子どもがすぐ怒るのは発達障害の特徴?理由と対処法を紹介

「子どもがすぐに怒ってしまうのはなぜ?」とお悩みの親御さんは少なくありません。
友だちと遊んでいるとき、家や学校、外出先などで癇癪(かんしゃく)を起こすとつい叱ってしまいますが、もしかしたら発達障害の特性によるもので、本人も困っているかもしれません。
発達障害のなかでもどのような特性をもっているかで、なぜすぐ怒ってしまうのかは異なります。
この記事では、子どもがすぐ怒る理由や予防、対処法について詳しく解説します。
発達障害について知りたい方、子どもにどう接すればいいのかお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
子どもがすぐ怒るのは発達障害が原因?

発達障害があるかないかに関わらず、子どもの感情を制御する力は未熟で、「怒り」の感情も成長に必要なものです。
大人と比べれば子どもにとって感情のコントロールは難しく、つい癇癪を起こしたり、泣きわめいたりしてしまいます。
通常は、成長とともにさまざまなことを経験して、少しずつ感情を抑えることを覚えていきます。
しかし、怒る頻度が多かったり、程度が激しかったりする場合は、発達障害の特性が影響しているかもしれません。
ここでは、「すぐ怒ってしまう」という行動が見られやすい発達障害や、怒りにつながる要因について解説します。
自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症(ASD)とは、以前は自閉症やアスペルガー症候群、広汎性発達障害と呼ばれていたものの総称です。
大きく分けると以下の3つの特徴があります。
- 社会性と対人関係の障害
- コミュニケーションや言葉の発達の遅れ
- 行動や興味の偏り
自閉スペクトラム症の子どもがすぐ怒るのは、これらの特性によるものです。
例えば、自分の思い通りにならないことを上手く言葉で伝えられない、相手の感情を読み取れずにケンカになってしまうなど、怒りにつながる要因は人それぞれ異なります。
(参照:「自閉スペクトラム症を抱える子どもの感情調節機能についての研究展望」乳原 彩香 他)
ADHD(注意欠如・多動症)
ADHD(注意欠如・多動症)は、子どもから大人まで見られ、大人になってから診断されることも多い発達障害の一つです。
ADHDの主な特徴は、以下の3つです。
- 不注意(期限を守れない、忘れ物が多いなど)
- 多動性(じっと座っていられない、常に手足を動かしたり何かを触ったりするなど)
- 衝動性(すぐイライラする、感情のコントロールができないなど)
ADHDの子どもがすぐ怒るのは、衝動性が要因となります。
小さなことでも感情が昂って気持ちが抑えられず、怒りにつながってしまいます。
(参照:「注意欠如・多動症(ADHD)特性の理解」村上佳津美)
ADHDの特徴や対応方法について詳しくは以下の記事も参考にしてください。
▶ADHD(注意欠如・多動症)とは?発達障害との関係や特徴、対応法を解説
グレーゾーン
自閉スペクトラム症やADHDのような発達障害の特徴が見られていても、診断を受けるほどの程度ではない状態を、グレーゾーンと表現します。
診断基準を全て満たしていませんが、いくつかは当てはまるような状態です。
グレーゾーンの場合は困っていることがあっても診断名がついていないため、適切な支援を受けられない可能性があります。
すぐ怒る特性があまりに強く出ているならば、専門機関で詳しい検査をすることを検討してみましょう。
発達障害の特性がある子どもがすぐ怒るのは親のせいではない

子どもがすぐ怒ることを周囲から責められ、自分のせいだと責任を感じてお悩みの親御さんは少なくありません。
親の関わり方や環境は子どもの成長にとって重要なものですが、発達障害は生まれつきの脳機能の特性によるものであり、育て方が原因ではありません。
子ども本人もどうしていいのかわからず困っていて、助けを必要としているため、どのように接したらいいか、環境を整えたらいいかを、一緒に考えてあげることが重要です。
子どもがすぐ怒る理由は?

発達障害の特性がある子どもがすぐ怒るのは、以下のような理由があります。
ここでは、どのような場面で「怒る」という感情につながりやすいのか紹介します。
なお、反抗期と発達障害の関係については、以下の記事も参考にしてください。
▶発達障害の反抗期は二次障害が原因?特徴や関わり方、解決策などを紹介
感情のコントロールが苦手
感情のコントロールが苦手なのは、自閉スペクトラム症とADHDの両方に共通している特性です。
通常は成長するにつれて我慢や話し合い、譲り合いなどを覚えていきますが、発達障害の子どもは怒りやイライラを抑えることが難しい傾向があります。
例えるならば、瞬間的に頭に血が上ってしまう状態です。
また、どうして怒っているのかを言葉で説明するのが困難なため、物にあたったり、大声でわめいたりします。
言葉のやり取りが苦手
自閉スペクトラム症とADHDはいずれも、言葉のやり取りが苦手です。
言葉の習得が遅れているだけではなく、相手の感情を読み取って適切な答えを返したり、言葉のキャッチボールをしたりするのが難しい傾向があります。
会話が上手くできない、相手とケンカになってしまうなどが続いてストレスが溜まり、怒りが爆発しやすくなります。
こだわりが強い
こだわりが強いのは、自閉スペクトラム症でよく現れる特性です。
毎日のルーティンや決まった予定を繰り返すのが得意な反面、新しいことや予定外のことは苦手です。
自分のなかで決めたルールがあり、思い通りにならないとパニックになりやすく、すぐ怒る原因になります。
疲れている
ADHDによく見られ、じっとしていられず動き回っているため身体が疲れるのはもちろん、頭のなかもめまぐるしく回転している特性があります。
肉体的・精神的な疲れが溜まり、それを言葉で上手く表現できず、親や学校の先生に伝えられません。
疲れている状態では、何かのきっかけで感情が爆発しやすくなります。
すぐ怒る子どもにする対処法|予防のために

子どもがすぐ怒るのが発達障害の特性によるものだった場合は、ただ成長するのを待つだけではなく、特性に合わせて対処することが重要です。
ここでは、感情のコントロールができずに怒りにつながってしまうのを予防するため、対処法を紹介します。
感情を視覚的に認識できるようにする
発達障害の特性がある子どもは、自分の感情を認識することが困難です。
そのため、「今どのような感情なのか」を理解して、伝えられるように練習してみましょう。
絵や写真などを使用して感情を読み取る練習をしたり、怒りの段階をイラストで視覚的に描いたものを利用したりすると効果が期待できます。
言葉で自分の気持ちを表現できるように、少しずつ練習するとよいでしょう。
怒りにくい環境を整える
どのような状況で怒ることが多いのかを観察して、子どもにとって怒りにくい環境を整えるのも方法のひとつです。
例えば、こだわりが強い特性のため予定が変わると怒る場合は、事前にどう予定が変わるのか、変わったらどう行動したらいいのかを伝えましょう。
怒りの原因は一人ひとり異なるため、子どもの特性に合わせて対応も変わります。
保育園・幼稚園・学校に対応を伝えておく
通っている保育園・幼稚園・学校の先生に、子どもが怒ったときにどう対応してもらいたいかを伝えておきましょう。
後述しますが、感情を爆発させて怒っている子どもに対処する方法は、親御さんがよくわかっています。
家と異なる対応をすると、子どもはさらにパニックに陥ってしまうかもしれません。
「集団から離れて落ち着かせてほしい」、「場所だけ変えて放っておいてほしい」など、子どもにとってのベストな方法を伝えましょう。
怒ったときにどうするかを考えておく
怒ったときに感情をコントロールするために、どうしたらいいのかをあらかじめ考えておく方法もあります。
子ども自身が「怒ってしまった」と認識できている場合は、怒りを抑えるための方法があると、自分で対処できるようになります。
例えば、自分でその場を離れる、深呼吸する、遠くを見つめて10秒数えるなど、子どもに合った方法を探していくとよいでしょう。
アンガーマネジメント
アンガーマネジメントとは、認知行動療法をベースとしたアメリカで発展した心理トレーニングです。
日本では教育機関や医療分野、企業などでカウンセリングに取り入れられています。
アンガーマネジメントは怒らないことを目的にしているわけではなく、違いを受け入れ、人間関係を良くすることを目標としています。
(参照:「アンガーマネジメントとは」一般社団法人日本アンガーマネジメント協会)
子どもが小さいうちは本人が学ぶのは難しいかもしれませんが、発達障害の子どもを育てる親御さんの助けになる可能性があります。
すぐ怒る子どもにする対処法|怒ってしまったとき

子どもが怒ってしまったとき、どう対処したらいいのかも、一人ひとり異なります。
どのような方法が子どもに合っているのか、一緒に探してあげましょう。
ここでは、怒ってしまった子どもへの対処法の基本を紹介します。
落ち着くまで待つ
感情が昂って怒っている最中の子どもには、言葉をかけても届かない可能性が高いため、落ち着くまで待ちましょう。
大声をあげる、物にあたる、暴れるなど、怒り方は子どもによってさまざまです。
「今は感情を発散させている」と考え、発散しきるまで見守ってあげましょう。
ただし、周りに危険なもの(割れ物やとがった物など)があったら取り除く、階段や窓の近くだったらさりげなく遠ざけるなど、本人や周囲の人がケガをしないように注意が必要です。
もしも親御さん自身がイライラしそうだと感じたら、安全確保ができている状況ならば、冷静になるために少し距離を取って見守るのもひとつの方法です。
場所を変える
発達障害の子どもは、場所や環境により影響を受けやすい特性をもっていることもあります。
例えば、自閉スペクトラム症の子どもは音や光に敏感で刺激が苦手なため、大きな音が嫌だったり、光が眩しすぎたりすることで怒ることもあります。
この場合は、場所を変えるのが落ち着かせるのに有効です。
また、他の要因で怒っていても、「この場所で嫌なことがあった」という場所から離れることで、気持ちの切り替えができます。
発達障害の子どもは興味の対象が他に移りやすい特性もあるため、場所が変わると怒りが落ち着くのも早くなる効果も期待できます。
言い分を聞いてあげる
自分の気持ちを上手く表現できないことで怒っている場合、徹底的に受け入れて言い分を聞いてあげるのもひとつの方法です。
ただし、無理な要求をなんでも許容して言いなりになるという意味ではありません。
「なぜ怒っているか」に寄り添って、言い分を聞くということです。
感情を爆発させている子どもも、共感してくれることによりだんだん気持ちが落ち着いていきます。
気持ちを聞いてくれる、受け入れてくれるという体験を重ね、安心できる環境を作ってあげることで、少しずつ感情のコントロール方法を学んでいけます。
注意をそらす
場所や物、人へのこだわりの強さにより怒りを感じているときは、その対象から注意をそらすのも効果が期待できます。
場所を移動する、新しい物(おもちゃや本など)を見せる、友だちから離れるなどして、子どもの興味を他へ誘導してみましょう。
注意がそれると、怒りの感情がスッとなくなる可能性も高まります。
しかし、怒りの度合いや執着が大きかったりするときは効果がないこともあるため、他の方法も合わせて試してみましょう。
子どもがすぐ怒るのことに悩んでいる場合は専門機関へ相談を
子どもがすぐ怒るのが、子どもらしさだけではなく発達障害の特性だった場合は、成長をただ待つだけでは改善しない可能性もあります。
怒り方やきっかけを観察し、発達障害かもしれないと感じたら、専門機関を受診して診断を受けましょう。
診察やカウンセリングを行い、子どもの特性を理解して、一人ひとりに合わせた対処法を見つける手助けができます。
子どもがすぐ怒ってしまうのを親御さん一人で抱えずに、専門機関に相談して一緒に改善方法を探していきましょう。
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