの重症度、自殺リスク、生活への影響なども医師が総合的に評価した上で、治療の優先順位を決めていくこととなります。
TMS治療はうつ病に対する治療効果も認められている治療方法のため、まずはうつ病に対しTMS治療を行い、安定してきた段階で強迫性障害の症状に対するTMS治療を行う治療も可能です。
SSRIで治療反応が見られた場合や、1つのSSRIにのみ反応しなかった場合、TMS治療がより効果的であるという研究結果があります。
参考:強迫性障害における反復経頭蓋磁気刺激(r-TMS)と選択的セロトニン再取り込み阻害薬抵抗性:メタ分析と臨床的意義
FDAクリアランスを受けた代表的なOCD治療プロトコルでは、週5回を基本として6週間、合計29回の治療が設定されています。
実際の治療頻度や回数は、使用する機器やプロトコル、患者さんの状態などによって異なります。
通院頻度は医師と相談のうえで検討しましょう。
TMS治療は強迫性障害にも効果が期待できる治療方法です。
特定の部位に対し高頻度刺激を与えることにより、強迫観念や強迫行為などの症状を改善できる可能性があります。
薬物療法や精神療法であまり効果が得られない難治性の強迫性障害にも効果が期待できるとされます。
しかし日本ではまだ普及率の低い治療方法であるため、治療できる医療機関が限られる点に注意が必要です。
かもみーる心のクリニック仙台院では、FDAクリアランス実績のあるMagProと強迫性障害用コイルを導入予定です。
薬を飲んでも強迫性障害の症状が改善しなかったという方はぜひ当院までご相談ください。
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代表的な多施設共同無作為化比較試験では、治療終了時にY-BOCSが30%以上改善した患者の割合は、実刺激群で38.1%、偽刺激群で11.1%でした。 一方、すべての患者に効果が得られるわけではなく、症状の特徴やこれまでの治療歴などによって効果には個人差があります。TMSだけで治療するのではなく、薬物療法や曝露反応妨害法(ERP)などを含めて治療方針を検討することが大切です。
日本では、強迫性障害に対するTMS治療は保険適用になっておらず、実施する場合は原則として自由診療となります。 日本で保険適用となるrTMS治療は、一定の条件を満たす成人の治療抵抗性うつ病が対象です。強迫性障害に対するTMS治療の治療費や治療回数は医療機関によって異なるため、受診前に確認しましょう。
刺激中に、頭皮の痛みや不快感、頭痛、顔面筋の収縮、めまいなどが生じることがあります。多くは一時的ですが、刺激が強く感じられる場合には、担当医や治療スタッフに伝えてください。 また、頻度は非常に低いものの、けいれん発作が起こる可能性もあります。そのため、既往歴や服用している薬、頭部に埋め込まれた医療機器や金属の有無などを事前に確認したうえで、医師の管理下で実施します。
一般的には、成人の強迫性障害で、SSRIなどの薬物療法やERPを適切に行っても十分な改善が得られない場合に、追加の選択肢として検討されます。 ただし、症状の程度、併存疾患、けいれん発作の既往、服用薬、頭部周辺の金属や医療機器の有無などによっては、治療を受けられない場合があります。実際の適応については、TMS治療に詳しい医師による診察が必要です。
この記事の監修者
医療法人社団弘愛会理事長
赤堀 将太郎こんにちは、赤堀将太郎と申します。 心療内科のクリニックに受診するまでに心理的なハードルが大きいかと思います。 そういった場合、「かもみーる」で病院に行くべきかどうかなど気軽にご相談ください。 オンラインで御対応いたします。 また現在、どうしても仕事がつらくて休職したいと思っているが病院に行くのを迷っている方に対して、場合によっては診断書を発行することも可能です。(オンライン診察となります) そういった場合も遠慮なくお申し付けください。
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精神科医
こんにちは。廣瀬と申します。 臨床精神医学を専門とし、患者様一人ひとりのお悩みや症状に寄り添った診療を心がけています。 特に、減薬をはじめとした治療に伴う副作用の軽減についてのご相談を得意としています。治療を進めるうえでは、患者様がご自身の
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